音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar

Profile

bunakishike

bunakishike

2024年11月28日
XML
カテゴリ: クラシック音楽

宮田大とのセットが割安だったために聴きに行ったコンサート。
ヴァイオリンの郷古廉(ごうこ すなお)氏は1993年に宮城県多賀城市で生まれたヴァイオリニスト。
今年からNHK交響楽団のコンサートマスターになられたそうだ
コンサートマスターは3人いるが、正式なコンサートマスターは郷古氏だけ。
通常だともう一人いるのだが、そこは第1コンサートマスターを引退し特別コンサートマスターになられた篠崎さんとゲストコンサートマスターで賄っているのかもしれない。
郷古さんは映像でも観たことはなかったが、ディボール・ボルガ国際ヴァイオリンコンクール(1967年創設)で2013年に優勝されたそうだ。
このコンクールでは、日本人も何人か入賞しており、最近では3人の優勝者が出ている。
有名なところでは、前橋汀子が1969年に3位に入賞している。
また、カントロフやレーピンといった著名なヴァイオリニストも入賞しており、権威あるコンクールなのだろう。
特に目を引くのは、1位なしの年が何回かある点で、それだけ厳しい審査が行われているのかもしれない。

閑話休題

今回のプログラムはシューベルトや新ウィーン学派、ブゾーニと刺激的な曲が並ぶ興味深い内容であった。
おそらくシューベルト以外は盛岡で演奏されたことがほとんどないと思うので、筆者としては画期的なコンサートだと感じた。
ところで、筆者には、楽団で演奏している方のソロの演奏には、スケールが小さく主張が弱いという先入観がある。
それは、その人がたとえ一流の楽団に所属していても同じなのだが、郷古氏の演奏はのびのびとしており、個性を前面に押し出すことはないものの、適度な主張が繰り広げられ、大変好感を持った。
とにかくヴァイオリンの音が大変美しく、音楽も作為的でなく、スムーズに流れるものだ。
今回の演奏は新ウイーン学派やブゾーニの作品が大変良かった。
今回、シェーンベルクやウェーベルンの音楽を初めて生で耳にしたのだが、彼らの無調音楽には冷たさや無機質な印象はなく、むしろ血の通った、生き生きとした音楽に感じられたのには驚いた。
暖かく、肉付きのよいサウンドが彼らの音楽に適度な温もりを与えており、ホールの音の良さもそれを引き立てているように思う。
シェーンベルクの「幻想曲」Op.47は晩年の作品で、12音ではあるが冷たい感触は幾分和らいでいる。
彼らの演奏は起伏のはっきりした演奏で、ヴァイオリンもピアノも激しい表情を見せる場面があり大変面白い演奏だった。
筆者はこの曲を聴いたことがないと思っていたが、実はグールドの演奏を聴いたことがあったと気づいた。
ただし、その演奏は今回のような激しいものではなく、印象に残らなかったのも無理はないと感じた。
ウエーベルンも聞いたことがない筈で、この5分に満たない曲が大変面白い曲であることが分かった。
12音の作品であるが、感情の発露が感じられる激しい部分や、第1曲の救急車の音のようなフレーズが聞こえる部分など、興味深い曲だった。
技巧的には難しい曲だそうだが、そのような難しさは感じられず、ウエーベルンの冷徹さもあまり感じられなかった。
さすがに現代音楽に強みを持っているのも頷ける。
シューベルトはヴァイオリンを弱音重視で演奏しており、そのためかピアノとのバランスが悪く、ヴァイオリンが埋没気味になる場面が多かった。
ところが、Andantino と次の Allegro vivace のブリッジ部分から突然音量が上がり、それまでの弱音重視の音楽が演出だったことに気づかされた。
この幻想曲はシューベルト特有の親しみやすさが表れた曲であるが、彼らの演奏は優れているものの、あまり親しみやすさが感じられなかった。
ブゾーニのヴァイオリン・ソナタは、筆者がこれまで聴いたことのない曲だった。
少し前にフランチェスカ・デゴの新譜を入手していたが、未聴のままだったのも理由の一つ。
この演奏会の後でデゴの演奏を聴いてみたが、今回の演奏の方がメリハリがあり、くっきりとした演奏で優れているように感じた。
この曲はヴァイオリンに高い技術が要求される難曲で、難解なためあまり演奏される機会がない。
今回の演奏でも、つまらなくはないが、それほど良い曲だとは思わなかった。
長大な3楽章はエンディングの繰り返しが多く、いつまでたっても終わらない感じがして、不満を覚えた。
アンコールはバッハのソナタ。
それまでとは明らかに違った、ビブラートを殆ど使っていない。明るく温かみのあるサウンドで、心温まる時間を体験できたことが嬉しかった。
なお、最初にR.シュトラウスの歌劇「ダフネ」のモチーフを基に作られた「ダフネ練習曲」という無伴奏ヴァイオリンのための小品が演奏された。
ということで、現代曲に強い新しい感性を持つヴァイオリニスト、というのが現時点での筆者の感想だ。
今回は全く知らない演奏家だったが、新感覚の優れた演奏を聴くことができ、大変有意義な時間を過ごせた。
今後のさらなる活躍にも期待したい。




前半
1.R.シュトラウス:「ダフネ練習曲」
2.シェーンベルク:幻想曲 Op.47
3.シューベルト:幻想曲ハ長調D.934

後半

4.ウエーベルン:4つの小品Op.7
5.ブゾーニ:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ホ短調 Op.36a

アンコール

J.S.バッハ:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第3番 ホ長調 BWV1016より 第3楽章 Adagio ma non tanto

郷古廉(vn)
ホセ・ガイヤルド(p)

2024年11月23日 盛岡市民文化ホール 小ホール 8列15番で鑑賞





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2024年11月28日 13時41分18秒
コメント(0) | コメントを書く
[クラシック音楽] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: