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2月に観た映画は、たった5作品でした。一回ですべて紹介します。悪い作品はあまりなかった。なんで数がへったんだろ。「スリー・ビルボード」(ストーリー)本年度アカデミー賞® 6部門ノミネート作品賞、主演女優賞、助演男優賞、脚本賞、作曲賞、編集賞ミズーリ州のさびれた道路の3枚の広告看板にメッセージを出したのは、7カ月前に何者かに娘を殺されたミルドレッド。犯人は一向に捕まらず、何の進展もない捜査状況に腹を立て、警察署長にケンカを売ったのだ。署長を敬愛する部下や町の人々に脅されても、一歩も引かないミルドレッド。その日を境に、次々と不穏な事件が起こり始め、やがて思いもかけない、誰もが想像できないドラマが始まる──。(私の感想)まるで「チェスの一手によって、手詰まりだった局面が次々と変わってゆくように、物事が好転するかも」と書いた署長のような展開になってゆく先の見えない脚本も秀逸。登場人物全員が善人でもなく徹底的な悪人でもない。田舎のアメリカとは、ホントにこんな感じなのか。警察署が四人で絶大な権力を持っているのか?三枚の広告が広げる見事なアメリカ曼荼羅。監督 マーティン・マクドナー出演 フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、ジョン・ホークス、ピーター・ディンクレイジ[ 上映時間:116分 ]2018年2月1日TOHOシネマズ岡南★★★★「祈りの幕が下りる時」宣伝はわざと勘違いするようにやっているが、これで加賀恭一郎シリーズが終わるわけではない。「新参者=日本橋署における加賀恭一郎」シリーズが終わるだけなのである。その仕組みは、原作を数年前に読んでいる私には既知のことではあるが、それでも泣かされた。そもそも泣かすような話なのだから、仕方ない。泣かせる演出のためか、原作の大きな瑕疵は直さなかった。また、時間の関係か、捜査の手順が幾つか省いて映像で説明してしまっているので、2時間ドラマ感も拭えない。だから、世界基準ではない。でも、日本人にはこれでいい。評判いいのも頷ける。松嶋菜々子が意外に良かった。犯人に共感してしまうシリーズとして、大好きな加賀恭一郎シリーズとして、これからも5年に一本ぐらいは作ってもいいかな。(ストーリー)東京都葛飾区小菅のアパートで女性の絞殺死体が発見される。被害者は、ハウスクリーニングの会社で働く滋賀県在住の押谷道子。殺害現場となったアパートの住人・越川睦夫も行方不明になっていた。松宮(溝端淳平)たち警視庁捜査一課の刑事たちが捜査にあたるが、押谷道子と越川睦夫の接点がまったく見つからず、捜査は難航する。滋賀在住の押谷が何故東京で殺されたのか。やがて捜査線上に浮かびあがる女性演出家・浅居博美(松嶋菜々子)。押谷道子は学生時代の同級生である浅居博美を訪ねて東京に来たことが分かるが、浅居博美と越川睦夫の間にも接点がなく、捜査は進展しない。監督 福澤克雄出演 阿部寛、松嶋菜々子、溝端淳平、田中麗奈、キムラ緑子、烏丸せつこ[ 上映時間:119分 ]2018年2月1日TOHOシネマズ岡南★★★★「シンクロナイズドモンスター」「アン・ハサウェイが酔っ払いのダメダメ女で、巨大怪獣になってソウルのビル街を破壊するんだけど、巨大ロボットと戦って大人になる映画だよ」と言うと、オレが酔っ払っているみたいだけど、驚いたことに本当です!(町山智浩)何故か(一応理由は作っているけど)アメリカの職ナシ家ナシ彼氏ナシの女とソウルに出現する怪獣がシンクロナイズしてしまう。この突飛なアイデアにアカデミー賞女優のアン・ハサウェイが飛びついた。「最も自分らしいキャラクター」だと制作も主演も買って出たという。アイデアは面白いけど、どう落とし前をつけるのか、気になって気になって、このためだけに休日のほとんどを使って(何しろ夜中の一本のみ今週のみの上映)、準備して観に行った。うーむ、やはり世界のファンタスティック映画祭で賞を獲れなかったのもわかる。ちゃんと映画らしく絞った台詞を作ってはいるが、必要な部分まで削っている気がする。相手の男の豹変が、あまりにも突飛だ。あれでは、単なる運の悪い男なのか、サイコキラーなのかわからない。美術も変なところが凝っていて変なところが好い加減。制作も監督もやはり素人から出ていないのかもしれない。主人公も、結局勝ち組からいっときドロップしただけだし、実家には持ち家はちゃんと残しているぐらいの中流家庭だし、元彼氏の方は未練タラタラだし。前宣伝と全然違って、ホントのダメウーマンじゃない。ホントのダメな人間は、結局相手の男だったという「落としところ」だった映画なのである。それでも、怪獣場面はそれなりによく作れていたし、主人公の正義感には共感できる。最後のアイデアも、まあ男が可哀想すぎる気もするが、それを思い出した彼女のアップで終わらすラストも良かった。これに懲りずに頑張って、と言いたい。あとで町田さんの『「映画の最前線」を読む』を読むと、アン・ハサウェイは、ネットでいわれのない炎上を受けたらしい。それに対するアンサー映画の意味合いもあるらしい。それは納得。(見どころ)『レイチェルの結婚』『レ・ミゼラブル』などのアン・ハサウェイが主演と製作総指揮を務めた異色作。失意のヒロインが、突如現れた巨大怪獣を操り世界を混乱させる。『なんちゃって家族』などのジェイソン・サダイキス、『美女と野獣』などのダン・スティーヴンスらが共演。『ブラック・ハッカー』などのナチョ・ビガロンド監督がメガホンを取った。(あらすじ)失業して酒浸りのグロリア(アン・ハサウェイ)は、一緒に住んでいた恋人のティム(ダン・スティーヴンス)に家を追い出され、ニューヨークから故郷の田舎町に戻る。そこで再会した幼なじみのオスカー(ジェイソン・サダイキス)が営むバーで働き始めた矢先、ソウルに巨大怪獣が襲来したことを知る。そしてニュースの映像を見たグロリアは、その怪獣と自分の動きがシンクロしていることに気付く。2018年2月4日シネマ・クレール★★★ 「マンハント」「君よ憤怒の河を渡れ」が原作だというのは、頭から払拭した方がいい。冒頭に、あの映画を「そう言えば、古い映画のこんな台詞があったわね」と言って紹介する場面がある。それに使われたぐらいで、全く100%ジョン・ウー監督印の日本がほほ100%舞台の作品。大阪や北海道を舞台に半分以上日本の俳優が活躍するのに、ここまで中国映画になることが驚き以外の何物でもない。最初から最期まで理屈抜きのアクション映画。ジョン・ウー監督ハリウッドの時には、ハリウッドの色に染まっていたのに、これはまさしく中国映画だった。色使い、演技や脚本の雑さを凌ぐ俳優の色気と編集。鳩も、両主演を同時に助けるという離れ業をやる演出。ニヤニヤする。面白かった。北海道の場面は、全面的に岡山県蒜山が使われた。最後のエンドロールで、邦画だとくわしい地名が載るのに、これは「大阪府」とか「岡山県」としか書かれていなくて、まるきりわからなかった。しって映画を見ていればもう少し楽しめたかもしれない。日中合作どころか、ハ・ジウォンまで主要登場人物で出ている。日中韓の映画が、平昌オリンピックに合わせて公開された意義は大きい。初日なのに、あまり人は入っていなかった。日本人の狭量さが問われる。最後の監督と福山の対談は、正に「蛇足」以外の何物でもないが、ハの相棒役をやっていた女性が監督の娘だと聞いてビックリした。ホントに本格的な性格俳優だったからである。主演女優も美しかったけど、福山の相棒を演った桜庭みなみは、存在感を出した。これをキッカケに彼女には国際女優になって欲しい。(STORY)国際弁護士のドゥ・チウ(チャン・ハンユー)は、気が付くと女の死体が横にあり、身に覚えのない殺人事件の容疑者に仕立て上げられたことに気付く。逃亡を図ったチウを追う敏腕刑事・矢村(福山雅治)は捜査を進めるにつれ事件に違和感を覚えるようになる。やがて二人の間に信頼が生まれ、彼らは共に真相を追うが……。(キャスト)チャン・ハンユー、福山雅治、チー・ウェイ、ハ・ジウォン、國村隼、竹中直人、倉田保昭、斎藤工、アンジェルス・ウー、桜庭ななみ、池内博之、TAO、トクナガクニハル、矢島健一、田中圭、ジョーナカムラ、吉沢悠スタッフ製作総指揮:ピーター・ラム、ラ・ペイカン副製作総指揮:イェ・ロンチャン、グアン・ハイロン、リチャード・ルイ製作:ゴードン・チャン、チャン・ヒンカイ監督:ジョン・ウー原作:西村寿行撮影監督:石坂拓郎美術監督:種田陽平音楽:岩代太郎アクション振付:園村健介衣装デザイン:小川久美子編集:ウォン・ホイ、リー・カウ音声:トゥ・デュチー、ウー・シューヤオ視覚効果監修:アレックス・リム脚本:ニップ・ワンフン、ゴードン・チャン、ジェームズ・ユエン、江良至、ク・ゾイラム、マリア・ウォン、ソフィア・イェ管理プロデューサー:デビー・ラム総括プロデューサー:アイバン・ウォン第二班監督:パトリック・レオン上映時間110分2018年2月10日Movix倉敷★★★★「バーフバリ 王の凱旋」久しぶりのインド映画。二部作の後半。正に純粋に後半であって、前後編で言うと、5時間の大作なのだが、話は貴種流離譚の典型でものすごく単純。なんと後半の8割は王たる所以の説明が、延々となされるというものであった。おかげで、真の主人公たる若き王の性格は全然わからないで、お父さんの性格だけが極まるものになった。まあ、そんなむつかしいことを考えずに、CGを駆使して、人も金も使って、娯楽作品を作ればこうなるのだと言うことを、しっかり体験するべき作品。昔の「踊るマハラジャ」には驚嘆したが、いまはなぜか驚きが無かった。(見どころ)伝説の戦士バーフバリの壮大な物語を描いたアクション『バーフバリ 伝説誕生』の完結編。インドの王国を舞台に、祖父から孫の三代にわたる愛と裏切りと復讐(ふくしゅう)を描く。前作同様プラバースが主人公を演じ、ラーナー・ダッグバーティ、アヌシュカ・シェッティ、タマンナー、ナーサルらも続投。監督・脚本のS・S・ラージャマウリ、撮影のK・K・センティル・クマール、音楽のM・M・キーラヴァーニらスタッフも再び集結した。(あらすじ)ある日、シヴドゥは自分が今や人々の語り草となっている伝説のヒーロー、バーフバリの息子だと知る。彼は父親の家臣カッタッパから父はある人物の裏切り行為により命を落とし、王座を追われたという話を聞く。かつて父バーフバリはカーラケーヤとの戦いに勝利し、国母シヴァガミから王位継承者として認められ……。2018年2月15日シネマ・クレール★★★☆
2018年03月10日
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1月の後半です。「パディントン2」と「デトロイト」はお勧めです。「パディントン2」子熊は何故世界中から愛されているのだろう。クマのプーさんを例えにとっても、少なくとも西欧諸国では重要なキャラであることは確かだ。日本でも、アイヌは熊を神(カムイ)と見なし特別視しているし、東北でも賢治は熊を大事に扱った。どの国でも熊に襲われて亡くなった人の言い伝えは、広がっていたはずだ。実際獰猛な熊の破壊力は、素手の一般人ではほぼ太刀打ち出来ない。それでも何故愛されるのか?孤児のパディントンを育てたペルーの叔母さん夫婦、そしてイギリスで暖かく迎えたブラウン一家、町の中で(1人の自警団の男を例外に)一生懸命「親切」を実践するパディントン本人を暖かく見守り助ける街の人々、ここには、古き良きイギリス、そして熊の親子にもありそうな伝統が生きている。(移民の)熊の子を「熊というだけで差別しようとする」ことに対して、明確にノーというこの作品は、イギリスの中の確かにある潮流をも代表しているのだろう。1960年代のロンドン風景と実写の人物とパディントンがなんの違和感もなく溶け込んでいるのは、おそらく凄い技術なんだろうな。ヒュー・グラントの悪役弾けっぷりが、流石です。(STORY)ブラウン家の一員として、幸せに生活しているクマのパディントン。もうすぐ100歳になるルーシーおばさんへの誕生日プレゼントを探していた彼は、骨董品屋ですてきな絵本を見つける。絵本代を稼ごうと窓ふきのアルバイトを始めるが、洗剤を頭からかぶるなど失敗しては騒動を起こす。そんな中、絵本が盗まれ、一家と共に絵本の行方を追うパディントンだが……。(キャスト)ヒュー・グラント、ブレンダン・グリーソン、ヒュー・ボネヴィル、サリー・ホーキンス、ジュリー・ウォルターズ、ジム・ブロードベント、ピーター・カパルディ、(声の出演)、ベン・ウィショー、(日本語吹き替え版)、松坂桃李、古田新太、三戸なつめ、斎藤工(スタッフ)監督:ポール・キング製作:デヴィッド・ハイマン原作:マイケル・ボンド上映時間104分「デトロイト」前回の「ゼロ・ダーク・サーティ」や「ハート・ロッカー」よりもよっぽど良かった。それでも、アカデミー賞最有力と言われてノミネートさえ獲れられなかったのは、何かの圧力があったのかもしれない。1967年と言えば、既に私は生まれている。当然ながら、その概要さえも今回初めて知った。容疑者の警官が全て無罪になっているからである。密室の殺人じゃない。周りに何人も被害者がいた中での出来事である。1967年なのに、まだ陪審員は白人ばかり。当然のように不当判決が下りる。デトロイトは、トランプの支持基盤らしい。要は未だにアメリカは、この構造を変えていない。警官のリーダーにウィル・ポールター(「レヴェナント蘇えりし者」で、気の弱い若者を演じた)を配置した。高校卒業直後の警官と言われても信じてしまうような相貌であるが、警官のリーダーなので、ベテラン警官のはずだ。この幼稚さにクレバーな狂気と凶暴が加わる怖さ。(解説)1967年に起きたデトロイトの暴動を題材にした実録サスペンス。暴動の最中、あるモーテルで警察が宿泊客に行った過酷な自白強要の行方を、息詰まるタッチで映し出す。監督は『ハート・ロッカー』などのキャスリン・ビグロー。『スター・ウォーズ』シリーズなどのジョン・ボイエガ、『レヴェナント:蘇えりし者』などのウィル・ポールター、『リチャードの秘密』などのジャック・レイナーらが熱演する。2018年1月28日シネマ・クレール★★★★「光」期待倒れだった。1度人を殺したのに、たまたまの津波で不問に付されて25年後、改めてその罪を繰り返す男女を描く。表情豊かに罪を語る瑛太と対照的に、殺す時以外はずっと仮面を被っている井浦新。そういう描き方は、面白かったが、この映画に普遍的な価値はない。たまたまの殺人者を描いているのに過ぎない。得るものはなかった。(見どころ)「舟を編む」などで知られる直木賞作家・三浦しをんの小説を、『ぼっちゃん』などの大森立嗣監督が映画化したサスペンス。大災害で生き残った3人の男女が25年後に再会し、逃れることのできない運命に翻弄(ほんろう)されるさまを描く。主人公とその妻を井浦新と橋本マナミ、幼なじみを瑛太、元恋人を長谷川京子が演じ、過去の秘密によってそれぞれの狂気が呼び起こされる様子を体現する。(あらすじ)東京の離島・美浜島で暮らす中学生の信之はある夜、男に襲われた恋人の美花を救うため、殺人を犯してしまう。そして島を大災害が襲い信之、美花、幼なじみの輔と数人の大人だけが生き残る。25年後、島を出て妻子と生活している信之(井浦新)と、過去を捨て芸能界で成功を収めた美花(長谷川京子)の前に輔(瑛太)が現われ……。2018年1月28日シネマ・クレール★★★
2018年02月17日
