GOlaW(裏口)

2007/07/17
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カテゴリ: 西遊記
 虎の民、かつて龍を克す。

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『からくりで妖怪って封印できるの?』
 映画を見た人ならば、必ず疑問に思う個所でしょう。

 “並の妖怪とまともに渡り合えてしまう姫君”、“物理的にあり得ない体積を封印する地下宮殿”…。
 それらの関係性から、どうしても先祖と『妖怪』の関係をうかがわせるのです。

 また他にも、『三蔵の出現の予言』など、意味ありげでありながら、由来の明かされぬ謎もあります。

 別に先祖の封印叙事詩を挿入しろ、というわけでありません。それは蛇足になるだけですから。
 しかし、上記の疑問に答えられる描写があると、私のような人間はさらに物語に引き込まれていたでしょう。

 映画は『何度でも見たい』と思えるような『引き』を作ってなんぼだと思います。
 その『引き』は映像の迫力やアクションだけでなく、謎や時代を超えたスケールといった『物語自身のからくり』も含まれるのではないでしょうか。

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A.からくりについて

 無論フィクションの中ですから、『なんちゃって科学』も存在可能でしょう。
 むしろ、物語を面白くするならどんどん取り入れていくべきだと思います。
(既存の『剣と魔法の世界』に『からくり』を登場させて盛り上げた作品といえば、アニメ『ドラゴンクエスト~勇者アベル伝説』などがあります)

 しかし、その『なんちゃって科学』の扱いが中途半端であるのが惜しいなぁ…と思うのです。

 特に留意すべきなのは『金角・銀角や龍と、からくり、そして人とのパワーバランス』描写、『妖術との描き分け』です。

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A-a.金角と銀角はなぜ、からくりを正面突破しなかったか


 このあたり、ノベライズで補完されていると思うのですが(…されていなかったらどうしよう。滝汗)、一番の疑問が
“なぜ、最初から無玉強奪に向かわなかったのか”
という点です。
 いちいち悟空達を巻き込まずとも、彼らは目的のものを手に入れられたのではと思うのです。

 これを『お話の中のお約束』として切り捨てるのは惜し過ぎます。これに上手く理由をつけ、さらに膨らませることこそ、観客を物語に乗せていくポイントとなるからです。



 この場合、二つの理由をつけられます。
1.無玉のある場所には、からくりによる封印がされていて、王族以外は通れない。
2.人間によるあがきを見るのは面白いと、妖怪兄弟が戯れに引っかき回す
の二点です。

 2の場合、もう少し分かりやすい描写が欲しかったですね。例えば、“遠見の水晶球で苦しんでいる姿を見、ほくそ笑む兄弟”といった描写です。
 古典的な展開ではありますが、これはこれで盛り上がります。描写方法などを凝らして、オリジナリティを求めてみるのも手でしたでしょう。

 そして1の場合です。
 これだと王族と一緒でなかった悟浄や八戒の登場、そして銀角の登場にも辻褄が合わなくなってしまいますね。
(特に悟浄・八戒の登場は、ドラマの時にも指摘された『移動速度の矛盾から生まれる、スケールの縮小』につながりかねず、描写は丁寧に描いて欲しかったです)
 ただ、悟浄や八戒の場合なら、『玲美が罠をほとんど踏破し、解除していた』という描写だけでこと足ります。

 そして銀角ならば、ちょっとした描写で辻褄を合せてしまえるのです。
 つまり、玲美に通信機や監視カメラに当たる道具、もしくは使い魔のようなものを付けておくのです。
 それは“遠見の水晶球”のようなものでも良し、“二枚貝の片割れのような形状の通信機”でも良し、あるいは“虫や目の形状の使い魔との視覚・聴覚の共有”でもよし。形状は脚本家のセンス次第です。

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A-b.からくりっぽくない演出

 残念ながら映画で醒めてしまうポイントは何箇所かありましたが、その中のひとつは
“玲美が血と合言葉で壁を崩すシーン”
でした。
 このまま罠が発動か…と思っていたら、単に祖父の家への道を開いただけ。肩すかしを食らいました。

