映画一点豪華主義
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巷のライブドア・ショックですぐに頭に浮かんだ作品がありました。それがこの「大統領を作る男たち」。かつて、天下のNHKで二度ほど放送されました。TVのミニシリーズでここまで悪魔的なパワーに溢れた作品は、後にも先にもこの作品しか私は知りません。 演説中に何者かに狙撃され、重傷を負いながらも勇気ある演説をしたことで、一日にして英雄となった議員ファロン。彼を次期大統領選に利用しようと、政治家たちが策謀をはりめぐらせる。その背後で発生する謎の連続殺人事件に、定年間近のFBI捜査官マンクーソが挑戦する…というのがストーリー。全3回、正味4時間半超の大作です。 ストーリーだけを聞くと月並みな政治陰謀もののような印象ですが、全編“意地の悪い”描写のオン・パレード。口封じで殺された医者一家の死体から流れる血をプードルがペロペロ。それを見た若いFBI捜査官がすかさず嘔吐。このFBIの若造が、事件に関ってきたCIA捜査官の頭を誤って銃で撃ち飛ばしちゃうんですが、主人公の初老のFBI捜査官マンクーソは「どうせばれやしない、忘れろ」の一言で片づけてオシマイ。大量のキャラクターが、すべてゲームのコマのように扱われ、感情移入する間もなく次々の虫けらのように死んでゆきます。圧倒的なテンポの早さと、登場人物の一人が呟く“えげつない”政治の策略の数々が、逆に小気味よし。若い同僚を殺されてブチ切れたマンクーソが、「汚い手段には汚い反撃」とばかりに、思わず「うげ~」とうなりたくなるようなショッキングかつ鮮やかな手で、悪に鉄槌を下す姿には拍手確実! 正真正銘の、ポリティカル・サスペンスの大傑作です。一度観はじめたら、長丁場なのに途中でやめられなくなってしまうんです。しかも何度観ても飽きない。私はもう、毎年1回、これまでに10回以上は観てますね。 “一点豪華”は、ライブドア事件を想起させるストーリーの構成。開巻まもなく、演説中に狙撃されたファロン議員が、必死に立ち上がり、感動の演説を全米に説きます。これがネットワークのニュースで流れたことで、平凡な地方議員だったファロンの株が一気に上昇。一夜にして認知度100%。選挙を控えた大統領陣営は、ファロンを副大統領に指名すれば、再選は確実とばかり奔走します。しかし、最初の狙撃事件は、ファロン議員の側近が、副大統領指名まで見込んで知名度を上げるために仕組んだ、綿密な狂言。それをマンクーソが執念の捜査で白日のもとにさらす…。ジサクジエンで株(この作品では主に国民支持)をどんどん上げて、あげくに小細工がばれて大騒ぎ…という作品の構成が、ライブドア事件にオーバーラップしたというわけです。 ファロンは副大統領では満足せず、大統領との会談で自分が大統領選に立候補すると宣言します。あきれる現大統領に、補佐官が動じず一言。「ファロンはメディアが作り上げたヒーローだ。メディアが彼を潰すさ」 そのせりふ通りのことが、今まさにホリエモンに起こっているような気がするのは私だけでしょうか…。 かつて「疑惑の銃弾」という題名で、全3巻のビデオが発売されていました。原作小説は日本でも翻訳が出ていましたが、現在廃刊。こちらはドラマよりもさらにキツ~イ描写が満載です。古本屋で見つけたら即入手をお勧めします。余談ですが、このドラマの主人公マンクーソ捜査官がスピン・オフして「FBI特別捜査官」(TXで放映)という連ドラが誕生しました(でも連ドラのほうは、「大統領を作る男たち」のようなイッちゃってる展開はなく、地味な刑事ドラマで非常に残念)。1992年12月26日(土) NHKにて放映(再放送)246分監督:ジェフ・ブレックナー原作:スティーブ・ソーマー「大統領を作る男たち(上下)」(新潮社・絶版)脚本:スティーブ・ソーマーロバート・ロジア(瑳川哲郎)リンダ・コズラウスキー(笵文雀)ハリー・ハムリン(津嘉山正種)スチュアート・ホイットマン(久米明)ジョン・マホーニー(小林昭二)ロニー・コックス(家弓家正)ランス・ゲスト(原義康)ブライアン・トンプソン(谷口節)
2006/01/20
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