空を見上げて

2007年05月21日
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テーマ: たわごと(26937)
カテゴリ: 「コラム」











いなくなる・・・・という事


最近、旦那の「お弁当つくり」が日課となった。

いや、普通の主婦なら当たり前なのだが、
ここ何年か、続いた乳児の授乳制度・・・により、
お弁当作り免除があったのだ。

うちの旦那は食品生産業。
朝が早い。
一番遅い日も朝の7時といえば、もう会社にいる。

朝一番の仕事は
お味噌汁作りとお弁当作り。
洗濯は後回し。

旦那は一足後で起き出すと、
必ずテレビをつける。
どうやら習慣のよう。

私は逆に誰かがつけないと、いつまでもテレビはつけない人だ。

そこでのお話。

朝早いと必然的にチャンネルは「ニュース」
もともと、「ニュース」が一番いいので、そこはいいのだが、
あまりにも
最近
トップニュースに
「死亡」「殺された」が多い。

もちろん、火事などの「致し方ない」事件もあるのだが、
(事件性のないものはそもそもニュースにはならない)
人がいろいろな理由で毎日消えている。

今日「火事でなくなった」というニュースを聞きながら、

『これが友人宅・・・だったら・・・・』

と少し、想像してみた。
そのとたん、すごい勢いで身震いがした。
すこし、泣きそうになった。

彼女に、もっとたくさん話がしたい。
まだまだ、たくさん話していたい。
関われた事の感謝もしていない。

想像なのに・・・である。



話は変わるが、私は父親がいない。
いない、というのは決して実母がシングルマザーではなく、
死別してしまったのだ。

父親が亡くなったのは、ちょうど私の二十歳の成人式の日。
忘れもしない。

くも膜下出血が死因である。

父はその日、普通に仕事に出かけてそのまま
倒れた。
厳密に言うとそれまでにいろいろあったのだが、それはここでは書かない。
ともかく、私が学校から帰り、父と対面したときは
もう父は私とは話ができない状態であった。


いわゆる脳死状態であった。


それから父は10日ほどだっただろうか?
この世から旅立った。
この10日間、そして、その後の何日かは
断片しか覚えていない。


あまりにも、早すぎる別れに私は、
父が居なくなったことがはじめ理解できなかった。

父が居ないのに、
父の肌着がいつまでもそこにあるのが不思議だった。
父の車が動かないのが不思議だった。

そのまま1年が過ぎ、
車検が来たとき、父の車が姿を消した。

そのまま、数年が過ぎ、
母が、ぽつぽつと父の衣類を整理し始めた。

もちろんその間も、たくさんの法事を行い、
お墓参りをし、父が居ないことをその都度、確認してはいたのだが、
母が父の衣類を整理し始めたとき、

本当に帰ってこないんだ。

と思った。

いつでもひょっこり父が帰ってくる気がしていたのかもしれない。

人が居なくなる、を初めて意識した瞬間だったかもしれない。



その後、私は医療系の職につき、
一人の女性と、出会った。
彼女は幼子を残し、天命を全うした。

彼女は『乳がん』だった。

死にたくない、死にたくない。と言い残し・・・

この話の詳細はここでは(これも)割愛するが、
私は彼女を忘れない。
一生忘れない。

私に『生きること』の大切さを教えてくれたのは彼女だったからだ。

彼女のうちにお線香を上げに行った。
本来は個人的にはそういうことはしない(してはいけない)のだが。

彼女はまだ、朝お台所をにぎわせていると、ご主人が言った。
いわゆる、霊現象・・・である。
私はそれでも、彼女の気持ちが痛いほどわかった。
その現象も少しも怖くはなかった。

彼女がこの世を去らねばならぬ時、どんなに未練だったであろう。
どんなに、わが子に思いを残したであろう。
どんなに『生きること』を切望したのであろう。
きっと私の稚拙な想像よりも、はるか超えているのであろう。



私は今、3児の母親になった。

自分は?自分の人生は?

今、幕を閉じるかもしれない。
それは誰にもわからない。

もし、父に、もう一度会えるならば、
父に一言、

『ありがとう』が言いたい。言いたかった。

亡くなる前に、私の元を去ってしまう前に。
どれほど、お父さんが好きで、お父さんに頼っていたか。

お父さんが残してくれたもの
大きな愛情をありがとう。と。


それはかなわぬ今、私は心の中に静かにその願いを思い、
今を生きることを精一杯がんばろうと思う。

愛情をまたわが子達に注ぎ、
私が突然居なくなっても、
生きていけるだけの愛情と自信が育まれる様に
心の根っこが育つような、環境を与えられるように。

たくさんたくさん、愛そうと思うのである。

そうすれば、居なくなっても、
父のように、
確かに私の中に残る存在

なるであろうことを信じて。



私の命は、多くの人々によって、つながっている。支えられている。


人は一人ではない。
静かにそう思う。












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最終更新日  2007年05月21日 15時50分26秒
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