◆ S判定(90%)やA判定(80%)の場合、志望校を変える必要は無いと思います
。もし、S判定やA判定が出た上で志望校を下げるのであれば、「最初からその模擬試験を受けなければ良かった」という話になります。仮に模試を受ける意味があったとして、「じゃあなんでその志望校を書いたの?A判定なのに下げるのだったら、最初からその下げた高校を第一志望欄に書けば良かったんじゃないの?」ということになります。
◆B判定(60%)は各ご家庭の判断でしょう。過去の塾生に関して言えば、B判定の場合、受けに行っている子が多いですし、受かっている子が多いです。しかし、これについては色々個人的な事情があるでしょうから、後ほど5つほど論点を整理しておきます。参考にしてください。
◆C判定(40%)
これについては本番まで伸びればまだまだ可能性はあります。実際、C判定で合格している塾生は、過去かなりの人数います。特にここ2年は多いです。
ただし、得意科目のない中でのC判定は危険です。同じC判定でも、1、2科目だけ極端に悪い科目があってのC判定ならば、その1,2科目を徹底して鍛えれば芽が出てきます。しかし、全科目バランス良くできていない場合(←変な日本語)は残り3週間での逆転は相当厳しいです。
◆中にはD判定(20%)やE判定(0%)で受験し合格をした子もいますが、さすがにE判定の場合はあまりおすすめしません。0%に何を掛け算しても0のままなので、普通に考えるならば玉砕する可能性が高いです。
◆模試の判定について、もう少し別の観点で説明します。
S判定とA判定の子には、次のような言葉を先生からかけることができます。すなわち、「 いつも通りやれば大丈夫だよ
」と。それがA判定以上の持つ意味です。
実はB判定の場合も、多くの子は合格します
。そういう意味で、S判定やA判定の子と同様に、「いつも通りやれば大丈夫だよ」という言葉をかけられそうなのですが、 話はそう単純ではありません
。なぜなら、 中学生はメンタルがまだ成長していないため、「いつも通りの力を出す」ということがそもそもできない
のです。具体的には「8割の力を出せれば良い方」と考えておいてください。
そうすると、次のような計算式が成り立ちます。
・S判定の子は、合格確率90%×0.8の力を発揮=72%
・A判定の子は、合格確率80%×0.8の力を発揮=64%
ということになり、かりに8割の力しか出せなくても(つまり5科目中1科目を大失敗しても)、まだ合格することになります。実際にはS判定の子は、「当日大失敗が1科目、小失敗が1科目」だと、ギリギリ合格する可能性が残されています。
ところが、B判定の子は
合格確率60%×0.8=48%
ということになり、いつも通りの力を出せなかった場合は、合格可能性が半々になってしまうのです。
つまり、 他の受験生の動向や平均点に左右される
ということです。
世の中には「 自分の力でどうにもならないこと
」と「 自力でどうにかできること
」の2つがあります
。一般に、前者に頭を悩ませることはあまり賢明なことではなく、後者に注力するのが常識的な戦略です。
ところが、B判定(合格可能性60%)というのは、 普段通りの力さえ発揮できれば、自力でどうにかできる範囲にはいられる
のですが、 ちょっと失敗したとたんに回りの環境に左右される側に席替えすることになる
のです。よく「 三流の人は環境に左右され、二流の人は環境に順応し、一流の人は環境を利用する。そして、超一流の人は環境を変える
」と言われますが、そういう意味で B判定の人は三流の範疇に入ってしまう危険性
があるということです。
以下に志望校決定にあたり5つの論点を列挙しておきます。
(論点1)ご家庭の経済的事情に関する本人の気持ち
・経済的に親に心配をかけたくない
・将来、弟妹の受験が控えていて、それを考えると都立にいきたい
・兄姉が私立高校や私立大学に通っているため、これ以上、親に負担をかけたくない
などご家庭の経済的事情について、親が思っている以上に子供が心配しているケースがあります。その不安点を聞いてあげてください。
(論点2)ご家庭の経済的事情に関する親の気持ち
◆上記1とは逆の話になります。子供が「経済的に親に迷惑をかけたくない。だから、絶対に都立にいかねばならない。そのため志望校を下げる」と考えるのと同じくらい、いや、もしかしてそれ以上に、親は「自分の経済的事情で子供が好きな学校を受けられない・子供が夢を諦めなければならない・子供が挑戦したいのに挑戦できない」ということを不憫に思っている場合も多いものです。その点も踏まえて各ご家庭で政治判断をすることになるでしょう。
※一方で、「お金ないんだから絶対都立いけ!」というご家庭もあります。但し、現在は一定の世帯年収以下であれば、私立高校の授業料は無償化されているので、最近は一時より減ってきたようにも感じます。
◆お金に関しては長期的視点も大切です。確かに、志望校のランクを下げて第2・第3志望の都立高校に入れば、授業料の面では安上がりになります。
しかし、「その入学した高校の授業では大学受験に対応できない」となると話が変わってきます。せっかく都立高校に入ったのに、学校の授業レベルが低かったり、入試問題を解ける先生が少なかったりすると、結局予備校や塾へ通うことになるため、塾代・予備校代で100万以上かかる計算になります。
予備校なしで「学校の授業だけで」医学部、国立大学にいきたいのなら自校作成の方が共通問題校よりも良いということも頭の片隅にいれておきたいです。
※ただし、自校作成校の生徒も予備校には行っている人は多いです。
(論点3)本人の気持ち
・合格を優先したい。落ちたくない。恥をかきたくない。プライドや友人の目を気にし、不合格になるのは嫌だ。
・中学受験で不合格になっているので、高校受験は結果が欲しい。
というように本人が「合格」にこだわっているケースがある一方で、
