音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2010年04月04日
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テーマ: 洋楽(3407)




 1966年、ビーチ・ボーイズ(というか実質的にはブライアン・ウィルソン)が『ペット・サウンズ』を発表、「サーフィン・USA」とは別世界の陰を持ったポップ・サウンドを世間に問う。これに呼応するかのように、翌1967年には、ビートルズが『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を世に送り出す。いわゆるサイケ・ポップはこうして頂点を迎えていった。ザ・ゾンビーズ(The Zombies)はまさにこの時代を生き、何の因果か、時の流れに埋没し忘れ去られる不運を被ったグループだった。

 ザ・ゾンビーズは、1961年にイギリスのロンドン郊外で結成され、1964年にデビューした5人組。いわゆるブリティッシュ・インヴェイジョンの波に乗って2、3のヒットは出すものの、その後はヒット曲にも恵まれなかった。そんな中、1967年にデッカ・レコードとの契約が切れ、移籍先としてCBSレコードと契約。その契約からリリースすることになったのが1968年の本作『オデッセイ・アンド・オラクル(Odessey and Oracle)』であった。

 事の成り行きとしてはこうだ。移籍後、1967年9月にCBSからの第1弾シングル(本盤11.と4.を所収)を発表、続いて同11月には第2弾シングル(本盤1.と3.のカップリング)を発表する。しかし、泣かず飛ばずで、翌68年にはバンド・メンバー5人のうちの2人が脱退。ところが、CBSとの契約からアルバム制作を迫られたため、既存の音源をまとめてアルバムを作ることになる。それがこの『オデッセイ・アンド・オラクル』であり、いったんはモノラル・ミックスで完成したものの、CBSの求めで続いてステレオ・ミックスを製作するはめになった。

 こうした経緯の末、英国で本盤がリリースされたのは1968年4月のことだったが、早い話、アルバムが発売された時にグループは既に機能していなかった。サイケ・ポップのブームは下火になり、ブルース・ロックのような新しいトレンドが始まっていた。そのため、米国での発売も見送られたのだ。しかし、アル・クーパーが彼らの作品を見出し、1968年6月、9月にシングル、10月には本アルバムの米国での発売にこぎつけた。こうして米国で評価された(特に後者のシングル=本盤所収の12.=は全米3位のセールスを記録した)ものの、時すでに遅く、ザ・ゾンビーズは既に存在しておらず、彼らの音楽も忘却の淵に消えていくことになる。

 現代からの評価として、本盤を「サージェント・ペパーズ症候群」の典型のように言うことがある。確かに、どう聴いてもビートルズの『サージェント・~』の影響から免れ得ない音だということは確かであると思う。しかし、単なる二番煎じというのとは違い、彼らの洗練度は並ではない。どの楽曲も非常に完成度が高くて甲乙つけがたいのだけれど、筆者の独断と偏見で何曲か挙げるなら、1.「独房44」や11.「フレンズ・オブ・マイン」のもろサイケ・ポップな曲調、3.「彼去りし後には」や7.「変革」のハーモニー、6.「夢やぶれて」の物憂い曲調といったところは聴き逃せない。こうやって挙げ始めると全曲外せなくなりそうなぐらいの完成度・洗練度で、“宝石箱”と評されるのも頷ける。まとまったコンセプト・アルバムという訳ではないので、大きな宝石細工というよりも、輝石がとにかく詰め込まれた宝石箱といった感じである。

 最後に余談ながら二点ほど付け加えておくと、タイトルの“Odessey”とはギリシア叙事詩のオデュッセイアのことで、英語では正しくは“Odyssey”と綴るのだが、ジャケット・デザイナー(バンド・メンバーの友人がデザインを担当したらしい)のミスで、このような表記で定着したとのこと。それから、ザ・ゾンビーズは上記のとおり解散したものの、数度の一時的リユニオンがあり、加えて2004年からは元メンバー2人(リード・ヴォーカルのコリン・ブランストーンとオルガンのロッド・アージェント)が新メンバーを迎えてゾンビーズ名義で活動をしている。


[収録曲]

1. Care of Cell 44
2. A Rose for Emily
3. Maybe After He's Gone
4. Beachwood Park
5. Brief Candles
6. Hung Up on a Dream
7. Changes
8. I Want Her, She Wants Me
9. This Will Be Our Year
10. Butcher's Tale (Western Front 1914)
11. Friends of Mine
12. Time of the Season

13.~24. 上記1.~12.のモノラル・ミックス

25. I’ll Call You Mine -single version-
26. Time of the Season -U.S. radio spot-

オリジナル盤、1968年リリース。






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Last updated  2013年07月17日 09時11分37秒
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