全7件 (7件中 1-7件目)
1
革で何かを作るためには、いろいろな専用道具が必要です。中にはホームセンターや100均で間に合うものもありますが、そうでないものも。例えば目打ち。目打ちは革に縫い穴をあける道具。歯を革に当てて、木槌などで叩いて穴を開けます(目打は印つけにとどめ、穴は別の道具であける方もいます)。価格はピンキリ。安くても結構使えるものもありますが、中には、目の幅が違う、穴が開かない、など、使いものにならない道具も売られているので注意が必要です。(これは300円くらいの安い菱目打ち。価格の割には穴も綺麗で刺さりもよい)フランスのBlanchard社 (エルメスが使ってるメーカー)など、1本2~3万円するものもありますが、個人的には、大同特殊鋼のSKD11かDC53などを使い、中国・香港・シンガポールあたりで職人が作っている1万円前後のものでも品質的な差異はないように思います。ところで、各々の目打ちって何が違うの?といえば、穴の形や角度。各メーカーでちょっとずつ異なります。(穴の違いがわかりやすい2種類の菱目打ち例)中には、見た目にはほぼ同じで違いがわからない穴があくものもありますが、糸を通してみると縫い目の印象が違います。どんな縫い目にしたいのかは、作り手の好みが大きく分かれるところ。お値段ではなく、作る人が思い描く理想の縫い目に近い目打が一番いい目打ち・・・ということになるんじゃないかと思います。(これは私が今使っているもので、中国の李喜超さんの菱目打ち)
2020年02月25日
12.貼り合わせ各パーツを立体に張り合わせます。革鞄は外縫いのものと内縫いのものがあり、外縫いはマチ部分の革パーツの縫い代が外側に出ているタイプ、内縫いはマチ部分の縫い代が内側にあるタイプです。(↓これは以前作った外縫いのバッグ。外縫いはカッチリしたタイプの物が多いです)外縫いと内縫いでは作り方の手順が違います。今回のボストンバッグは内縫いです。内縫いの場合、布の袋物などと同じく、中表で縫って裏返す方法で作ります。まずはマチ部分が外側に出るようパーツを貼り合わせます。そのままでは接着剤がのらないので、接着剤をのせる部分をヤスリで削って、糊付けします。13.縫い付け接着したところを糸で縫います。私の場合、全て手縫いです。今回は玉縁を入れているので、縫い代の厚みは漉いてあっても6ミリほどあります。指で一目ずつ玉縁の位置を確認し、菱ギリで穴を開けながら縫い進んでいきます。今回の革は床面(革の裏面)がとても綺麗でそのままスエードとして使えるため、床処理剤だけで裏地は付けずに作ってます。縫い終わった状態。縫い代はバイアステープでカバー。後はこれを裏返せば本体部分は完成・・・ですが、初心者さんが革の厚みや固さ、裏返し口の大きさを見誤って内縫いのものを作ると、え?!ウソ!裏返せないんだけど!!!!という悲劇が起こってしまう場合があります。裏返せなかった場合は何ともなりません。ムリに裏返そうとグイグイやっても、革を傷めるか壊れるのがオチです。潔く諦めて、分解→作り直しor再利用の方向で考えましょう。ちゃんと裏返せる時も、革に変なシワを入れてしまわないよう、時間をかけて左右均等に丁寧に裏返していきます。内縫いの鞄作りで一番ワクワクする瞬間です。その後、内側からカドや縫い代部分を整えて本体完成。金具で別に作っておいたハンドルをとりつけたら・・・じゃじゃ~ん!!お~!!試作のかいあって、思った通りのシルエットで出来上がりました。サイズ感はこんな感じ(え?想像以上にデカい?)夫婦で2泊3日の国内旅行想定のため、大きいサイズで作ってます。後は引手やネームタグなどの小物を作って完成です。おつきあいありがとうございました。
2020年02月22日
7.裁断型紙が出来たらいよいよ裁断です。革の裁断は、単純に型紙を端から置いていって切ればよいというわけではありません。革1枚はどこでも均一ではないく、お腹に近い部分は伸びやすいとか、首に近い部分はシワが目立つという特徴があります。また、傷一つ無いキレイな革などありえません。生きていれば、牛にしろ馬にしろ、小さなキズもできるし虫にも刺されます。革にも当然その跡が見られます。傷なども観察し、よくよく考えて型紙を配置していきます。型紙を配置できたら、ズレないように固定して形を写します。表面がなめらかな革であれば円錐を使って革に押し跡をつけるように線を引きますが、今回のようなシボ革はそれでは跡がつかないので、革用の銀ペンを使います。8.漉き革は厚みがあるので、そのままだと縫いあわせる部分の厚みがとても厚くなり、縫いにくく形も美しくないので、必要に応じて厚みを漉いて調整します。小さいものなら手で漉きますが、カバンのように大きいものだと、工業用漉き機を使うことが多いです。(↓私が使っているのは、ニッピー革漉き機NP-202)9.