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2022.03.23
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カテゴリ: こはく文庫
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2020年9月刊
くるみ舎・こはく文庫
著者:佐倉紫さん
修道女見習いのイルゼのもとへ、ある日、謎の老婦人メグが訪ねてくる。持ち込まれたのは、女性を毛嫌いしている甥侯爵との見合い話。戸惑うイルゼだったが、これも修行のうちと修道院から送り出され、メグにエディヘルト侯爵と引き合わされた。当主のジークムントは女嫌いどころか人嫌いのようで、使用人も寄せつけず、大きな屋敷にたった一人で住んでいる。庭も部屋も荒れ放題。「結婚するつもりなどない」と断固拒絶する侯爵に、イルゼは修道院を磨き上げた経験から、埃をかぶった部屋が気になって仕方がない。それに食事は? 洗濯は? 私を花嫁候補ではなく、使用人として雇っていただけないか。イルゼの口をついたのはそんな言葉だった。もともと結婚願望はゼロのイルゼ。甲斐甲斐しく働く彼女はジークムントの心をほぐしていくが、ある日彼の秘密を知ってしまい……。
​    ​ ↑楽天ブックスより、あらすじ引用​

kindle unkimited会員向けの読み放題にて読了。
とある理由から女性不信になってしまった侯爵が修道女見習のヒロインと出会い、自分を取り戻していくお話です。

ここからネタバレと感想。

フォルマー伯爵家の七女であるイルゼが修道女見習になってかれこれ三年になる。
二十歳になったら修道の誓いを立て、そのまま修道女になるつもりだったのだが、ある日彼女の元に訪れた老婦人に請われて自分の甥の結婚相手になってほしいと頼まれた。
メグと名乗った夫人の話によれば、件の甥はエディハルト侯爵と言い、人間不信の上、特に女性が嫌いなのだそうだ。とは言え、侯爵家の当主がいつまでも独り身と言うのもどうかと心配した夫人は甥に数々の縁談話を持ち込んだのだがどれもお気に召さなかったらしく、困り果てていた。
そこであちこち相談しまわっていた所、噂を聞きつけたフォルマー伯爵が是非と娘のイルゼを推したのだと言う。
これまで積極的な令嬢ばかり送り込んできたから、イルゼの様に敬虔な女性の方が新鮮に映るだろうし気に入るかもしれない。取り敢えず会うだけでもと請われたイルゼは院長から何事も勉強との鶴の一声に後押しされ、メグと共にエディハルト侯爵邸に赴いた。

そしてやって来た屋敷は、家格同様何とも立派な作りであったが中も外も荒れ放題で驚いた。
馬車の中で聞いていた通り、人間不信を拗らせすぎてついには使用人全員解雇したと言うのは本当のようだ。この分では日々の洗濯やら食事はどうしているのやら。
伯母の来訪に渋々と言う風に現れたジークムント・エディハルト侯爵の第一印象は何とも「不機嫌そうな人」であった。傍らにイルゼがいたことからいつもの縁談だと予想がついたようで、結婚する気は無いので早々に連れて帰ってくれと伯母に告げた。跡継ぎの心配ならば親戚筋から養子をとればいいと言う持論らしいが、メグ夫人は納得が行かないようだ。言い合いに発展した二人の会話を遮り、イルゼは花嫁ではなく使用人としてここで雇ってくれと申し出たのだった。

フォルマー伯爵家は長らく財政難であった。なのに子沢山でイルゼの上には六人もの姉がいる。
貴族の結婚はとにかく金がかかり、嫁に出す際も持参金やら支度費用などどの家も工面するのは大変だろう。おかげでもう六人も嫁に出し伯爵家はすっからかんの状態だ。
なのにまだイルゼとすぐ下に妹も残っており、結婚願望の無いイルゼが口減らしも兼ねて修道院へ行った。本当は働きに出たかったけど、貴族の面子に拘る父に反対され泣く泣く諦めていたのだ。
でもこの引き籠り侯爵家の住み込みのメイドなら、そうそう顔見知りと会うこともないだろう。父にもまずバレないから堂々と働けるではないか。
メグは暫く思案していたが、お互いを知る切欠になるかもしれないとイルゼの提案を受け入れ、給金は弾むと約束してくれた。後に雇用契約など弁護士を寄越すと告げ、夫人は帰って行った。

程なくしてやって来た弁護士はアダムと名乗り、侯爵とは寄宿学校時代からの友人だそうだ。
ジークムントから提示された雇用条件として、彼の自室と書斎の出入りは固く禁じられた。何があっても念押しで厳しく行ってきたあたり、プライベート空間には例え掃除の為でも立ち入られたくないのかもしれない。それさえ守れば好きにしていいとのことで、案内されたイルゼの部屋は何と客間であった。
単に手入れが行き届かず使える部屋がここしかないとのことだが、多分彼なりの気遣いなのだろう。
その夜提供した夕食は庶民的なメニューだったが、随分とお気に召したようだ。

