生田 活動の2つめは、野宿者襲撃問題への対応です。野宿者を襲撃するのは主に少年グループで、暴行、エアガン射撃、放火などが全国で日常的に起きています。しかし、公的統計も存在せず、マスコミも報道することが少ないために、ほとんど知られていません。
実は1970年代半ばから途絶えることなく続いています。
背景には、野宿者に対する差別意識と社会の側のストレスの充満があると思われます。
「ホームレスは怠け者で働かず、税金も払わずに広い公園を使っている」という思い込みが多くの人にあります。
ただそれは、「自分は好きではない仕事をやらされ、狭い家に住み、高い税金を払っている」という意識を投影しているだけなのかもしれません。
子供たちにも、「自分たちは学校に行かなくてはいけない、親のもとでしんどい。それに比べてホームレスは働かずのうのうと生きている」といった意識があるのかもしれません。
このように考える人たちのストレスを解決しないと、野宿者への差別はなくならないのかもしれません。
●知的障害者に対する社会の偏見
金子 ほかに考えられる要因はありますか。
生田 襲撃した子供たちをみると虐待家庭が多いようです。
自分でも抑えきれない怒りやストレスがたまっていて、それが何かのきっかけに放出されるということがあるのです。
集団でひとりの弱者を追い詰めるという意味で野宿者襲撃といじめは似ています。特に野宿者襲撃は貧困者に対するヘイトクライムとして、社会的に位置づけられるべきだと思います。
相談に来る若い人には発達障害のあることが多く、職場で人間関係を築きにくいという面があります。
聴覚過敏で職場にいること自体が難しい若者もいます。
いま、人間関係をつくったりコミュニケーションをとることが難しいため、バイトすらできない高校生が増えていますが、こういった若者は貧困化していく可能性が高いかもしれません。
金子 人間は本来、多様なものが交じり合い、さまざまなことを体験しながら多くのものを習得するのに、社会の分断が進んで孤立する方向に向かっています。
生田 襲撃への対応として、小学校から大学まで野宿問題に関する授業を2001年から行っています。これは劇的な効果があります。
野宿者が実際に話したり、私が経験を話したりします。
川崎市では、こういった取り組みの結果、襲撃事件の数が半減しました。
私は15年間で400回くらい授業をしていますが、多くの場合、授業のあと子供たちも「夜回りをしたい」と言ってくれるのです。
釜ヶ崎では子供夜回りもあって、学習会をしておにぎりをつくり、大人と子供が夜回りをします。襲撃を減らし、野宿者と子供の相互の理解がつくられる効果的な方法です。
金子 生田さんが活動を始めたときにはなかったような問題が増えていますね。
生田 5年たつと風景が一変し、10年たつとほとんど別の問題になっているという感覚です。90年代前半までは、野宿者はほとんどが日雇い労働で、90年代後半には一般の失業者、そしてDVなど家族の問題や失業によって女性や若者が野宿をするようになりました。
野宿の現場も、路上や公園からネットカフェ、ファストフード店、個室ビデオなどに変化していきました。
精神障害、知的障害の問題も明らかに増えています。
金子 状況が少しずつ変わって、次々に新たな問題が発生し、また別の場所でも同様の問題が発生していくという感じですね。
生田 「釜ヶ崎の全国化」と呼んでいるのですが、釜ヶ崎で起きた問題が全国各地に広がっていくイメージです。
金子 『釜ヶ崎から』は、当事者として日雇いで働きながら生活困窮者を支えるルポとして考えさせられることが多いですね。ありがとうございました。
(構成=松井克明/CFP)
提供元
Business Journal5月2日 06時06分
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