音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2009年11月15日
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天賦の才が開花する瞬間


 アーティストの中には"天才"と呼ぶべき才能を潜在的に持っていて、何かの拍子にそれが一気に噴出するタイプの人が存在する。このような人たちにそうした瞬間が訪れた時には、あっという間に優れたアルバムを作り上げてしまうことができる。このような言い方をすると、本人は「そうではない(実際には苦労しているんだ!)」と言うかもしれないけれど、他所から客観的に見ていると、天賦の才が開花する瞬間というふうに見える。

 アメリカン・ロック界の"ボス"ことブルース・スプリングスティーンは、そういった人の一人で、過去に何度かそういう瞬間があった。筆者の考える限りでは、少なくとも3度はそういうことがあったのではないかと思う。

 古くは1980年リリースの 『ザ・リバー』 。2枚組の大作であるが、1枚ずつバラにしても優れたヒット作になり得たほどの出来で、基本的にバンド形式のスタジオ一発取りで録音された。次は、それから10年ちょっと後、E・ストリート・バンドを解散していた時期の1992年に発売された 『ラッキー・タウン』 である。このアルバムは、 『ヒューマン・タッチ』 とともに2枚あわせて同日発売されたのだが、『ヒューマン・タッチ』自体の制作には時間がかかっていたが、その過程でアイデアが湧いてきて一気にもう1枚分の曲が出来上がり、その結果、『ラッキー・タウン』として同時リリースされるに至ったということらしい。三度目は、これまた10年後、2002年発売の『ザ・ライジング』である。1995年の 『ザ・ゴースト・オブ・トム・ジョード』 以降、7年ぶりのオリジナル・アルバムで、なおかつE・ストリート・バンドとのスタジオ作としても久々のアルバムだが、ほとんどの曲は前年の「9・11」に触発されて一気に書き上げたという。

 "二度あることは三度ある"というが、スプリングスティーンには四度目もあった。その四度目が今年(2009年)初頭にリリースされた『ワーキング・オン・ア・ドリーム(Working On A Dream)』である。前作 『マジック』 が2007年10月発売だから、わずか1年ちょっとで出たアルバムで、これまでの数年おきというスプリングスティーンのペースからすれば異例である。前作で堂々の復活を果たしたものの、ファンはたった1年余りで次の新作が出るとは期待していなかったに違いない。本アルバムは大きなセールスを上げ、英米のみならず、カナダ、オーストラリア、ドイツ、スイス、ノルウェー、スウェーデンなど数多くの国でチャート1位に輝いた。

 さて、本作をひと言で評するならば、音としては今までになく"ポップ"な部分を含んでいて、なおかつ今までどおりの"ストーリーテラー"としてのスプリングスティーンの側面がよく表れていると言えるだろう。ファースト・シングルの3.「ワーキング・オン・ア・ドリーム」の、オバマ大統領ブームにのっかたような発売のされ方(オバマ支持なのだから仕方ないか…)はどうかと思うが、同じスロー目のテンポの曲なら、3.「クイーン・オブ・ザ・スーパーマーケット」や10.「キングダム・オブ・デイズ」が秀逸である。また、アルバム冒頭の2曲の出来が素晴らしい。1.「アウトロー・ピート」は無法者ピートの生涯を綴った8分に及ぶ長尺。2.の「マイ・ラッキー・デイ」は、スプリングスティーンのロックン・ローラーとしてのこれまでからの特色がいかんなく反映されているノリのいいナンバーである。アルバムの最後を締めくくる12.「ザ・ラスト・カーニバル」(13.はボーナス・トラックなので除く)は、今はサーカスにいなくなってしまった"ハンサム・ビリー"なる人物のことを弾き語りで歌った曲だが、前年4月に58歳で亡くなったE・ストリート・バンドのメンバー、ダニー・フェデリシに捧げられた歌詞と思われ、アルバムのライナーにも本アルバムが彼への追悼作であるとの記載がなされている。

 こうした新作が契機となって、スプリングスティーンの旧作にも興味を持つ人が出るなら、それはいいことだと思う。ちなみに、E・ストリート・バンドのメンバー、リトル・スティーヴン(スティーヴ・ヴァン・ザンド)は、 『ザ・ライジング』 、『マジック』、そして本作を"三部作"と称している。本盤で初めてスプリングスティーンに触れた方は、このあたりから徐々に遡っていくのもいいかもしれない。


[収録曲]
1. Outlaw Pete
2. My Lucky Day
3. Working on a Dream
4. Queen of the Supermarket
5. What Love Can Do
6. This Life
7. Good Eye
8. Tomorrow Never Knows
9. Life Itself
10. Kingdom of Days
11. Surprise, Surprise
12. The Last Carnival
13. The Wrestler(ボーナス・トラック)

2009年リリース。





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