ここに来て十日ほど経った。一人なので掃除の範囲もそう広げられないものの、玄関ホール含めよく行き来する場所は綺麗なったと思う。溜まっていた洗濯物の大分片付いたが気になるのはやはりジークムントの私室と書斎だ。食事以外は出て来ないのを思うにさぞ中は酷い有様だと思うと片付けに行きたくてたまらない。それとなく掃除に行きたいと申し出たがきっぱり断られてしまった。
ならせめてたまには窓を開けて換気するよう言ってみたのだが・・・。
水仕事が続き手が荒れてしまったイルゼにわざわざ救急箱を持って来てくれたりと、結構打ち解けたように思えたのに、まだまだパーソナルスペースには立ち入らせて貰えないようである。

それから数日経ち廊下を掃除していたイルゼはジークムントの部屋のドアが開いているのに気が付いた。風が通り抜けて行ったことから言われた通りに換気する気になったのは良かった。
中は覗かないよう気を付けてその場を離れようとした所、レース編みのコースターらしきものが飛んできてつい拾い上げた。思いの外風が強かったのか次々と見事な出来栄えのレース編み小物がふんわりと飛んできて思わずドアを開けると、そこは手芸品に溢れていた。
もしやこれはジークムントのお手製か?
だが、間の悪いことに部屋を覗いていた姿を見られてしまい、案の定激昂した彼に出て行けと締め出されてしまった。

相当頭にきたらしく食事にすら出て来ず、もう二食も抜いている。
心配になって部屋まで持って行ったら、ワゴンごとひっくり返されてついにイルゼがキレた。
彼女は食べ物のありがたみを理路整然と捲し立て、手芸が趣味なのを知られたから何なのだと𠮟りつけると、予想外の反応だったようで暫く唖然としていたジークムントは素直に謝罪をしたのだった。
どうやら、この趣味に纏わることで何やら痛い目に合ったようである。
聞いてもらいたい気分なのだろう、彼は昔話を始めた。
そもそも彼が手芸を始めたのは母の死が切欠であったと言う。遺品の道具箱を捨てられず、つい母を真似て針を取ったら思いの外ハマってしまい、良い気分転換になると判った。
以来、手芸は密かな彼の楽しみになったのである。

だが、母に続き父も落馬事故で亡くなったことで、一人息子のジークムントが侯爵位を継ぐことになったのだが、彼はまだ十六歳だった。
直系がジークムントだけになったため親戚連中は彼に早々に結婚するよう薦め、彼らだけでなく他所からも数多く持ち寄られた縁談の中から彼はとある男爵令嬢を選んだ。
田舎育ちらしいその娘はよく笑い素朴な少女であったのだが、物珍しさもあってかジークムントは男爵令嬢にのめり込んだ。趣味のことも偶然知られてしまったけれど素敵な趣味だと言われて数少ない理解者だと更に舞い上がった彼は、親戚連中や友人達からあの娘は辞めておけと反対されても絶対に彼女と結婚すると言い張った。
だが、そんなある日ジークムントは彼女の真実を知ってしまったのである。
令嬢は彼の母親の宝石やドレスを持ち出し町で売っては金を得て愛人に貢ぎ、豪遊していたのだ。バレて開き直った彼女は手芸が趣味の男なんてまっぴらごめんと彼を罵り、後に窃盗と横領罪に問われ遠い修道院へ送られた。
友人たちは令嬢の本質に気付いていたのだろう、だからやめておけと忠告してくれたのに、舞い上がっていた自分は気付かなかった。親戚連中は若造が自分たちの言うことを聞かないからだと陰で嘲笑い、この頃から段々ジークムントは人間不信になっていた。優良物件らしい自分の元に寄って来る女性は皆爵位や財産目当ての者ばかり。やがて社交の場からも遠のいて行ったのだった。
話を聞き終わり、やはり手芸が趣味の男性を気持ち悪いとは思えないときっぱり告げたイルゼにジークムントは少し嬉しそうに見えた。

