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Jan 22, 2006
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カテゴリ:  視聴レポート
1月22日、この日は待ちに待ったコンサートの日。そう、「第15回ショパン国際ピアノコンクール入賞者によるコンサート with ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団」日本ツアーの東京公演の日である。しかし、前日に見舞った関東の雪は、都内でも8年ぶりの大雪となり、本当に行けるのだろうか、と頭の中は不安でいっぱいだった。

ところが22日は、思わず笑顔がこぼれてしまいたくなるような青空が広がり、そんな不安も一気に解消だ。というわけで、電車を乗り継いで、本日の会場である「東京オペラシティコンサートホール」に向かった。最寄りの初台駅から連絡通路を歩けばすぐにオペラシティに入ることが出来る、という実に便利な場所ゆえ、方向音痴の私もこれならば迷子になることもない。安心安心。

13時過ぎにホール入口に着くと、既にぽつぽつと人が集まろうとしていた。そしてそれは時間の経過と共にふくれあがり、開場時間である13時30分には入口付近は、人の嵐であった。あぁ、やはりこれだけ多くの人たちがショパンコンクールに注目していたのだな、と実に感慨深い。金曜日の神奈川公演は女性が多かったという話を聞いたが、この日は日曜日ということもあってか、男性の姿もかなり目立つ。

■ロビーでは

ロビーでは、ヤマハ銀座店からの出張販売コーナーが数カ所にわたって設置されており、1月21日にビクターから発売になったばかりのショパンコンクールのライブCDや、入賞者たちがこれまで世に出しているCDなどがズラリと並んでいる。また、月刊ショパンの2月増刊号として「ショパンコンクール総集編」なる本もちょうどタイミング良く発売になったのか、CDと共に売れ行きも良い。

勿論、本日のコンサートプログラムや、ショパンコンクールinASIAで見かけた卓上カレンダー、ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団のCDなども置いてあり、いやはや、各販売コーナーには黒山の人だかりである。

ついつい空気にのまれて、何か買わずにはいられない、というのは私だけでなかった、人々の嵐を見ながら確信するばかりであった。

それでは本日演奏された曲目を一気にご紹介!




関本昌平氏による演奏
・ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11
<<アンコール>>
・バッハ:フランス組曲第6番ホ長調 BWV817から「サラバンド」

~15分間休憩~

山本貴志氏による演奏
・ショパン:ノクターン 第16番 変ホ長調 Op.55-2
・ショパン:スケルツォ第4番 ホ長調 Op.54
<<アンコール>>
・ショパン:エチュード 嬰ハ短調 Op.10-4

イム・ドンヒョク氏による演奏
・ショパン:ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 Op.21
<<アンコール>>
・韓国ドラマ「冬のソナタ」から「初めて」

~15分間休憩~

ラファウ・ブレハッチ氏による演奏
・ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11
<<アンコール>>
・ショパン:ワルツ 第7番 嬰ハ短調 Op.64-2
・ショパン:マズルカ 第34番 ハ長調 Op.56-2
・ショパン:ワルツ 第6番 変ニ長調 Op.64-1「小犬のワルツ」



■演奏に心を傾ける3時間あまりのひととき

開演14時、ホールの客席が暗くなり、いよいよ始まる。その時の胸の高まりといったら、それはもうどんな言葉でも言い表せないだろう。管弦楽団の奏者たちがステージ上に着席し、チューニングを終えると、さぁいよいよ第1奏者の登場だ。

・関本昌平氏~冷静ながら歌心を大切にした演奏を~

トップバッターは、コンクール4位入賞の関本氏。彼が演奏するのは、「ピアノ協奏曲第1番」。コンクールのインターネット視聴で聴いた時よりも、歌い方がとても伸びやかに感じられる。それでもあくまでもクールに弾きこなすというのは、彼のスタイルなのだろうか。ただ、以前聴いた時には多彩に音色を使い分けるイメージがあったのだが、この日は起伏はあるのに音色的には全体的に印象が薄かったのは、あぁ、私の耳が久々の生音をきちんと聴き取れてなかったせいか。

アンコールは、ショパンが愛したバッハをチョイス。しかも、思わず私がニンマリした「フランス組曲」である。第6番サラバンドを奏でる関本氏は、一本、スッと筋が通った凛々しい演奏であった。

・山本貴志氏~強烈!山本節 エチュードOp.10-4をありがとう!~

15分の休憩後、プログラムでは2番手はイム・ドンヒョク氏のはずであったが、順番が入れ替わり、コンクール4位入賞の山本氏による演奏となった。彼はオーケストラとの共演ではなく、独奏の曲を2曲披露である。まず1曲目は「ノクターン第16番」Op.55-2、長調なのにとても切ないこの美しいノクターンを、山本氏は実にどっぷりと歌いあげる。ピアノという楽器と身体が一体化した、あの独特の奏法も勿論健在、まるでひとつひとつ音色が全身から生み出されるかのごとく、丹念に音楽をつくりあげている。そして2曲目は、「スケルツォ第4番」。この曲、スケルツォのなかでは技巧はもとより表現的に取り組みにくさを感じる曲だが、持ち前の表現力で楽しませてくれた。

