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フェードル 作:ジャン・ラシーヌ 翻訳:岩切正一郎 演出:栗山民也 Bunkamura シアターコクーン 開演13:00 <キャスト> 大竹しのぶ…………フェードル(テゼの妻、ミノスとパジファエの娘) 平岳大………………イッポリット(テゼとアマゾーヌ女王アンティオーブの息子) 門脇麦………………アリシー(アテネ王家の血を引く娘) 谷田歩………………テラメーヌ(イッポリットの養育係) 斉藤まりえ…………パノープ(フェードルの側女) 藤井咲有里…………イスメーヌ(アリシーの相談相手) キムラ緑子…………エノーヌ(フェードルの乳母で相談相手) 今井清隆……………テゼ(エジェの息子、アテネの王) <あらすじ> 舞台は、ギリシャ・ペロポンネソス半島の町トレゼーヌ。行方不明となったアテネ王テゼ (今井清隆)を探すため息子イッポリット(平 岳大)は国を出ようとしていた。一方、テゼの 妻フェードル(大竹しのぶ)は病に陥っていた。心配した乳母のエノーヌ(キムラ緑子)が原因 をききだすと、夫の面影を残しつつ、夫には失われた若さと高潔さに輝く継子イッポリットへの 想いに身を焦がしていると白状する。 苦しみの末、フェードルは義理の息子に自分の恋心を打ち明ける。しかし、イッポリットの 心にあるのはテゼに反逆したアテネ王族の娘アリシー(門脇 麦)。イッポリットはフェードルの 気持ちを拒絶する。そんな中、テゼが突然帰還して・・・※公式サイトより ★舞台「フェードル」オフィシャルHP http://www.phedre.jp/ こういう「誰一人幸せになれない」話、好きです。 ぶっちゃけ、どんなストーリーかと問われたら『ある女が自分の異父兄を殺した男の後妻になり、義理の息子に”死ぬほど”恋をする。息子に意中の人がいるとは知らず、夫の死の報を信じ、胸中を告白するが拒絶されてしまう。しかも息子の相手は夫を裏切った一族の娘!そこへ死んだはずの夫まで帰ってきてしまい、さぁ!どうする?』……という話。ようは、ドロドロです。 禁断の恋に身を焦がしつつも理性で自らを律する継母。夫の生死の報に素の女の顔と妻の顔が入れ替わり翻弄される心。呪われた血筋ゆえの運命を受け入れつつも抗い、最期は自ら命を絶つ……なんというか、人間、女の抱く情や業の全てが凝縮された、濃い舞台だった。ギリシャ神話を題材にしているためか、フェードル以外の登場人物以外は死の場面は描かれず、演者によって語られた。唯一”舞台上で”絶命したフェードルの断末魔の叫び(呻き)は、この世の終わりかってくらい凄まじかった。役が憑依した演技は、大竹しのぶの真骨頂ですね。凄い。 ちなみにフェードルの母パジファエはポセイドンに呪いをかけられ、雄牛と交わって牛頭人身のミノタウロスを産む。フェードルとテゼとの出会いは、テゼがフェードルの異父兄弟であるミノタウロスを殺すべくミノアに来た時という因縁。 しかし、初演が1677年って驚きですね。340年前に書かれた内容が今もって観客を惹きつけるなんて。愛憎はいつの時代も普遍的なテーマということでしょうか。にほんブログ村
2017.04.27
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「鱈々」 作:李康白(イ・ガンペク) 演出:栗山民也 <出演> ジャーン……………………藤原竜也 キーム………………………山本裕典 ミス・ダーリン……………中村ゆり トラック運転手……………木場勝己 <あらすじ> 二人の男は長い間、倉庫で働き、倉庫の中で共に暮らしてきた。 ジャーン(藤原竜也)とキーム(山本裕典)。 彼らの仕事は箱を指示通りに管理するだけの単調な毎日。 箱の中身は知らない。 ジャーンは、与えられた仕事を完全にこなすことが、自分が価値ある存在だと確認できる唯一の 方法と信じ、ひたすら仕事に励む。 一方キームは単調な生活に嫌気がさし、適当に働き、夜は外で酒を飲み女と遊ぶ。 