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世界が希求する内なる変革の教育
創価大学 高橋 強 教授
新型コロナウイルスの感染が広がる中、創価大学では、いち早くオンラインを活用した授業を取り入れ、 4 月から新学期がスタートしました。
大学のみならず小・中学・高校の学校現場など、さまざまな場面で、オンライン授業の導入をはじめとした教育環境の劇的な変化が起きています。今後も、教育の形は必要に応じて変わっていくでしょう。
ゆえに今こそ〝いかなる変化の中でも「変わらない・変えてはいけない」教育の価値とは何か〟を追求すべき時であると実感しています。
私は長年にわたり、創立者・池田先生の思想を研究する中国の学者らと交流してきました。本稿では、教育に携わる方々の思索の一助になればとの思いで、私なりの「創価教育」の考察や中国の研究者の視点を紹介させていただければと思います。
海外の学識者が池田思想を研究
「創価教育」とは何は?――創価大学世教壇に立つ中に自身で問い続けてきました。しかし、「自身に問い掛ける」だけでなく、「世界へ発信する」使命を自覚した大きな転換点が訪れました。それは、 2001 年 12 月に「池田大作研究会」を北京大学に設立した 賈蕙萓 教授との出会いでした。
賈教授が好感教員として創大に滞在された当時、私は創大国際部の副部長として賈教授とよく語り合いました。池田先生のことについて、それはそれは多くのことを聞かれました。
或る時、賈教授から「池田先生が一番よく使う言葉は何だと思いますか?」と尋ねられました。そして、「それは『勝つ』『勝利』ですよ」と言うのです。
賈教授は日中友好に尽くす池田先生の功績を、よく知られていました。その上で、先生の思想は、幸福の人生を勝ち取るための実践の哲学であると見いだし、深めていかれたのです。
賈教授によって北京大学の池田大作研究会は設立されると、中国各地の大学に池田先生の思想を研究する機関や学生団体が、次々と誕生。そして、各地の研究者が池田思想の研究成果を発表し合う国際学術シンポジウムが開催されるようになったのです。創大が共催し、中国前途の研究者が集まるシンポジウムは 2005 年に始まり、現在までに 10 回を数えています。
私も創大の一教員として、創立者の人間教育について発表する機会を得ました。これが、創価教育について本格的に整理・試作するきっかけとなりました。
三代に継承され発展した理念
賈教授をはじめ中国高官教員から、創価教育や池田先生の教育思想について問われた時には、私は次のように応えています。
牧口先生と池田先生の教育の目的は同じであり、池田先生の教育思想は、牧口先生の価値論、戸田先生の生命論を受け継ぎ、自身の人間革命論を通して発展させたものである、と。
つまり、 1 人間の内なる無限の可能性を開き鍛え(生命論)、 2 そのエネルギーを価値への創造へと導き(価値論)、 3 社会を築き、時代を決する根源の力を引き出す(人間革命論)――これこそが創価教育であると捉えています。
その要諦は、人間を基準とし、人間の〝内なる変革〟を促す教育です。
池田先生は、中国教育学会の 顧 明遠 名誉会長との対談集『平和の架け橋――人間教育を語る』でこう述べられています。
〝創価教育の目的は、美・利・善の価値を実生活の中で創造しゆく人格を育むことである。創価教育を人間教育と表現するのは、こうした人格を育てていく作業を重視しているからである。〟と。
池田先生の教育理念の大きな特徴は、創価教育学の理論を教育現場や日常生活の上で実践できるように展開されたことにあります。
そして、自身の振る舞いでその理念を体現される「知行合一(知識と行動の一致)」の姿に皆、納得と共感を示すのです。
多彩な分野に展開される哲学
研究が進むにつれ、あらためて実感することは、池田先生の思想が、いかに偉大で深遠であるかということです。それぞれの学者が自身の専攻する学問を通して池田先生の思想を深め、現代社会に新たな価値を展開しているのです。
この中国の学者による視点の一端を紹介したいと思います。
