WikiLeaksのジュリアン・アッサンジはアメリカ当局と司法取引で合意し、ロンドンのスタンステッド空港で飛行機に乗り込み、オーストラリアへ向かったと伝えられている。
彼は2019年4月11日にロンドンのエクアドル大使館内でロンドン警視庁の捜査官に逮捕され、イギリス版グアンタナモ刑務所と言われているベルマーシュ刑務所に収監されていた。「国防情報を流布するための共謀」をアッサンジ側は認め、懲役5年の刑期を言い渡されたものの、ベルマーシュ刑務所に収監されていた5年間が算入されるので、自由の身になる。最終決定はアメリカ領である北マリアナ諸島の裁判所で言い渡される予定だという。
世界を支配するために反民主主義的なことを行ってきたWikiLeaksはアメリカの支配層にとっても目障りな存在だった。そのアッサンジを拘束することによってWikiLeaksの活動を抑え込み、さらに内部告発を抑え込み、記者や編集者を尻込みさせようとしたのだろう。
アッサンジ逮捕をアメリカの当局に決断させた要因のひとつは2010年の4月5日にWikiLeaksが公表した映像だろう。 2007年7月にバグダッドでロイターの特派員2名を含む非武装の十数名をアメリカ軍の軍用ヘリコプターAH-64アパッチが銃撃、射殺する様子を撮影した映像 だ。
攻撃された人びとが武装しているようには見えず、ヘリコプターの乗組員が武装集団と誤認したとは考えられない。勿論、戦闘はなかった。この事実を報道しなかったメディアはアメリカ軍が行った市民殺害の隠蔽に加担したことになる。
アッサンジを保護していたエクアドル大使館の内部でどのような動きがあるかを調べるため、大使館の警備を請け負ったUCグローバルSLのデイヴィッド・モラレスは建物内に盗聴器を設置し、アサンジらに関する機密事項をCIAへ報告していたことが判明している。
モラレスがCIAと連絡を取り合っていたと見られているサムスンの携帯電話は2019年9月、モラレスの自宅を警察が捜索した際に押収され、データに関する報告書がスペイン高等裁判所へ提出されたが、通信記録を含むデータの一部を提供しなかったと伝えられている。警察は重要な証拠を隠し、裁判を妨害したと言えるだろう。担当判事は警察当局に対し、同判事立ち会いのもと、携帯電話から直ちに全データを復元し、この事態を引き起こしたのが誰であるかを明らかにするよう命じた。この件でもアメリカ政府は追い詰められていたはずだ。
勿論、欧米の支配者たちに弾圧されたジャーナリストはアッサンジのほかにも少なくない。例えば、 ウクライナ東部のドンバスではドイツ人ジャーナリストのアリナ・リップ、フランス人ジャーナリストのアン-ローレ・ボンネル、カナダ人ジャーナリストのエバ・バートレット、フランスの有力メディアTF1やRFIのスタッフ、またロシアやイタリア人の記者らが取材していたが、彼らに対する西側政府の弾圧は厳しく、ドイツ人ジャーナリストのパトリック・バーブは職を失い、アリナ・リップは銀行口座を接収された。
ウクライナに住みながら同国のクーデター体制を取材していたチリ系アメリカ人ジャーナリストのゴンサロ・リラの場合、 2023年5月にウクライナの治安機関(SBU)に逮捕 され、収監されていたウクライナの刑務所で死亡した。10月中旬に左右の肺が肺炎を起こし、気胸、そして重度の浮腫を患ったのだが、刑務所は適切な治療を施さなかった。拷問の結果だともされている。
イギリスのロンドン警視庁は2019年4月11日、アッサンジをロンドンのエクアドル大使館の中で逮捕、ベルマーシュ刑務所で監禁、2022年4月20日にはウェストミンスター治安判事裁判所がアッサンジをアメリカへ引き渡すように命じている。
こうした傲慢なアメリカ支配層の行為はあらゆる分野で人びとの反感を呼び起こし、ウクライナではロシアに挑みかかって返り討ちにあい、ガザではイスラエルのパレスチナ人虐殺を支援して厳しく批判されている。ジョー・バイデン政権は苦境に陥ったのだ。11月の大統領選挙を前にして、同政権は問題を外部から持ち込みたくないと見られている。
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【 Sakurai’s Substack 】