ジャーンはキームを家族のように想って世話を焼くがキームはそれが気に入らない。 そんなある日、キームの遊び相手、ミス・ダーリン(中村ゆり)、さらにトラック運転手である 彼女の父(木場勝己)が倉庫に現れ、二人の日常に変化が訪れる。 二人は、倉庫での暮らしを、このまま続けることができるのか。 ※ホリプロ「鱈々」公演ぺージより転載 何となく、倉庫=現代社会(または現実に見えている世界)、箱=与えられた仕事(人生で担う役割)と解釈しながら観ました。物流システムの管理が行き届いた大きな倉庫もあれば、この物語の舞台のようにたった2人の人間の手で管理できる小さな場末の倉庫もあります。この小さな世界のささやかな日常に幸せを見いだすジャーンとは対照的に、現実に嫌気ばかりで外の世界に憧れるキーム。 こういう設定は必ず結末は悲劇だよな……と思っていたら、案の定。切ないねぇ ジャーンのキームに対する想いは、BLというより「オカン」的な愛情に近い気がしました。 しかし、あらためて藤原竜也は天才の舞台人だと思いました。34歳にしてあの透明感が出せるとは。元々童顔ではあるけれど、全身から放つピュアなオーラ(表現が安っぽいけど他に言葉が見つからない)が年齢を経ても衰えない(役柄によって出せる)のは凄いことだわ。 とりあえず、ざっと。にほんブログ村
2016.10.16
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ホリプロ+こまつ座 「木の上の軍隊」 原案:井上ひさし 作 :蓬莱竜太 演出:栗山民也 出演:藤原竜也 山西惇 片平なぎさ Bunkamuraシアターコクーン (鑑賞1回目)4/14(土)開演13:00 こども劇場のYさん、Oさんと (鑑賞2回目)4/21(土)開演13:30 娘のキッコロと 2010年4月に他界した井上ひさしが、亡くなる直前まで執筆しようとしていた「木の上の軍隊」は、井上氏の急逝により幻の作品となりました。それは、戦争が終わったのを知らぬまま、2年もの間、ガジュマルの木の上で生活をした2人の日本兵の物語。この実在するエピソードをもとに、若手作家の蓬莱竜太が新たな戯曲として書き下ろし、栗山民也が演出を手掛けたオマージュ作品です。 感想。(ネタバレあります) 会場に入り、まず圧倒されるのは舞台奥中央の大きなガジュマルの木。奥に向かって傾斜しており、見ると所々に「穴」と枝のような「支柱」とロープ状のもの…おそらくはガジュマルの根か寄生植物の蔓であろう…があり、ここが今作品の舞台だとわかります。体力を要する舞台になりますね、これは。 沖縄地方の衣裳を纏った片平なぎさの存在感が、あたたかくて美しい。作品の語り部でもあるのだけど、ガジュマルの木の精のよう。舞台上手にはヴィオラ奏者の女性。効果音以外の「音」は、すべてヴィオラの生演奏でした。 「お国のために」勇ましく振る舞う上官(山西惇)は、日本が敗戦する事を知っていた。新兵(藤原竜也)は、ただ上官を(というより”国”を)信じ、銃剣の手入れを怠らない。置かれた立場も境遇も対照的な2人が、木の上で2年間も暮らし続ける。その中で見えてくる、さまざまな矛盾。そして葛藤。 「軍は島を救うために来た」と信じて疑わず、自分に信頼を寄せてくる新兵の無邪気さが、上官の神経を苛立たせ、時に殺意さえ生む。それはおそらく、国や軍という力に抗うことが許されず、体裁や恥でがんじがらめに縛られた自分自身とあまりに対照的だからか。上官は無自覚だが、嫉妬心もあったかもしれない(←これは私の想像ね)。さらに、自分自身がそんな純粋な青年を「騙している」ことへの後ろめたさか。 ただ、哀しいかな。この2人はついにお互いを理解することのないまま”終戦”を迎えることになります。 舞台終盤、ついに真実を知ってしまった後の2人の会話は、一言たりとも聞き逃せません。というか、全ての台詞が突き刺さってきます。新兵の笑いとも泣きともとれる…慟哭は、胸が苦しくなりました。まるで今の日本、世界の閉塞感そのものなんだもの。 「守られているものに怯え、怯えながら、すがり、すがりながら、憎み、憎みながら、信じるんです…もう、ぐちゃぐちゃなんです。」 3.11後、あらためて政治に関心を向け、とくに戦後の日米関係を理解しようとしている私には、この台詞が痛くてたまりません。そういう意味でも、「よくぞ上演してくれました!」と拍手を送りました。にほんブログ村