牧口先生は「教育の目的は子どもの幸福」と厳然と叫ばれました。「人格を育む教育」とは、どこまでも「目の前の一人の子どもの幸福」に尽くすということにほかなりません。
中山 大学「池田大作とアジア教育研究センター」副所長の王麗栄教授は「人格を育む」との観点から、「道徳教育」の側面に注目しました。
「子どもを育む上では、単に知識を与えるだけではなく、人格的な成長を促し、健全に発育していくことが大事です。そのために何が美しく、人としての価値があることなのかを教える『美育』が有効です」「(言葉や振る舞い、表情などを通して聴衆や対話の相手の善性を引き出す)池田先生の焦点は、常に『人間』です。自身の全人格を通して目の前の一人を励まし、育てる。この先生が実践してこられた人間主義の教育は、まさに美育のお手本なのです」と語っています。
一方、 佛山 科学技術学院「池田大作思想研究所」副所長の 李 鋒 講師は、池田先生の「世界市民教育」に 大きな共感を示しています。
牧口先生は著書『人生地理学』で、郷土こそ「自己の立脚地点」であることに着目しました。そして、一人の人間は地域に根差す「郷土民」であると同時に、国家に属する「国民」であり、世界を舞台とする「世界民」であり、この三つの自覚を併せ持つことで、人生の可能性を豊かに開花できると訴えました。世界市民教育の魂があります。
池田先生はコロンビア大学ティーチャーズカレッジでの講演( 1996 年 6 月)で、世界市民の三つの条件として、 1 生命の相関性を認識する「智慧」 2 差異を尊重し、成長の糧とする「勇気」 3 苦しむ人に同苦し、連帯する「慈悲」――を示しています。
異文化コミュニケーションを研究する李講師は、〝池田先生の世界市民教育は、異文化理解の教育に大きな示唆を与え、地域や民族等に対する偏見や差別を取り除き、世界の平和促進に有益である〟と考察しています。
また、陝西師範大学「池田大作・池田香峯子研究センター」副センター長の曹婷副教授は、〝全盛の開発を目標とする人間主義の教育は、民族やイデオロギーの壁を克服し、智慧を引き出し、真の文化を創出することができる〟と述べています。
さらに、「子どもたちにとって、最大の教育環境は教師自身である」とは池田先生が示された指針です。
肇慶 学院「池田大作研究所」副所長である 蒋 菊 副教授は、この指針から「教師論」を展開します。
「教師と子どもの生命の触発こそが教育の原点である」とし、教師自身の人生観、人間観の確立をはじめとした〝人間的成長〟が大切であると結論付けました。
変化の時代に挑む教育実践を
今、中国をはじめ海外の研究者が注目しているのが、池田先生の提案によって創価学会の教育本部が推進している、人間教育の「実践記録」です。
膨大な教育実践の記録が残っているという事業は驚嘆を持って受け止められています。
教育本部の皆さまの使命は本当に大きいと思います。
私自身も常に、小説『新・人間革命』第 15 巻「創価大学」の章に描かれる山本伸一の姿を模範として、自分なりに実践してきました。
オンライン授業という新しい環境の中でも、池田先生の一人を大切にする理念を実践へ移そうと、自宅などでも受講する学生たちが孤独を感じて居ないか、一人で悩んでいないかに気を配りながら、グループディスカッションを多く取り入れたり、なるべく学生の名前を直接呼びかけたりするなど知恵を絞り、工夫をこらす毎日です。
三代にわたって受け継がれてきた創価教育は、今度は私たちの実践によって未来へと受け継がれていきます。未曽有のコロナ禍の中での教育実践は、政界の見えない、逡巡と決断の連続かもしれません。しかし「子どもの幸福」を追求してきた創価三代の人間教育も、激動の時代に挑み抜いた激闘によって現在の発展があります。
その意味で、私たち教育者の日々の実践は、〝私の小説『新・人間革命』〟の新たな「人間教育」の章をつづりゆく挑戦である、とも言えるのではないでしょうか。
10 年後の創価教育 100 周年に向けて、共々に歩みを進めていこうではありませんか。
【 寄稿 牧口先生の生誕の月に寄せて 】聖教新聞 2020.6.28
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