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1月に観た映画はたった6作品でした。2回に分けて紹介します。なんか、映画に対する情熱が薄れてきているのかな。「人生はシネマティック!」あのダンケルクを戦意高揚のために、戦中に映画化していた。(解説)第2次世界大戦中のイギリスを舞台に、コピーライターの秘書が脚本家として奔走する姿を描く人間ドラマ。偶然書いたコピーを気に入られたヒロインが、国民を励ますための映画の脚本家に抜てきされ奮闘する様子を映す。監督は『17歳の肖像』などのロネ・シェルフィグ。『ビザンチウム』などのジェマ・アータートンや、サム・クラフリン、ビル・ナイらが出演している。(あらすじ)第2次世界大戦中のロンドン。コピーライターの秘書として働くカトリン(ジェマ・アータートン)の書いたコピーが評価され、映画の脚本陣に加わることになる。テーマは、ダンケルクの戦いでナチスドイツ軍から兵士を救った双子の姉妹の感動秘話。ところが、ベテラン俳優のわがままや政府と軍部の検閲などのトラブルが発生し、そのたびに脚本を書き直すことになる。当時の映画の作り方がとても興味深い。けれども、ラスト近くに思わぬ不幸が襲うというのは、当時の映画に対するリスペクトでなければ、あまりにも陳腐な脚本と言わなければならない。ただ、「信憑性と楽天性」をプロデューサー自身、政府自身が主張していたのは、嘘ばかりで固めた当時の日本国に見せてあげたい。英国人はアメリカ人のことをヤンキーと言っていたんだ、あのハリウッドをバカにしていたんだとわかって、同じく「抑制のきいた演技」を好む日本人としては我が意を得たりと思う。ハリウッドが世界基準じゃないと改めて思う。ビル・ナイがいい味だしている。2018年1月7日シネマ・クレール★★★☆「キングスマン/ゴールデン・サークル」前回と同じぶっ飛び具合なんだけど、2回目になると、なんだかいまひとつ乗れない。エルトン・ジョンの頑張りはびっくりしたけど、それ以外は前回よりもなんかトーン・ダウンしたような。主要登場人物を容赦無く殺すのは、なんか生理的に受け付けないのかな。でも、あのエルトン・ジョン全部ホンモノだったの?(STORY)謎の組織「ゴールデン・サークル」によって、ロンドンにある高級スーツ店を隠れみのにしたスパイ組織「キングスマン」の根城がつぶされてしまう。残ったのは、以前スカウトされて腕を磨いたエグジー(タロン・エガートン)と、教官でありメカ担当のマーリン(マーク・ストロング)だけだった。二人は敵を追い、同盟組織の「ステイツマン」の協力を求めてアメリカへ渡る。(キャスト)コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、タロン・エガートン、マーク・ストロング、ハル・ベリー、ペドロ・パスカル、エドワード・ホルクロフト、ソフィー・クックソン、エルトン・ジョン、チャニング・テイタム、ジェフ・ブリッジススタッフ監督・脚本・製作:マシュー・ヴォーン脚本:ジェーン・ゴールドマン上映時間141分2018年1月11日Movix倉敷★★★☆「パーティで女の子に話しかけるには」ほとんど事前情報なしに出掛けた。「ボーイ・ミーツ・ガール」の傑作だと聞いていたので、まさかファンタジーとは思わなかった。まさかイギリス映画とは思わなかった。まさか1977年の昔の話とは思わなかった。まさかパンクがこんなにもガンガン流れるとは思わなかった。結局それだけでも良かった。どの星、どの国、どの時代であろうとも、みんな苦手な世界だけども、恋の話は総てをひとつにするのだ。労働者階級が寄せ合っている、あの巨大なアパートの夜明けの風景をみて、異星人のザンは呟く。「この世界も美しい」と。(解説)『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』などのジョン・キャメロン・ミッチェル監督が、ニール・ゲイマンの短編小説を映画化したラブストーリー。1977年のロンドン郊外を舞台に、内気なパンク少年と遠い惑星からやって来た少女の交流を描く。美少女の異星人を『SUPER 8/スーパーエイト』などのエル・ファニング、彼女と恋に落ちる少年を第69回トニー賞で演劇主演男優賞を受賞したアレックス・シャープが演じるほか、オスカー女優のニコール・キッドマンらが共演。(ストーリー)1977年のロンドン郊外。内気な少年エン(アレックス・シャープ)は偶然参加したパーティで美少女ザン(エル・ファニング)と出会い、音楽やパンクファッションの話で盛り上がり、恋に落ちる。しかし、遠い惑星に帰らなければならない彼女と過ごせる時間は48時間のみ。大人たちが押し付けるルールに反発した彼らは、一緒にいるために逃避行するが……。2018年1月25日シネマクレール★★★★
2018年02月16日
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年末の12月に観た映画はたったの5作だった。結局2017年に観た映画の本数はきっちり120本。少し長いが、一回で全部紹介する。「リングサイド・ストーリー」思いもかけず良かった。「百円の恋」の武正晴監督が脚本家足立紳の実話をヒントに、いつまでも夢を追いかけているダメダメ男を描く。もちろん、根っからの悪い男ではなくて、投げ散らかしたビール缶を片付けるくらいの神経は持っている。プロレス界とK-1の裏方についたダメ男の彼女を通じて、ファイト・ラブコメディが快調だった。シネカノンの李鳳宇が、プロデュースと脚本に参加していた。彼の視点が健在で少し嬉しい。「俳優ってのはなっ!人に非ずって書くんだよ!」いかにも、長い間下積み俳優を続けている男のいいそうなことだ。(解説)二人にしか見れない景色、探しに行こう!日本アカデミー賞、ブルーリボン賞など数々の映画賞を総なめにした大ヒット映画『百円の恋』から3年。同スタッフが再集結し、盟友・足立 紳の実話をヒントに生み出されたオリジナルストーリーをひっさげた武 正晴監督の最新作!「夢」だけデカい典型的なダメ男と彼を支える健気な女が繰り広げるファイト・ラブコメディ。4年ぶりの映画主演作となる佐藤江梨子と、出演作のたび七変化して円熟味を増す実力派俳優、瑛太をW主演に迎え、武藤敬司・武尊・黒潮“イケメン”二郎など、K-1×プロレス界のトップ アスリートたちが豪華出演!近藤芳正・余 貴美子・田中要次・有薗芳記・高橋和也などの日本映画界の名優たちが、脇を固めます。また結成から28年目を迎え、日本のロックバンドとして咲き誇り続けるフラワーカンパニーズが楽曲を提供、身も蓋もない現実を代弁するかのような主題歌「消えぞこない」が胸に響きます。 俳優、格闘家、ミュージシャンの実力者たちで作り上げた「演技の総合格闘技」のゴングが、この秋、鳴り響く!2017年10月8日シネマ・クレール★★★★「八年越しの花嫁」表町商店街、西大寺電停前、京橋、旭川の河川敷、岡山市民病院(景色の良い見晴らし台だけ何処かわからなかった←のちに岡山市ではなく、浅口市の逍遥山だとわかる)、思った以上に岡山市で2人がロケをしていて、しかも岡山市観光作品にはなっていない。純愛を突き詰めると、こうなるのではないか。一般の闘病モノとは一線を画すキチンと泣ける、地味な恋愛モノになっていた。事実を元にしながらも、「愛です。絶対直ると信じることが大切なんです」「壊せばまた直せば良いんだからな」自動車修理工にあわせた身に沁みる脚本が素晴らしい。土屋太鳳の、動画が豊富に存在するからできたのかもしれないが、各段階の症状の表情に説得力があった。誠実な青年を佐藤健の演技が応えていた。一月に、映画のもとになったドキュメンタリーを見たが、相当脚色している、しかし核のところのみは残していることがわかった。つまり尚志の「消してぶれない愛」である。テレビでは、ほとんど動画は紹介されなかったので、撮りためていた動画を見て麻衣が心動かされたのは脚色かもしれない。映画サークルで、ロケ地巡りをして楽しかった。STORY結婚式を3か月後に控えていた尚志(佐藤健)と麻衣(土屋太鳳)。しかし、麻衣が病を発症して昏睡(こんすい)状態になってしまう。尚志は、麻衣の両親からほかの女性を探すように諭されるが、彼女のそばから離れようとせずに回復するのを待ち続ける。その後目を覚ました麻衣は、記憶障害に陥って尚志が誰なのかわからない状態になっていた。ショックに打ちひしがれながらも、毎日のように彼女を訪ねる尚志だが……。キャスト佐藤健、土屋太鳳、北村一輝、浜野謙太、中村ゆり、堀部圭亮、古舘寛治、杉本哲太、薬師丸ひろ子スタッフ主題歌:back number監督:瀬々敬久脚本:岡田惠和2017年12月9日Movix倉敷★★★★「女神の見えざる手」(ロビーストが勝つのに必要なのは)「予測すること。敵の行動の一歩先を行くこと。敵の切り札がすべて出た後に、最後の切り札を出せるように用意しておくこと」という意味の女の信条が少なくとも3回繰り返される。だから、観客はまるで水戸黄門の印籠がいつ目の前に出て来るのかをずっと待つだろう。そして期待通りに、それは出た。なるほど。これは切り札だ。決して、本当は決して使ってはいけない切り札だ。いや、これは最初から「使う予定の切り札」として用意していたのだという意見も聞いた。大いに議論が分かれた。それも楽しい。こういう女がどうして出来上がったのか。「結婚して、家庭を持つあり得たかもしれない人生をなぞるために、男を買うのよ」等々の台詞以外には、なんの説明もされない。その切り取り方がなかなかいい。実にアメリカ映画らしい秀作。(解説)政治家の心や世論を動かし、マスコミも操作し、世界を変える決断に深く関与する。そんなプロフェッショナル集団=ロビイスト。いったい彼らはどんな戦略を立て、その見えざる手で人々の心や巨大な権力すら操作するのか?戦略の天才たちにモラルや常識は必要ない。危険な一線も越えて繰り出される秘策は、どんな武器よりも強力で過激! 一瞬先も読めないロビイストたちの闘いが、かつてない興奮とサプライズ、感動をもたらす話題作が誕生した。ロビイストの“女神”に君臨するのが、エリザベス・スローン。真っ赤なルージュ、一流ブランドとハイヒールで武装した彼女が、天才的なひらめきと無敵の決断力で、巨大な勢力を敵に回すーー。一切の妥協を許さず、敵はもちろん、味方をも畏れさせるエリザベス。睡眠時間も惜しんで策略を巡らせ、プライベートの時間をもたず、恋愛はエスコートサービスで代用。これ以上ないほど強烈なインパクトのヒロインを演じるのは、『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェシカ・チャステイン。観客の目もあざむく演技で新境地を拓き、ゴールデン・グローブ賞主演女優賞にノミネートされた。さらに、エリザベスと共に闘う上司役に『キングスマン』のマーク・ストロングが出演し、物語に深みをもたらす。アカデミー賞®作品賞に輝いた『恋におちたシェイクスピア』のジョンマッデン監督によって圧巻のエンタテインメントが誕生した!銃規制法案を巡るロビー活動の攻防には巧妙な罠も仕掛けられ、予想不能のサスペンスが展開。そして逆転に次ぐ逆転劇の末に導かれるのは、清々しくエモーショナルな結末!近寄りがたいほど鉄壁だったヒロインに、気がつけば心をわしづかみにされている。2017年12月17日シネマ・クレール★★★★「スターウォーズ 最後のジェダイ」期待していた二つの繰り返しのうち、一つしか実現しなかった。衝撃の展開がある。とあの様にひつこく宣伝されれば、終わってみれば全て想定内の様にも思う。最も密かに予測していた(レイの親は実はスノークだった)というのは、完全に外れたが。幾つか残った疑問といえば、スノークとは何者だったのか。次回でレイア役(キャリー・フィッシャー)の死亡をどの様に処理するのか。次の冒頭説明で殺すのは可能だけど、それならばカイロ・レン(ベン・ソロ)の救いが描けない。レイとは何なのか?主人公として、あまりにも影が薄いのではないか?次回で、それらをキチンと決着つけるのか?誰か「嫌な予感がする」と言った?聞きそびれた?「フォースとともにあらんことを」は三回も出た。これは裏切りだろう。それ以外は、満足な出来だった。キチンとジェダイ修行の途中で主人公は離脱するし、お約束の「氷の惑星」での戦いも、赤い塩がまるで血の様に見える見事な映像美を見せていた。レジスタンスの敗北も、前三部作を踏襲していた。一般的に映像美は、素晴らしい。これは父親殺しの物語である。父親を殺して、闇に落ちるか、それとも英雄になるか、世の英雄譚には二通りある。つまりこれは主人公はカイロ・レンだったということになる。次回ルークがある形で出て来るのは必死である。それによって、「失敗こそが最高の教えである。」というヨーダの言葉が活きる。こういう繰り返しの展開の中で、確実に世代交代を行う。これこそが新三部作の魅力だろう。(キャスト)デイジー・リドリー、ジョン・ボイエガ、アダム・ドライヴァー、オスカー・アイザック、マーク・ハミル、キャリー・フィッシャー、アンソニー・ダニエルズ、ベニチオ・デル・トロ、ローラ・ダーン、ケリー・マリー・トラン(スタッフ)製作総指揮:J・J・エイブラムス、ジェイソン・マクガトリン、トム・カーノウスキー製作:キャスリーン・ケネディ、ラム・バーグマン監督・脚本:ライアン・ジョンソン撮影監督:スティーヴ・イェドリン編集:ボブ・ダクセイプロダクションデザイナー:リック・ハインリクスヘアー&メイクアップデザイナー:ピーター・スウォーズ・キングUSキャスティングディレクター:メアリー・ヴァーニュー共同プロデューサー・VPポストプロダクション:ピッパ・アンダーソンクリーチャー&ドロイドFXクリエイティブスーパーバイザー:ニール・スキャンラン衣装デザイナー:マイケル・カプランプロップマスター:ジェイミー・ウィルキンソンSFXスーパーバイザー:クリス・コーボールドスタントコーディネーター:ロブ・インチVFXスーパーバイザー:ベン・モリスUKキャスティングディレクター:ニナ・ゴールド2017年12月20日Movix倉敷★★★★「否定と肯定」原題は「DENIAL」。「否定」であり、「否定と肯定の対決」ではない。ホロコースト否定論者がいかに信頼出来ないかを明らかにする裁判の一部始終を扱った作品だからだ。しかし、日本人は、こういう邦題にした。そこに、いま議論があると言われる事項(南京大虐殺、従軍慰安婦問題)に対する「忖度」があると、私は思う。観客はほとんど老人だった。日本の否定論者の中心世代はあまり居ない様に思えた。しかし、客は30人近く入っていた。このハコでは比較的入っている方だ。アクションのない、法廷劇に人が入るのはそれだけ関心も高いのだろう。日本の否定論者がもしこれをみたならば、アーヴィングと同じ様に判決があっても「これは単にアーヴィングだけが酷い歴史学者だけだった話である」「リップシュタットは、裁判戦略のために陳述もしなければ証人も呼ばなかった事になっているけど、ホロコーストの歴史自体の真実の証明を放棄したからだ」「彼女が勝ったのは、豊富なユダヤ資金があったからだ」と、チャチを入れるだろう。目に見えるようだ。そして、なんとか、「否定論者と肯定論者の闘いは続く」と持っていくのだろう。否定論者のやり方はいつもそうだ。自分が不利になれば不可知論に持って行き、少し突っ込むところがあれば感情論で世論に訴える。そもそも、こんな映画で、客観的な真実を「証明」することは困難だ。何度も何度も出てくるアウシュビッツ「跡」の隠しようもない映像。しかし、実際に虐殺した多量の死体の写真はない。意図的に撮らなかったからである。(南京大虐殺は死体の写真はあるが、数をごまかしているという。従軍慰安婦は証人はいるけど、本人が嘘をついていると言う)2時間の映画ではわからない事が山ほどあるが、ことの単純な事実はひとつである。憲法学者の木村草太さんの言うように「あなたの知的誠実さにかかっている」のだ。レイチェルは、イライラするような女性学者を等身大で演じていて見事だった。(解説)ユダヤ人女性の歴史学者デボラ・E・リップシュタットは、イギリスの歴史家デイヴィッド・アーヴィングが訴える大量虐殺はなかったとする“ホロコースト否定論”を看過できず、著書で真っ向から対立する主張を繰り広げていた。しかし、アーヴィングは、名誉毀損でリップシュタットを提訴、異例の法廷対決が始まった。この裁判は、開始時から欧米でセンセーショナルに報道され、判決の行方は、ユダヤ人だけでなく、世界の知識層や学者などからも注目された。裁判の行方を混沌とさせたのは、アーヴィングが提訴した先が、英国の王立裁判所という点だった。英国の司法制度は、訴える側ではなく、訴えられた側に立証する責任がある。それゆえ、訴えられたリップシュタットは、裁判でアーヴィングが唱える“ホロコースト否定論”を崩す必要があった。このため、彼女のために、英国人による大弁護団が組織された。アーヴィングの日記を調べ上げ、アウシュビッツの現地調査も行い、歴史の真実を確認する作業が繰り広げられる。その一方で、同時に、弁護団はリップシュタットに対し「法廷では発言しないように」と要請した。しかも、ユダヤ人の生き証人が法廷で証言することも拒否した。リップシュタットは、アメリカの法廷での戦い方との違いに戸惑い、反発する。しかし、裁判が進むにつれて、弁護団の戦術の深さと巧みさを知る。さらには弁護団の人柄に引き込まれ、この裁判には何としても勝たねばならないという使命感が湧いてくる。ナチスによる大量虐殺はあったのか、なかったのか。世界中のマスコミが注目するなか、歴史の真実を争う裁判は判決の日を迎えた。このドラマチックな裁判の映画化にあたって、まず脚本家のデヴィッド・ヘアに白羽の矢が立った。彼はナチスの戦争犯罪裁判を題材にした映画『愛を読むひと』(08)でアカデミー賞脚色賞にノミネートされている。脚本執筆にあたり、膨大な裁判資料をすべて読みこみ、事実を描くという信念のもと、裁判の再現に真摯に取り組んだ。監督にはイギリス人のミック・ジャクソンが選ばれた。ホイットニー・ヒューストンとケヴィン・コスナーが共演した往年の大ヒット映画『ボディガード』(92)の監督であるが、最近はドキュメンタリーを数多く手掛けている。本作では、弁護団のやり取りや法廷での審理シーンなどもリアリティーある場面に仕上がっている。ユダヤ人歴史学者リップシュタットは、アカデミー賞受賞者であるレイチェル・ワイズが熱演。自身のルーツにユダヤ人の血が流れる彼女は撮影前にリップシュタットに何度も会い、リップシュタットの思考や信念に留まらず、彼女の特性や性格まで把握し、演技に臨んだ。対決する歴史家にはティモシー・スポール、年長弁護士にトム・ウィルキンソンという老練したイギリスの名優が共演し、作品に重厚さを与えている。“ポスト・トゥルース”や“フェイクニュース”といった、捻じ曲げられた理論であっても、それを声高に主張すれば世間に認められるという現代の風潮にも警鐘を鳴らし、普遍的なテーマを投げかけている。歴史上、争いのないと思われる真実であっても、時として否定論者は現われることがある。ホロコーストという最大にして最悪の世界史を題材とした本作は、歴史の真実を伝え続けなければならない我々一人ひとりに対する警告でもある。2017年12月27日シネマ・クレール★★★★
