GOlaW(裏口)

2006/02/02
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カテゴリ: 西遊記
 ひび割れた大地に、実りはもたらされぬ。
 なれど極限でこそ、人の信頼は光り輝かん。


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 さて第三話に引き続き今回も、
『ですから、そこは言葉ではなくって場面で説明してくださいませ…(血涙)』
というツッコミに参りたいと思います。

 でもこうやってツッコミを入れていると、自分でも勉強になりますね。
 ドラマの設定を参考に、自分ならどう物語を展開するか。良いシミュレーションになります。
 それに反面教師の部分、良い部分などを吸収できる気がします。

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★1.渇きの描写

 昔、『太閤記──サルと呼ばれた男』という時代劇ドラマがありました。その中の描写の一つに、
「水攻めは暢気で平和な戦」
というものがありました。それを根拠にして、“秀吉は本当は、筋金入りの善人だった”という結論を導いていたんです。
 もちろん、『水攻め』は身体の弱い女子供から餓死していく、一番エグイ戦術です。

 そういった『現実の生臭さを消そうとして、かえってドラマの主題がスタッフですら見えなくなる』ところが、フジテレビにはありました。
 今回も同じ轍を踏んでいますね(頭痛)。


 ドラマの中の設定を見る限り、乾き死なない程度には飲料水の補給はできていたんでしょう。
 しかし。
“農業や漁業という食料生産手段を断たれて、どうやって街の人々は食べ物を手に入れていたのか?”
“水も無いのに、激辛専門店に入る奴などいるのか?”
“子供は大人よりも体における水の割合が多く、その分水分不足に弱い。水が満足に飲めない状況に耐えてこられたのか?”
 etc.の矛盾点が生まれてしまいます。
 それが、『水不足』のリアリティを減少させてしまいます。

 結果、『お水様』を更に小物に見せてしまった原因だと思います。
 実際のところ、『干ばつ』を引き起こすような外道はぶっ飛ばすべきだと、水耕農民の血を引く人間として思います(←おひおひっ)。

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★2.八戒の活躍シーンについて。

海鴎@DDさんのご指摘 にもあったのですが、
『最近、卑しいイメージが強すぎる』
というのは問題でしょう(おひっ!)。…原作に忠実になるのはいいんですけど、逆にオリジナリティを殺してどーするのかと訊きたいです(汗)。

 卑しい事と優しいことは別に共有できると思います。むしろ、
“卑しいからこそ、欲望や権力に負けてしまう人間の気持ちも理解してしまう”
“卑しいからこそ、食料や水の不足の深刻さも理解できてしまう”
という方向にキャラを立てることもできるんじゃないでしょうか。
 “弱いからこそ、弱い人間を理解し、許せる”というキャラクターは、やっぱり必要です。その立場なら、悟空とも更に絡みやすくなりますしね。

 何より『お人よし』(第二話)だったり、『猪族の貧困を救うと言い出す勇気もある』(第三話)キャラクターなんですよね。
 その辺りも同じぐらい立てると、月9版“八戒”としての魅力を放ち出すと思います。


 もちろん今回は悟浄がメインの話。八戒に大活躍をさせろ、とは言いません。
 ですが第二話の悟浄のように『他の二人の活躍に対し、伏線を張るようにさらりと魅せる』ことはできたと思います。

 例えば…。
“腕相撲大会に向かう途中、ご飯の匂いに気を取られた一瞬で迷子になる。
 慌てて追いつこうと裏路地に踏み込んだ途端、渇きに苦しむ子供達や、朽ち果てた漁具店、昼間から放心する漁師を目撃する。そして思わず事情を聞く”
というシーンを作り、八戒の腕相撲出場シーンを削ります。

 そうすると、悟浄が金魚姫を連れ出すと言い出すシーンに、八戒が積極的に絡むことができます。
 そして八戒の反論が、悟浄の苦悩を更に深めます。悟空の最後の啖呵にも説得力がでます。
 つまり八戒をこうやって活躍させる事で、ドラマをより盛り上げる事になるんです。

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★3.妖怪の生態・社会状況

 …これに対しては、ほんとに沢山の人が突っ込んでいらっしゃいますし、私も何度か触れていることです。
 今回も“八戒が人間との腕力比べに負けそうになった”り、“ロープによる絞首で死んでしまう”設定になっていたり。
 人間とほとんど変わらないんですよね。

 この辺りの描写がかなり弱すぎます。後出しどころか、その場限りの思いつきという感じになっちゃってるんです。

“人間社会において、妖怪は珍しがられているのか、差別されているのか、畏怖されているのか?”
“妖怪と人間の力関係は?”
“妖怪と人間の生態の違いは?”
 ドラマの根幹にも関わる世界観設定なので、その辺りをきちんと分かっていて欲しい(くどくどと説明しろ、という訳じゃないです。きちんと設定し、必要な時だけちゃんと矛盾しないように描写してほしい)。

