出典
カラー版世界服飾史
株式会社美術出版社
ISBN 4-568-40042-2 C3070
?[章 20世紀後半
166ページ
化学繊維の時代
宇宙が現実的に解明されはじめるなど化学が著しい進歩をみせたこの時代は,化学繊維の発明・開発の時代でもあった.人類初の人工の繊維ナイロンはアメリカのカローザス博士によって1935年に発明されていたが,1940年になってデュポン社からストッキングとして売り出されると大きな人気をよんだ.戦後になって,強くて安いナイロン・ストッキングは女性の長年の夢を実現したものとして絹にかわって世界のストッキング市場を席捲していく.60年代にミニが登場し,パンツ部分とストッキング部分が一体化したパンティストッキングへと形を変え,広く女性に用いられている.
170ページ
◆ナイロンストッキングからパンティストッキングへ
1940年5月15日,女性用ストッキングとして全米で一斉に売り出されたナイロン・ストッキングは,怪我人が出るほどの騒ぎを引き起こした.後にこの日は「N-DAY」として記録される.戦争のさなかでもあり,アメリカ以外の国でははきたくても入手困難だったナイロンストッキングをはいているように見せかけるため,パリの女性達の中には,当時後ろ中央にシームが入っていたナイロンストッキングに似せて,素足のふくらはぎ中央に黒い線を引いたりするものもあった.
戦争が終わると「クモの糸よりも細く優美で鋼鉄よりも強い」ナイロンは,それまでの絹のストッキングにかわり世界中の女性を虜にした.50年代の高くて細いヒールの靴の流行とともにシームはファッションの重要なポイントになったが,ミニスカートが流行する60年代になるとストッキングには大きな変化が見え始める.シームレスへ,さらには67年に太股半ばまでの短さになったミニスカートにはそれまでのストッキングをガーターベルトでつるすという方式では現実にあわなくなり,パンツと一続きの形態,パンティストッキングが生まれた.70年代からはエクササイズブームにより,厚手のパンティストッキングであるタイツの需要が広がった. (深井)
世界服飾史 単行本 – 1998/3
深井 晃子 (著), 古賀 令子 (著), 石上 美紀 (著), 徳井 淑子 (著), 周防 珠実 (著), & 1 その他
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