避難場までは、1キロくらいあり、風速70メートルの逆巻く突風は、前後左右から揺さぶって吹き、決して同一方向から、均一的に吹いて来ません。
会話は嵐の中へ千切れ飛び、痛い程叩き付ける雨に、目も開けられず、風圧で、息をする事すら苦しく、顔をあげておられません。
大人ですら、進むのが困難な状況である。
闇夜の畦道、吹き飛ばされ、足に纏わり付き、やっとの思いで、避難場へ到着。
不安な一夜を過ごしました。
抗し難い、大自然の力とは言え、コツコツと築き上げた我が家が吹き飛ぶ。
翌日からの生活を思い巡らし、家を後にする時、父親の気持ちはどのようなものだったのだろうか。
南国の真夏、殆んど着る事の無いオーバーコートを着、荒れ狂う嵐に悠然と立ち向い、家族を守る。
父の背中はあまりにも大きく、凛々しい姿として瞼に焼き付けられ、ひかるが生きていく中、人生の厳しさに背を向ける事なく、前向きに立ち向い、家族を守る、一家の主の姿として生き続けたのだった。
また地震や緊急の災害時、持ち出す物は色々有るかと思いますが、オーバーコートが一番役に立つのではないだろうか。
コートを羽織る事により、風雨が凌げ、見通しの良い場所でも、下着などの着替えが簡単に出来、家の役目さえするのです。
咄嗟の災害時、真夏でもオーバーコートを持ち出す、心の準備が大事かと思います。
昨今は、粗大ゴミと陰口される父親像ですが、世の中平和過ぎ、父親の出る幕が少ないからとて、粗末にされたのではたまりません。
何か一大事が起きた時、それなりに、毅然として立ち向い、頼られるのが、主の役目。
今一度、それぞれの父親像を考えてみる必要が、あるのではないだろうか。
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