つきあたりの陳列室

つきあたりの陳列室

2009.07.11
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テーマ: 本日の1冊(3697)
カテゴリ: Book
(池澤夏樹編・世界文学全集 1-5,2008,河出書房新社)

『SFが読みたい! 2009』 で知りました。書店でも目立つ,あのカラフルな世界文学全集の1冊です。カバーはほぼ無地ですが,巨大な帯には絵画的なイラストが描かれ所有欲をそそります(買ってませんが)。

中でも本書のイラストは印象的です。二本足で立つ黒猫と紳士という非現実的な組み合わせは,まるでマグリット。その猫がばら撒くトランプが宙を舞う絵は,映画のCFみたいです。




まずはスターリン時代のロシア人作家というイメージとはかけ離れた,その作風に驚愕しました。奇妙な登場人物がごろごろ出てくるのに,ほとんど説明も無しにさくさく話を進めてくあたりなどは,キング以降の本格ホラーかサイバーパンクみたいです。

そして,悪人とも思えぬ人物が突如悲惨な死を迎える冒頭の場面は,ショッキングだけど劇的で,まるでキル・ビルか西島大介の漫画みたい。

序盤のイメージは,残酷,シニカル,不条理。でも,作者がかくも執拗に攻撃するものは,どうやら特権意識,虚栄,自己顕示とかいったものらしいので,そのへんが痛快なのです。



何度か差し挟まれるのが,ローマ帝国のユダヤ総督ピラトゥスによるヨシュア(イエス)の尋問と処刑の挿話です。これが本編とどう関わってくるのか,徐々に明らかにされていく仕掛けがめちゃくちゃ面白いです。遠藤周作『キリストの誕生』をもう一度読み返して復習します。

雨の日に読むのがしっくりくるような,酩酊にも似た重厚な読書感覚を味わってます。今まで読んだ中でも一番分厚い小説かもしれないけど,ジェットコースターみたいに手がとまらない,本気で面白いブンガクです。ガルシア・マルケスも読んでみたくなります。







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Last updated  2009.07.12 02:55:21
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inalennon @ Re[1]:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子(09/19) フィンちさん >この世は なんてままなら…
フィンち@ Re:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子 「人生のままならなさ」への強烈な疑問と,…
inalennon @ Re:4年はあっという間(03/04) ハオさん >バーチュー&モイヤー組見…
ハオ@ 4年はあっという間 バーチュー&モイヤー組見ました。 優雅…

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