パーツ製作ハンドルや玉縁など、小さいパーツを作っていきます。ハンドルは、本体につけた時に形が安定するよう、ヒモなどでしばってクセを付けます。10.コバの処理革の切り口部分(コバ)の処理を行います。タンニンなめしの革であれば、水や薬剤をつけて擦り磨きますが、今回はクロムなめし革なのでそういった磨くだけの仕上げができず、染料を使います。手順としては、ヤスリがけ→下地材→磨き→コバ染料 を2~3度繰り返します。11.パーツ同士の貼り付けや縫い付け各パーツが出来上がり、コバの処理が終わったら、パーツごとに貼り付けや縫い付けを行います。ボズトンバッグの場合、パーツを合わせてまずは前胴、後胴、マチの3つの部分を作りあげます。(↓これはマチの部分)大きなパーツが出来上がったら、いよいよ組み立てです。続く。
2020年02月20日
設計図づくりが終わったら、いよいよ製作・・・とはなりません。では、続けましょう。4.ファスナーや金具を選ぶCADの設計図を作りながら、デザインの詳細を具体的に決めなければなりません。例えば持ち手一つとっても、持ち手の太さ、そのための芯材のサイズ、長さ、本体との取り付け部分の形状、その位置、取り付け方法、金具を使うのか否か、使う場合はその大きさは?色は?形は?ということで、革以外の部品もカタログなど見ながら検討していきます。今回、ファスナーはYKKエクセラを使うので、ファスナーの専門店に出向いて、テープやエレメントやサイズなど、オーダーでの用意になります。金具も金具屋さんに出向いて、実物を見ながら革の色やデザインとあうものを選びます。ファスナーテープにしろ、金具にしろ、とにかく種類が多いのでどれがベストなものか、本当に迷います。金具なども全て決まったら、試作に入ります。(YKKファスナーはテープの色が多く、ほぼ希望通りの色が探せます)5.試作CADデータを印刷してそのまま革に当てて切って作りはじめる・・・ようなことはしません。使う革と近い厚みと弾力のある資材を使い、型紙通りに試作品を作ります。試作を作りながら本番の制作手順を確認し、見落としていた部分があれば型紙を修正します。玉縁の出方や曲線部分などは、バッグの印象を決める重要な部分なので、本番で使う革を使ってシルエットを確認します。また、初めて作る形状の持ち手、ベルトなども、実際の革で部分的な試作をして、芯材や厚みなどの組合わせを確認していきます。試作が一発で決まることはそうそうありません。特にバッグはシルエットが全て(と思ってます)。頭の中で思い描いていたシルエットに出来上がらなければ、型紙を作り直します。各部分の辻褄をあわせるため、1箇所修正があっても、大抵は全体を手直しすることになります。新しい型紙で更に試作し、自分のイメージ通りになるまで修正を繰り返します。思い描いた通りのシルエットのものを作るには、試作の工程は外せません。特に柔らかなクロムなめし革の場合、試作をしない、またはおざなりにすると、思っていたのとは何か違うものができあがってしまいます(^^;)6.型紙作り試作ができたら、本番の型紙を作ります。私の場合、印刷した設計図の紙を厚紙に貼り付けカッターで切って作っていますが、本番の型紙にはサイズや他の部品との取り付け場所の印などの他、試作をした時に気づいた製作上の注意点なども書き込んでいきます。しっかりした試作をし、情報を書き込んだ型紙を作っておけば、次回以降はその型紙を使って同じものが作れます。ところで、ごくごくまれに「型紙をいただけませんか?」という問い合わせがありますが・・・お渡しすることはできません。自分オリジナルの型紙は、革のものづくり(レザークラフト)で最も重要な財産です。ご理解ください。続く。
2020年02月17日
今回から何回かにわけて、革のモノづくりはどういう感じで進めるの?というのを書いていきたいと思います。大抵の方が、財布なりカバンなり、何かしら革で出来たものを持ってると思います。が、レザークラフトが趣味という方以外は、それがどうやって出来上がってるのかの作業工程はご存じないと思います。え?・・・革切って縫ってるだけでしょ?と思ったそこのあなた!!いやまあ、端的に言えばそうなんだけど、それだと細かい所端折り過ぎだし、もう少し詳しく説明させて(゚∀゚)ということで、はじめたいと思います。1.構想を練る先に革を買ってから作るものを決めるという方もいるようですが、私の場合は先に作るものを決めてから革を選ぶのが普通です。作りたいもの(今回はボストンバッグ)を決めたら、サイズや大まかなシルエット、中の作りを決めます。デザインイメージがすぐに降ってくることもあれば、全然降ってこないことも。ボストンバッグは全然降ってこなかったですね・・・構想で全工程時間の7割くらい使いました(゚∀゚;) まあ、自分のものだったので時間かかっても平気でしたけど。