2018年01月24日
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「スターウオーズ ep7 フォースの覚醒」お正月映画です。新作公開のこの時期に、あえて前作を紹介するのは、これを機会にスターウォーズの世界を知ってもらいたいからです。去年6月に指摘しましたが、エピソード(以下ep)1、2、3におけるストーリーが、ナチスの独裁政権獲得の過程をなぞっています。その他、多くのマニア的な見方があるんです。毎回誰かが「嫌な予感がする」「フォースと共にあらんことを」と言います。その他、ep4とep7の類似点は、レジスタンスの存在やならず者の居酒屋等々たくさんあります。そして、必ず冒頭「遠い昔、はるかかなたの銀河系で」という言葉から始まります。つまり、これはSFスペースオペラであるのと同時に、壮大な神話物語であり英雄叙事詩なのです。繰り返しの展開が、却って大きな魅力になっています。特に、「父親殺し」がシリーズの大きなテーマとして立ち現れていると、私は思っています。父親か、父と慕うほどの師匠を殺してしまう。そのあとに、英雄として再生するか、アナキン・スカイウオーカーがダース・ベイダーとなったように暗黒面に堕ちるか、が物語の最大のクライマックスになるはずです。ep6から一挙に30年の月日が飛んで、このep7に移っています。この間、独裁者シス卿を倒し、フォースという不思議な力をコントロールするたった1人のジェダイになっていたルーク・スカイウオーカーは突然姿を消し、新たにファースト・オーダーという帝国が現れました。共和国側のルークの妹のレイア姫は劣勢を強いられています。両陣営にとり、ルークの場所を突き止めるのが事態を突破するカギとなり、ep7は突き止めるまでの話となりました。一般に古今東西の英雄譚は、次のような構造を持っていると言われています。「英雄は日常から召喚され、旅立ちをし、死地に向かい、様々な試練に逢い、そして勝利或いは大きな恵みを与えられ、帰還して物語を終える」ルーク・スカイウオーカーは正にその過程を経ました。さて、新たな女性の主人公レイは、ルークやアナキンと同じく砂漠の星から召喚され、様々な試練にあいます。いったいどのように着地するのか。ep7から他のシリーズを確かめてもいいし、とりあえず新作ep8を観てもいい。TVでは、映像のこだわりは解りにくいかもしれませんが、大画面で見ると隅々まで作り込んでいることがわかります。ぜひ、このシリーズにはまってみてください。(2015年米 J・J・エイブラムス監督作品、レンタル可能シリーズは全て旧作料金)
2017年12月19日
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後半の三作品です。「クボ 二本の弦の秘密」「またばきすら、してはならぬ」町の情景や、折り紙、楓の美しさ、三味線や刀の小道具などを精巧に作っているので、日本文化をリスペクトしているのは伝わってくる。しかし、キチンと学習してその上で物語を作ったのわけではなく、あくまでも日本風の物語である。町の住民は、武士、町民、百姓が混在して平等に登場し、平等に精霊流しを行っていることからもわかるし、平安時代か、江戸時代か、戦国か、混在している主要人物たちに、むしろ「無国籍ストップモーションアニメ」として、見た方が早く物語世界に入れるだろう。ラスボスを殺さないラストは日本型アニメとも言えなくはない。英雄は、召喚されて旅に出て、異形のものを共とし、そして、最大の敵を倒して「帰還」する。英雄譚の王道をキチンと描いて、クオリティ高いアニメを実現し、更には間違った価値観と対決する共同体の論理を、日本のコミュニティに置いていて、アメリカのアニメーターの新しい風を感じさせる作品となった。チラシに次世代ジブリという文字も踊っているが、方向性が違う。言わないでほしい。(解説) 主人公は、三味線の音色で折り紙に命を与え、意のままに操るという不思議な力を持つ少年・クボ。彼の眼帯の理由は、幼い頃に闇の魔力を持つ祖父に狙われ、父を失い、そのときに片目も奪われてしまったため。最果ての地まで逃れてようやく母と安寧の時を過ごせるかと思いきや、クボはさらなる闇の刺客によって母さえも失くしてしまう。 道中に出会った面倒見の良いサルと、ノリは軽いが弓の名手のクワガタという仲間を得て、父母の仇を討つ旅を続ける少年・クボ。だが彼は自身が執拗に狙われる理由が、最愛の母がかつて犯した悲しい罪にあることを知る……。日本の寓話をベースに描かれた壮大な物語を作り上げた本作の監督は、黒澤明や宮崎駿を敬愛する大の日本マニアで、次回作に『トランスフォーマー』シリーズ初のスピンオフ『バンブルビー(原題) / Bumblebee』も控えているトラヴィス・ナイト。2017年19日シネマ・クレール★★★★「ジャスティス・リーグ」冒頭の「スーパーマンがいなくなったことを悲しむ歌⁉︎」に、テロによる憎しみの連鎖、そして貧困という、アメリカの抱える悲しみがわかりやすく描かれていて、話はかなり壮大なのだけど、結局は身近な「悲しみ」を解決するのが「ヒーロー」なんだという、このシリーズのコンセプトも見える気がした。ラストソングの「カム・トゥゲザー」も良かった。話の展開は、有る程度予想していたけど、まさかあそこまで今まで出ていたキャラが出てくるとは思わなかった。敵は、弱かった。アマゾン族やアトランティス族は簡単にやられたけど、これはおそらく話の都合上なのだろう。それよりも、話の中心は「あの方」のお話だったということだ。幾つか、瑕疵がある。スーパーマンは、民衆から総スカンを食らっていたはずだ。どうしてあっという間に喪失感に変わったのか。マザーボックスのエネルギーは、途轍もないはずだ。それなのに、あの結果になったのはよくわからなかい。STORYブルース・ウェイン(ベン・アフレック)は、スーパーマンの捨て身の行動に影響を受け、再び人類を信じるようになる。彼は新たな相棒ダイアナ・プリンス(ガル・ガドット)の手を借り、強敵との戦いに備えて準備を進める。バットマンとワンダーウーマンとしてお互い協力を約束した彼らは、共に戦ってくれるヒーローたちを集めるが……。キャストベン・アフレック、ガル・ガドット、ジェイソン・モモア、エズラ・ミラー、レイ・フィッシャースタッフ監督:ザック・スナイダー2017年11月23日Movix倉敷★★★☆「ジュリーと恋と靴工場」ダメだった。歌が口パクだとわかってから、或いはジュリーが全くイケメンという理由だけで自らプレイボーイだと歌っている男とすぐに一夜を共にした時から、かなり寝入ってしまった。いや、もともと私はミュージカルが苦手なのだ。「シェルブールの雨傘」も熟睡していたぐらいなのだから。もうこれ以上、言うことなし。(解説)靴工場を舞台に“赤い靴=戦う女”を履いた女性たちが人生を切り開く、心躍るフレンチ・コメディ・ミュージカル!〔脚本・監督〕ポール・カロリ、コスティア・テスチュ〔出演〕ポーリーヌ・エチエンヌ『EDEN/エデン』オリヴィエ・シャントロー『メルニモンタン 2つの秋と3つの冬』フランソワ・モレル『ゼロ時間の謎』2017年11月30日シネマ・クレール★★
2017年12月13日
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11月に観た映画は6作品だった。一作は10月に観たのを感想書き忘れたもの。だから、実質5作品しか見ていない。秋になって大きく鑑賞作品数が減少している。これはひとえに〆切地獄に引っかかったためである。今年はこれで推移するので、はたして年間100作を超えるかどうか不安だ。前半3作品を紹介する。「ローサは密告された」第三黄金期フィリピン映画界の鬼才らしい。カンヌ国際映画祭で主演女優賞を獲ったローサ役のジャクリン・ホセが特別凄い演技をしているわけではなく、まるでドキュメンタリーと見間違うような映像と脚本、限られた登場人物たち全員に俳優賞をあげたい気分である。登場人物全員に共感はしないが、全員根っからの悪人とも思えない。その背景には、貧しく歪な開発が行われている東南アジアの現実があるのだろう。警官たちの巧妙にしかしあまりにもセコい上前はねの仕組みを見事に映像化しているだけでなく、カネを作るためにローサの息子娘たちが行く街の映像が、見事にフィリピンの現実を表していた。なかなかの力作。(解説)東南アジア最大のスラム街を擁するマニラ。この無法地帯でただ毎日を生きる、ある女の物語。ロドリゴ・ドゥテルテ大統領による過激な麻薬撲滅への道程をここに見る。ローサはマニラのスラム街の片隅でサリサリストアを夫ネストールと共に経営している。かつての日本の下町のように、密接して暮らす人々のつながりは深い。ネストールはいつもだらだらしてばかりだが気は悪くない。店を切り盛りするのはローサ。ローサには4人の子供がおり、彼らは家計のため、本業に加えて少量の麻薬を扱っていた。ある日、密告からローサ夫婦は逮捕される。さらなる売人の密告、高額な保釈金……警察の要求はまるで恐喝まがいだ。この国で法は誰のことも守ってくれない。ローサたち家族は、したたかに自分たちのやり方で腐敗した警察に立ち向かう。2015年現在のフィリピンの貧困率は約22%、その多くがひしめき合ってスラムに暮らしている。スラムでは犯罪は絶えず、薬物常習者、密売人も多い。しかし、警察は押収した麻薬の横流しや密売人への恐喝など“捜査”の名のもとに私腹を肥やし、悪事がバレそうになれば暴力も殺人もいとわない。ロドリゴ・ドゥテルテ大統領就任後、麻薬に関わる者は警察・自警団により超法規的に殺され、恐れをなして自首する者が後を絶たず、刑務所の収監人数を大幅に超えているという。一般市民が貧困から麻薬密売に手を染めた結果、警察から命を狙われるという麻薬撲滅戦争の恐怖の連鎖が、『ローサは密告された』に垣間見える。第69回カンヌ国際映画祭主演女優賞受賞!本年度アカデミー賞外国語映画賞フィリピン代表!世界三大映画祭でも高く評価されているブリランテ・メンドーサ監督最新作。45歳のデビュー作「マニラ・デイドリーム」で第58回ロカルノ国際映画祭ヴィデオ・コンペ部門金豹賞を受賞し、「第3黄金期」と呼ばれる現在のフィリピン映画シーンを牽引しているブリランテ・メンドーサ。世界三大映画祭であるカンヌ、ヴェネチア、ベルリンすべてのコンペティション部門でその作品が上映され、世界中で50を超える賞を獲得、第62回カンヌ国際映画祭では「キナタイ-マニラ・アンダーグラウンド-」で監督賞を受賞、クエンティン・タランティーノやショーン・ペンがその才能を絶賛するなど、世界中で高い評価を得ている。本作は第69回カンヌ国際映画祭で、クリステン・スチュワート、シャーリーズ・セロン、レア・セドゥ、イザベル・ユペールらを抑えて、ローサを演じるジャクリン・ホセにフィリピン初の主演女優賞をもたらした。審査員のひとりだったドナルド・サザーランドはホセを「超一流の演技」と絶賛し、キルステン・ダンストはラストシーンで感極まって落涙したと告白している。第54回ヒホン国際映画祭監督賞受賞、本年度のアカデミー賞外国語映画賞フィリピン代表にも選出。世界から熱くし支持された『ローサは密告された』がまもなく日本に上陸する!2017年10月22日シネマ・クレール★★★★「ブレードランナー2049」2019において、なぜレイチェルのみが生きることが許されたのか?その謎がここで解き明かされる。しかし、それが本当なのだとしたら、レプリカントとは何なのか?異常な筋肉と、新世代は従順な性質を持つという以外、もうひとつ決定的な性質以外は人間と同じ。感情もあれば、涙も流す。2021年6月10日は、後に地球の歴史において、大きな画期となるかもしれない。今回、新世代レプリカントのKには、バーチャルな彼女が登場する。そういう意味では彼女も、学習を重ねて涙も流すし、相手に合わせて実に可愛らしい「心」を持つ。しかも、自分で判断したのか、他の女性レプリカントと同期して身体の関係さえ持つのである。そういう意味では、今回は彼女と人間の違いは何か、ということさえ問題になるだろう。Kにせよ、その「彼女」にせよ、そして人間にせよ、どこがどう違うというのか、答えの出ていない問が、約3時間のゆっくりとして濃密な映像の中で、何度も問われる。そのために、こういう長大な上映時間が必要だったのだろう。Kが最後まで「特別な存在」なのではないかと思っていたが、ラストカットで、明らかになった。それはそれで疑問の余地は無いだろう。レプリカントとは何なのか?今のところ、「エイリアンシリーズ」のアンドロイドとは、違う系統のようだ。でもまだ数十年間あるので、どうなるかはわからない。STORY2022年にアメリカ西海岸で大規模な停電が起きたのをきっかけに世界は食物供給が混乱するなど危機的状況を迎える。2025年、科学者ウォレス(ジャレッド・レトー)が遺伝子組み換え食品を開発し、人類の危機を救う。そして、元捜査官デッカード(ハリソン・フォード)が突然行方をくらませて以来30年の月日が流れた2049年には、レプリカント(人造人間)の寿命に制限がなくなっていた。キャストライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス、シルヴィア・フークス、ロビン・ライト、マッケンジー・デイヴィス、カーラ・ジュリ、レニー・ジェームズ、デイヴ・バウティスタ、ジャレッド・レトースタッフ監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ脚本・原案:ハンプトン・ファンチャー脚本:マイケル・グリーン製作:アンドリュー・A・コソーヴ、ブロデリック・ジョンソン、バッド・ヨーキン、シンシア・サイクス・ヨーキン製作総指揮:リドリー・スコット、ビル・カラッロ、ティム・ギャンブル、フランク・ギストラ、イェール・バディック、ヴァル・ヒル共同製作総指揮:イアン・マッグローイン、オーサ・グリーンバーグ共同プロデューサー:カール・O・ロジャース、ダナ・ベルカストロ、スティーヴン・P・ウェグナー撮影:ロジャー・ディーキンスプロダクションデザイン:デニス・ガスナー視覚効果監修:ジョン・ネルソン衣装デザイン:レネー・エイプリル音楽:ベンジャミン・ウォルフィッシュ、ハンス・ジマー上映時間163分2017年11月9日Movix倉敷★★★★「マイティ・ソー バトルロイヤル」最初はそうだったのかもしれないが、だんだんそうではなくなったと思っていたのだが、今回究極の「女神」が出てきたことで、やっぱりこれは壮大な姉兄弟の兄弟喧嘩なのだと思えてきた。人類の昔から、神様の兄弟喧嘩は、下界を巻き込むのである。結局毎回毎回彼らは死なない。ロキはもちろんのこと、ヘラの最期も描かれてはいないので、今度も出す気満々だろう。それにしても、ナタリーポートマンとは別れてしまったんだ。「振られた」のか「お互い振った」のかは藪の中。残念だ。アンソニー・ホプキンスも退場させた代わりに、今度はケイト・ブランシェットをソー組に入れた。イドリス・エルバという神様の仲間入りにふさわしい女性も入った。もうしばらくは、何作かは作られるだろう。テーマ音楽の壮大さが、とっても仰々しくて、マンガちっくな映像にあっていた。いいチョイスだったと思う。STORYアベンジャーズのメンバーであるソー(クリス・ヘムズワース)の前に、邪悪な敵ヘラ(ケイト・ブランシェット)が出現する。ヘラはソーの武器ムジョルニアを破壊し、ソーを宇宙の果てへと飛ばしてしまう。とらわれの身となったソーは、脱出を懸けてチャンピオンと対決することになり、彼の前に現れたのは……。(キャスト)クリス・ヘムズワース、トム・ヒドルストン、ケイト・ブランシェット、イドリス・エルバ、ジェフ・ゴールドブラム、テッサ・トンプソン、カール・アーバン、マーク・ラファロ、アンソニー・ホプキンス、(スタッフ)監督:タイカ・ワイティティ脚本:エリック・ピアソンストーリー:クレイグ・カイル、クリストファー・ヨスト、エリック・ピアソン2017年11月12日Movix倉敷★★★☆
2017年12月12日
