つきあたりの陳列室

つきあたりの陳列室

2005.04.13
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カテゴリ: Book
昨日訪れた,新しい書店の二階をあらためて訪問する.写真集のコーナーが異様に充実しているので,重点的に見て廻る.

「人間の大地 -労働- セバスティアン・サルガード写真展」(岩波書店)を見る.以前見たことのある表紙だった.ターバンを巻いた,四角い顔の数人の男が,無表情でカメラを見ている表紙.

油田で,真っ黒い原油まみれになっている男.
鉱山で,暴力的なほどに武骨で巨大な掘削機によじ登り,作業をしている男.
ほとんど(あるいは完全に)奴隷としか思えないような労働の風景.



見知らぬ世界の見知らぬ人たちの写真を見ると,
こういう人たちの生活の,こまごまとしたところばかりが知りたくなる.

どういうことが楽しみなのか,
どんな神を信じているのか,
どうやって結婚相手をさがし,
どう死ぬことが彼らの誇りなのか.

そういうディテールを知ることなしに,
なにか意味のある考えが浮かんでこない.

ただ,とにかく,くらくらめまいがするくらいまで
見つづけずにはいられない.
いろんな写真集をとっかえひっかえ,
世界中の混沌雑多なひとたちの笑顔,苦渋の顔,
服と踊りと肌と家と空の色とを見るのが好きなのだ.
この世界はいったいどうなってんだ?

この世界はごった煮の釜の中だ.
あっちでぐつぐついって煮詰まって焦げ付いてるかと思や,
こっちでは寂しくて寂しくて凍えてる.
昨日泣いたからすが,今日は狂喜乱舞してまぐわってるし,
いったい全体どうなってんだ?

どうもこうもないよな.
なにもかも,現実だろ?
あれも,これも,真実だ.
ささいなことも,大局も,
ぜんぶぜんぶ本当のことだ.
そこから出発しようぜ.
そう,自分に言い聞かせる.

この世界のあれこれを,
べつにまとめなくたっていいんだ.
理解できなくっていいんだ.
おれだって世界の裏の立派な服着た誰かに
理解してもらいたいなんて思って生きてるわけでもないもんな.

ただ,おれは知りたいだけなんだ.
地球の裏の連中が,どんな顔して笑って,
どんな服来て喜んだり泣いたり
恨んだり老いぼれたり死んだりしているかってことが.

そんで,そんな連中にもし会ったとき,
おれはお前を見たことあるぜって思えて,
相手が笑うと,自分も少し嬉しいって,
そう思えれば,いいと思っている.

とにかくそれまでは,自分の道を必死に歩くしか
ないんじゃないのか?
自分のことも満足にできないやつが,
他人の何かを手伝ってやれるのか?
やれるとしたら,まず自分の恋人とか家族とか
友人とか恩師とか,そういう連中にまず恩返しをして,
それでも余った力を,どこに振り向けるべきか
考えればいいんじゃないのか?

どうもこの考えは生煮えで,
ちょっと勢いだけで言っていて,
考えとも呼べない代物だけれど,
なんだかとてもしっくり来る物言いなので,
まちがってるにしろ,合ってるにしろ,
とりあえず書きとめておく次第であります.

気分を害された方は,ごめんなさい.





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Last updated  2005.04.14 00:44:54
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フィンち@ Re:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子 「人生のままならなさ」への強烈な疑問と,…
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