音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2013年07月19日
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多彩なセンスに彩られたポップ・アルバム


 ティアーズ・フォー・フィアーズ(Tears For Fears)は、1981年にデビューした、2人組(ローランド・オーザバルとカート・スミス)によるイギリスのポップ・バンド。バンド名の由来は、アーサー・ヤノフの『原初の叫び(プライマル・スクリーム)』(ジョン・レノンも影響を受けた精神療法を編み出した心理学者の著書)の章題。1984~85年にかけてシングル曲「シャウト」や「ルール・ザ・ワールド」(いずれもアルバム『シャウト』に収録)のヒットで世界的に知られることになった。

 初期の彼らはシンセ色が強かったが、次第にそのサウンドは変化していき、作品を重ねるとともにその音楽性は変わっていった。3枚目のアルバムとなった1989年の本盤『シーズ・オブ・ラヴ(The Seeds of Love)』は、彼ら2人がカンザス・シティで見出したオリータ・アダムスを誘い、 フィル・コリンズ (当時は ジェネシス と同時にソロでも活躍していた)やサイモン・フィリップス(著名なセッション・ミュージシャンで、この数年後には亡きジェフ・ポーカロの後任として TOTO に加入)、マヌ・カッチェ(ピーター・ガブリエル 『So』 に参加して有名になったフランス/アフリカ系出自のドラマー)ら多彩なミュージシャンたちをゲストに制作された。

 ポップ・アルバムと言っても、ただポップさが洗練されているだけではないのが、このアルバムの特徴だと言える。確かに、ビートルズ的とも言っていいポップさがベースになっているのは、そうなのだろうけれど、ジャズやブルースなどの他分野的な要素がうまく取り込まれた、言わば“センスの高い”融合的ポップな音楽に仕上がっている。曲によっては、非常に壮大な印象を受けるかもしれないが、落ち着いて耳を傾けると、その壮大さは単なる音の厚みとか仰々しさなのではなくて、いろんなエッセンスを重ね合わせからできているということに気づかされる。この点なんかは、聴けば聴くほどよくわかるセンスの高さが秘められていて面白い。

 本盤収録曲のうち、個人的に断然お気に入りなのは、3. 「シーズ・オブ・ラヴ」 (邦訳はアルバム表題と一緒だが、原題は若干異なり、“Sowing the Seeds of Love”)。全米2位、全英5位(さらにカナダでは1位)のヒット曲となった。もちろん他の曲も完成度は高いし、表題のヒット曲を挙げるのは憚られる部分もあるのだけれど、やっぱりこれがいちばん印象が強い。




[収録曲]

1. Woman in Chains
2. Badman's Song
3. Sowing the Seeds of Love
4. Advice for the Young at Heart
5. Standing on the Corner of the Third World
6. Swords and Knives
7. Year of the Knife
8. Famous Last Words
~以下、1999年リマスター時のボーナス・トラック~
9. Tears Roll Down
10. Always in the Past
11. Music for Tables
12. Johnny Panic and the Bible of Dreams

1989年リリース。





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