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今月の映画評です。「オケ老人」ずっと重たい映画が続いたので、昨年一番笑った作品を紹介します。「オケ老人」。ボケ老人じゃないよ。老人たちのオーケストラです。梅が岡高校に赴任してきた数学教師の千鶴(杏)は、本格的なオーケストラのヴァイオリン奏者になる夢が諦め切れません。そこで、その町のプロ並みのアマオケ≪梅が岡フィルハーモニー≫に入団・・・したつもりが、入った先は年寄りばかり、素人丸出しの≪梅が岡交響楽団≫でした。千鶴の入団を大喜びする老人たちに「楽団名を間違えた」と言い出せず参加することになり、しまいには指揮棒を振るはめに…。笹野高史、左とん平、小松政夫、藤田弓子、石倉三郎、茅島なるみ、喜多道枝等々、名前を聞いただけでは顔は思い浮かべない人もいるかもしれませんが、みんな1度は見たことのあるベテラン俳優ばっかり。ほとんど地なんじゃないかと勘違いするくらいの流石の老け役を演じます。耳が遠い人、認知症が始まっている女性、心臓疾患、あるいは点滴機器と共に歩いてくる老人‥‥。最初はいくらなんでも年寄りの暇つぶしに付き合わされる千鶴も可哀想だと思うのですが、次第と一生懸命音楽をやりたいと思っている「オケ老人たち」を応援している私がいます。千鶴はずっと老人たちから逃げたいと思っていましたが、フランスの世界最高と言われる指揮者ロンバールとひょんなことから知り合いになり、自信を取り戻し、遂にはコンサートを計画するまでになるのです。「せっかくもろうた命じゃ、楽しまにゃ損じゃ」人生いつまでも進歩し続けるものだ、というメッセージをかろやかに奏でます。少し都合良すぎる展開はありますが、明るい展開なのであまり気になりません。朝ドラ主演のあと、お母さんになって復帰第一作の杏が、思いもかけず見事なコメディアンヌぶりを発揮していてびっくりしました。栃木県の足利市、福生市、秩父地域をロケ地に選んでいます。特別、観光場面は出て来ませんが、あゝ地方の文化活動ってこんなのだな、と思えます。地方の公民館活動を応援する作品にもなっています。(2016年細川徹監督作品、レンタル可能)
2017年11月17日
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10月に観た映画の後半三作品である。「エル ELLE」疲れていたこともあって、途中何度か意識が飛んだので、正確に評価できるか不安。兎も角、オンナの不思議を徹底的に描き出した。こんなオンナの前では、サイコ犯人も形無しだ。ヒロインは当然として、その母親、息子の恋人、友人も「病的」である。反対に言えば、欲望に忠実。サイコ犯人のように、屈折していない。素直に病的だ。と思う。こんなオンナたちを描く意味がわからない。(解説)『ピアニスト』などのフランスの名女優イザベル・ユペールと『氷の微笑』などのポール・ヴァーホーヴェン監督が組んだ官能的なサイコスリラー。『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』の原作者フィリップ・ディジャンの小説を原作に、レイプ被害者の女性が犯人を捜しだそうとする姿を描く。『ミモザの島に消えた母』などのロラン・ラフィットや『愛されるために、ここにいる』などのアンヌ・コンシニらが共演。欲望や衝動によって周囲を巻き込んでいく主人公を熱演するイザベルに注目。(あらすじ)ゲーム会社の社長を務めるミシェル(イザベル・ユペール)はある日、自宅で覆面の男性に暴行されてしまう。ところがミシェルは警察に通報もせず、訪ねてきた息子ヴァンサン(ジョナ・ブロケ)に平然と応対する。翌日、いつも通りに出社したミシェルは、共同経営者で親友のアンナ(アンヌ・コンシニ)と新しいゲームのプレビューに出席する。2017年10月12日シネマクレール★★★「エルネスト」完全に裏をかかれた。「チェ・ゲバラの意思を継いだ男」とチラシにあったので、てっきりボリビアのゲリラ戦と、その後紆余曲折を経て軍事政権が倒されるまでが描かれるのだと思っていた。そうではなく、ほとんどが学園青春物語だった。確かにフレディ前村は、ゲバラと同じように医学生の安全な身分を投げ打って危険な祖国解放の戦いに身を投じた。そこには、70年以上の平和に恵めれている日本人には理解が出来にくいことなのだろう。私もよくわからない。そもそもゲバラのボリビア潜入が、戦術的にも戦略的にも正しかったとは、私は思えない。しかし、南米のアメリカからの独立がない限りキューバを含む南米人民の幸せは成り立たないというチェの思想には共感を覚えるし、50年間でそれを実現しつつあるからこそ、こういう映画も作られるようになったのだろう。革命直後のキューバの生活が描かれる。ボリビアや各国から奨学金を支給して医学生を受け入れているキューバの懐の深さと強かさ、母子家庭がきちんと生きていけるのを保障する理想主義、貧しいながらも50年間歌が絶えなかったのもよくわかる。(見どころ)キューバ革命の英雄チェ・ゲバラと行動を共にした日系人のフレディ前村を題材にしたドラマ。留学先のキューバでゲバラに出会って心酔し、共にボリビア軍事政権に挑んだ彼の姿を描く。メガホンを取るのは『顔』などの阪本順治。『血と骨』『ゆれる』などのオダギリジョー、『海辺の生と死』などの永山絢斗、写真家、ダンサーでもあるホワン・ミゲル・バレロ・アコスタらが出演。(あらすじ)日系二世として生まれ、医者になることを夢見るフレディ前村(オダギリジョー)。キューバのハバナ大学に留学した彼だったが、キューバ危機に直面する。混乱の中でチェ・ゲバラ(ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ)と出会ったフレディは、その理念やカリスマ性に感銘を受ける。やがてゲバラの部隊に加入した彼は、ゲバラのファーストネームであるエルネストを戦士名として本人から授けられる。そして、ボリビアの軍事政権を倒す戦いに身を投じるが……。2017年10月12日シネマクレール★★★★「猿の惑星 聖戦記」最初の猿の惑星は、黒人公民権運動を戯画化していたが、今回は最後の決着の付け方を見ると、9.11に始まる民族と宗教国同士の争いを批判しているように思える。結局、人間同士の自滅で終わった結末が、そのことを象徴的に表している。結局人類が滅びたのは、サル族の滅ぼされたのではなく、お互いに争いあって自滅したという結果になった。私としては、最後は変わり果てた自由の女神像を映して欲しかったのだが、過去の作品とは決別しているというメッセージだったのかもしれない。シーザーの息子のコーネリアスが出てきたので、すわ、元作のコーネリアス博士かと思いきや、よく考えれば人類時代はあの作品では数千年前の世界なので、違うのである。■ あらすじ猿と人類の全面戦争が始まってから2年が経ち、シーザー(アンディ・サーキス)が率いる猿の群れは、森の奥深くのとりでに姿を隠していた。ある日、奇襲によってシーザーの妻と息子の命が奪われる。シーザーは人類の軍隊のリーダーである大佐(ウディ・ハレルソン)に復讐するため、オランウータンのモーリス(カリン・コノヴァル)らと共に旅立つ。■ 解説『猿の惑星』の前日譚(たん)を描いた『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』『猿の惑星:新世紀(ライジング)』の続編となるSF大作。猿と人類が地球の支配者を決する戦いの一方で、自らの種族を守るべく行動する猿のリーダー・シーザーの心の葛藤も映す。シーザーは、前2作に続きアンディ・サーキスが演じる。共演は、ジュディ・グリアとウディ・ハレルソンら。監督は前作と同じくマット・リーヴスが務める。■ キャストアンディ・サーキス、ウディ・ハレルソン、スティーヴ・ザーン、カリン・コノヴァル、アミア・ミラー、テリー・ノタリー、タイ・オルソン、マイケル・アダムスウェイト、トビー・ケベル、ガブリエル・チャバリア、ジュディ・グリア■ スタッフ監督・脚本: マット・リーヴス脚本: マーク・ボンバック2017年10月15日Movix倉敷★★★☆
2017年11月15日
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10月に観た作品は"たったの"5作品でした。これはひとえに〆切地獄でのたうち回っていたからです。2週間、1作も観ることができませんでした。それはそれとして、8月に観た作品一つを紹介し忘れていることに気が付きました。あわせて6作品、2回に分けて紹介します。「海辺の生と死」全体155分。何事も起こらない。ずっと、波の音と森の声と沖縄民謡を聞いているという感じ。途中何度も意識が遠のく。ある時は、朔中尉が悪夢を見たのか叫んで飛び起きた時に、私も目覚めた。彼がどんな悪夢を見たのかわからないが、ついうとうとしそうな雰囲気だけは身を持って体験した。奄美諸島の身体を体現して、満島ひかりが、ゆっくりとした方言をしゃべる。戦闘場面はなく、軍隊場面もほとんどない。一回だけ、米軍機の攻撃があった。155分で、ひたすら南の島を描く。「死んではいけない。戦争は嫌!」反戦メッセージは、それくらいのもので、あとはゆっくり寝ていられる作品でした。(解説)傑作「死の棘」を世に放った島尾敏雄と、その妻、島尾ミホ。時は太平洋戦争末期、ふたりが出会ったのは、圧倒的な生命力をたたえる奄美群島・加計呂麻島。男はじりじりと特攻艇の出撃命令を待ち、女はただどこまでも一緒にいたいと願った。後年、互いに小説家であるふたりがそれぞれ描いた鮮烈な出会いと恋の物語を原作に、奄美大島・加計呂麻島でのロケーションを敢行し、映画化を果たした。また、奄美群島で古くから歌い継がれてきた奄美島唄の歌唱指導にあたったのは、“クジラの唄声”で人々の心を魅了する唄者(ウタシャ)朝崎郁恵。自身もルーツを奄美大島に持つ満島ひかりが歌う島唄の調べが、観る者の心を揺さぶる。『愛のむきだし』でブレイク後、『川の底からこんにちは』『悪人』『駆込み女と駆出し男』『愚行録』など一作ごとに評価を高め、テレビドラマ「トットてれび」「カルテット」で、唯一無二の女優として活躍の場を広げる満島ひかり。そんな彼女が『夏の終り』以来4年ぶりの単独主演作に選んだのが『海辺の生と死』である。日本文学の傑作「死の棘」のヒロイン島尾ミホが加計呂麻島で過ごした青春期と人生を決定づけることになった恋をその真っ直ぐな存在感で体現した。(物語)昭和19年(1944年)12月、奄美 カゲロウ島(加計呂麻島がモデル)。国民学校教員として働く大平トエは、新しく駐屯してきた海軍特攻艇の隊長 朔中尉と出会う。朔が兵隊の教育用に本を借りたいと言ってきたことから知り合い、互いに好意を抱き合う。島の子供たちに慕われ、軍歌よりも島唄を歌いたがる軍人らしくない朔にトエは惹かれていく。やがて、トエは朔と逢瀬を重ねるようになる。しかし、時の経過と共に敵襲は激しくなり、沖縄は陥落、広島に新型爆弾が落とされる。そして、ついに朔が出撃する日がやってきた。母の遺品の喪服を着て、短刀を胸に抱いたトエは家を飛び出し、いつもの浜辺へと無我夢中で駆けるのだった・・・。2017年8月20日シネマ・クレール★★★「母 小林多喜二の母の物語」最初に山田火砂子監督の挨拶があった。85歳とは思えない、矍鑠とした女性、正に火の女という感じがした。「戦争で1番可哀想な想いをするのはお母さん。わたしは靖国の母と看板を掛けられて泣いていたお母さんをたくさん見た。狂ったお母さんも見た。わたしはこの作品を戦争反対のためにつくりました」勿論映画は、1933年2月の多喜二の死を最大のクライマックスにはしているが、そこに至るまで、またはそこから1961年にセキがなくなるまでを淡々と描いている。資金不足で作っているために、台詞に説明的な冗長さがあるのは責めるべきではないのだろう。秘密保護法、戦争法、共謀罪が成立した現代に向かって、それと似通っている社会を告発的に、声高に描くのではなく、あくまでも息子のことをひたすら信じ、心優しいセキの視点で描いているので、「やさしい作品」になっている。こういう作り方は、役者がしっかりしていないと急にリアリティをなくす。寺島しのぶはもちろんのこと、塩谷瞬も案外良かった。総社出身の山口馬木也も誠実な神父を演じて、三浦綾子の世界を作っていた。制作 現代ぷろだくしょん監督 山田火砂子出演 寺島しのぶ、塩谷瞬、趣里、渡辺いっけい、佐野史郎、赤塚真人、真行寺君枝2017年10月5日倉敷芸文館★★★☆「ドリーム」最近になってやっと映画が次々と作られて来たが、1960年代の黒人差別は、ホントに深刻であり、白人と黒人との分かり合いに、反対に言えばここまで、50年以上もかかったということなのだろうと思う。「勘違いしないで。私は偏見を持っているわけじゃないのよ」「知っている。貴女がそう思い込んでいるということを」嫌韓の人々の偏見を、解消するのは、いったいいつになることやら。彼らは言葉が通じて、一緒に住んでいてもあれだけかかった。黒人差別を描く、また新たな佳作が生まれた。【ストーリー】1960年代の初め、ソ連との宇宙開発競争で遅れを取っていたアメリカは、国家の威信をかけて有人宇宙飛行計画に乗り出す。NASAのキャサリン・G・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)、ドロシー・ヴォーン(オクタヴィア・スペンサー)、メアリー・ジャクソン(ジャネール・モネイ)は、差別や偏見と闘いながら、宇宙飛行士ジョン・グレンの地球周回軌道飛行を成功させるため奔走する。「解説」人種差別が横行していた1960年代初頭のアメリカで、初の有人宇宙飛行計画を陰で支えたNASAの黒人女性スタッフの知られざる功績を描く伝記ドラマ。NASAの頭脳として尽力した女性たちを、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』などのタラジ・P・ヘンソン、『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』などのオクタヴィア・スペンサー、『ムーンライト』などのジャネール・モネイが演じる。監督は『ヴィンセントが教えてくれたこと』などのセオドア・メルフィ。ミュージシャンのファレル・ウィリアムスが製作と音楽を担当した。【英題】HIDDEN FIGURES【監督・製作・脚本】セオドア・メルフィ【脚本】アリソン・シュローダー【製作・音楽】ファレル・ウィリアムス【出演】 タラジ・P・ヘンソンオクタヴィア・スペンサージャネール・モネイケヴィン・コスナーキルステン・ダンストジム・パーソンズマハーシャラ・アリ2017年10月8日イオンシネマ★★★★
2017年11月14日
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「92歳のパリジェンヌ」映画評去年の一番最後に観た映画で、テーマとは裏腹に明るいタッチの作品ですが、私にはかなりショックな作品でした。前回の「さざなみ」もそうですが、私は鑑賞の間何もかも忘れてのめりこむような作品よりも、後を引きまくる作品の方が好みなようです。もちろんそのような作品は完成度が高くないと成立はしません。あなたは、親が突然「病院でみじめな死に方はしない。二か月後に自ら死ぬ」と宣言したら、どう対応しますか。これはフランス首相ジョスパンの母親の実話を基に脚色された作品です。主な登場人物は、助産師で社会運動家でもあり、今はまだ頭もクリアな92歳の母親マドレーヌ(マルト・ヴィラロンガ)と、最初は戸惑い反対するがやがて母親を理解しようとする娘(サンドリーヌ・ボネール)、終始一貫して反対する実業家の息子(アントワーヌ・デュレリ)、最初は祖母のことを応援するけれど最終盤で反対する孫の青年です。三者三様の家族の反応は、わたしたちの反応でもあるでしょう。マドレーヌは、老いさらばえたブヨブヨの身体と同時に、射抜くような表情、チャーミングな笑顔も見せて、とても魅力的。尊厳死の決断は揺るぎません。私ならどうするのか?先ず「家の中で死ぬ方法もあるじゃないか」と説得するでしょう。しかし、死を待つ時には既に自分の死に方は選べなくなっている可能性がある。本人の意思は変わらないでしょう。ホントに家族に伝えるべきだったのか。しかし伝えなければ、残された家族はもっと悲しんだかもしれない。突然死ぬわけにはいかない。しかも、自殺時に家族が側に寄り添えば自殺幇助になる。独りで逝かせてホントにいいのか。答はない。私は頭を抱えました。ただ私は、この間に続けざまに看取った3人の親族(父親と伯母夫婦)のことを考えました。3人とも病院で亡くなりましたが、なんと3人とも私が終末医療の方針に決断を下さざるを得ませんでした。人間には自由があるけれども、「現代医療の死」に関しては、残念ながら多くの患者には自由は与えられていません。私は親族3人に自由を与えませんでした。いまだに突然後悔に苛まれます。これは大きな「問いかけ」の映画です。(2016年仏、パスカル・ブザドゥー監督作品、レンタル可能)
2017年10月17日
