音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2010年01月06日
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テーマ: 洋楽(3407)
80年代初頭、ハート過渡期のアルバム


 ハート(Heart)は、1975年にデビューした(ただし、バンド自体はそれ以前から様々な変遷を経ていたのであるが)米国のロックバンドである。アン・ウィルソンとナンシー・ウィルソンという姉妹の女性二人をフロントマンとし、レッド・ツェッペリンの影響の濃いハードロックを軸に、アコースティックサウンドも活かした作品群を70年代後半に次々と発表した。ハートのファンの中にはとりわけこの時期がもっとも良かったという人も多いようだ。

 そんなハートにとって大きな転機となったのは1980年代半ばだった。1979年と82年のメンバーの相次ぐ脱退の後、所属するレコード会社を変え、バンドの自作にこだわらずに外部ライターの曲や売れっ子プロデューサーを起用してよりポップな方向に転換した。これによって、 『HEART』 (1985年)、 『バッド・アニマルズ』 (1987年)、『ブリゲード』(1990年)の三部作に代表される"全盛期"を築くこととなった。

 本作『プライベート・オーディション(Private Audition)』は1982年の発表である。つまり、70年代後半の勢いが衰え、80年代半ばの大ブレークを迎える以前という時期で、セールスが伸び悩んでいた頃である。しかし、ある作品が売れなかったからといって、それが駄作ということは必ずしも当てはまらない。

 本盤の特徴の一つは曲の配列とバランスのよさである。1.「炎の街」というハードでソリッドなロックナンバーを冒頭に置いているのはなかなか得点が高い(ちなみにリリース当時のアナログ盤では7.「ザ・シチュエイション」がB面1曲目で同様の効果を示していた)。だがアルバム全体は一本調子ではなく、起伏に富んでいる。アルバム前半では4.の表題曲「プライベート・オーディション」や、シングルカットされた6.「ディス・マン・イズ・マイン」がそうである。5.「エンジェル」や8.「ヘイ・ダーリン・ダーリン」といったアコースティック系の曲もバランスよく取り入れられており、とりわけ、壮大なアコースティック曲11. 「アメリカ」 がアルバムの最後を締めくくるというのも曲の配列という観点からすると非常に優れている。

 さらに、本盤のもう一つの特徴として、アン・ウィルソンの歌唱力の高さが強く前面に出ている点があると思う。1.や7.のハードロック系ナンバー、5.や11.のようなアコースティック系ナンバーでの熱唱。ちなみに、発売当時のLPの帯には、「しなやかでしたたかなアンとナンシーの感性が織りなす大人のロック・ファンタジー」とある。いよいよこの頃からハートがアンとナンシー中心のバンドになったのも、このアルバム発表後にメンバーが二人抜けたというのもなるほど頷ける。加えて、現在(2000年代以降)のハートは完全にアン&ナンシーの姉妹プロジェクト化しているが、その芽生えは案外、この頃にあったのかも知れない。ともあれ、もっと評価されていい一枚だと思う。


[収録曲]
1. City’s Burning
2. Bright Light Girl
3. Perfect Stranger
4. Private Audition
5. Angels
6. This Man Is Mine
7. The Situation
8. Hey Darlin Darlin
9. One Word
10. Fast Times
11. America

1982年リリース。




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初めまして  
素晴しいですねぇ~アルバム紹介をよくコンスタントに出来ますね!
僕もアルバム紹介をやろうと思ったけど、とても自分には無理と思い1曲紹介に切り替えました。

このハートは、『バッド・アニマルズ』とベスト盤をBookoffで超破格値で購入(300円)しました(笑)
この人たちを聴くと、女性ヴォーカルは、低音を安定して出せれば、中途半端な男性ヴォーカルよりは、ずっとロック・バンドにマッチするのではないかと思われてなりません!

また、寄らさせていただきます (2010年01月06日 19時41分51秒)

Re:初めまして(01/06)  
andale  さん
JOHN☆び~とる☆レノンさん

書き込みありがとうございます。以前からそちらのブログは、時々拝見しております。

あまり急ぎすぎると自分の首を絞めそうなので(笑)、今年は慌てずのんびり、お気に入りアルバム(時には曲も)の紹介を続けたいと思っています。

ハートは他にもお気に入りが結構あるので、また機会があれば次を書きたいと考えています。

お時間が許す時には、ぜひまたお越しください。

(2010年01月06日 22時48分35秒)

こんにちは  
ハートの色々な情報 凄く興味深く閲覧しました。
私も88年90年に代々木オリンピックに観に行きました、やはり生のアンウィルソンの声は素晴らしく
ホールに声がよく通って感動したのを覚えています。
最近はあまり表舞台に出てこないのが寂しいです (2010年01月07日 18時39分10秒)

Re:こんにちは(01/06)  
andale  さん
こーちゃん3928さん

コメントありがとうございます。

なるほどアン・ウィルソンの歌声はよく通るし、ハードなロック曲からバラード曲まで見事な歌いこなしですね。

今年で60歳を迎えるアンですが、まだまだ新しい世界を切り開いていってほしいところです。
(2010年01月08日 06時51分41秒)

MAGAZINEを聞きながら  
TANATOSU さん
あのころ、私はとても貧しかった。モジュラーステレオとかいうのを買うのがやっと。レイコードー(字は忘れてしまった)なるところにせっせと通っていた。テープに取り貯めた音はとっても汚かった。ちょっとお金持ちになってシステムコンポを買った。思い切って古いテープ捨てた。「プライベート・オーディション」はとてもお気に入りだったのにコレクションから消えてしまった。とても好きだったからLP買うつもりだった。なのに、廃盤になってしまったのか、レコード屋のリストから消えてた。以来、曲だけでなく名前までお目にかかれず。それが、こんなところで目にすることが出来るなんて!!!
そうだ!!! 売れなかったって、良い物は良いのだ!!!
なぬ、2010更新だって。これは「プライベート・オーディション」が戻って来る前兆か!!! 
よくぞ書いて下さった。おかげで、光明が見えてきましたぞ。 (2010年07月25日 02時28分05秒)

Re:MAGAZINEを聞きながら(01/06)  
andale  さん
TANATOSUさん

私は中古のLPで買ってそれをよく聴いていたのですが、やがてCDがなかなか入手できず、苦労しました。結局見つけたときには580円のセール品中古だったんですけどね(笑)。

大手サイトで見る限りCDもプレミアがついてしまっている模様なので、再リリースしてほしいですね。


(2010年07月25日 10時20分31秒)

Re:ハート 『プライベート・オーディション(Private Audition)』(01/06)  
ヨリエル  さん
はじめまして。
ハートが大好きです!
私の年齢でハートを知ってる人はいませんが…(笑)
このアルバムかなり欲しいです。
軽く視聴はできたのですが
手に入れるのは大変そうですね… (2011年01月14日 00時51分27秒)

Re[1]:ハート 『プライベート・オーディション(Private Audition)』(01/06)  
andale  さん
ヨリエルさん

こちらこそはじめまして。よろしければ、今後とも時々お立ち寄りください。

非ハート世代(ということは70年代~80年代から外れているということでしょうか)にハートの支持者がいらっしゃるとは心強い限りです。

上のコメントにあるように、何年も探していて、その結果、偶発的に入手しました。実は7~8年前に「これらが見つかれば、LPは処分する」と決めたアルバムがいくつかあるのですが、『プライベート・オーディション』はその中の1枚でした(そのリストはあと一息のところまで来ましたが、まだLP処分にはまだ至っていません…)。

(2011年01月14日 07時47分03秒)

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