仮想通貨
ビットコイン
は足元の楽観論再燃を背景に、節目の1万ドル(約107万円)を突破したが、ヘッジファンドなど大口投資家は値下がりを見込んだ取引を行っている。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のビットコイン先物の動向からは、こうした実態が浮かび上がってきた。先物取引では、投資先の資産(この場合はビットコイン)の値上がり、もしくは値下がりを見込んだ取引を行うことができる。
直近の米商品先物取引委員会(CFTC)報告書(6月18日終了週)によると、ヘッジファンドなど資産運用会社のショートポジション(売り持ち)はロングポジション(買い持ち)をおよそ14%上回った。
その他の主要トレーダーは一段と弱気だ。CFTCの報告書で、必ずしも外部投資家のために資産を運用していない企業の緩い集まりを示すとされる「報告が必要なその他」の区分では、ビットコインのショートがロングの3倍以上に達した。
では、一体誰が楽観しているのか? 報告書によると、主に小口投資家は逆の見方をしているようだ。持ち高が25枚未満のトレーダー(おそらくは個人投資家が中心)は、ロングがショートを4対1の割合で上回った。
タイフォン・キャピタル・マネジメントのポートフォリオマネジャー、
ジョージ・ミカロポロス
氏は「従来の市場参加者は、ミレニアル世代のデートーレーダーよりもビットコインに対して懐疑的」と指摘する。ただ、自身の見方は臆測にすぎず、CFTC報告書の数字を動かしている要因を把握するのは難しいとも強調した。
直近のCFTC報告書が公表された21日時点で、ビットコイン価格は約9000ドルだった。週明け24日の午後時点では約1万0900ドルまで値上がりした。
週次のCFTC報告書は、タイムラグがあるものの、さまざまなトレーダーがビットコインをいかに取引しているのか、その実態を知る手掛かりを提供する。コモディティー(商品)トレーダーは市場動向を把握するため、CFTC報告書でビットコインなどと同時に発表される原油、小麦、トウモロコシなどの先物データに注目する。
CFTCのデータによると、ヘッジファンドは2月以降、ビットコインを空売りしているが、売り持ちは減少傾向にある。6月11日までの週はショートがロングを約47%上回っていたが、翌週にはこの差が14%まで縮小した。
ショートはヘッジ戦略の一環として用いられる可能性もあるため、ヘッジファンドがビットコインに対し、必ずしも値下がりを見込んだ取引のみを仕掛けているという訳ではない。例えばビットコインに投資するファンドが、ビットコイン価格の値下がりに対する保険として、CMEの先物でショートにするといったことがあり得る。
CMEのビットコイン先物の売買は、ビットコイン価格の回復に伴い、ここ数カ月に活発化している。CMEによると、5月の一日当たりの平均取引高は5億1500万ドル相当と、過去最高に達した。
コンソリデーティッド・トレーディングの仮想通貨アナリスト、L.アシャー・コーソン氏は、ビットコインをショートにしたいトレーダーにとって、CME以外に選択肢は多くはないと指摘する。
選択肢の1つとしては、株の空売りのように、後で売却して戻す合意の下で、他のトレーディング会社からビットコインを借りる方法がある。だが、ビットコイン相場は変動が激しいため、顧客のデフォルト(債務不履行)リスクを踏まえ、空売り筋にこうした貸し出しサービスを行う企業はほとんどないところが、株式とは大きく異なるという。
コーソン氏は「大口投資家に対し、取引相手先リスクが極めて低い状況で大量のショートポジションを形成できる機会を提供できる点で、CMEは突出している」と述べる。
CMEの取引高が増えた背景には、競合のCboeグローバル・マーケッツが最近、ビットコイン先物の提供を打ち切ったこともある。Cboe最後となるビットコイン先物は先週、期限切れを迎えた。
ただ、CMEは近く、さらなる競争圧力にさらされる見通しだ。ニューヨーク証券取引所を傘下に抱える
インターコンチネンタル
取引所(ICE)は7月、新たなビットコイン先物の試験を開始する予定。TDアメリトレードやフィデリティ・インベストメンツなど有力金融会社で構成するグループは、先物・現物の双方を取り扱う計画の仮想通貨取引所「
エリス
X(ErisX)」に出資している。
CMEの先物取引高は、現物のビットコイン市場に比べるとまだわずかだ。ただビットコインの現物相場は、偽装取引によって水増しされているとの指摘も出ている。
引用元:ウォール・ストリート・ジャーナル日本版
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190626-00012985-wsj-bus_all