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後半の3作品です。「夜明けの祈り」この作品は、ソ連兵の蛮行によって身籠った修道女たちを助けた、人道支援の医師の話というだけではない。それはどうやってなされたのか、ということがより重要なテーマとなっている。この時、修道女はガチガチのカソリックの規律に縛られ、世間もそれを求めている。悪いのはソ連だが、それを受けて生き延びている修道女も世間的に生きていけない。医師に裸も見せない規律をどう守るのか、が試されている。規律が破られても、神は愛してくれるのか?一方それを助けるのは、たまたま共産主義者の女医だった。初めは「命は大切」というだけでたいへんな危険で体力的にもきつい事をやるのであるが、次第とそれだけだはなく、心から彼女たちの信仰を理解し始める。もちろん、共産主義の旗は下ろさない。信仰と共産主義の「共闘」が、此処では語られている。医師は職場の無理解に対して闘い、修道女は院長の妨害と闘う。私は20歳の時に唯物論者としての「洗礼」を受けた。多くの人は誤解しているかもしれないが、私は神はいないと思っているが、それは神の不在が唯物論的に、或いは科学的に証明されているからではない。私は神の不在に確信を持った事は一度もない。私は神の不在がいつの日か証明されると「信じて」いるだけなのである。よって、立場的には、信仰をしている人たちと全く同じ立場にある。私は20歳の時に二つの道の選択を迫られた。そして、えいやっと左の道に飛び込んだのに過ぎない。そして副院長のマリアのように、最初は父親に連れらて導きのままに唯物論者の道を歩くが、やがて突然、大きな試練にぶち当たる。独りになる。そういう意味では、信仰も、そうでない道も同じなのだ。信仰には周りに仲間がいるが、唯物論者も仲間がいる。多分、それで助けられるのに過ぎないだろう。だから、マチルダは直ぐに修道女たちの信頼を得たのだ。(解説)1945年のポーランドで実際に起こった衝撃的な事件その深い闇に希望の灯りをともした、フランス人医師の真実の物語。『ドライ・クリーニング』『ココ・アヴァン・シャネル』『ボヴァリー夫人とパン屋』で女性の生き方や愛の目覚めを描き、官能的なまでに甘美な作風で世界中の観客を魅了してきたアンヌ・フォンテーヌ監督。現代のフランス映画界を代表する監督のひとりとしても常に注目を集める彼女の最新作は、実在した医師マドレーヌ・ポーリアックの物語だ。人間の尊厳を踏みにじる悲劇的な事件に巻き込まれ、心身ともに傷ついた修道女たちを救うために尽力した若き女医の実話を映画化し、フランスのアカデミー賞にあたるセザール賞で作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞にノミネートされた話題作である。(ストーリー)「マチルド、私たちを見捨てないで」「あなたに神のご加護を」「どうか神の祝福があらんことを」「あなたは救世主よ」1945年12月のポーランド。赤十字の施設で医療活動に従事するフランス人医師マチルドが、見知らぬシスターに請われ、遠く離れた修道院を訪ねる。そこでマチルドが目の当たりにしたのは、戦争末期のソ連兵の蛮行によって身ごもった7人の修道女が、あまりにも残酷な現実と神への信仰の狭間で極限の苦しみにあえぐ姿だった。かけがえのない命を救う使命感に駆られたマチルドは、幾多の困難に直面しながらも激務の合間を縫って修道院に通い、この世界で孤立した彼女たちの唯一の希望となっていく……。ルー・ドゥ・ラージュ(マチルド)2017年9月21日シネマ・クレール★★★★「ヒトラーへの285枚の葉書」予告を観ていたので、大きな驚きはない。原題「Alone in Berlin」私流に訳すると「ベルリンで2人きり」。1番大きな驚きは、ゲシュタポに把握されたカードが、267/285枚だったことだ。1940年から1943年にかけて、93.6%のベルリン市民は、カードを見つけて直ぐに警察に届けたのだ。日本の愛国心教育は知っていたが、ドイツのそれも、愛国心に洗脳があり、監視社会の徹底があったということだ。72年経って、やっとこういう映画が出来るのは、カードを拾った人物が既に死に絶えた事を見越したということなのか。ファシズムをつくった一般市民の罪がやっとこういう形ではあるが、出て来ている。まだ遅くない。日本も続けと言いたい。反対に言えば、続かないのは、日本の成熟度がまだドイツに遅れているからだ。事実を元に作られているのだろうが、ラストは脚色だと思う。また、いくら巧妙に置いたとしても、2年間も犯人を見つけることができなかったのは何故か。捜査官の見逃しは本当になかったのか?それも疑問だ。夫婦2人の演技は素晴らしく、見応えがあった。(解説)ペンと葉書だけを武器にしてヒトラー政権に抵抗したごく平凡な労働者階級の夫婦の驚くべき物語 戦後70年以上経った今も、第二次世界大戦下におけるナチス・ドイツの恐怖政治を題材にした映画は絶え間なく作られている。製作国もジャンルも切り口も多様なそれらの作品は、それぞれが現代に通じる独自のテーマやメッセージを打ち出し、日本でも幅広い層の映画ファンの興味を引きつけてきた。このたび新たにお目見えするイギリス、フランス、ドイツの3ヵ国合作映画『ヒトラーへの285枚の葉書』は、ナチの非人道的な全体主義に立ち向かった男女を描くヒューマン・ドラマだが、これまでのレジスタンスものとはまったく趣を異にする。主人公は戦時下のベルリンで慎ましい生活を営み、どの組織にも所属していない労働者階級の夫婦。特別な知識や力を何ひとつ持たない一般市民が、ペンと葉書だけを武器にして命がけの抵抗運動に身を投じていく驚くべき物語である。戦時下のベルリンの緊迫した市民生活を今に伝え、人間の尊厳を問いかけるベストセラー小説を映画化 本作の原作は、ドイツ人作家ハンス・ファラダがゲシュタポの記録文書を基に、わずか4週間で書き上げたと言われる「ベルリンに一人死す」。実在したオットー&エリーゼのハンペル夫妻をモデルにしたこの小説は、アウシュヴィッツ強制収容所からの生還者であるイタリアの著名作家プリーモ・レーヴィに「ドイツ国民による反ナチ抵抗運動を描いた最高傑作」と評され、1947年の初版発行から60年以上経た2009年に初めて英訳されたことで世界的なベストセラーとなった。 この反戦小説に深い感銘を受け、自らメガホンを執って念願の映画化を実現させたのは、1990年代に『シラノ・ド・ベルジュラック』『インドシナ』『王妃マルゴ』といったフランス映画の歴史大作に相次いで出演し、美男スターとして一世を風靡したヴァンサン・ペレーズ。ペレーズ監督自身、父親がスペインの出身で祖父はフランコ将軍のファシスト政権と戦い処刑され、母親はドイツ系でナチスから逃れて国外へ脱出したという過去を持っている。本作では、息子の死をきっかけにナチの独裁政権に反旗を翻した平凡な夫婦が、ゲシュタポの捜査網をかいくぐりながら2年間にわたって孤独で絶望的な闘いを繰り広げていく姿を、静かな畏敬の念をこめて映し出す。《出演》エマ・トンプソンブレンダン・グリーソンダニエル・ブリュール《監督》ヴァンサン・ペレーズ2017年9月21日シネマ・クレール★★★★「エイリアン : コヴェナント」最後の一行で、ネタバレに近い事を書くので気をつけるように。リドリー・スコットにとって「エイリアン」と「ブレードランナー」は、生涯を決めた作品なのだということが、やっとわかった。こんな風に、数十年間にかけて作られた作品が繋がって行くとは全く驚き以外の何物でもない。「プロテメウス」の続編ではないか、という噂は聞いていたが、まさかここまでストレートに繋がっていたとは思わなかった(なんと、三部作の第二作だそうだ)。そして、冒頭の、一見作品とはあまり関係なさそうな場面が、シリーズ全ての基調を決めている。「(アンドロイドのデイヴィッドに向かって)私はお前の創造主、父親だ」「では、貴方の父親は誰なのですか?」「むつかしい問いだ。何処から来て、何処に行くのか。お前と共に探してゆきたい」(怪物に勇敢に立ち向かった英雄ダビデである)デイヴィッドは何故プロテメウスに乗ることになったのか。そこにはまた別の物語があったかもしれないし、まだまだ彼は、リドリー・スコットサーガの中で登場するかもしれない。あとで気が付いたが、デイヴィッドという名前は、リドリー・スコットのエイリアン、プロテメウス、ブレードランナーすべてで「製作者」として登場している。はっきり言って、彼がこのシリーズの主人公なのかもしれない。ところで、エイリアンは異星人であって異星人ではなかった。まさか、こんな展開になるとは。■ あらすじ宇宙移住計画を遂行するため、コールドスリープ中の男女2,000人を乗せた宇宙船コヴェナント号は、植民地の惑星に向かって宇宙を航行する。最新型アンドロイドのウォルター(マイケル・ファスベンダー)が船の管理を任されていたが、途中で事故が発生。乗組員たちは必死で修復作業に取り組み……。■ 解説巨匠リドリー・スコット監督がメガホンを取った『エイリアン』シリーズの原点となるSFホラー。移住のため宇宙船コヴェナント号で旅立ったクルーたちが、ある惑星で遭遇した出来事を描写する。アンドロイドを『スティーブ・ジョブズ』などのマイケル・ファスベンダーが演じ、ヒロインを『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』などのキャサリン・ウォーターストンが熱演。スコット監督が構築した世界観と衝撃の展開に絶句する。■ キャストマイケル・ファスベンダー、キャサリン・ウォーターストン、ビリー・クラダップ、ダニー・マクブライド、デミアン・ビチル、カーメン・イジョゴ、ジャシー・スモレット、キャリー・ヘルナンデス、エイミー・サイメッツ、ナサニエル・ディーン、アレクサンダー・イングランド、ベンジャミン・リグビー、ウーリ・ラトゥケフ、テス・ハウブリック■ スタッフ監督・製作: リドリー・スコット脚本: ジョン・ローガン脚本: ダンテ・ハーパー2017年9月25日Movix倉敷★★★★
2017年10月10日
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真ん中の3作です。「新感染 ファイナル・エクスプレス」泣けるゾンビ映画、という噂を聞いていた。泣けはしなかったが、洋画のそれとも、日本のそれとも、違う、しかも本格的な、最後はなんと温かくなるような、なかなかすごいゾンビ映画だった。言うまでもなく、私はゾンビ映画が苦手なので、高い点数つけれなあけれども、独創的・しかも古典的、という点でエンタメだった。評判が高いのもうなずける。強い奴から犠牲になる。最も弱い者が最後に残る。韓国映画は、まるで映画教科書のようにいつも作品を作る。必ず、最初の頃のエピソードが最後で伏線として使われていたことに気がつく。わかっちゃいるけど、上手いと思う。■ あらすじ別居中の妻がいるプサンへ、幼い娘スアンを送り届けることになったファンドマネージャーのソグ(コン・ユ)。夜明け前のソウル駅からプサン行きの特急列車KTX101号に乗り込むが、発車直前に感染者を狂暴化させるウイルスに侵された女性も乗ってくる。そして乗務員が彼女にかみつかれ、瞬く間に車内はパニック状態に。異変に気づいたソグは、サンファ(マ・ドンソク)とその妻ソンギョン(チョン・ユミ)らと共に車両の後方へ避難する。やがて彼らは、車内のテレビで韓国政府が国家非常事態宣言を発令したことを知り……。■ 解説カンヌ国際映画祭やシッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭などで話題となったパニックホラー。感染した者を凶暴化させる謎のウイルスが高速鉄道の車両内にまん延する中、乗客たちが決死のサバイバルを繰り広げる。『トガニ 幼き瞳の告発』『サスペクト 哀しき容疑者』などのコン・ユらが出演。群れを成して襲い掛かる感染者たちに恐怖を覚える。■ キャストコン・ユ、キム・スアン、チョン・ユミ、マ・ドンソク、チェ・ウシク、アン・ソヒ、キム・ウィソン、チェ・グィファ、パク・ミョンシン、シム・ウンギョン、イェ・スジョン■ スタッフエグゼクティブプロデューサー: キム・ウテクプロデューサー: イ・ドンハ脚本: パク・ジュソク監督: ヨン・サンホ2017年9月11日Movix倉敷★★★★「ダンケルク」狙いはよくわかる。台詞をできる限り少なくして、撤退戦そのものを観客に体感させようとした。しかしながら、歴史的事実をある程度予習して臨んだのではあるが、どうしても違和感を感じざるを得なかった。何故ドイツは、一週間もの間、あんな貧弱な防衛戦を突破して浜辺に到着しなかったのか。何故、ドイツ空軍は、映画ではたった3機の優秀な飛行機に苦しめられて、実質的に撤退を許したのか?魚雷を何発か打ってはいるが、民間船を攻撃していないのは何故か?もちろん、歴史的事実を調べたならば、ちゃんと33/40万人を救えた根拠、そして多大な救援機、駆逐艦が派遣されたことはわかる。しかし、映画ではあまりその辺りがわからないのだ。かえって誤解されるような作り方になっている。その辺りは、是非とも台詞で説明してもよかったのではないか?兵士や救援者に寄り添った映像や音響は素晴らしく、その辺りは、必ずアカデミー賞を取ると思う。作品賞・監督賞は無理なのではないか。■ あらすじ1940年、連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍によってドーバー海峡に面したフランス北端の港町ダンケルクに追い詰められる。ドイツ軍の猛攻にさらされる中、トミー(フィオン・ホワイトヘッド)ら若い兵士たちは生き延びようとさまざまな策を講じる。一方のイギリスでは民間船も動員した救出作戦が始動し、民間船の船長ミスター・ドーソン(マーク・ライランス)は息子らと一緒にダンケルクへ向かうことを決意。さらにイギリス空軍パイロットのファリア(トム・ハーディ)が、数的に不利ながらも出撃する。■ 解説第2次世界大戦で敢行された兵士救出作戦を題材にした作品。ドイツ軍によってフランス北端の町に追い詰められた連合軍兵士たちの運命と、救出に挑んだ者たちの活躍を描く。監督は『インセプション』などのクリストファー・ノーラン。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』などのトム・ハーディ、『プルートで朝食を』などのキリアン・マーフィ、『ヘンリー五世』などのケネス・ブラナーらが出演。圧倒的なスケールで活写される戦闘シーンや、極限状況下に置かれた者たちのドラマに引き込まれる。■ キャストフィオン・ホワイトヘッド、トム・グリン=カーニー、ジャック・ロウデン、ハリー・スタイルズ、アナイリン・バーナード、ジェームズ・ダーシー、バリー・コーガン、ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィ、マーク・ライランス、トム・ハーディ■ スタッフ監督・脚本・制作: クリストファー・ノーラン製作: エマ・トーマス2017年9月17日Movix倉敷★★★☆「三度目の殺人」あの人の言ってた通りだ。此処(裁判所)では、誰もホントの事を喋らない。‥‥誰が裁くんですか?最後に広瀬すずが語った、この一言が、この作品の言いたい事だとは思う。そのために、検察、裁判官、弁護人で行う事前調整の場面を、おそらくドラマ・映画を通じて初めて描いた。その狙いはよくわかる。役所広司と、福山雅治を接見ガラスを通して二重に見せるのは、いい狙いだった。ところが、この作品を福山雅治が台無しにした、と私は思っている。最終段階の脚本を、役所広司、福山雅治共に渡さずに順撮りでブツっけ本番でやらせたらしい。役所広司は素晴らしい。改めて名優だと思う。監督は福山雅治を受けに回らせて、何かを見ようとした。その狙いはわかる。しかし、明らかに失敗であり、何の説得力もなかった。最初、ドライに始まった彼の性格が案外弱いものだという、福山雅治の解釈は、違うと思うし、もしそうだとしても、2度も接見中に泣くか⁈それだけはやってはいけなかった。私は一気に冷めました。それと、一つだけ回収されなかった伏線がある。最初咲江の家で見えた、咲江の靴の血痕は何だったのか?多分あれが、役所広司の最後の台詞に結びつくのだろうと、私は思ったのではあるが。いずれにせよ、これは是枝監督にしては失敗作である。■ あらすじ勝つことを第一目標に掲げる弁護士の重盛(福山雅治)は、殺人の前科がある三隅(役所広司)の弁護を渋々引き受ける。クビになった工場の社長を手にかけ、さらに死体に火を付けた容疑で起訴され犯行も自供しており、ほぼ死刑が確定しているような裁判だった。しかし、三隅と顔を合わせるうちに重盛の考えは変化していく。三隅の犯行動機への疑念を一つ一つひもとく重盛だったが……。■ 解説第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作『そして父になる』の福山雅治と是枝裕和監督が再び組んだ法廷サスペンス。死刑が確実視されている殺人犯の弁護を引き受けた弁護士が、犯人と交流するうちに動機に疑念を抱くようになり、真実を知ろうとするさまを描く。弁護士や検事への取材に加え、作品の設定通りに実施した模擬裁判で出てきたリアルな反応や言動などを脚本に反映。福山ふんする主人公が弁護を担当する殺人犯を、役所広司が演じる。■ キャスト福山雅治、役所広司、広瀬すず、斉藤由貴、吉田鋼太郎、満島真之介、松岡依都美、市川実日子、橋爪功■ スタッフ監督・脚本: 是枝裕和撮影監督: 瀧本幹也美術監督: 種田陽平音楽: ルドヴィコ・エイナウディ2017年9月20日Movix倉敷★★★☆
