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2022.03.17
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カテゴリ: こはく文庫
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2021年12月刊
くるみ舎・こはく文庫
著者:紅木ナツメさん

下町にある家族経営の小さな洋食屋・ナナハラで、花林はひとり、フロアを担当している。花林には大学生の妹・ミカがいたが、華やかな美貌を持つミカは、実家の手伝いなどせず美しく着飾ることばかりに精を出している。花林があかぎれだらけの手で必死に働いていても、お客さんも両親もそれが当然のことだと思っている。美しいミカにばかりちやほやして、花林のことなど眼中にないのだ。もうずっとそんな扱いだから、花林もそれが当然のことだと思っていた。そんなある日、洋食ナナハラに危機が迫る。地主が代替わりした途端、洋食ナナハラの建つ土地を売りに出してしまったのだ。突然のことに慌てる花林たちの前に現れたのは、常連客である若手実業家・黒田祥平。洋食ナナハラの土地を購入したという黒田は、「土地の代わりに娘さんと結婚させてほしい」と頭を下げる。両親もミカも花林も、ミカへの求婚だと信じて疑わない。しかし、黒田が手を差し伸べたのは、玉の輿に目の色を変えるミカではなく……。
​↑楽天ブックスより、あらすじ引用​

kindle unlimited会員向けの読み放題にて読了。
御曹司に見初められた定食屋の娘のシンデレラストーリーです。

ここからネタバレと感想。


下町の洋食屋ナナハラのフロア担当である花林は、家族からいいように使われていると自覚している。
よくある家族経営の店は花林の働きで持っているようなものなのだが、両親にその自覚は無い様だ。
掃除や下拵えまで担っている彼女は誰よりも働いていると言うのに、客の前でもグズだから時間がかかるのだと𠮟りつけることも少なくない。
そんな両親は今年十九歳になる次女のミカを溺愛しており、花林には人手が必要だと大学進学まで辞めさせたくせにミカには大学に通わせ好き勝手やらせている。
不公平だと思うこともあるけれど、地味な自分と違い美人な妹は誰からも可愛がられ、たまにフロアを手伝う彼女目当ての客も多くいる程なのだから、両親が妹にべったりなのは致し方ない事なのだ。

そんな花林にも店に出る楽しみはあった。
ミカがその容姿や立ち居振る舞いから「伯爵」と陰で呼んでいる黒田祥平の来店である。
表向きはライフコーディネーターという肩書でたまにテレビにも出演する彼は、本業は仲介業らしい。しかも、都内の一等地にいくつも土地家屋を所有する大金持ちだと、ネットでミカが調べたとかで母と盛り上がっていた。
働き詰めで出会いの機会が無い花林にとっては王子様のような存在であるが、高級レストランならともかくこんな下町の洋食屋に彼はわざわざ予約を入れて食べに来る。
今夜のおススメを聞かれて思わず花林が作ったシチューを薦めたら、随分と気に入ってくれたようだ。つい少し会話をしてしまったら父に𠮟りつけられ、慌てて仕事に戻った花林は黒田が何とも言えない表情で見ていたことに気付かなかった。

数日後、閉店した店内にて父から店を閉めねばならないと告げられた。
母は当然知っていたようだが、大学を中退する羽目になるのでは、とミカは大騒ぎであった。
何でも地主が亡くなり、跡を継いだ息子がこの周辺の土地を売りに出すつもりのようで、先日立ち退いてくれと打診があったらしい。
地主の好意で安く土地を借りていた父は、もし立ち退く際は一切の異議申し立て及び立ち退き費用も請求しないという書類に判を押しており、ここを畳んだら新たな場所に店を出す開店資金すら無い状況であった。珍しく叱られてはいたけれどミカが父を馬鹿扱いしたのも無理からぬことだ。
後先考えずに、目先の費用削減に飛びついた結果がこれである。
険悪な雰囲気が流れる中、黒田が訪ねて来た。

彼はこの近辺の土地が売りに出された事を本業のネットワークによって知ったらしく、余計なお世話と知りながら買い取ってくれたと言う。
今後は黒田が土地のオーナーになったので、退去する必要は無くなりこのまま営業してくれていいそうだ。何ともありがたい話ではあるが、いくら常連で彼が桁外れの金持ちでもさすがにここまでしてもらう義理は無い。
父が思い切って尋ねると、この店の味が気に入ってるのと、お嬢さんに妻になってほしいからだと答えた。土地を盾にするやり方になってしまったので断るのも自由だと、黒田は後日返事を聞きに来ると帰って行った。
両親とミカは大喜びであった。当然求婚されたのは次女の方であろうと、先ほどまでの険悪なムードはどこへやら、随分と楽しそうである。どちらにせよ、お話は受けるつもりのようで花林は自らの気持ちを押し殺し、妹を祝福するのだった。

あれから数日経ち、閉店時間を見計らって黒田が返事を聞きに来た。
両親は勿論お受けしますと喜色満面で答えたので、彼も一安心したようだ。
黒田は一番後ろにいた花林の前まで行くと跪き、自分の妻になってほしいと告げると、家族は寝耳に水だったようで猛然と反対して来た。
父などあからさまに花林がいなくなったら誰が掃除や下拵えをするんだ、と激昂している。
その言葉で、自分は安い賃金でこき使える使用人同然と思われているのを痛感した花林は黒田に連れて行ってくれと願い、着の身着のままの姿で店を後にした。