むしろ呪術的なニュアンスを一切消し去ってしまうのもよかったと思うのです。


 この演出だけを取り出すなら悪くは無いんです。実際、『邪神の封印を解くのかな』などとすごくわくわくしましたから。
 ただ、物語の中にはめ込むと、異様に浮きあがっちゃうんですよ。

 『血液を使う』ことは一種の呪術的な要素(中華ならば法術や神呪)を連想させます。
 それならそれで『呪術も応用したからくり』とすればいいですし、物語後半の『龍の封印の解除』にもつながります。
 その場合なら、せめて『先祖が呪術を応用したからくりを応用して、龍を封印した』その瞬間の映像を10秒だけ流したり、他のからくりにも呪術的な匂いを付けてほしかった。

 その他のからくりが完全に機械的だったからこそ、浮き上がっていました。


 逆に『通路を開くのも機械的なからくり』に統一してしまうのも可能でした。
 このからくりをパンフレットの記述どおりに『単におじい様の趣味』とするなら、『音声&血液認識システム』はやめておくべきだったでしょう。
 古典的な手法を用いるならば、
“壁一面に描かれた文章、もしくは絵画。
 それを意味がある(言葉を、邪龍封印の伝承詩に出てくる順に、など)手順どおりに押しこんでいくと、中でからくりが発動。
 複雑な細工もののように、壁がパーツに分かれ、上下左右に行き来しながら道を開く”
といった演出があります。(これは後の邪龍の復活を、ヴィジュアル的にも印象付ける複線の張り方です)

 むしろ、機械的なものに統一しておいた方が良かったんじゃないかなぁ・・・などとも思うのです。

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B.強すぎる人間

 玲美の『人間としての脆弱さ』と『並の妖怪を圧倒する戦闘能力』は、やはりアンバランスだったのでは。
 彼女に戦闘能力を与えるのは、“ラスト間際の雑魚戦で、非戦闘員二人に活躍どころを割り振るのは難しい”という理由だとは想像できるのですが。

 しかし『人間≧妖怪』の構図を冒頭に提示してしまうのは、さすがにどうなのでしょうか。
 邪龍封印時でも、銀角に刺されていたにもかかわらず、支えられれば立てるほどに回復していましたから。
 最後の悟空の啖呵につながる重要な部分なので、そこは丁寧に描いて欲しかった。

 例えば、『悟空達と手合わせしたのち、力負けしたのか、こっそりと腕や足の痛みをこらえるシーン』を加えたりすると良かったかと。
 旅路の途中でスタミナの無さを強調していましたが、それは戦闘シーンでも一貫して描写してほしかったところです。

 雑魚戦の時には、少しだけ力負けをしているシーンがあったとは思いますが(このあたり、少々記憶が怪しいので確定できませんが)。
 しかし、玲美の虎拳はしなやかで力強すぎ、彼女の逞しさを強調した気もします(苦笑)。
 体が弱い戦士なら、むしろ『避けと最低限の受け、長期戦を避けるための、急所狙い』といった戦術を選んでほしかったかも(苦笑)。

 もう少し“雑魚戦でも力負けしたり、ギリギリでよけたときにひやりとしたり”する演出が欲しかったと思います。

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C.虎妖の血と、先祖の封印

 これは憶測ですが、虎の一族には虎妖の血が流れているように思えてなりません。
 玲美の戦闘力を考えると、そう思っちゃうんですよね。

 凛凛の両親の逆パターン、つまり人間の王族に妖怪が嫁いでしまい。その血が少しずつ弱まりながらも、時折先祖がえりのようによみがえってきたのかな。
 なんて、夢想します。

 あのからくりだけで龍が封印できたとはなかなか考えられません。
 封印にはだれか妖怪の協力か、神仏の加護による呪術的なものも施されているのではないでしょうか。


 未来にこの封印が解けることは想定され、予言が残されてます。
 この正確な予言を残した者は、やはり呪術的な能力を持っていたとしか考えられません。
 その者こそ、王族に協力した妖怪か、法師ではないかと思うのです。

 このあたり、さらっと触れると楽しかったのにな。
 歴史は繰り返す…というスケールの大きさを感じさせることもできたのですから。





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Last updated  2007/08/31 04:19:06 PM


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