9月27日(金)
近藤芳美著「新しき短歌の規定」より(45)
岩波書店近藤芳美集第六巻「新しい短歌の規定」よりの転載です。
(注)表現を少し変えたり、省略したりしています。
「短歌の作り方に就て」(8) (1947・5)
(七)
「生活を歌え」吾々は一応狭く態度を限定してかかって行けばよいのではないでしょうか。かく狭い態度を、つきつめて行く先に、自ずからに新しい歌境は開けてくるのではないでしょうか。そうして、よい作家は、いろいろと自己の態度を説明して居るが結局この立場を実行して来たのではないでしょうか。
ともかくも、一応生活詠に集中する事により、吾々は歌を識別する眼だけは持ち得るでしょう。いかなる作品と言えども、生活から浮び上がった美しさなり詠嘆なりが、如何にしらじらしいものかと言うことが分かって来ます。
僕ははじめ歌の「作り方」風なもの言いを拒絶しながら、結局又「作り方」を説いてしまったようです。しかし何か方法はもたなければならないでしょう。もし僕の心中一片の宗匠根性があったなら、何よりも自ら鞭うたなければならないでしょう。しかし「生活をうたえ」「生活の立場から歌え」は之は僕らの覚悟であり、つづまりは作者としての決意の表明であります。自己の生活に迫真し、其処にある自己を摘出しようとする事は僕の決意であります。「作り方」かもしれないが同時に又僕自身にとってはぎりぎりの態度であります。(1947・5)
(つづく)
「作歌のヒント」永田和宏(抜粋:後藤)… 2024.11.16
近藤芳美著「新しき短歌の規定」より(9… 2024.11.16
短歌集(474) 折口春洋(8) 2024.11.16