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梅と桜、どちらがお好き?
作家 一色 さゆり
春の訪れとともに、花のことが気になる。
天気予報で大々的に開花予想がなされる桜だけでなく、時間差でずっと街をいろどってくれる梅にも関心が向くようになったのは、大人になってからだ。
梅のいいところを挙げればキリがない。
なんといっても、トップバッターで春の訪れを教えてくれる。
また、一重咲きもあれば八重咲きもあって、実に多種多様だ。色や香りもさまざまで、近所には寒い時期から甘い香りをさせる黄色い蠟梅が植えられており、前を通るとびに癒される。
古来、日本の絵によく登場するもの、桜よりも梅が多い。
私の記憶にもっとも強烈に刻まれている桜の屏風は、メトロポリタン美術館に所蔵されている狩野山雪の「老梅図襖」だ。
はじめて観たときは、なんじゃこれ! ト目を疑ったほど。
ほぼ垂直の上下方向に伸びる枝は、かつて「痙攣しているようだ」と日本美術史の大家が表現した。まさにその通り。溶けているというか、震えているというか。よくこんな動きを、静止画として表現できたものだとど肝を抜かれる。
今年の四月に発表される『コンサバター 失われた安土桃山の秘宝』という私の新刊でも、「老梅図襖」はちらりと登場する。
主人公はイギリスに入る天才的な美術修復士であり、「コンサバター」というシリーズの三作目に当たる。
修復士たちはロンドン郊外に眠っていた日本の屏風の復元を依頼されるのだが、そこで一つ問題が浮上する。
指揮のめぐりを表現した襖や屏風はたくさんあるが、春の部分になんの花木が登場したのか――。
その辺りがミステリーの鍵となってくるエンタメ小説だ。ぜひ手にとってみてください!
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