・高いところに挑戦したい。自分が受けたいところを受けたい。
・ 今までいろいろなことを我慢してきたのは志望校のため。だから諦めたくない。
というように「合格」より「チャレンジ」に重きを置く生徒もいます。これは性格的な違いや価値観の問題なので、どちらが正解というものでありません。自分が大切にしていることは何か、心の声に耳を傾け決めてください。
(論点4)親の気持ち
論点3と同様に
・落ちてほしくないという「転ばぬ先の杖タイプ」の親御さん
・中学受験で落ちているので、今回の高校受験では「合格」を手にしてほしいと考えている保護者の方
がいらっしゃる一方で
・子供には挑戦してもらいたい。仮に不合格でも受けたい学校で戦ってきてほしい
・高校受験は結果よりも過程が大切
・高校受験は人生に一回なので後悔してほしくない
というように考える保護者の方もいらっしゃいます。 よく親子間で話し合ってほしいと思います。
(論点5)数字上の判断その1:模試結果からの判断
・共通問題に関しては、通常倍率内(校長会調査の倍率+0.2ポイント程度)であれば「60%」あれば合格することが多いです。
・自校作成問題に関して言えば、問題の難易度や受験生のレベル、倍率などに左右されるので不確実な要素が多いです。
・苦手科目でも左右されます。
たとえば、数学が苦手な子がいます。その年の数学が難しければ、数学が苦手な子は不利になります。ところが、数学の難化がある一定のラインを超えると、今度は誰も解けなくなるので、数学が苦手な人(偏差値50)も得意な人(偏差値70)も平等に点数を落とします(以前、西高校で数学の平均点が20点台なんてこともありました。このレベルになると誰も解けません)。
こうした状態になると、数学が苦手な人が一転有利な受験となります。
(論点5)数字上の判断その2:過去問演習からの判断
自校作成校に関しては、模試結果よりも過去問の結果の方が重要です。
模試の結果が悪くても、過去問で取れているのならば受かることもある。and vice versa
<補足1>
以上、5つほどの論点を挙げてみました。あとは各自でご判断ください。
私が何かに悩んだときは(隙あらば自分語り)、「最悪の結果、最悪の事態になった場合に起こり得ること」を全て紙に書き出してみます。その上で、箇条書きで書き出した「最悪の事態」を受け入れる覚悟があるのなら、難しい道を選択し、そう決断したらもう振り返らないようにしています。
受験で言うならば、「勉強していって、その結果、その時点で合格しそうなところを受験する」という考えではなく、
「最初に志望校を決め、志望校合格のために必要なことを考え、あとは何が何でも実行する」という考えにシフトするということです。
<補足2>
もう一つ注意しなければならないことは、「都立」だけで考えないということです。
例えば、自校作成校を志望していた生徒が、その高校に入るのが難しいそうだから武蔵野北に下げるというケースがあります。もちろん、都立高校のことだけ考えればそれは合理的な判断と言えるかもしれません。しかし、よくよくその子の志望校をみてみると、錦城高校(特進科)の併願優遇を確保しています。大学受験を考えたら、武蔵野北よりも錦城高校の方が明らかにいいわけですから、ここで武蔵野北に下げるというのは我が家(石崎家)ではありえない選択です。いわゆる「合成の誤謬(ごびゅう)」と言われるものですが、しかし、上記論点1~4あたりはご家庭によって事情が異なるため、そこは生徒によって様々な選択がなされます。あとは各ご家庭でご判断ください。 当塾は基本的に志望校については何も言いません
。
<最後に>
今年の中3Aクラスの子達は、なかなか勉強をしない子が多く、定期試験勉強にばっかり力を入れている子が多かったように思います。入試当日点と内申点の比率は7対3なのですが、生徒の意識は1対9くらいになっていて、定期試験では5科目450から480点を取っているにもかかわらず、偏差値が50台という子が多い学年でした。
やる気の面でもなかなかエンジンがかからず、この一年間ずっと時速30キロくらいで走ってきた感があります。一度も高速道路(時速100キロ)に乗ることがないどころか、青梅街道・五日市街道・東八(時速60キロ)などの大通りに出ることもなく入試が終わりそうな子もいます。ずっと住宅街を時速30キロで走り、近所のスーパーに買いものに行く程度の勉強量でした。
塾に通わせてもらっておきながら勉強しないというのは親に対する裏切り行為であり、絶対にやってはいけないことです。親というのは子供が一生懸命やっている姿が好きなのです。運動会で一位になれなくてもいいのです。学芸会で主役になれなくてもいいのです。ただただ子供が一生懸命頑張っている姿が嬉しいのです。一生懸命頑張っていれば、皆さんが落ちたり失敗したりしても怒らないはずです。ところが、今年の中3生の多くは、その頑張るということができなかった。だから私は先日怒ったのです。「頑張らなくていい」という価値観が優勢になっている令和の時代ではありますが、しかし、せっかく受験するのですから、将来つらいことがあったときに、「受験の時あれだけ頑張れたのだから今回もきっと大丈夫」と心の支えになるような受験にしたいものです。
今日の最後に言いました「せめて最後の3週間だけでも頑張って、限界まで勉強することに挑戦しよう。そして、反省点を次の大学受験に生かせる良い受験にしましょう。良い結果は出ないかもしれないけど、良い受験にしよう」と。
都立入試まであと3週間です。もう時間はあまり残されていません。しかし、やるべきことをやるための時間はまだあります。だから疾風怒濤のごとく躍動し、君たちに吹くかもしれない「あとたった一度しか来ない追い風」にうまく乗ってほしいと思います。
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