つまずく石も縁の端くれ

つまずく石も縁の端くれ

2007年02月14日
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カテゴリ: 読書


高橋克彦は直木賞作の「緋い記憶」などのホラー小説や、「総門
谷」などの伝奇小説が好きで、ずっと読んできた作家。推理も
のを読んだのは「北斎殺人事件」に次いで2作目。

ところが、うかつなことにこの作家が、浮世絵の研究家である
ことは、この講談社文庫の中島河太郎の解説を読むまでまった
く知らなかった。

なるほど、だからこのデビュー作は、浮世絵へのオマージュと
なっているのかと深く納得。電車の中で読了した「写楽殺人事
件」をカバンにしまい、そんなことを考えながら、ふと立ち寄
った古本屋で、同じく講談社文庫の「浮世絵鑑賞事典」と「広
重殺人事件」を発見。何と「浮世絵鑑賞事典」は杉浦日向子の
解説付ではないか。双方合わせて210円と超お買い得だった。
浮世絵をマイブームにしようと思ったとたん、不思議といろい
ろ繋がってくる。

さて、「写楽殺人事件」。前半は、写楽の正体を追う主人公の物
語となっている。著者の架空の世界ではあるが、緻密な歴史背
景など、まったくもって説得力のある展開になっている。

後半は現在の殺人事件が絡んだミステリーとなっている。贋作
が絡んだ事件で、その手口なども興味深く、うーんと感心して
しまう。また部下の手柄を横取りする上司などよくある話だが、
そんな事態に陥った主人公の無念さなどにも共感できる。

ただ、前半と後半とでは、ストーリーの質が、まったく異なっ
ているのだが、このあたりは、やはり続編の「北斎殺人事件」
の方が、浮世絵と事件が密接に結びついて、巧みなストーリー
展開になっていたと思う。

この本では、浮世絵の研究界が「版画至上主義派」と「肉筆画
至上主義派」に分裂しているという前提条件がある。現実の学
会がそうなっているのかどうかは知らないが、なるほど、双方
の言い分もそれぞれ納得でき、自分の浮世絵鑑賞態度の参考に
もなった。

冒頭の写楽の作とされた獅子の絵。どうも写楽というと人物画を
思い浮かべ、獅子とは結びつかなかったのが、違和感に残った。





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最終更新日  2007年02月14日 19時14分55秒
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Re:写楽殺人事件  高橋克彦  
るる さん
面白そう!
今度捜して読んでみたいです
そして古本屋バンザイ!
私も先日、TATEとクリムトの本を買いました。会社近くでこの勢い、神田に行こうかと目論み中(笑) (2007年02月15日 07時44分01秒)

Re:写楽殺人事件  高橋克彦(02/14)  
mashenka  さん
数年前に読みましたが、なかなか面白かったです。
事件そのものより、写楽の謎を追っていく過程が。

その頃はまだ、日本美術に今ほど目覚めてなくて、
浮世絵は広重をちょこっと見るくらいだったので、
写楽の謎だけでも、読んでてぐんぐん引き込まれました。

古本屋の抽選とか、美術研究者たちの社会の裏側とか、
古文書の偽造とか、なんだかそういうちょっとしたエピソードや背景なども
面白く興味深かったことを覚えています。

そうですね、前半と後半ずいぶん違ってましたね、
「北斎殺人事件」のほうが巧みでしたか、
そちらも読んでみようかなあ。
(2007年02月15日 23時07分39秒)

Re:写楽殺人事件  高橋克彦(02/14)  
poco-mom  さん
高橋さんは博覧狂気的な方で趣味と実益をかねた小説という気がします。
一冊の本として読んだことはなくて、オール読物や小説現代で読ませてもらってます。 (2007年02月15日 23時51分01秒)

るるさん  
一村雨  さん
浮世絵鑑賞事典って、絶版になっていたので
ラッキーでした。 (2007年02月16日 11時34分20秒)

mashenkaさん  
一村雨  さん
今、勢いで広重殺人事件を読み始めました。
冒頭からショックな事件があって、写楽、北斎と
読んできた身には、哀しい思いがしました。
(2007年02月16日 11時36分03秒)

poco-momさん  
一村雨  さん
私はやはり、この作家はホラーがいちばん好きです。
かもし出す雰囲気が、粘りつくような感じで
いいです。 (2007年02月16日 11時37分26秒)

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