2013.04.21
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【こまつ座九十五回公演】 キネマの天地 作:井上ひさし 演出:栗山民也 紀伊国屋サザンシアター 開演13:30 <配役> 立花かず子…………麻実れい 徳川駒子……………三田和代 滝沢菊江……………秋山菜津子 田中小春……………大和田美帆 小倉虎吉朗…………浅野和之 尾上竹之助…………木場勝己 島田健二郎…………古河耕史(あらすじ) 一九三五年、日本映画華やかなりし頃、築地東京劇場の裸舞台に、小倉虎吉郎監督に呼ばれて集められた銀幕のスター女優、立花かず子、徳川駒子、滝沢菊江、田中小春。自分こそが日本映画界を背負っていると確信する女優たちである。ただ顔を合わせると口から出るのは、お互いを牽制しあう皮肉たっぷりの言葉と自慢話。そして興味あるのは自分のアップの数と台詞の量。 スター女優たちは監督の次回超特作『諏訪峠』の話と思っていたが、出演依頼されたのは去年好評を博した舞台『豚草物語』の再演話、しかもこの場で稽古まで始めようとする監督に、しぶしぶ稽古につきあう女優たちであったが、そこには小倉による思惑があった。 実は一年前『豚草物語』の上演時、彼の妻であり出演女優であった松井チエ子が舞台上で頓死したのである。死後見つかった彼女の日記には「わたしはK.T.に殺される」と記されていた。 殺人? 犯人はこの中にいる? うだつがあがらない万年下積役者を刑事に仕立て、松井チエ子殺人事件真犯人追及劇『豚草物語』の幕が開く。 ※こまつ座オフシャルサイトより転載 女優たちのプライドを懸けた「言葉」の応酬には笑わずにいられません。以前「夏の夜の夢」で、ターコさん(麻実さん)は実は喜劇役者なのでは?と思ったのだけど、今回コレを観て確信したわ。エレガントで天然な笑いを生み出す才能がすばらしいですね(笑)。「舞台女優魂」あふれる菊枝は、秋山菜津子さんの地?迫力があって良かったです。この人って本当に舞台女優なんだなぁ…と感じました。 ありきたりの感想だけど、井上ひさし氏の並々ならぬ芝居への愛情を感じる作品でした。全ての役者さんにブラボー!です。いいお芝居を観られて幸せです。★こまつ座「キネマの天地」公演ページhttp://www.komatsuza.co.jp/contents/performance/2011/05/post-15.htmlにほんブログ村
2011.09.29
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【こまつ座&ホリプロ公演・紀伊國屋書店提携】 井上ひさし追悼公演 『黙阿弥オペラ』 スタッフ、キャストは黙阿弥オペラ(1)と同じ。 紀伊國屋サザンシアター 開演13:30 2度目の黙阿弥。今日は子ども劇場の鑑賞仲間Y田さんと鑑賞。Y田さんとは6月のマシュー白鳥以来、しょっちゅう何かを観に行っており、お互いに「また逢っちゃったわね」と苦笑い 今日もやはり最も心に響いたのは、オペラ狂言の上演に難色を示す新七の台詞。芝居とは、そこに集う人々(観客)が、どれほどまでに今日の芝居を楽しみに毎日暮らしてきたのか(例:1年でたった1日の悦びのためなら、残りの364日の辛い日々も耐えられる)、その「おもい」があってこそ成り立つもの。 新七の生世話物(きぜわもの)芝居は、庶民の暮らしの悲喜こもごもを生々しく映し出すものだからこそ、観る者はそこに等身大の己を投影し共感し、感動できるんです。