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★4.水が街に戻るシーン

 …CGが丸分かりでもいいんです。岩に鍵をはめ、水が井戸から溢れ出し、河が元に戻るシーンが欲しかったですね。

 今回の事件で最も深刻であり、解決しなければならないのは、事件の犯人を捕まえることでも、犯人を処刑することでもありません。
 村人達が手を汚そうとまでした、その原因を取り除くこと。

 つまり、水を元に戻す事です。

 悟空たちが事件を完全に解決するための、最も重要な課程である『水を取り戻す』シーンを映して欲しかったです。
 ごっちんでからかうシーンを半分にして、このシーンを挿入することもできたはずです。

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★5.悟浄の過去

 ドラマのシリーズを通しての主題が『仲間』というのはすごく良く分かります。
 だからこそ『孤独』や『裏切りの切なさ』を丁寧に描く必要があります。

 『ゲド戦記』の序の詩ではありませんが、
“一つの事象は、対となる事象の中でこそ輝く”
ということです。

a. “悟浄が混世大王の配下であったころ、孤独であった事”
b. “紅葉の木の下で、絶望に打ちひしがれた事”
c. “金魚姫が、入れ替わりで紅葉の木の下にやってきていた事”
 これらは現在の
d. “悟浄が三蔵一行を大切に思っていること”
e. “金魚に信じてもらいたいという願い”
の対になる事象です。

 つまりa・b・cを印象付ける事で、d・eがより鮮明になるんです。

 ここで考えて欲しいのですが、人間って説明台詞よりも、ほんの30秒ほどの映像の方が印象が残る生き物なんですよ。

 ですから“長台詞をカット割を増やして魅せよう”とするよりも、“ほんの僅かでも情景を重ねて写す”方が、理に叶っているんです。
 例えば、
a.“仲間が犯罪の武勇伝を楽しげに語る焚き火から数メートル離れた岩陰。一人、悟浄が潜んでいる。
 と、金魚姫が胡瓜を持って現れる。
 冷たく全身で拒絶する悟浄”
b.“見事すぎる紅葉が一本、闇に浮かんでいる。と、葉が一枚落ちる。
「…九十九」
 絶望と諦めが無い混じった表情の悟浄、ゆっくりと立ち上がる”
c. “紅葉の元へ、姿を振り乱し、怪我をした金魚姫が現れる。辺りには人影は無い。金魚姫は今、まさに落ちた葉を掴み取る。”
 といったシーンを、会話に被せて映すだけでまったく変わってきます。
(むしろ、冒頭の“皿”話をカットし、a・bどちらかを道中の悟浄の夢として挿入し、後の説明台詞を削った方が良かったのでは?)

 このように過去の描写を更に強固にすることで、悟浄という一匹の妖怪の背景がしっかりと印象付けられ、視聴者にもリアルに感じられるようになります。
 同時に、“過去”と“現在”という対比が完成し、より“仲間”という主題も明確になるんです。

 ドラマの完成度を上げるためにも、必要な描写だったと思います。

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★6.金魚の真実

 “金魚が養子に出した子供と触れ合うシーン”“金魚の弱みを握る霊感大王”
 この二つのシーンを取り、説明会話と映像を重ねる必要性もありましたね。

 ここにたどり着くまで、ずっと処刑場で場面が固定しているんですよね(展開はどんどん変わっているのですが、どうしても言葉が中心になりがちです)。
 そればかりは撮り方を工夫しても変わらないと思います。
 だからここでは、過去を映像として重ね、視聴者にも気を引かせるべきです。

 それに、ただでさえ『金魚&悟浄』の会話で情報(嘘も含む)が溢れかえっています。
 だから真実を映像にする事で、視聴者に視覚的情報を与え、整理させる必要があります。

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 そのほか、今回特に気になったのが『ギャグとシリアスのメリハリをきちんとつけなかった』ことです。
 処刑シーンで悟浄がシリアスに語り出した途端、
「俺達は助けろ!」「一緒に死んでくれないの?!」
というやり取りが合ったのは特にまずかったかな。
 静かな場面での言動よりも、『真剣な場面でのやりとり』の方が視聴者には印象に残ります。…主題とは裏腹に悟浄と二人の仲が、“本当は悪い”印象を与えました(滝汗)。
 冒頭の悟空の「死んじゃうね!」の直後に三蔵に噴出させるのも、“見方によっては怖い意味になる”のでやめて欲しかったです…(汗)。

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 ただでさえ、撮影スケジュールが尋常ではなく押しているのも分かります。
 『撮影の順番が回を超えてバラバラ』&『回によって登場人物の性格が違う』などの修羅場と化しているのも、わかります。
 『カット割り』が多く、長回しよりも撮影に時間がかかるのも。

 しかし、シーンを省き、説明口調に頼りすぎる現状は、明らかにドラマにマイナスとなっています。
 過去を描くのは、物語やキャラクターに深みを出す重要なポイントです。だからこそ、ちゃんと『映像』というドラマの武器を加えて欲しいです。

 どうかスタッフの皆様、ご考慮ください。





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Last updated  2006/02/04 09:58:32 PM


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