2017年10月09日
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9月に観た映画は10作品でした。三回に分けて紹介します。「おとなの恋の測り方」冒頭上手いなあと思った。美人の帰宅。そこに電話が入る。「そこは自宅?」忘れてきた携帯を返すために、見事な会話でランチまで持ってゆく低音の男性の声。しかも、それによって、登場人物の設定も説明してしまう。そこでタイトルバック。そもそも主人公が身長136センチ以外では、金持ち、仕事有能、知的、しかもハンサムと言うことない条件が揃っている時点で、これはファンタジーなのだと思う。でも、主人公たちに共感するのは、多くの恋人たちに立ちはだかる、恋をはじめるとき、恋を発展させる時の障害を描いているからだ。最初は「測り方」と言うから、恋の「駆け引き」がメインになるかと思いきや、すんなりと2人は恋人通しになる。しかし現実はそこからが長い。大人の恋の成立にはいろんな思惑が交差するからだ。ただ、思ったよりも軽いフレンチコメディだった。ところで、卓球の勝負の結果はどうなったの?(解説)『アーティスト』などのジャン・デュジャルダン主演のラブストーリー。優しくて知的でハンサムだが、身長が低い男性と出会った女性の恋の行方を追う。メガホンを取るのは、『プチ・ニコラ』『アステリックスの冒険 秘薬を守る戦い』などのローラン・ティラール。『ターニング・タイド 希望の海』などのヴィルジニー・エフィラが共演し、コミカルでハートウォーミングな物語が展開する。(あらすじ)浮気性な夫と離婚して3年が経過したものの、いまだ仕事上のパートナーである彼と衝突を繰り返す弁護士のディアーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)。ある日、アレクサンドル(ジャン・デュジャルダン)から彼女がレストランに置き忘れた携帯電話を拾ったという連絡が入る。優しげな声と知的でユーモラスな話し方にディアーヌは、新たな恋を見つけられるかもしれないと期待を抱いて携帯電話を受け取りにいく。だが、アレクサンドルはハンサムだったが自分より身長が低く……。2017年9月3日シネマ・クレール★★★☆「幼な子われらに生まれ」18年前ぐらいに、重松清の原作を読んだ。内容はまるきり覚えていなかったが、確か主人公田中の一人称の独白の話だったと思う。初期の重松清は特にそうなのだが、主人公があまりにも思慮深いのである。元妻との小学校六年の女の子も、あまりにも賢すぎる。また、そうでないと、物語が進まなかったのかもしれない、と今になれば思う。結果、再婚同士の男女と子供の対立を描いたこの作品は、しかし、現代家族小説が少なかったこの頃においてはなんとか成立していた。しかし、私はおそらくわからなかった。あれほど思慮深い主人公がどうして家族と上手く行かないのか?今回、人称はない。そして、主人公は浅野忠信である。最初彼は、キャリアウーマンだった元妻よりも、専従主婦をしっかりやる今の妻のために、残業もなし、酒もなし、休日出勤もない、典型的なマイホームパパを演じるが、いつ豹変して殺人鬼になってもおかしくはない存在感を持つ。こんなイメージは、小説の中の田中にはなかった。キャスティングの妙、ここに極まれり。今回やっと主人公の下衆な部分がわかった。女性は気持ちを聞いて欲しいのに、いつも男は理由を聞くのである。身重の妻をど突いた時も、真っ先に身体を気遣わなかった。これはおそらく一生恨まれる点だろうけど、彼は一生気がつかない。浅野忠信はいつ間違いを犯しても仕方ない人間だったのだ。そのことに、18年前の私は気がつかなかった。それはやはり私が同類だからだろう。だから、本来平凡な家族の話が、とても緊張感のあるものになった。田中麗奈が、いい女優になっている。宮藤官九郎と寺島しのぶはいつもの通り。子役もむつかしい役をなんとかこなした。もう少しで家族が壊れる瞬間に、それを救うのはやはり子どもたちである。ホームドラマでは、登場人物たちがハッと気がついて、ハッピーエンドで終わるのだけど、映画はそんな予定調和な場面を作らない。それがリアルだった。モントリオール準グランプリをとったのも頷ける。(あらすじ)バツイチ、再婚。一見良きパパを装いながらも、実際は妻の連れ子とうまくいかず、悶々とした日々を過ごすサラリーマン、田中信(浅野忠信)。妻・奈苗(田中麗奈)は、男性に寄り添いながら生きる専業主婦。キャリアウーマンの元妻・友佳(寺島しのぶ)との間にもうけた実の娘と3カ月に1度会うことを楽しみにしているとは言えない。 実は、信と奈苗の間には、新しい生命が生まれようとしていた。血のつながらない長女はそのことでより辛辣になり、放った一言―「やっぱりこのウチ、嫌だ。本当のパパに会わせてよ」。今の家族に息苦しさを覚え始める信は、怒りと哀しみを抱えたまま半ば自暴自棄で長女を奈苗の元夫・沢田(宮藤官九郎)と会う決心をするが・・・。2017年9月7日シネマ・クレール★★★★「彼女の人生は間違いじゃない」彼女の人生は間違いじゃないのか?そもそも彼女はなぜ週末デルヘルを始めたのか。間違っているのではないか?と、自問自答しながら最後まで来た。帰りの車の中で思った。彼女の人生は、人生ならば、間違っているはずがない。と。初めて等身大の福島映画が出来たのかもしれない。仮設住宅の生活を丁寧に描く。これは仮設住宅に住んで、震災から5年経った今も、傷ついた心と生活を治しきれないでいる人々の群像劇である。ヒロインは地道な生活をしている。表向きは生活を立て直そうとしてきちんとした生活をする。毎日朝早く起きて、雑誌のレシピを切り取りながら、必ず父親と一緒に三品目ぐらいはつくる。仕事は市役所。堅実である。しかし、彼女にはどうしても死んだ母親を助けることができなかったことを清算できない。それがおそらく週末デルヘルにつながっていたと思う。ヒロインの選定が、この作品の1番の肝だったのかもしれない。ほとんど新人ながら、20代半ば、何処にも居そうな顔でありながら、幼さとオンナとオトナの顔も持つ。簡単にわからせないぞ、という顔だ。佳作である。(解説)福島県と東京を舞台にしたヒューマンドラマ。週末ごとに東京で風俗嬢として働く女性とその周囲の人々の姿を描く。『やわらかい生活』『PとJK』などの廣木隆一が執筆した小説を、自らがメガホンを取って映画化。『グレイトフルデッド』などの瀧内公美、テレビドラマ「バイプレイヤーズ ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~」などの光石研、『横道世之介』などの高良健吾、『俺たちに明日はないッス』などの柄本時生らが顔をそろえる。(あらすじ)東日本大震災からおよそ5年がたった福島県いわき市。市役所に勤めている金沢みゆき(瀧内公美)は、週末になると仮設住宅で一緒に暮らす父親・修(光石研)に英会話教室に通うとうそをつき、高速バスで東京へ行き渋谷でデリヘル嬢として働いていた。ある日、元恋人の山本(篠原篤)からやり直したいと迫られるが、別れる原因にもなった震災で死んだ母をめぐる彼の言葉を思い出してしまう。さらに、震災で妻を亡くし、仕事を失ったことから立ち直れずにいる父親にいら立ちを募らせる。2017年9月13日シネマ・クレール★★★★「散歩する侵略者」途中からなんか既視感があると、ずっと思っていたのだが、直ぐに思いついた。これは、黒沢版「W3」だ。結末も少し似ている。ただ、今回の宇宙人は兎や馬や鴨ではなくうまいこと、人間に乗り移ることが出来ただけである。いわば、オトナ版のワンダースリーとも言える。今回は黒沢清にしては、不可解な部分(最大の不可解は宇宙人の正体ではあるが)がなくて、とてもわかりやすく、その分面白みが減少した。話も、もっとスリラーかと思いきや、むしろコメディとも言えるような、SFホラーコメディ。全然怖くなかった。「愛」という概念を盗むと、人間はあのようになり、宇宙人はあのようになる。というのが、わかるようでよくわからない。宇宙人の頭と、侵略部隊の指令室はリアルタイムでリンクしていたのか、とも思うが、それもあまりにもよくわからない。設定があまりにも絶望的ならば、かえって笑ってしまうのかもしれない。もしかしたら、こういう効果こそが1番のブラックなのかも。期待した社会的メッセージは、なおざりのものしかなく、全くないと言ってもいい。■ あらすじ鳴海(長澤まさみ)の夫・真治(松田龍平)が、数日間行方をくらまし、別人のようになって帰ってくる。これまでの態度が一変した夫に疑念を抱く鳴海は、突然真治から「地球を侵略しに来た」と告白され戸惑う。一方、町ではある一家の惨殺事件が起こったのを機に、さまざまな現象が発生し、不穏な空気が漂い始める。■ 解説『アカルイミライ』などの黒沢清監督が、劇作家・演出家の前川知大が結成した劇団イキウメの舞台を映画化。数日間失踪したのちに様変わりした夫が妻のもとへ戻ったのを機に、平穏だった町が変化するさまを描く。「地球を侵略しに来た」と妻に告白する夫を『舟を編む』などの松田龍平、そんな夫に翻弄(ほんろう)される妻を『世界の中心で、愛をさけぶ』などの長澤まさみ、一家惨殺事件を調査するジャーナリストを『セカンドバージン』などの長谷川博己が演じる。■ キャスト長澤まさみ、松田龍平、長谷川博己、高杉真宙、恒松祐里、前田敦子、満島真之介、児嶋一哉、光石研、東出昌大、小泉今日子、笹野高史■ スタッフ監督・脚本: 黒沢清原作: 前川知大脚本: 田中幸子2017年9月14日Movix倉敷★★★☆
2017年10月08日
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「さざなみ」映画評 えひめ丸に衝突して沈没させた米国潜水艦艦長のように、人は「目を向けていても、見えていない」状態になることがあります(「錯覚の科学」文春文庫)。私は、この作品を最初低く評価していました。確かに重要な場面を私は見ていたのに、その事が意味する重要なことに全く気がつかなかったのです。一ヶ月前、たまたま読んだ映画評でそのことの意味を指摘されていて、私は再度DVDで観ました。そして、私は評価を二転三転させるのです。英国の郊外に初老夫婦が暮らしています。週末に45年目の結婚祝福パーティを開くまでの2人の一週間の話です。夫は元労働運動闘士、妻は元学校教師。 夫婦に子どもはいません。 月曜日、夫に、事故死した元彼女(27歳)がスイスの山奥で若いまま氷漬けで見つかったと知らせが来ます。自分の知り合う前の彼女だし、最初はなんとも思わなかった妻の中に、次第と「さざなみ」が立ち始める のです。夫は確かに彼女に想いを残していると、私も思います。しかし、妻の嫉妬は理不尽なものではないか?と最初思いました。妻は、名女優シャーロット・ランプリング。おそらく60代。観客の私たちは、彼女の美しかった頃を知っています。夫(トム・コートネイ)が元カノの死後、妻に一目惚れする充分な説得力を彼女は持っています。妻の夫を愛(いつく)しんでいる表情が次第と変化してゆく。様々な女優賞を獲ったのも頷けます。木曜日、妻は夫が隠していたスライド写真を見つけます。私は、妻が驚いたのは単なる彼女の若さへの嫉妬だと思っていました。しかし、本当は彼女はある重要な事実に気がついていたのです(観る愉しみのために此処では明かしません)。 金曜日、夫は妻に黙ってスイス行きの可能性を旅行会社と相談していました。しかし体力的に無理だと諦めたようです。妻は街に行き、そのことを突き止め夫を詰ります。 今までのあらゆることの決断に、昔の彼女のことが影響している。妻は夫が自分に不満だったと確信しました。私は3度目の鑑賞で、やっと妻がそのことに1番怒りを覚えているのに、気がつきました。 でも、ホントに妻の思う通りなのかは、人によって、特に夫婦同士では意見が違う可能性があります。夫は今は妻を愛している。そうでなければ、「あの重要な事実」を妻に伝えなかったのは何故か。それこそが、思いやりではないか?いや、違うという人もいるでしょう。是非、夫婦で観た感想を教えて欲しいと思います。その結果、喧嘩になってもちょっと責任は負いかねますが。 (2016年アンドリュー・ヘイ監督、英国作品、レンタル可能)
2017年09月18日
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後半の4作品を紹介します。「スパイダーマン/ホームカミング」マーベルスタジオがアベンジャーシリーズを始めて、ずっと違和感を持っていたのは、結局彼らは「お国のために」活躍しているだけではないか?彼らは「選ばれたエリート」であって、彼らの敵と彼らによって、街を壊された庶民は全然見えてこない。ということだった。ところが、この作品は、8年前に初めてアベンジャーが結成されて、地球外生命体という「最強の敵」から「地球」を救った直後から始まる(実際の公開は2012年)。あの街の残骸の後始末は、当初はトゥームスたちの自治体請負業者がやっていたが、残骸の中に地球外生命体の最新科学があると判明するや、大企業社長のアイアンマンの会社が、横取りをする(なるほど、アイアンマンの会社が悪徳武器商人にならなくても利益を出し続けたのは、こんなカラクリがあったのだと初めて知れる場面)。その時に残骸を密かに回収して、悪徳武器商人になったのがトゥームスである。彼は、巨大な翼を持つ飛行アーマーも開発する。役者は、かつて初代バットマンを演じ、昔の役に囚われ続けたバードマン役を演ったマイケル・キートンである。殺人にも躊躇ない悪人にも関わらず、妻と娘には秘密にして家族想い、完全には悪人ではなく、娘と自分の命を救ったスパイダーマンをラストで悪人から庇うことさえする役を今回は演じていて、まさにうってつけ。結局、今回は15歳の普通の高校生スパイダーマンたちの周辺や、トゥームスたちの周りを描いて、アベンジャーに翻弄されるアメリカ市民を描いていて、出色の作品になった。スパイダーマン演じるトム・ホランドは、これまで「正義とは何か」「力とは何か」を思い悩んだり、無責任に超能力を使いこなすスパイダーマンとは違って、まだまだ未熟なヒーローになりたての「近所の超人」少年の成長物語になっていた。まるで部活のように、近所パトロールする女の声のようなスパイダーマンが「可愛い」。未熟ながら、ちゃんと「机の男」的相棒のネッド(ジェイコブ・バタロン)、級友で社会問題では大人な役を演じるミシェル(ゼンデイヤ)など、充分次を撮ることのできるキャラクターも造っている。メイおばさんはすっかり若返ってマリサ・トメイが演っている。今回アイアンマンも、武器商人で大きな利益を得る大企業社長であり、キャプテン・アメリカも、政府のお尋ね者でありながら、高校の校長の間では、愛国心をいろんな立場から説明するビデオが数ヶ月前のシビルウオーの結果にも関わらず、未だにきちんと使われているという保守派のカリスマ。さらに言えば、トニー・スタークスの秘書(グウィネス・パルトロウ)が未だにカメオ出演して、彼女はこのことだけで生きているのではないか、とさえ思う。マーベルスタジオは、今やXメンシリーズを終わらして、アベンジャーシリーズの看板で儲けようとしているのかもしれない。■ あらすじ15歳の高校生ピーター・パーカー(トム・ホランド)は、まるで部活動のようなテンションでスパイダーマンとして活動していた。まだ若い彼の才能に気付いたアイアンマンことトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)は、ピーターを真のヒーローとして育てようとする。スタークに新しいスーツを新調してもらったピーターは、意気揚々と街へ乗り出し……。■ 解説『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』などのトム・ホランドを主演に迎えたヒーローアクション。血気盛んなスパイダーマンが、突然出現した怪物に戦いを挑む姿を活写する。アイアンマンとして数々のマーベル作品に出演してきたロバート・ダウニー・Jrや、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』などのマイケル・キートンらが共演。新人ヒーローの成長ぶりに目を見張る。■ キャストトム・ホランド、マイケル・キートン、ジョン・ファヴロー、ゼンデイヤ、マリサ・トメイ、ロバート・ダウニー・Jr、ローラ・ハリアー、ジェイコブ・バタロン、トニー・レヴォロリ■ スタッフ監督: ジョン・ワッツ製作: ケヴィン・ファイギ2017年8月17日Movix倉敷★★★★「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」ビッグイシュー販売員が物語の主人公になるのは、おそらく史上初めて。その意味で画期的な作品。イギリスのホームレス救済制度の実情は、この映画を見てもよくわからない。薬物更生プログラムで、無料更生薬の提供、条件が合えば住居の提供があるのは分かるが、無一文になって、飢えてもサポートはなかった。