そこへ政府の命令とはいえ、いきなり「オペラ」とは如何に。西洋かぶれのオペラを観たいと思う者がどれだけいるのか?本当にそれがお客のためと言えるのか? 新七の苦悩が、今の日本の政治や日常生活の諸々とリンクして色々と考えさせられました。あと、御恩送りの精神についてもね。国民の大多数は豊かな生活ができて、気付いたら世界一の長寿国(最近のNEWSでは、それもいささか怪しいが)になっても、日本人は大切な事を忘れつつある…そんな危機感さえ感じます。 普段からハスキーボイス気味の熊谷真実さんのお声が、喉の酷使(?)からくる嗄れでさらにハスキーになっており、所々聴き取り辛かったのが残念。長丁場の公演ですが、できる限り養生して最後まで頑張って欲しいですねぇ。※感想は後日追記しますにほんブログ村
2010.08.08
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【こまつ座&ホリプロ公演・紀伊國屋書店提携】 井上ひさし追悼公演 『黙阿弥オペラ』 作…………井上ひさし 演出………栗山民也 音楽………宇野誠一郎 美術………石井強司 照明………服部 基 音響………深川定次/秦 大介 衣裳………富原守武 殺陣………國井正廣 歌唱指導…伊藤和美 演出助手…田中麻衣子 舞台監督…三上 司 紀伊國屋サザンシアター 開演13:30 <ひと>※登場順 とら(71)…………熊谷真実 河北新七(38)……吉田鋼太郎 五郎蔵(27)………藤原竜也 円八(23)…………大鷹明良 久次(18)…………松田洋治 及川孝之進(30)…北村有起哉 おせん( 4)………内田 慈 おみつ(27)………熊谷真実 陳青年 (不祥)……朴 勝哲 こまつ座「黙阿弥オペラ」は、今回で再々再演になるの…かな?私自身は初見でした。 物語の舞台は維新前後の江戸。縁あって、とあるさびれた小さな蕎麦屋に集まってしまった(?)男たちと蕎麦屋の女将が繰広げる、涙と笑いの人情物語。なんかね、「芝居を楽しむってぇのは、こういうことだぁね!」と、理屈抜きで妙にさわやかな満足感を得た3時間半でした。(途中休憩15分込み) 小規模シアターで豪華キャストが大熱演というだけでも満足なんですが、やはり台本、台詞の妙でしょうか。一言一言が胸に迫るんですよね。とくに終盤の新七の台詞には、現代の日本に生きる私たちにも強く、深く染み入るものがありました。井上氏からのメッセージでもあり今作品のキーワード「御恩送り」は、現代の世相や日常の様々な事柄とリンクします。ただ楽しいだけでなく、根っこの部分ではものすごく大切な事を伝えているんですよね。後日もう一回観るので、再度よーく反芻し、私自身の中に落とし込みたいと思います。 単純に楽しむところは…とら婆さん@熊谷真実の、べらんめぇ調超絶マシンガントークが痛快!藤原竜也君ファンとしては、ボロボロの浮浪者から始まり、ちょんまげ、いなせなざんぎり頭…と色んな竜也君が見られて眼福です(笑) ★こまつ座HP「黙阿弥オペラ」http://www.komatsuza.co.jp/contents/performance/index.htmlにほんブログ村
2010.07.29
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【わらび座】 ミュージカル 火の鳥 鳳凰編 原作:手塚治虫 演出:栗山民也 脚本:斎藤雅文 音楽:甲斐正人 美術:妹尾河童 衣裳:樋口 藍 新宿文化センター大ホール 開演14:00 <主要キャスト> 我王:パク・トンハ[東宝芸能] 茜丸:戎本みろ 速魚:椿 千代/佐藤明日香(Wキャスト) ブチ:今泉由香[M.T.プロジェクト] 橘諸兄:岡村雄三 藤原仲麻呂:安達和平 吉備真備:平野進一 良弁:本間識章 ミカド:飯野裕子 火の鳥(声):新妻聖子★わらび座オフィシャルhttp://www.warabi.jp/ 原作は言わずと知れた手塚治虫の「火の鳥 鳳凰編」です。火の鳥そのものは出てくるのか?