2024年11月22日

f1181 半ボケ


皆さん、ハートアイランドご存知ですか。
沖縄本島から南へ450キロ。
周囲12キロという、ものの見事にハート型をした、小さな島がある。
黒島で、別名はハートアイランドと呼ばれている。
この島に年齢は80歳を越した、いまだに独身の一人の爺ジーが居る。
頭は完璧にツルツル、ツルッ禿げだがその分あごヒゲはもじゃもじゃ。
目は人一倍小さい。遠くから見ると、どう見ても顔が上下逆回転だ。
いつも短パンにランニング姿で、腹がポッコリと出ている。
年のせいか、半分ボケが入っている。
足腰は意外と丈夫で何時も自転車を乗り回し、昼間から島中を徘徊している。
見晴らしのいい、休憩所などで観光客がいると誰かれ構わず、「何処から来たね〜」と声をかけ回る。
爺ジーは若い頃、20年程大阪で仕事をし自分の生まれ育ったこの島へ、ふらりと単身戻って来た。
観光客が名古屋から来たというと、私は20年間名古屋で住んでいたといい。適当に話を合わせる。
別な観光客が、仙台から来たといえば自分は20年間、仙台に住んでいた事がある、と良い加減だ。
毎日が徘徊と、想像の世界である。
顎鬚は見事、そして笑顔が子供のように愛らしき、いつもニコニコしている。
観光客は、半分ボケているとは誰も思わない。
最近島に、外人観光客が増えてきたが、育造爺ジイーは果敢に挑戦する。
「何処から来たね〜」と聞き「スイスから来た」というと、私は20年間スイスで生活していたと始まる。
エッフェル塔の眺めは、素晴らしい。上ったことあるかい。
ゼラシックパークという公園では、昼間からよくも、若者がチュウチュウ、キスをして恥ずかしくないのかね。
・・・・???
話は全く通じない。
また別の外人を見つけ、何処から来たね〜、と始まる。
イギリスから来たというと、私は20年間イギリスに住んでいた事があると始まる。
セーヌ川の高台の高級住宅街、知ってるかと得意になって話をする・・・・???
話は全く通じない。
とうとう育造爺ジイーは外人と話をする事を止めた。
その点を聞くと「あいつら、バカだよ」
こんな小さな島へ流れ着くような外人は、学校なんぞ出ていない無学文盲だ。
育造爺ジイーは、芯から怒り出す。
今日も育造爺ジイーは自転車で徘徊をはじめる。
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