ボブという可愛いけど、明らかに雑種の野良の猫に、イギリスの人たちは、何故あそこまで気をかけたのかは、よくわからない。あまりにもジェームズに懐いていたからかもしれない。どれだけ事実だったのか。1度原作を見てみたい(ところが、どうも日本では出ていない)。しかし、ホームレスの克服は、保護制度の充実とともに、本人の前向き姿勢が大切だということがよくわかる作品。その時に、保護すべき命(ペット)があることが、彼を救ったことがよく分かる。いったい何処と何処が本物ボブだってのか?アクション以外の多くをボブ本人が演じていたらしい。目のしっかりした、いい猫だったことは確か。劇中歌われる歌のどれだけが本人の作詞かは知らないが、ほとんどがホームレス達を励ますいい曲だった。■ あらすじジェームズ(ルーク・トレッダウェイ)はギターを手に、ストリートミュージシャンとして日銭を稼いでいた。ドラッグ更生プログラムの最中のある日、彼はヘロインを摂取して病院に搬送される。退院後、彼が更生担当者ヴァル(ジョアンヌ・フロガット)が用意してくれた部屋に入居すると、どこからか茶トラの猫(ボブ)が迷い込む。ジェームズは、猫の飼い主を捜そうとしたが、見付けることができなかった。■ 解説ホームレスのストリートミュージシャンと、野良猫の運命の出会いを描いたノンフィクション「ボブという名のストリート・キャット」を実写映画化。どん底の生活を送っていた主人公が、1匹の猫との出会って人生をやり直す姿を映す。『ウェイストランド』などのルーク・トレッダウェイ、テレビシリーズ「ダウントン・アビー」などのジョアンヌ・フロガット、テレビシリーズ「ストレイン」などのルタ・ゲドミンタスが出演。また、本物の「ボブ」がほとんどのシーンでボブ自身を演じている。■ キャストルーク・トレッダウェイ、ボブ、ジョアンヌ・フロガット、ルタ・ゲドミンタス、アンソニー・ヘッド、キャロライン・グッドオール、ダレン・エヴァンス■ スタッフ監督: ロジャー・スポティスウッド原作: ジェームズ・ボーエン脚本: ティム・ジョン脚本: マリア・ネイションオリジナルミュージック: チャーリー・フィンク音楽: デヴィッド・ハーシュフェルダー衣装: ジョー・トンプソン2017年8月31日Movix倉敷★★★★「関ヶ原」なんと冒頭、司馬遼太郎の子供時代から始まる。つまり語りは司馬遼太郎なわけだ。結局、司馬史観から観た関ヶ原であり、石田三成になっていた。石田三成はずっと「正義」を実現したい、と言っていた。原作に正義という言葉があるかどうかは確かめなくてはならないが(Facebook仲間の情報では「義」と表現していたらしい)、何れにしても現代的な言葉であるのは確かであり、オープニングで主要人物のタイトルに英語表記があることからもわかるように、多分に英語圏での上映を意識していると思われる。また、普段は撮影に使われないような歴史建造物の撮影が敢行されたようで、話はある意味荒唐無稽なのに、いやに画面はリアルという、外国人向けの作品に仕上がっていた。その分、確かに今まで観た1番の関ヶ原合戦シーンになったと思う。残念なのは、登場人物の台詞が、時々早口になったり、明瞭でなかったりして、あまりよくわからなかったことだ。これが原田監督の特徴だと言えばその通りなのだけど、原作を読め、と言われているようで腹が立つ。秀吉のホントの理想が晩年歪められたのを正そうとする、生真面目なほどの石田三成の「正義」という解釈は、単なる司馬遼の感傷のように思える。関ヶ原を正義と欲のぶつかり合いと見る視点や、勝敗を分けたのは小早川秀秋の裏切りだったと見る視点は、今ではかなり疑問が持たれている。それを承知で、わざわざ司馬遼の子供時代まで見せて描こうとした原田監督の意図はなんだったのか。一つは、現代への異議申し立てだったとはおもうのだが、私はどうもなあ、と思うのである。有村架純は、なかなか新たな魅力が出てよかった。役所広司の太り具合は、役者魂のレベル、すごいと思うしキチンと悪役に徹していた。今まであまり出てこなかった、島左近という参謀の立ち姿も素晴らしかった。岡田准一は、何時もの通り、主役演技しか出来ない。小早川秀秋の東出昌大は、むつかしい役なのだが、なんか1年目社会人としか見えなかった。■ あらすじ豊臣秀吉の死後、豊臣家への忠義を貫く石田三成(岡田准一)は、天下取りの野望に燃える徳川家康(役所広司)と対立を深めていく。そして1600年10月21日、長きにわたった戦国時代に終止符を打った歴史的合戦「関ヶ原の戦い」は、早々に決着がついた。有利と思われた三成率いる西軍は、なぜ家康率いる東軍に敗れたのか……?■ 解説小説家・司馬遼太郎の著書を、『日本のいちばん長い日』などの原田眞人監督が映画化。豊臣秀吉亡き後の天下をめぐり、徳川家康を総大将とする東軍と、石田三成率いる西軍が激突した「関ヶ原の戦い」を描く。これまで描かれてきた人物像ではない三成を岡田准一、策略を駆使し三成を追い詰めていく家康を役所広司、三成への恋心を胸に彼を支え続ける忍びを有村架純が演じる。日本の戦国時代における重要な合戦が、どのような切り口で映し出されるのか注目。■ キャスト岡田准一、有村架純、役所広司、平岳大、東出昌大、中越典子、北村有起哉、伊藤歩、音尾琢真、和田正人、滝藤賢一、キムラ緑子、西岡徳馬、大場泰正、山村憲之介、堀部圭亮、生島翔、中村育二、春海四方、麿赤児、三浦誠己、辻本晃良、中嶋しゅう、久保酎吉、天乃大介、吉村界人、松角洋平、関口晴雄、松山ケンイチ、壇蜜■ スタッフ原作: 司馬遼太郎監督・脚本: 原田真人製作: 市川南製作: 佐野真之2017年8月26日Movix倉敷★★★☆「ワンダーウーマン」いやあ、イスラエル美人はナタリー・ポートマンもそうだけど、ずっと観ていられる。その美人が一旦頭に来て戦闘モードになれば、ずっと動かなかった戦場の戦局が一気に解決する、一個中隊以上の働きをするというのだから、アクション好きとしてはドキドキする。しかも、今回観たのは、福山市神辺のIMAX。通常版を観ていないので比較はできないが、おそらくかなり迫力があったと思う。マーベルシリーズが「戦争」を扱った珍しい作品にもなった(キャプテン・アメリカは観ていない)。話の筋は、ギリシャ神話の軋轢を現代に持って来て、神の視点で、現代に「平和をもたらす」には、どうしたらいいか、というもの。この辺りは「モンスター」を撮った女性監督の意向が影響したのかもしれない。ワンダーウーマンの武器は剣もあるが、これは神を殺すためのもので、しかも途中で無力化される。人に真実を告白させるムチや、なんでも防御する盾や腕輪など、彼女には基本的に殺傷目的の武器はない。第一次世界大戦のドイツを舞台に、軍神マルスを殺しさえすれば、世界に自動的に平和が訪れると確信していた、箱入り娘のアマゾン族のプリンセス、ダイアナ。それが単純思考だったと分かる終盤の展開は、驚きはあまりないけれども、まあ現代人には一つのメッセージかもしれない。クリス・パインが云う。「僕は今日の世界を救う。君は未来の世界を救え」。ほとんど名刺代わりの本作だけど、彼女が出るならば、チケット買います。■ あらすじ人間社会から孤立した女性のみの一族のプリンセスとして生まれたワンダーウーマン(ガル・ガドット)は、自分が育ってきた世界以外の環境を知らず、さらに男性を見たこともなかった。ある日、彼女は浜辺に不時着したパイロットと遭遇。彼を救出したことをきっかけに、ワンダーウーマンは身分を隠して人間社会で生活していくことにする。■ 解説『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』にも登場した人気キャラクターで、美女戦士ワンダーウーマンを主人公にしたアクション。女性だけの一族出身で男性を見たこともないプリンセスがたどる運命を描く。ワンダーウーマンを演じるのは『ワイルド・スピード』シリーズなどのガル・ガドット。『スター・トレック』シリーズなどのクリス・パインらが共演し、監督は『モンスター』などのパティ・ジェンキンスが務める。イスラエルでの兵役経験もあるガルの本格的なアクションに期待。■ キャストガル・ガドット、クリス・パイン、ロビン・ライト、ダニー・ヒューストン、デヴィッド・シューリス、コニー・ニールセン、エレナ・アナヤ、ユエン・ブレムナー、ルーシー・デイヴィス、サイード・タグマウイ、ユージーン・ブレイブ・ロック、(日本語吹き替え版)、新井美羽、小野大輔、甲斐田裕子、榊原良子、深見梨加■ スタッフ監督: パティ・ジェンキンス2017年8月27日エーガル8シネマズ★★★★
2017年09月17日
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8月に観た映画は7作品。前半の3作品を紹介します。「残像」1人の人間がどのように国に抵抗するのか。表現の自由を得るために、どれだけの代償を支払わなければならないのか。全体主義のなか、個人はどのような選択を迫られるのか。これらの問題は過去のことと思われていましたが、今、ふたたびゆっくりと私たちを苦しめ始めています。ーこれらにどのような答えを出すべきか、私たちは既に知っているのです。そのことを忘れてはなりません。アンジェイ・ワイダ 2016年初夏まるで現代日本の国民にむけてかけられた言葉のようではあるが、もちろん現代ヨーロッパに対して彼は言っているのだろう。そういう意味で、この作品はまさにアンジェイ・ワイダの遺言である。彼はこの数ヶ月後に急逝している。享年90歳。「人は自ら認識するもの以外は見ることは出来ない」おそらく死後に、弟子の学生たちによって出版されたであろうその「理論」と「実践」を、理不尽な社会主義と言う名の独裁国家の暴力に静かに耐え、決して曲げない抵抗が、死後40年以上経ってやっと認められ、64年後に映画になった。そのことの確認のためだけに観た。実際は重要な言葉は、予告でほとんど語られていた。ただただ、ガッチリとした大理石のような骨太の造りをした作品は、抽象絵画の対極にあるかのようだが、自分で見えた世界しか、フィルムに焼き付けなかったという意味では共通点はあったかもしれない。画面的に、恐ろしいほど、セットも色調も、完璧に近いかのように見える。ストゥシェミンスキ教授を支えたのは、彼の若い教え子たちだったように、この作品を支えたのは、明らかにワイダの弟子たちだったろう。そういうことも透けて見える作品。しかし、多くの場面で、あともう一歩突っ込んで欲しかった、学生たちの葛藤と運命、娘の葛藤と運命をもう少し描いて欲しかったとは思う。99分と、比較的短い作品なので、あとは監督の体力が続かなかったとしか思えない。(解説)『灰とダイヤモンド』『鉄の男』などのポーランドの巨匠、アンジェイ・ワイダ監督の遺作で、レジスタンスのシンボルとされる画家の実話に基づいたドラマ。第2次世界大戦末期に迫害を受けた、画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキの生涯を映し出す。同監督の『パン・タデウシュ物語』などのボグスワフ・リンダらが出演。第2次世界大戦中には自身もレジスタンス運動に参加したワイダ監督が迫った、重厚な物語に期待。(あらすじ)1945年、ポーランド。アバンギャルドな作風で知られる画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキは、全体主義に従うことを拒んだことから、大学で教授職の退任に追い込まれ、美術館からは作品が撤去されてしまう。しかし、学生たちの協力を得て、ヴワディスワフは権力と戦うことを決意する。2017年8月3日シネマ・クレール★★★★「君の膵臓をたべたい」平日の昼にもかかわらず、女性を中心とする若者に占められてほぼ満員。「セカチュー」ならぬ「キミスイ」と呼ばれ、今年夏1番の恋愛作品であり、それなりの理由はあると思った。衝撃的な題名とは裏腹に、終わってみればストレートな純愛モノ。もっと謎解きモノかと思っていました(^_^;)。ああいう別れ方は、裏切りなのでは?という意見も出るかもしれないが、あれだけが唯一の衝撃的な展開であり、他はあまりにもストレート。むしろ、引っ込み思案系の草食男子としては、あの展開しかなかったのかもしれない。私も草食男子なので、まあ許そう。男はどうでもいいけど、問題はヒロインが素晴らしかったかどうかだろう。演技派かどうかで言えば、彼女は演技派ではない。唸るような、ハッとする驚くような演技はなかった。しかし、心の内が見えないのは、この年頃の少女の特徴でもあるので、あれで全然不思議はない。オーラがあるか、どうかは微妙。第二の長澤まさみになるか、どうかは、次回作に依るだろう。今、その切符を手に入れたところだと思う。■ あらすじ高校の同級生・山内桜良(浜辺美波)がひそかにつづる闘病日記「共病文庫」を偶然見つけた僕(北村匠海)は、彼女が膵臓(すいぞう)の病気で余命わずかなことを知り、一緒に過ごすようになる。彼女の言葉をきっかけに母校の教師となった僕(小栗旬)は、桜良が亡くなってから12年後、教え子と会話をしていた際に、桜良と過ごした数か月を思い出す。一方、結婚を控えた桜良の親友・恭子(北川景子)も、桜良との日々を思い返し……。■ 解説住野よるの小説を映画化。膵臓(すいぞう)の病を患う高校生と同級生の“僕”の交流を、現在と過去の時間軸を交差させて描く。『エイプリルフールズ』などの浜辺美波と『あやしい彼女』などの北村匠海が主演を務め、現在の僕を小栗旬、ヒロインの親友を北川景子が演じる。監督は『黒崎くんの言いなりになんてならない』などの月川翔、脚本は『アオハライド』などの吉田智子が担当。■ キャスト浜辺美波、北村匠海、大友花恋、矢本悠馬、桜田通、森下大地、上地雄輔、北川景子、小栗旬■ スタッフ原作: 住野よる監督: 月川翔脚本: 吉田智子音楽: 松谷卓2017年8月10日Movix倉敷★★★☆「ありがとう、トニ・エルドマン」山田洋次ならば、90分でまとめたであろう、父と娘の関係を「だらだら」というおそらくワザとのスタイルで、162分で作った、いい加減にしてよ、とも思ったが、あれも芸の内なのかもしれない。つまり、「寒いギャグ」がヨーロッパでは受けるのかも。CMで展開は予想がついていたが、まさか、娘も父親に反撃していたとはおもわなかったし(しかもかなり衝撃的)、商談に父親を招待する神経が理解出来ない。ドイツもEU内では、ルーマニアを搾取する立場なのだということが分かって、改めてびっくりした。(解説)世界中が熱狂!! この父と娘に涙し、笑った。ジャック・ニコルソンが自ら名乗りを上げ、ハリウッド・リメイクが決定!!観る者の心を鷲掴み! 40以上もの賞に輝く、これぞ2016年の映画ベスト1!スクリーン・インターナショナル、カイエ・デュ・シネマ、サイト&サウンドといった各国の有力誌がこぞって2016年の映画ベスト1に選んだのは、『ムーンライト』や『ラ・ラ・ランド』でもなく、『ありがとう、トニ・エルドマン』だった。ワールドプレミアとなったカンヌ国際映画祭で公式上映されるや、カンヌは本作の話題で持ちきりとなった。スクリーン・インターナショナルの星取りでは、歴代最高得点3.7(4.0満点)を獲得。主要賞は逃したものの「観客と批評家にとってのパルムドール」と言わしめ、マスコミから絶賛された。既に公開されたドイツ、フランスでは異例の大ヒットを記録し、アカデミー賞ノミネートをはじめ、全米、ニューヨーク、ロンドンなどの映画批評家協会賞の外国語映画賞を受賞。ヨーロッパ映画賞では作品賞、監督賞、男優賞、女優賞、脚本賞と主要賞を総なめ! 世界の映画祭、映画賞を席巻している。アメリカ公開の際に、本作を観て、惚れ込んだジャック・ニコルソンが、ハリウッド・リメイクを熱望! 引退表明していたにも関わらず、撤回しリメイク版で自ら父親役を演じるという。『ありがとう、トニ・エルドマン』はアカデミー賞の常連である大物俳優の心をも鷲掴みにした。(ストーリー)悪ふざけが大好きな父・ヴィンフリートとコンサルタント会社で働く娘・イネス。性格も正反対なふたりの関係はあまり上手くいっていない。たまに会っても、イネスは仕事の電話ばかりして、ろくに話すこともできない。そんな娘を心配したヴィンフリートは、愛犬の死をきっかけに、彼女が働くブカレストへ。父の突然の訪問に驚くイネス。ぎくしゃくしながらも何とか数日間を一緒に過ごし、父はドイツに帰って行った。ホッとしたのも束の間、彼女のもとに、<トニ・エルドマン>という別人になった父が現れる。職場、レストラン、パーティー会場──神出鬼没のトニ・エルドマンの行動にイネスのイライラもつのる。しかし、ふたりが衝突すればするほど、ふたりの仲は縮まっていく…。心配するあまり娘に構う父と、そんな父の行動にうっとうしさを感じる娘。互いに思い合っているにも関わらず、今ひとつ噛み合わない父と娘の普遍的な関係を、温かさと冷静な視線をあわせ持った絶妙のユーモアで描く。その一筋縄ではいかないオリジナリティ溢れるストーリーは、トニ・エルドマンの登場から加速していく。ホイットニー・ヒューストンの「GREATEST LOVE OF ALL」、誕生日パーティー、毛むくじゃらのクケリ──観る者の予測を超える不意打ちの連続。そこから浮かび上がる父と娘の真実の愛に、世界が絶賛! 涙し笑った。※幸せを呼ぶ毛むくじゃらの精霊<クケリ>ブルガリアで毎年1月から3月の間に行われる伝統的な祭りの際に着用される被り物。イネスの誕生日パーティーに登場する。その昔、新春になるとブルガリアの様々な地域で、クケリに身を包んだ人々が、腰に付けたベルを鳴らしながら家々を訪れ、悪霊退治や家族の健康を祈っていた。現在もこの文化を継承している地域がある。日本の「ナマハゲ」に近い存在である。クケリは、五穀豊穣、子孫繁栄など幸せを運ぶものの象徴として今なお親しまれている。(キャスト)ペーター・ジモニシェック (ヴィンフリート/トニ・エルドマン)サンドラ・ヒュラー(ケネス)(監督)マーレン・アデドイツ・オーストリア作品2017年8月13日シネマ・クレール★★★☆