と興味津々(ある意味、不安)でしたが、女性の透き通る美声とまばゆく輝く赤い光で表現され「実体」は見せず。よって、神秘的な存在感を示すには充分でした。 初演時から我王役で客演しているパク・トンハさんが群を抜いて素晴らしかったです。ヘヴィメタルバンドのボーカリスト並の絶唱に感動しました。音域が広いですねぇ。「エリザベート」のルドルフ役に抜擢された経歴にも納得します。わらび座の役者さん達の堅実な歌と踊りも好感が持てました。 こども劇場的な視点から観ると、一部の”お硬い”会員さんに少々抵抗感を抱かれそうな場面が少しありました(暴力的&お色気)が、作品の完成度も高いですし、幅広い年齢層で鑑賞できる点が良いと思いました。 例会企画部のご苦労さん会(&お楽しみ企画)を兼ねていたので、鑑賞前にイタリアンレストランで会食をしました。¥2,000のお財布にもお腹にも優しいコースでしたが、美味しかったですよ。 観賞後、会場の外に出た瞬間に携帯電話に着信が。ちょっと事情があるため正体を明かせませんが(大したことじゃないけど)、地元から1人で東京に出てきたそうで、せっかくの機会なので急遽会おうよ!と意気投合し、原宿で小一時間ほどお茶しました。 今夜、青山スパイラルホールでもうひと作品観る予定があり、それまで1人でどう時間を潰そうか悩んでいたので助かりました♪にほんブログ村
2010.02.20
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【赤坂ACTシアター オープニングシリーズ】 かもめ 作:アントン・チェーホフ 演出:栗山民也 翻訳:沼野充義 <キャスト> トレープレフ :藤原竜也 トリゴーリン :鹿賀丈史 ニーナ :美波 マーシャ :小島 聖 ドルン :中嶋しゅう シャムラーエフ :藤木 孝 ポリーナ :藤田弓子 メドベジェンコ :たかお 鷹 ソーリン :勝部演之 ヤーコフ :野口俊丞 メイド :二木咲子 料理人 :茶花健太 アルカージナ :麻美れい 去年観た栗山民也演出の「ロマンス」以来、チェーホフがプチマイブームなので今回の「かもめ」が非常に楽しみでした。↑でも書いたように、チェーホフはこの作品をあくまでも「喜劇」だと考えており、ベタベタな悲劇作品として認識されがちな「かもめ」を栗山氏がどう演出したのか興味津々です。 シンプルな舞台装置、美術の中で淡々と進行する芝居…印象は、荒涼とした大地と澄んだ空気の中で繰り広げられる人間達の愚かな悲喜劇。「可笑しゅうてやがて哀しき」…いや、「哀しゅうてやがて可笑しき」かもしれない。色々な感情が後からじわじわ来ます。何度か観るうちに深みにハマりそうな「スルメ的」な作品。(なんのこっちゃ) 主要登場人物の大半が、何かしらの不幸もしくは不満を抱いている時点で、まずハッピーエンドはあり得ない。しかも不幸や不満の元は自分自身なのに、それに気づかない。気づいても素直になれない。観ていて、なんでここでこの人が現れるかな…とか、なんでここでそういう事をこの人に言うかな…という「間の悪さ」や「無神経さ」を随所に感じるところも、俗っぽすぎてある意味ツボ。チェーホフが「これは喜劇だ」と言い張る(?)気持ちもわかる気がする。 余談ですが料理人役の茶花健太さんは、ついこの間子ども劇場で観た「あらしのよるに」 では、メイの友だちヤギの「ヤン」役で出演していましたね。劇場用の子ども向け作品でお馴染みの役者さんを一般(…という言い方も変かな?)の演劇作品で拝見するのも、違う一面を垣間みるようでなかなか楽しいです。 同作品で初代”うたうカエル”役の小森創介さんも以前メアリー・ステュアートでメアリーを狂信する野心家の青年を演じ、”カエル”を筆頭とする「対おこちゃま向け」の役柄とのギャップに唖然としつつもその演技力には、「さすがは役者やのぅ~」と感心したものです。※7/7加筆、修正
2008.06.26
