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2011.12.17

英国ロイヤルバレエ団「くるみ割り人形」（2009）

テーマ：今日のバレエ(44)

カテゴリ：観たもの

　実は今週月曜日から金曜日まで Ovation というTVチャンネルでThe Battle of Nutcrackerという企画で5夜連続「くるみ割り人形」を放映していたので、毎晩DVR録画しておいた。古典バレエのなかでは「くるみ割り」ほど様々な解釈があるものもないだろうと思う。だから5つ観たくらいでは、くるみ割りを知ったことにはならないんだけど、とっかかりとしてごくごく古典的な振り付けから斬新なものまで5つ、という企画はすごく良いと思う。

　月曜日の晩は2年前に鑑賞済みのこれだったので、再び観ることはせずに削除。火曜日の晩はロイヤル・バレエ団の吉田都がシュガープラム・フェアリー（金平糖の精）を踊った最後のシーズンのものだった。

　番組内ではあまり詳しく説明がなかったので、最初は以前鑑賞済みのこちらのプロダクションかと一瞬思ったのだが、どうも様子が違う。というわけで最後まできちんと観ることにした。今調べたら、「以前鑑賞済み」はバーミンガム・ロイヤル・バレエの1994年のものだった。これだけの年月でも吉田都が相変わらず可愛らしかったのに更にびっくり。

　私が好む「くるみ割り」は、クララ（又はマーシャかマリー）役が本当に主役で第一幕、第二幕とも大人の踊り手がトウシューズ履いて踊ってくれるもの。それで今までの一番のお気に入りはこの日記でお話したように、ワイノーネン版下敷きのミハイル・バリシニコフ版だったのだが、このピーター・ライト版のロイヤル・バレエの2009年のプロダクション、それを上回って好きになった。

　理由はまずクララ。きちんと踊れるだけでなくて、大変魅力的なバレリーナ Iohna Loots を使っていた。くるみ割り人形役は Ricardo Cervera 。すっごく強くて跳躍もびしっとしてるダンサー。この2人が通常の第一幕だけでなく、二幕目でもお菓子の国のキャラクターダンスにそれぞれ混じって一緒に踊る。このアイディアは、主役は誰って分かりやすいし、とても効果的だと思った。全部大人の踊り手、というわけではなくて、一幕目のパーティシーンでは子供たちがちゃんと出てきて、クリスマスらしい雰囲気。

　お菓子の国のセットはやはりピーター・ライト版リバイバルのロイヤル・バレエのプロダクションということで、これも以前観たアンソニー・ダウエルが王子役のものそのまんまのセットと衣装って感じだった。

　吉田都と Steven McRae の王子によるグラン・パ・ド・ドゥはどちらもしっかりとバランスよく、そしておとぎの国らしく可愛らしくて、申し分なかった。第二幕を通して、全体的に目にも耳にもちょうどいいテンポだったと思う。特に脚笛の踊りにそれが顕著。そうそう、テンポと言えば指揮者。コーエン・ケッセルスというのが彼の名だ。

　それぞれの解釈によって異なるエンディングだが、このプロダクションは一般的な「クララがクリスマスの朝に目を覚まして、すべてが夢だったと知る」パターンではなくて、「くるみ割り人形」は実は人形師ドロッセルマイヤーの行方不明だった甥だったっていう設定。最後に再会を果たしてハッピーエンディング、ってところが特に気に入った。全体的に見ても、ダンサー陣がみな素晴らしくて、セットが豪華で、衣装も綺麗で、子供も楽しめて、音楽もよくて、お話のためにダンスが犠牲になることなく、逆にもっと取り入れられていて、そんなこんなで私が今一番好きな「くるみ割り人形」の座に輝くことになった。5つ星をあげたい。

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