蒼い風 現象への旅
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昼過ぎから優しく落ちていた雨が夜更けになって屋根を打つ楽器に変わっている。暮れの命日に墓参はしていたが法要の無い一周忌を今日ようやく済ませることが出来た。集う兄弟。少し痩せた兄と太った姉と。甥のKすけが帰省して、姪のKこが帰省して。予め内輪で仕切ることに決めていたので、吉野組にも大阪組にも手紙だけで知らせることにした。一抹の寂しさはあるものの、既に父にほど近い肉親はもう関西にはいないのだ。そう自分に言い訳して今日を迎えたのだった。久しぶりに会う姉は前髪を紫とグリーンにマニキュアしていかにも花屋ですよと言わんばかりで、兄はといえば変わらず良人の風格を保っている。ひとしきり冗談を交わしたあと、姪がスリーショットを珍しがって庭先で記念写真を撮った。そういえばこの三人で写真に収まるのは記憶に無い。車に分乗して出かけ、見慣れた階段をゆっくり昇った。風のない薄曇り。蠟燭の炎が消えないのはありがたい。降り出すかもしれないので早めに公園墓地を後にする。母が生前集めていた白檀の線香の香りを残して。遅い食事会で、父の部屋を整理して出て来たものが多かったこと、その中に母の残したものがかなりあったことなどを聞かされた。そして新しいアルバムが6冊。初めて見る旅行のビデオテープ。自分が撮った写真も何枚かあるが、父が遺した膨大なカラー写真たち。旅行のときに得意げに写真を撮る父の姿。懐かしさよりも父が遺した会話が脳裏を廻ってくる。アルバムにあったカビネに焼かれたモノクロームの父と甥。紛れも無く自分が撮ったものだが、その父の姿に衝撃を受けた。忘れていたが、このとき父の左手首に銀のブレスレットが認められる。父へ送ったものだった。ずっと身につけていてくれたのだろう。一枚だけ作品レベルの写真があった。サギソウのアップだ。撮影場所は裏庭だと思う。自分が撮影した記憶が曖昧なので父が撮ったものかもしれない。茶と花と人を愛した母と、その母を愛した父と。雨が激しくなった。食事会の段落で裏庭に煙草を求めた。おそらく兄と義姉とが綺麗に手入れした斜面にまだ蕾をつけない梅が雫を落としていた。手入れしてくれたのは兄夫婦しかいないだろうが、謝辞をどう伝えるのか、あらためてこんなに急斜面だったのかと少し驚き、この山肌に植林した父母の姿を重ねていた。今年の紅白の梅はいつ頃になるのだろう。とうさん、かあさん、ありがとう。
Jan 13, 2013
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