気持ちも落ち気味です。
身体も心も弱ってる時に、
優しく寄り添ってくれるような小説は…
と本棚から取り出してきたのが、
話題になっていた頃に読んで、たくさん泣いた記憶があります。
年齢を重ねて読んでみると、
その時には読み流していただろう、
多くの箇所、多くの場面が、心に沁みます。
主人公のまいは中学校に入ったばかり。
いつもの季節性の喘息にかかって学校を休みますが、
それが治ってからも、学校に行けなくなってしまいます。
ママの提案で、田舎のおばあちゃんの家で1ヶ月ほど過ごすことになりました。
おばあちゃんの家に着いても、ママはおばあちゃんに当たり障りのないことばかり話しているので、
まいは黙って席をはずし、隣のサンルームへ移動します。
(引用)
ママが声のトーンを落とした。
さあ、また「扱いにくい子」を口にするのか。けれど何をしゃべっているのかうまく聞こえない。
まいはしゃがんで、その雑草をつくづくと見た。小さな青い花をつけている。
勿忘草(わすれなぐさ)をうんと小さくしたような花だ。
突然、おばあちゃんの力強い声が響いた。
「まいと一緒に暮らせるのは喜びです。
私はいつでもまいのような子が生まれてきてくれたことを感謝していましたから」
まいは目を閉じた。そしてゆっくり深呼吸し、再び開けた。
この小さな青い花はなんて愛らしいのだろう。
まるで存在がきらきら光っているようだ。まいはその花をそって両手のひらで包むようにした。
この部分、物語が始まってまだ十数ページのところです。
ありのままの自分を肯定してもらえることの素晴らしさが、ぎゅっと詰まった場面。
読者である自分も、生きていることを肯定してもらえるような気持ちになります。
学生向けの推薦図書になっていたような気がしますが、
大人にこそ読んでほしい、と思える小説。
梨木香歩さんは大好きな作家さん。
これも読み直そう。大切に想っている1冊です。
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