音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2009年09月08日
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テーマ: 洋楽(3407)




 トーリ・エイモス(Tori Amos)は1963年米国生まれのシンガーソングライター。幼くしてピアノをはじめ、5歳の時には作詞・作曲をしていたといわれる。1977年に地元のコンテストで優勝するなどした後、1980年代後半にY Kant Tori Readというユニットで本格的な音楽活動をはじめた。ソロ・デビューは1992年の『リトル・アースクエイクス』で、本作『ボーイズ・フォー・ペレイ~炎の女神(Boys for Pele)』はソロ3作目に当たる。

 『ボーイズ・フォー・ペレイ』は1995年に録音され、翌96年初頭にリリースされた。録音は主としてアイルランドにあるとある教会で行われ、様々な楽器を取り入れて前2作よりも実験的なサウンドを目指したものであった。にもかかわらず、評論家・リスナーからの評判は非常によく、全米・全英ともに2位というヒット作になった。

ちょうど筆者もこのリリースの際に初めてトーリ・エイモスの存在を知った。けれども、コンセプト・アルバムとしての全体の統一性からか、流行ものを聴いているというのとはかなり違う印象だった。トーリ・エイモスの楽曲は、そしてとりわけヴォーカルは、女性らしさをうまく生かしたものだと感じる。ストーリーを紡ぎだす際の語り口、孤独感や悲壮感を醸し出す時のヴォーカル、いずれもがトーリ・エイモスのこの声だからこそ可能なものだと思う。

 本盤でのトーリ・エイモスが描き出す世界というのは、異次元というのとはちょっと違う、ねじれた空間の向こう側にある世界とでも表現すればよいだろうか。しかも、その先にある世界そのものはねじれておらず、澄んでいる。それゆえ、聴き手は雲か霧の向こうにある澄み切った世界を手前から鑑賞しているような気分にさせられる。ハープシコードなど異色の楽器を使い、教会録音でバロックらしさを演出しようとしたとのことだが、これらの要素がその"澄み切った世界"のイメージを創り出しているのだろう。

 本作はトーリ・エイモスの諸作の中でもとくにコンセプト・アルバム色が強く、さらりと聴きたい人にはとっつきにくいアルバムかもしれない。けれど、他のアルバムやシングルなどを通して彼女の音楽が紡ぎだす世界に少しでも魅力を感じた人には、本作を通して聴くことを勧めたい。途中でCDを止めるのを躊躇しそうな、アルバム1枚を連続して統一された"向こう側の世界"が広がっている。



[収録曲]

1. Beauty Queen/Horses
2. Blood Roses
3. Father Lucifer
4. Professinal Widow
5. Mr. Zebra
6. Marianne
7. Caught a Lite Sneeze
8. Muhammad My Friend
9. Hey Jupiter
10. Way Down
11. Little Amsterdam
12. Talula
13. Not the Red Baron
14. Agent Orange
15. Doughnut Song
16. In the Springtime of His Voodoo
17. Putting the Damage On
18. Twinkle

(1996年リリース)





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Last updated  2016年02月13日 06時47分46秒
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