黒田は偶然見つけたあの店で花林を見初め、以来足繁く通っていた。
最近はスープ類を作ることを許されたという彼女は嬉しそうで、味の感想を言う際つい席に引き留めてしまった時もあったが、その度に彼女は両親に厳しく𠮟りつけられていた。グズだノロマだの漏れ聞こえてくる様は彼の方が胸を痛めたものだ。それにコーディネーターの立場で考えれば、いくら家族経営でも客にそういう場面を見せたり聞かせたりするのはよろしくないのだが、恐らく全く念頭にないのだろう。
接客だけでなく下拵えに掃除、開店&閉店準備全てが花林の仕事らしく、あの店は完全に彼女の努力で成り立っていた。こうして自分が連れ出した以上、早々に立ち行かなくなるのは目に見えていても、花林をいいようにこき使いながら感謝すらしないあの家に置いておきたくなかった。

黒田は軽井沢にある本宅へ花林を連れて行くと、使用人たちに彼女を妻として紹介した。
無論、まだ式も挙げていないし籍も入れていないがそのつもりでいろと、古参の者たちに示すためでもあった。
花林は黒田に恥をかかせないよう、教えを請うた先代から使えていると言うハウスキーパーの堀は彼女を見極めている節はあったものの、一週間もすると随分と打ち解けた。
旧家であるらしい黒田家の夫人になるのならば覚えることは山積みだ。必死に勉強をする花林を黒田は微笑ましく見ていたけれど、彼はキス以上のことは一切してこない。
式を挙げるまでは、と考えているのかもしれないが、態度で示してほしくもあった。

この邸に来て一ヶ月以上経ったある日、海外暮らしをしていたと言う、黒田の妹・麻里乃が兄の結婚を聞きつけ突如帰宅した。
どうやら、花林を財産目当ての性悪女と思っていたらしい。
だが、どうもそういうタイプではなく、何かと厳しい堀まで花林を気に入っているようで、自分の要らぬ心配だと麻里乃はすぐに理解した。
彼女は破天荒ではあるが、気のいい女性であった。瞬時に打ち解けて花林が嫁なら大歓迎だと応援され嬉しくなったものの、未だ自分に触れない黒田のことをつい彼女に愚痴ってしまったことから、花林は家出しろとアドバイスをされたのであった。

強引な麻里乃に押し切られ、碌に挨拶もしないまま家を飛び出してしまったことから一先ず実家に帰ることにした。
すると、入り口のドアには暫く休業の張り紙が。しかも仕事中のはずの黒田がミカと親し気に歩いているではないか。ショックを受けた花林は彼との別れを決意。
幼馴染の伝手でオーガニックレストランを営む夫婦の家に厄介になることにしたのだが、あっさり黒田に見つかり、その夜彼から実家で起こったこと含めての話を聞いた。

花林が去った後、黒田の予想通り店は立ち行かなくなってしまった。下働き全てを花林任せにしていたのもあるが、フロアの接客も彼女は上手く回していたようだ。
サービスが悪くなったと客足は次第に遠のき、間の悪いことに父が倒れてしまったのだと言う。
母にもメニューは作れるけれど、花林の抜けた穴は大きく休業を余儀なくされた。
黒田はあんな経緯で花林を連れ出してしまったので、責任を感じて仕事の合間にたまに顔を見せていたのだそうだ。母が病院に行ってしまうとミカ一人になってしまう為不安がっており、黒田がグループが経営しているホテルの一室を提供した。ミカを車で送ろうとしていたのを丁度花林が目にしてしまったらしい。

黒田はこの求婚のやり口がどうにも卑怯な気がして、花林を金で縛り付けているように思えて先に進めなかったそうだ。そんな彼に、花林はずっとあなたに憧れて恋をしていたのだと告げると二人は漸く結ばれたのだった。
春になり、黒田家の本宅「黒鹿毛邸」にて二人は式を挙げた。
その頃には父も全快し、憎まれ口をたたきながらも娘のウエディングドレス姿は満更でもないようだ。
店はすっかり寂れてしまったが、ミカが幼馴染と結婚し跡を継ぐつもりらしい。
その際はオーガニックカフェとして新たに立ち上げるべく、黒田に色々アドバイスをもらっていると聞く。
花林は家にいた頃よりずっと家族と仲良く話せていることを喜び、自分を連れ出してくれた黒田に感謝するのだった。


家族にいいように使われて、いなくなってからありがたみを感じると言うヒロインでした。
虐げられてたわけじゃないけど、地味に色々蓄積していきそうなので、多少強引にでもヒーローに連れ出されて良かったのかも。
家族経営なら尚更、一人だけでなく家族で公平に役割分担するべきだったよねぇ。
妹は最後までちゃっかりしていた印象。強かなのでカフェに改装する時は大金持ちの義兄であるヒーローに融資頼みそうである。

それにしても色々と時代錯誤なお話だったなぁ。
これが大正時代とか、昭和でも3~40年代なら色々納得も行ったんだけど、現在モノでこのノリはちょっと辛いです。
ヒーローとヒロインがどうにも、いつの時代の人?っぽさがあってストーリーに入り込めなかったのが残念。
大筋は決して悪くないんですけどね。

評価:★★★☆
ヒロインがかなりの自己否定型なので、苦手な方は読む際はお気をつけて。 ​​​





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最終更新日  2022.03.17 18:00:24
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