《櫻井ジャーナル》

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2014.12.30
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(PSE)がハッキングされ、アメリカ政府はすぐに朝鮮が黒幕だと断定、同国を批判した。当初は朝鮮とハッキングを結びつける証拠はないとしていたFBIも途中、根拠を示すことなく政府に同調したのだが、外部の専門家はこの結論に懐疑的。ここにきて 内部犯行説が強まっている

 この騒動の結果、PSEが製作した映画「ザ・インタビュー」が注目され、アメリカでは大ヒットしているようだ。この映画は朝鮮の金正恩第一書記を暗殺する「コメディー」。本ブログではすでに指摘したように、 少なくとも2名のアメリカ政府高官が映画のラフ・カットを、つまり編集途中の映像を6月の終わりにチェックして有効なプロパガンダだと賞賛していた という。第一書記の頭を吹き飛ばす場面は国務省の意向だったともされている。

 今回の場合、西側の一部メディアもアメリカ政府の断定に疑問を投げかけているが、アメリカの有力メディアは基本的に朝鮮犯行説を宣伝、そこで働く「記者」や「編集者」の大半はそうした嘘を甘受していると言えるだろう。PSEのハッキングをめぐる騒動は、アメリカという国が嘘の上に成り立っていることを再確認させる出来事だと言える。PSEのケースに限らず、支配層にとって都合の良い嘘を広めているのが有力メディアだ。

 なぜアメリカの有力メディアは駄目なのかを論じる記事や著作は少なくない。例えば、ノーム・チョムスキーとエドワード・ハーマンが書いた『同意の製造』(Edward S. Herman & Noam Chomsky, "Manufacturing Consent," Pantheon, 1988)は構造的な問題を指摘、ウォーターゲート事件を調べた記者のひとり、カール・バーンスタインは1977年にローリング・ストーン誌で「CIAとメディア」という記事を書いている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は言うまでもなくウォール街の代弁紙。戦後、アメリカで始まった情報操作プロジェクト(一般に「モッキンバード」と呼ばれている)では、その中核にアレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズと一緒にワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムも含まれていた。

 このプロジェクトには他のメディア幹部も協力していた。CBSの社長だったウィリアム・ペイリー、タイム/ライフを発行していたヘンリー・ルース、ニューヨーク・タイムズ紙の発行人だったアーサー・シュルツバーガー、クリスチャン・サイエンス・モニターの編集者だったジョセフ・ハリソン、フォーチュンやライフの発行人だったC・D・ジャクソンなどの名前も挙がっている。一般にリベラルと見なされているニューヨーク・タイムズ紙やロサンゼルス・タイムズ紙なども体制派の新聞にすぎない。

 例えば、1996年にサンノゼ・マーキュリー紙の記者だったゲーリー・ウェッブはロサンゼルスへ大量に流れ込んでくるコカインとニカラグアの反革命ゲリラ「コントラ」との関係にメスを入れた連載記事「闇の同盟」を同紙に連載したのだが、コントラを手駒として使っていたCIAは怒る。そしてワシントン・ポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙、ロサンゼルス・タイムズ紙などがウェッブを激しく攻撃することになった。その際、自分たちが以前に書いた記事に反する主張も展開している。後にCIAは内部調査でウェッブの記事が正しかったことは確認されるが、ウェッブを攻撃したメディアは訂正も謝罪もしていない。

 こうしたアメリカのメディアがイラク戦の直前、好戦的な雰囲気を広げるために偽情報を伝えていた。中でも「活躍」していたのがニューヨーク・タイムズ紙のジュディス・ミラーだった。同じ頃にアメリカの有力メディアは、アメリカの巨大資本やベネズエラの傀儡に憎悪されていたウゴ・チャベスを中傷攻撃している。

 その後、そうした傾向はさらに強まり、リビアやシリアの体制転覆プロジェクトを本格化させるさいには「民主化」という幻影を広め、偽情報でムアンマル・アル・カダフィやバシャール・アル・アサドを悪魔化する大キャンペーンを展開している。この辺の事情は本ブログでも繰り返し、指摘してきた。

 今年に入ってからアメリカの好戦派はロシアのウラジミル・プーチンを偽情報で攻撃している。そのプロパガンダも有力メディアが実行している。この辺の事情も本ブログでは何度も書いてきた。

 おそらく、ソ連時代のプロパガンダ戦略の失敗を反省したのであろう、今のロシアは事実を前面に出してアメリカに対抗している。勿論、メディアの力は圧倒的に西側が優位なのだが、ロシアが発信する事実の力はアメリカを苦しめている。そこでロシアを「嘘の上に成り立っている」と主張する記者が西側の有力メディアにはいる。自分が言われたくないことを相手に投げかけるのは嘘つきの常套手段。

 アメリカではネオコン/シオニストをはじめとする好戦派は1991年にソ連が消滅した段階で自分たちが「冷戦」に勝利し、「唯一の超大国」になったと認識、潜在的ライバルを潰すという戦略を打ち出した。その戦略のベースになっているのが「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」(これについては何度も書いているので、今回は割愛する。)

フォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文 の中で、アメリカはロシアと中国の長距離核兵器を第1撃で破壊できると主張されている。ロシアや中国との核戦争で圧勝できるということだろうが、すでにそうした状況ではない。

 それにもかかわらず、独立国として振る舞うロシアや中国を軍事力で押さえ込もうとしているのがアメリカの好戦派。アメリカがウクライナをクーデターで乗っ取ったのもロシアとの戦争を視野に入れてのことだろうが、ロシアや中国は主権を守るため、アメリカの攻撃を受けて立つ決意を示している。12月26日にロシアで承認された新軍事教義はそのひとつのあらわれだ。

 以前から西側ではロシアがCIAの手先として動いているNED系のNGOのロシア国内における活動を認めていることの危険性が指摘されていたが、そうした団体への規制、監視も強めるだろう。当然の防衛策だ。「民主」とか「人道」というラベルに惑わされてはならない。こうした団体はCIAの道具にすぎないのだ。1980年代、ロナルド・レーガン政権が打ち出した「プロジェクト・デモクラシー」とは「民主」という看板を侵略に使うという宣言だった。





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最終更新日  2014.12.31 14:08:16


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