あれから吹っ切れたのか、ジークムントはイルゼの仕事を手伝い屋敷の掃除や庭の草むしりに精を出した。
ここに来てもう三ヶ月ほど経つ、二人の生活にも慣れた頃、メグ夫人が王宮舞踏会の招待状を持ってやって来た。国王主催なのでジークムントは出席不可避なためどうせならイルゼも連れて行けと言う。
社交界デビューをしてない彼女には良いデビュタントのチャンスだからと言われ、彼はドレスも仕立ててくれるつもりのようだ。これまでのせめてもの礼だと言われれば強固に断るのも失礼かと、イルゼはありがたくその申し出を受けた。
舞踏会当日、会場にはジークムントの友人達も出席していた。なんと国王陛下は彼らの同級生だそうで、今でも親しい間柄らしい。
何とかデビュタント記念のダンスを終え、空腹を満たすべく軽食コーナーに出向いたイルゼは、背後から久しぶりの登城で大勢に囲まれるジークムントに向けて「なんで戻って来たんだ」と不穏な呟きを耳にした。無論離れている彼には聞こえてるはずもないが、思わずすぐに立ち去ったその人影を追って行くと待ち伏せされていたようで、押し倒されてしまった。どうやら自分を乱暴しようとしているらしい。必死に抵抗をしていたらアダムと国王陛下が気付いたようで何とか助かったのだが、どさくさに紛れて逃がしてしまったようだ。
パニくって犯人の顔を見てなかったのが悔しいけれど、押し倒された際、何やらジークムントの趣味がどうたら言っていたような。もしかしてあの彼の女性不信になった件と関係してるのかもしれない。
どうもジークムントに一方ならぬ恨みを持っているようだが・・・。

その夜、思っていたよりもあの出来事はショックだったようで、取り乱してしまったイルゼを落ち着かせるためジークムントにキスされた彼女は猛然と彼を意識し始めた。
後日、彼の友人たちの策略により、ジークムントにプロポーズされた彼女はその申し出を受けるのだった。
当然メグ夫人は大喜びで、式の采配などは任せても良さそうだ。フォルマー伯爵家の面々は喜びより先に驚きが勝っていたようだが、今は祝福してくれている。
持参金は必要ないと彼が言ったこともあり胸を撫で下ろしているだろう。
さすがに屋敷もこのままには出来ないし、式の後のパーティーはここで行う予定の為使用人も三十人ほど雇い入れ着々と準備は進んでいる。

そんな中、恐らくあの男からであろう、結婚を止めろと脅迫状が届き、悪質だと憲兵隊に通報をしたのだが、ジークムント始めもう犯人の目星は付いているようだった。
ある罠を張り、炙り出された犯人はジークムントの友人たちの一人であるブライアンであった。
イルゼの証言と脅迫状にも趣味のことが示唆されていたため、アダムがあの男爵令嬢の身の回りを詳しく調べた所、ブライアンとの繋がりが浮かんだのだ。
ブライアンは友人たちの中で唯一下級貴族であったった為、内心コンプレックスを抱いていたのだが在学中にジークムントが侯爵位を継いだことでその妬みは彼一人に向かって行った。
そこで、知り合いの男爵令嬢が彼の婚約者に選ばれたと耳にしコンタクトを取ると、令嬢は自分に夢中になり彼の作戦に協力させたのである。
だが、目先の欲に染まり侯爵家の金品に手を付けて見つかり計画はおじゃん。
まあ引き籠ってくれただけでもいいかと思いきや、恋人のデビュタントに付き添って舞踏会に現れた彼はやはり人気者だった。

随分と自分勝手な理由で聞いていて呆れたがジークムントや残りの友人達も同じ気持ちだったらしい。当然国王もかつての旧友のやらかしたことに激怒しており、相応の報いを受けさせると言う。
何とも苦い出来事があったけれど、二人の式は予定通り執り行われた。
事件の顛末で知ったのだけれど、メグ夫人は国王の母で王太后だと発覚しイルゼは数々の無礼を思いかなり焦っていた。と言うことはジークムントは国王陛下の従兄弟になるわけか。
エラい家に嫁いでしまったなと思いつつ、二人はいつまでも仲睦まじく後に二男一女の子宝に恵まれた。老いても尚、おしどり夫婦であったようである。


流石はこの作家さん、ストーリーはすごく面白いんですが、一体ヒロインはあのヒーローのどこに惚れたんだろう。キスされて意識し始めてからくっつくまで早くて驚いたw
まあ、何か月も同居してれば情も湧くと言うことかな。
犯人は絶対友人のうちの一人だと思ってた。とは言え、目立ってたのはアダムだけだったんで、明かされる終盤まで一括りにされてたのを思うに、やはりどっちもページ数の兼ね合いか少々唐突感が否めず、そこだけ少し残念でした。
個人的に不器用なので手芸がプロ級の腕前らしいヒーローは尊敬してしまう。

評価:★★★★
つくづくページ数のせいで惜しいお話。 ​​​​





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最終更新日  2022.03.23 23:20:13
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