そしてなんといっても感激したのは、アンコールの「エチュード 嬰ハ短調」Op.10-4。思わず飛び上がって踊りたくなる衝動を必死にこらえる私がそこにいた。おまけに速い速い!超速である。ネット中継を聴いていたときも「うわっ、速いっ!」と思ったが、世界的に超々速といわれる1分台には及ばぬものの、CDの時間表示をみると2分ジャスト。今回もバリッとキメてくれたのであった。

・イム・ドンヒョク氏~高い技術と表現力に改めて魅了される~

おや、山本氏の演奏の後でピアノ・チェンジである。そして作業が終わるとドヤドヤドヤと管弦楽団員たちの登場、さぁ、ここからは再び協奏曲の世界だ。3番目に登場するはコンクール第3位入賞のイム・ドンヒョク氏(韓国)。コンクールのネット中継を聴いていた時には、どことなく「オレ様」的な印象を感じたりもしたが、安定した技量と表現力にあふれている。

今日の演奏は「ピアノ協奏曲第2番」、コンクール本選でも演奏した曲である。メジャーな1番と違って2番を選択する人は少なく、本選でも2名のみだった。そんな2番を、イム・ドンヒョク氏は完全に自分の世界として消化しているといった印象を受ける。個人的には本選の演奏よりも数段印象が良い。独特な歌い回しも嫌みではなく、音には立体感もある。協奏曲の2番も良い曲なんだな、と思わせてくれてありがとう!と言いたい。

アンコールは、日本のファンへのサービス?なのか、なんとあの韓国ドラマ「冬のソナタ」から「初めて」を披露。私、このドラマを観ていないため、最初はよくわからなかったのだが、前席のほうで「あっ、冬ソナ!」と囁く声を聞いて、「あぁ、なるほど、そうきたか(笑)」と納得。既に韓国内では多くのファンをもつイム・ドンヒョク氏だが、これを機会に日本のファンもしっかりと獲得しそうな勢いである。

・ラファウ・ブレハッチ氏~謙虚さのなかに己の強き信念を感じる~

15分の休憩を経て、いよいよ最後はコンクール優勝者であるブレハッチ氏の演奏だ。コンクールでも常に聴衆を魅了し続けてきたブレハッチ氏は、ワルシャワの会場だけでなく、ネット中継を見守る世界じゅうの人をも心を惹きつけてしまったのではないだろうか。決して派手でなくどちらかといえば控え目な印象が強いのだが、音のひとつひとつが聴衆の心に直接語りかけてくる。

この日の演奏は「ピアノ協奏曲第1番」。ピアノにおけるテーマも決して自己陶酔することなく、常に音色は聴衆に向いている。2楽章になると、月夜の明かりのなかで"想い人"に語りかけているようにもきこえたり。3楽章では一気に華やいだ空気のなか、心地よいテンポ感で弾いていく。

アンコールは、ブレハッチ氏ならではの小品オンパレード。ピアノ学習者にはお馴染みの「ワルツ第7番」Op.64-2に始まり、得意の「マズルカ」Op.56-2、そして「子犬のワルツ」でしめくくった。まさか3曲もアンコールに応じてくれるとは思わなかったのだが、とにかくこの日の観客は皆、しぶとく食い下がり(笑)、拍手拍手の大攻撃である。

ブレハッチ氏は、なんといっても曲中の緩急の付け方が絶妙。アレを素人がマネするとただの演歌調になってしまうのだが、うまくバランスを整えて弾く技はブレハッチ氏ならではなのだろう。ブレハッチ氏の子犬のワルツならば、きっと子犬もせっせと回ってくれそうだが、私が弾けば間違いなく子犬暴走どころか、子犬脱走になること間違いない。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

さすがにこの日は、家に帰ってピアノに向かえなかった。折角のこの余韻を自分の音色で汚したくなかったから。素晴らしい演奏を聴いた後、それに触発されて自分もせっせとピアノに向かえればいいのだろうが、自分の音に自信がもてるようにならないと、なかなか出来そうもない。

それにしてもこの素晴らしいひとときに、演奏者の皆様に対し、感謝感謝である。

こうして音楽に間近で接すると、「あぁ、私も自分の確固たる演奏形態をみつけたい」と思うのである。私ったら、いまだそれが定まっていいないから、困ったものだ。

(最後に、あれこれ感想は書いたものの、これは私一個人が感じたものであって、人によっては異なる感想を持たれた方も当然多数いると思われるので、その点はご了承頂きたい。100人聴けば100通りの感想がある、ということで(笑))






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Last updated  Jan 23, 2006 03:23:29 PM
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