これまでのところ彼女のアルバムで筆者が唯一聴いているのが本作『祖国への愛(Yo sí quiero a mi país)』である。アルバムとしては4作目に当たり、この頃に女優として映画にも登場し始めている。本アルバムの特徴は、キューバ出身の音楽プロデューサー、エミリオ・エステファン(グロリア・エステファンの夫としても知られる)がプロデュースを担当した点で、最初はエミリオがアルゼンチンまでソレダーに会いに行き、その後、彼女を米国マイアミのスタジオに呼んでレコーディングされた。その結果、本アルバムはソレダーにとって初のインターナショナル・ヒット作になり、本国アルゼンチン以外に、ウルグアイ、パラグアイ、チリ、ペルーといった近隣南米諸国ばかりか、メキシコ、米国さらにはスペインでもセールスを挙げることに成功した。特にペルーでは同国出身の大物歌手タニア・リベルターと並ぶ扱いだったという。
アルゼンチンの国内事情はよく知らないが、想像するに、10代の小娘が伝統音楽をポップに仕上げてヒットさせたことへの批判もきっとあったのではないだろうか。フォルクローレの愛好者やその分野の側からは、こんなのはフォルクローレではないという意見もきっとあったことだろう。けれども、若くてチャーミングなスターが現れてフォルクローレ的サウンドを若者の間に流布してヒットさせ、なおかつ国外(特に南米大陸を越えてメキシコやスペインや米国)でもセールスを上げたことは重要だと思う。おかげでアルゼンチンの伝統音楽の要素がいままでそういう音楽を聴かなかったリスナー層にまで広まったことの功績は大きい(何を隠そう筆者もその一人というわけだ)。10代の少女がアルゼンチン性を前面に出してインターナショナルなヒットを飛ばしたのだからあっぱれというべきだろう。ジャケット記載の謝辞が印象的で、“神に感謝”から始まり、家族や関係者への謝辞の後、次のように結ばれている。“ARRIBA ARGENTINA!!! (porque… yo sí quiero a mi país) アルゼンチン万歳!!!(なぜなら私は祖国を愛しているから)”。
[収録曲]
1. Yo sí quiero a mi país 2. El bahiano 3. Cómo será 4. Mi consejo 5. Luna mía 6. Mi bien 7. Amarraditos 8. Corazón americano 9. Un amigo, una flor, una estrella 10. De la mano 11. El humahuaqueño 12. Popurrí de candombes