音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2009年08月03日
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音楽には「波長の合う/合わない」がある


 一人の聴き手にとって、「波長の合う」音楽と「波長の合わない」音楽は存在するのだと思う。こう言ってしまうと、何か本質的な話のように聞こえるかもしれないけれど、そうではない。それまでにその人が聴いてきた音楽の積み重ねの上に、波長が合うか合わないかは決まってくる。つまり、時とともに、「波長の合わない音楽」だったものが「波長の合う音楽」に変わる可能性がある。その逆もあり得るかもしれないが、いったん「波長が合った」ものは、たぶん「波長が合わなくなる」ことはなかなかない。

 いきなり抽象的な話になってしまったけれど、私にとってザ・バンドの音楽は、実に「波長が合った」自然な音楽である。ヴォーカルが特別気に入っているというわけでもなく(そもそも複数メンバーがヴォーカル担当で、誰がリード・ヴォーカリストなのだかよくわからない)、詞のメッセージが特段気に入っているというわけでもない(詞がいい曲はあるけれど)。要するに、バンド全体の音の問題で、「波長が合う」のだと思う。もしかすると、80年代、90年代とリアルタイムで慣れ親しんだ音楽のルーツがここにあったせいかもしれない。

 本作『南十字星』(この邦訳タイトルって、半分しか訳していなくて、片手落ちだと思うのだけれど)は、1975年の作品。10年近くの活動の末、60年代末に独自のバンドとして人気を博し、ロックという土台にカントリーやフォーク、R&Bなどのルーツ音楽的要素を色濃く映し出したのが彼らの特色だった。年月とともにメンバーの間にはほころびが見られ始め、1976年を最後に活動を停止した(なお、後に復活しているが、オリジナルメンバー全員がそのまま参加したわけではなかった)。

 そんなわけで、『南十字星』はザ・バンド後期の代表作であると同時に、ロビー・ロバートソン色の濃い(本作の収録曲は全曲ロバートソンによる)、悪く言えば、バンド内の軋轢が深まっていくことを示すアルバムでもある。

 初期の2作ほどの連帯感あるいは一体感のようなものは、確かにいくぶん希薄で、あっさりしたそしてうまくまとまったサウンドに仕上がっている。けれど、それゆえに、30~40年が経過した今から聴き始めるなら、クセの強くない(しかし名作の)本盤から入ることがおすすめだと思う。このアルバムの音楽の底流となっているのは、まぎれもなく、第1作( 『ミュージック・フロム・ザ・ビッグ・ピンク』 )や第2作( 『ザ・バンド』 )のあのサウンドだ。初期の作品ほど「暑苦しさ」と「悲壮感」が迫ってくるのではなく、そうした感覚は幾分マイルドだ。音的にもシンセが効いていたりしてややポップというか、とっつきやすい。それゆえ、本作を聴いて波長が合いそうなら、より濃い世界、つまりはより初期のザ・バンドへと聴き進んではいかがだろうか。


[収録曲]

1. Forbidden Fruit ←おすすめ!
2. Hobo Jungle
3. Ophelia ←おすすめ!
4. Acadian Driftwood ←おすすめ!
5. Ring Your Bell
6. It Makes No Difference ←おすすめ!
7. Jupiter Hollow
8. Rags & Bones
9. Twilight(ボーナス・トラック)
10. Christmas Must Be Tonight(ボーナス・トラック)

1975年リリース。






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Last updated  2020年01月26日 04時46分07秒
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