9月14日(土)
山桝忠恕 先生のイギリス滞在記
「東も東西も西」師弟友情通信 ―― (下)(103)
「ご難つづきの一週間」(20)
尤も、Oくんの手紙にも、「余分の御心配は御無用に」と書き添えてある。だから、「ホテルの予約まで誰がしてくれと頼んだか」と仰るかもしれないなァ。しかし、Oくんよ、このホテルは常に超満員であり、何日も前から予約しておかないと泊れないのです。しかも、某くんが辿り着くのは、昨夜おそくということでした。床の上にでも泊めてもらえるつもりで深夜に扉を叩き、床の上にさえも寝かせてもらえずに雨のロンドンの街を放浪しなければならないなんてことでは、少し可哀そうでしょう?なにぶんにも御到着の予定時刻が時刻だけに、こちらロンドン側としましては、そのようにでも取り計らうほかなかったのです。
しかも、平素に投資がしてあればこそ、こういう火急の申し入れにもかかわらずフロント嬢も部屋の工面をつけてくれたわけでした。もともとこの国のホテルというのは、サーヴィスがわるく融通のきかぬことを、なによりのモットーにしているらしく、ゼミナールの合宿所であるY温泉の旅館などとは、だいぶそのへんの事情に差がありますのヨ。あの旅館も、当ホテルと同じく「観光ホテル」を名乗ってはおられますがネ。
(つづく)
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