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【こまつ座&シス・カンパニー公演】 ロマンス 作:井上ひさし 演出:栗山民也 世田谷パブリックシアター 開演 13:30 <配役> 大竹しのぶ:オリガ・クニッペル 松たか子:マリヤ・チェーホワ 段田安則:壮年チェーホフ 生瀬勝久:青年チェーホフ 井上芳雄:少年チェーホフ 木場勝己:晩年チェーホフ 後藤浩明:ピアノ演奏 チェーホフと言われれば、即「かもめ」「三人姉妹」「桜の園」などの作品が思い浮かびます。バレエ作品「三人姉妹」のイメージが強いせいか、チェーホフ=悲劇的なイメージを抱いていた私。ところがですね、今日「ロマンス」を観てそんなイメージは間違いだった!と知らされました。お恥ずかしい話ですが…終始目からウロコでした。 少年チェーホフが老人に変装してまで劇場通いして観たもの。それはボードビル。上演台本を書くことが愉しみだった少年チェーホフの願いは、ただ一つ。「生涯に1本でもいい。ボードビル作品が創りたい!」でした。貧しい家族を養うために医師になり毎日患者を診察しながらも、短編喜劇を投稿し芝居の世界でも頭角を現す青年チェーホフ。しかし彼の身体は結核に冒されてしまいます。一度は大失敗に終わった「かもめ」は、スタニスラフスキーとダンチェンコと出会うことによって、見事に甦り芝居の世界でのチェーホフの地位を確実なものとします。さらに彼にとって最高の女性、最高の表現者、チェーホフの「ミューズ」ともいえるオリガ・クニッペルとの出会い。闘病とこれらのドラマチックな出来ごとが同時進行で繰り広げられるドラマは、チェーホフ素人(恥)の私にはドキドキするほど新鮮でした。 しかし驚きはこれだけではありません。作品が次々に大成功し名声を得た壮年期も、そして死の間際までも、チェーホフは自分の作品が「台無しにされた」と怒るのです。なぜ?「三人姉妹」も「桜の園」も、チェーホフにとっては「喜劇であり、ボードビルですらある」のです。「私の愛しいボードビルをよくもあんな人情たらたらの悲劇にしやがったな」と、最後まで不満だったというから、こりゃもう驚きました。もっともとチェーホフが知りたい!と思わせた3時間でした。 さて、舞台の感想も少し。チェーホフ役は井上芳雄、生瀬勝久、段田安則、木場勝己の4人による一役芝居。少年期、青年期、壮年期、晩年のチェーホフ役を演じないときは別の人物を演じますが、観ている側の混乱もなく、それどころかまるでスイッチが切り替わるような「演じ分け」が観ていて楽しかったです。演じ分けと言えば、大竹しのぶはさすがでした。青年医師のチェーホフから金を巻き上げる?リューマチ患者の老婆は、掛け合い漫才のようで客席も大爆笑。金のために夫の死因を自殺ではなく他殺と書いてと懇願する14等官吏の妻とコケティッシュな魅力にあふれた新進女優オリガ(チェホフの妻となる)とは、同じ女優が演じたとは思えないほど鮮やかな変り身で魅せてくれました。いつ観ても素晴らしいのですが、今回あらためて大女優だなぁ…と再認識しました。この人が舞台に上がると空間が引き締まります。松たか子は、兄チェーホフを一生涯支える妹マリヤを時折オリガへの嫉妬心をも織り交ぜながら、清く強い女性像を貫き演じきりました。井上芳雄君(君付けさせて!)の伸びやかな歌声が耳に心地良かったです。どちらかと言えばミュージカルが苦手な私でも、この「ボードビル仕立て」の芝居は素直に楽しめました。 (余談) 遅筆で有名な井上ひさし氏。ネットで見た情報によれば、台本が完成したのは公演初日の2日前らしい。私が観たのは8/3から始まった公演の終盤だし、元々実力派の役者さん揃いなので不安要素も不満も何一つ感じませんでしたが、序盤の舞台はどうだったのでしょうか。★世田谷パブリックシアターHPhttp://setagaya-pt.jp/theater_info/2007/08/post_9.html
2007.09.22
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