ここで、大体の設計図を書いて用意する革のサイズを出しておきます。2.革を選ぶ作りたいもののシルエットや雰囲気にあう革を選びます。今回はドイツ・ペリンガー社のシュランケンカーフで(シュランケンカーフについては色々語りたいことがあるのですが、語ると超長くなるので割愛)。購入は在庫が豊富な海外の革屋さん。家にあるサンプル帳で大まかに色の系統を選び、LINEで連絡取りながらサンプルを店外の自然光で見せてもらって革選び。世の中色々便利になったものよ(いえ、今回は私が横着しただけ。次回はちゃんとお店まで行きます。実際自分の目で見て選ぶ方が楽しいし)。シュランケンカーフはとにかく色展開が豊富なので、選ぶの大変。(これはお店のサンプル。家のサンプルは、もっと小さいサイズ)LINEであ~だこ~だ言いながら色を選んだら、お店の人に在庫の中から良さそうな1枚を選んでもらいます。革の厚みを漉いてもらう場合(3mm厚の革を1.6mm厚にしてほしいとか)は、この段階でお願いします。(店の兄さん、今回も状態のいい革選んでくれてると信じてるよ(゚∀゚))サイズを確かめ、今回は1枚購入。革は1枚1枚サイズが違うし、お店によってはA4のような小さいサイズでも売ってくれるところがあります。キーホルダーを1個作るのに、牛1頭分の革を買う必要はありません。自分が作るものにあわせて、対応のあるお店や革のサイズを選びます。3.設計図作り1で書いといた大体の設計図を、きちんと作り上げます。紙に書いて設計図作ってる方も大勢いますが、私はCAD派です。ということで、今回はここまで。
2020年02月15日
どうせ作るのなら良い革を・・・というのが信条。なぜなら、良い革使ったほうが仕上がりがいいからです。この仕上がりというのは、革の質だけの話ではありません。制作上の質もあがります。よい革は大抵高価で、そんな高価な革では失敗できないという緊張感や慎重さが、製作に影響するからです。いやいや、安い材料であっても、真摯に向き合ってきちんと作るのが・・・ええ、理想はそうです。わかってます。しかし、人間というのはそう理想通りに気高く生きられるものではありません。どうしてもサボったり手を抜いたりしてしまう生き物です。安い材料で作ると、ほんの僅かに手抜きやいい加減さが出て、仕上がりに影響することがあります(毎度そうだというわけじゃないです。そうなる確率がどうしても少し上がるという話です)。なので、極力そういう可能性を排除するために、良い革を使ってます。まあ、良い革は作ってても気持ちがいいというのもありますが。イタリアの革、ドイツの革、フランスの革、日本の革・・・においといい手触りといい色彩といい、この革の素晴らしさを使う方にもわかってもらいたい。魅力を引き出したい。そう思える革だと、製作中の気合も変わります。好きなものには力が入りますよ。人間ですからね(^^;)なお、私は心を込めての製作はしていません。作ってる時、私の頭の中にあるのは目の前の革のことだけ。それだけで精一杯で、心を込めてる余裕がありません(゚∀゚;)写真:左から Waxy、プエブロ、ネメシス(ずべてイタリア・バダラッシカルロ社の牛革)
2020年02月15日
あれから10年も~この先10年も~(古い)ジュネーブ赴任から10年。色々あって今は革でものづくりをしています。色々って何さ?というと、一番は大病です。病気で死にかけましたさ(゚∀゚;)ええ、1ヶ月の入院&手術で生還しましたけどね。それで、入院中自分の人生色々考えたわけです。病気以外でも事故とか災害とか、人っていつ死ぬかわからない。それなら、退院後は本当に自分のやりたかったことをしたいと。自分がやりたいこと・・・やっぱりものづくりをしたい。 小学生の頃から手芸、木工、絵画・・・何か物を作ることが好きでした。人が作り上げたものを見るのも好き。それで可能なら美術館で働きたいなと学芸員の資格もとって(そもそも就職先が殆どなくて学芸員は断念)。そういや、その後就職したのもメーカーでした。何か作ることに関わりたくて。退院後に選んだのはレザークラフト。革を切ったり縫ったりして財布や鞄を作ること。きっかけは、自分が欲しいサイズ・機能の鞄がない!でした。ものづくりをしたいと思ってた矢先。財布や鞄を自分で作ることができないかと。さすがにいきなり鞄はムリでしたけどね(^^;)最初はキットから入って、少しずつ道具を集め、だんだん作れるものを増やし・・・そうこうするうちに、周りの方の勧めもあってついに販売まで。10年前は、まさか自分が革で財布や鞄作ってるなんて思ってもいませんでした。40代後半から新しいことを始めることができるなんて思ってもいませんでした。人生って本当にわからないものです。そして、やろうと思えば何歳からでも可能性は広がるのだと気づいた次第。
2020年02月11日
全7件 (7件中 1-7件目)
1