2017年09月16日
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27日の日曜日、映画鑑賞サークル「お話シネマ」の企画で、月一度の例会は、広島県福山市神辺にある福山エーガル8シネマズで、「ワンダーウーマン」を観て、福山市の居酒屋で映画談義をすることになりました。8シネマズは、2015年から中国地方で始めてIMAXデジタルシアターを導入したところであり、1度は来たかったのです。IMAXとは、一言で言えば、3D上映の究極進化系。従来より迫りくる3D、大迫力でクリアな音、超巨大スクリーン、鮮明な映像という特徴があります。そのため、料金も従来の倍以上2600円します。8シネマズは、フジグラン神辺という大型ショッピングモールの3階にあります。福山駅から無料シャトルバスが出ていて、30分もかけてやっとたどり着く典型的な郊外大型商業施設です。神辺に初めて来て気がつきましたが、町の中心にぽっかりお盆形の山がありました。もう絵に描いたような「神奈備山(神の舞い降りる山)」です。神辺(かんなべ)の名前通り、元は此処は本陣町でもあるし、福山市の街よりも古代はこちらの方が栄えていたのに違いありません。吉備の国で言えば、此処は備後の国となります。吉備王国の一つであり、キチンと検討はしておくべき地域だと思う。というようなことに、映画仲間の手前、こだわれるはずもなく、フジグラン2階で10数年ぶりにリンガーハットのチャンポンを食べた後に、念願のIMAXを観ました。詳しい感想は、また他でするとして、初のIMAXは、確かに映像もクリアであり、迫力もあるのだけど、「完全に映画の中に入ったような感覚」を持つまでは行きませんでした。映画作品であり、なおかつVRみたいな全方位3Dみたいな作品を作らない限り(風景ならばともかく、映画作品としては理論的にあり得ない)、私には無理な気がする。そもそも、真っ暗闇の中で集中して観れば、こんな施設機械を使わなくても、充分映画の中に「入っていける」し、そもそもそれこそが映画が良か否かの分かれ目であると思うのである。でも、そんなこんなも1度は体験しないと言いようがない。いい体験でした。例会は6時から、福山駅前の北海道料理の居酒屋。豪華な海鮮鍋、珍しい大根の天ぷらなど、北海道料理に舌鼓。特に食べて見たかったのは、ザンギ。佐藤浩市・本田翼出演の「起終点駅 ターミナル」で扱われたザンギが、北海道民のソウルフードとして何度も出ていたので、本土の鶏の唐揚げとどのように違うのか、確かめたかったのである。大きさや香辛料を多く使われた作りは、映画とは違う気がする。色の濃さは、映画と同じだ。居酒屋の数だけザンギの味があると聞いたことがあるので、結局よくわからなかった。でも、味が濃くてとっても美味しかった。居酒屋での例会は、何時もよりも話に花が咲いてとっても充実したものになった。
2017年08月28日
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7月に観た映画の後半、4作である。「ジーサンズ 初めての強盗」上映期間ギリギリに観ました。飄々としたフリーマン、真面目で色男のアーキンという葛藤の少ないキャラと比べて、後数日で家を追い出されるケインが迫真の演技をしたと思う。基本はコメディだが、思ったよりもリアルな描写だった。ラストの葬式場面と見せかけて実は、というやり方は、なかなかいい場面だった。前半部分がリアルだからこそ生きる作品。リスクをキチンと説明しない間に個人ローンをつくる銀行、偽装倒産で会社年金の打ち切りを図る会社と銀行のタッグ。真面目に働いてきた老人たちのささやかな抵抗が、強盗だったというわけだ。80代になっても達者な彼らが、ずっと元気でいて欲しいと、つくづく思う。(解説)モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキンというオスカー俳優たちが一堂に会して放つコメディー。ひたむきに働き権利を得た年金を打ち切られた高齢の男性3人が、銀行強盗に及ぶ姿を生き生きと描写する。メガホンを取るのは『WISH I WAS HERE/僕らのいる場所』で監督と脚本と主演をこなしたザック・ブラフ。主人公たちのぶっ飛んだ行動が見どころ。(あらすじ)ウィリー(モーガン・フリーマン)、ジョー(マイケル・ケイン)、アルバート(アラン・アーキン)は、平穏な余生を過ごしていた。ところが長年勤めた会社の合併により年金をカットされてしまい、平均年齢80歳以上の彼らの生活はお先真っ暗の状態に。追い詰められた彼らは、思いがけない行動に出る。2017年7月20日Movix倉敷★★★★「セールスマン」この話が「セールスマンの死」とどのように絡んでいるのか分かると、感想も変わるのかもしれない。イランの中で、進歩的な考えを持った夫婦だと思う。夫婦の立場は、徹底的に平等で、まるでアメリカ人。それでも、妻が乱暴されたとき、警察は信用できない。妻は、あらぬ噂の一人歩きの方を犯人逮捕よりも恐れる。また、それでも、妻は「復讐する」ことは、原理的に「してはいけない」ことにかぞえており、夫はそれに同意しつつも感情的に抑えられない。結果的に彼らは、人の「死」に関わることになる。イラン人の復讐感覚の葛藤を描くのと同時に、イスラム国と戦う西側諸国に対する批判精神を持った作品であるのは、確かだ。しかしイスラム諸国の宗教観も、わかった上で無いと正確な映画評は書けない。アカデミー外国語映画賞にはふさわしいとは、思う。(解説)『別離』『ある過去の行方』などのアスガー・ファルハディ監督がメガホンを取ったサスペンスドラマ。不幸な事件をきっかけに、平穏な日々を送っていた夫婦の人生が少しずつ狂い始める様子を丁寧に描写する。ファルハディ監督作『彼女が消えた浜辺』でも共演したシャハブ・ホセイニとタラネ・アリドゥスティが夫婦を熱演。思いがけないてん末に驚がくする。(あらすじ)共に小さな劇団に所属する夫婦(シャハブ・ホセイニ、タラネ・アリドゥスティ)は、ちょうど劇作家アーサー・ミラーの戯曲「セールスマンの死」の舞台に出演していた。教師として教壇にも立つ夫が家を空けた隙に、転居したばかりの家で妻が何者かに乱暴されてしまう。その日を境に二人の生活は一変し……。2016年イラン・仏作品。2017年7月23日シネマ・クレール★★★★「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」「商売は弱肉強食だ。溺れている者の口にはホースを突っ込む。お前にそれが出来るか?」「出来ないし、しようとも思わない」私はマクドナルドのヘビーユーザーである。おそらく年間4万円以上は使っていると思うし、年間200回ぐらいは来店していると思う(この所感も映画が終わってマクドで書いている)。だからと言って、私は自分を恥じない。誇りもしない。私は私の自由意思で自律的に利用している。世界人口の約1%は毎日マクドナルドを利用しているらしい。なぜ、そこまで大きくなったのか。そこを描いて、アメリカという「帝国」が持つ「野心」と「貪欲」を、描いて面白かった。「供給があるから、需要が起きるんです。賢明な貴方はわかりますよね。」と売れないシェイクミキサーをセールスして、人生の後半を様々な商売に手を出してきたレイ・クロックは、マクドナルド兄弟の革新的なバーガー製造に商機を見出す。1954年に契約。1961年に、マクドナルド兄弟をマクドナルドから追い出すことに成功。堀江貴文は「マクドナルドがなぜ成功して高収益企業にできたのかの実話である。とにかく根気が大事であるというのはまさに同意できる。全ての企業経営者に見て欲しい名作」と持ち上げ気味に評価。町山智浩は、「マクドナルドを乗っ取った主人公が毎日聴くのは「パワー・オブ・ポジティブ・シンキング」の朗読。ドナルド・トランプの座右の書だ!ドナルドがなんで怖いのか、よくわかったぜ!」と1番皮肉を込めて評価。私はもちろん町山さんに同意するのですが、元NHKアナウンサーの堀尾正明も、ディープ・スペクターも絶讃しているのは、やっぱりという感じ。企業経営者がこれを見て、参考にしようとするならば、バカだとしか言いようがない。マイケル・キートンとは思えないくらい「嫌な奴」を演じていて、すごかった。マクドナルド兄弟がホースを口に突っ込むタイプの経営者でなくて、アメリカにまだ救われる部分があると感じられてホッとした。(解説)マクドナルド・コーポレーションの創業者、レイ・クロックの伝記ドラマ。1軒のレストランを世界最大規模のファストフード・チェーンにした彼の辣腕(らつわん)ぶりや苦悩を描く。監督は、『ウォルト・ディズニーの約束』などのジョン・リー・ハンコック。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』などのマイケル・キートン、『ロング・トレイル!』などのニック・オファーマン、『わたしに会うまでの1600キロ』などのローラ・ダーンらが出演。レイの並外れた経営術に注目。(あらすじ)1954年、アメリカ。シェイクミキサーのセールスマンである52歳のレイ・クロック(マイケル・キートン)は、8台もミキサーをオーダーしてきたマクドナルドというドライブインレストランに興味を覚え訪ねてみる。そこでレイは、経営者のディックとマック兄弟による、高品質、コスト削減、合理性、スピード性などを徹底させたビジネスコンセプトに感銘を受ける。契約を交わしてチェーン化を進めるが、ひたすら利益を求めるレイと兄弟の仲は険悪になっていき……。(キャスト)マイケル・キートン(レイ・クロック)ニック・オファーマン(ディック・マクドナルド)ジョン・キャロル・リンチ(マック・マクドナルド)ローラ・ダーン(エセル・クロック)リンダ・カーデリーニ(ジョーン・スミス)パトリック・ウィルソン(ロリー・スミス)B・J・ノヴァク(ハリー・ソナボーン)2017年7月30日シネマ・クレール★★★★「校庭に東風吹いて」声を出さず悲しみを抱える少女、貧困から問題を起こす少年、彼らとむきあ教師たちの情熱で〈涙〉は〈希望〉に変えられるのだろうか。映画のチケットを手に入れたので、倉敷の上映会場に行ってきました。先生たちの団体が1番熱心に来ていたみたいな印象がある。その人たちにどのように映ったのかは、とても興味がある。誠実な作品だと思う。沢口靖子は、時に情熱的に時に粘り強く、場面緘黙症と母子家庭貧困の子どもの問題を逃げることなく対応していく。どういうやり方が1番良かったかは、わからないが、映画は安易にハッピィエンドを作らずに、どちらかと言うと希望が持てるぐらいで終わらしていた。その作り方はよし。沢口靖子も子役の岩崎未来も向鈴鳥もたいへん良かったが、脚本か編集のせいか、もう少しきちんと決着つけて欲しかったなという所が散見したのと、役者の演技か演出かはわからないが、もう少し緊張感持って欲しかった場面もあった。エンクミ(遠藤久美子)は、こんな役をやれるようになったんだ、ショムニに出ていた頃とはえらい違いだと感慨。でもあともう一歩、場面緘黙症の直接原因らしき彼女に決定的な一言が欲しかったとは思う。最後に監督・金田敏が舞台あいさつをした。なんと地元(酒津・中庄)出身らしい。「昔は見えなかった場面緘黙症とか見えるようになった。一方、貧困は見えにくくなっている。大事なのは、もっと認知してもらうこと。見守ってもらうことが大切」と言っていた。その通りだと思う。2017年7月30日倉敷会場★★★
2017年08月15日
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7月に観た映画は8作品でした。二回に分けて紹介します。「ハクソー•リッジ」前宣伝で巧妙に隠されていたが、これは第二次世界大戦唯一の現在日本の領土内での米国対日本の地上戦を映画化した作品だった。しかも、沖縄の前田高地の戦いである。米国では、日本も知らない鋸断崖(ハクソー•リッジ)の戦いとして記憶されているようだ。この戦いで、日本軍はおそらく2000人の生き残り兵で戦い、米軍は艦砲射撃を使いながら豪に隠れていた日本軍と、1000人近く(?)の海兵隊で陣地奪取を試みている。資料を見ても、ドスの活躍したのは最終盤の戦いだとは思うが、結局何人戦死して、75人(?)助けたのかはわからなかった。そもそも映画では一晩と半日かけて1人で助けたことになっているが、かなり脚色しているのが目に見えるだけに一応疑ってかかっている。ともかく事実を基につくられた作品であることは確か。まるで朝鮮戦争映画並の戦闘場面であるが、少しは差し引く必要があるとは思うが、デスモンドの勇敢さは、信じていいと思う。問題は、映画を見ることによって、彼の「信念」をどう評価するか、ということだろう。銃を絶対に手に取らない。それは単なるプライドか、それとも宗教的信念か。訓練の場でさえ、手にとらないのは、隊にとっては士気を下げる行為であり、そこまで徹底する必要はない。と合理的に考えれば、そうなる。しかし宗教的信念としては、あり得る理屈であり、それを最終的に許容した米軍は、日本軍とは明らかに違い懐が深い。「汝、殺すなかれ」。しかし、目の前で1000人以上の日本軍へのジェノサイドを観た彼のなかで、それはどのように整理されていたのか、いまひとつわからなかった。おそらく、75人助けたことよりも、本人のインタビュー映像で喋っていた「その場で水をかけて顔を拭くと、目が見えると叫んだ。その時ほど、やってよかったと思ったことはない」と言ったことが大きいと思う。極限の状況の中では、目の前の助けれる人を助ける、それしかなかったのだろう。さて、もう一つ大きな問題がある。どんなに宗教的信念を英雄的行為で貫こうと、結局戦争とは国によるジェノサイドであることからは避けられない。それなのに何故、ドスはその現場に立とうとしたのか。彼は、パールハーバーが攻撃された時はニューポート・ニュース海軍造船場で働いており、徴兵猶予を要求することができた。しかし、彼は自由を守るために自ら前線で自分の命を危険に晒そうとした。彼は望んで陸軍衛生兵になり、また武器を持たなくてすむ良心的兵役拒否者として分類された。と言うのが歴史的事実らしい。つまり、「汝、殺すなかれ」よりも、「国を守れ」という本人が信じる情勢認識の方が優先されるのである。パールハーバーのあと、友人2人が丙種不合格になって自殺したのが、志願した動機だと言う。しかし、そのことと、愛国心が「殺すなかれ」よりも上に行く理屈が、やはりわからない。この辺りは、観た人と直接論議したいところです。(あらすじ)本年度アカデミー賞2部門受賞(編集賞、録音賞)第二次世界大戦中、デズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)は軍に志願したにも関わらず、上官の大尉(サム・ワーシントン)や軍曹(ヴィンス・ヴォーン)たちの命令に反して、銃を持つことを拒否する。子供時代の苦い経験から、人を殺めることを禁じる宗教の教えを固く信じていたのだ。さらに、毎週土曜の安息日を主張したこともあって、上官や同僚(ルーク・ブレイシー)は彼につらく当たり、遂には軍法会議にかけられてしまう。※PG12監督 メル・ギブソン出演 アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、ヴィンス・ヴォーン、ルーク・ブレイシー、テリーサ・パーマー、ヒューゴ・ウィーヴィング2017年7月6日TOHOシネマズ岡南★★★★「忍びの国」かなり好みは分かれるかもしれないが、原作者が言わなかったことで、監督が描こうとしたことは、「虎狼の族(ころうのやから)」とは何かを示したラストの1秒で全てを物語っていた。無門があまりにも変わり者過ぎて、共感が持てないという意見も当然あるだろう。中村義洋監督の主人公は、みんな変わり者なのだから、そこはある程度は慣れてもらうしかない。無門が、戦場で喜々として動き回るつくりは、映画的な面白さがあったが、最後の落とし所は「予告犯」ほどの鋭さはなかったと思う。(見どころ)「のぼうの城」「村上海賊の娘」などの作家・和田竜の小説を実写化したアクション時代劇。伊賀忍者最強とされる男・無門が、織田信長の息子・信雄の軍勢と伊賀の国との戦いに身を投じる姿を追う。メガホンを取るのは、『ジェネラル・ルージュの凱旋』『予告犯』などの中村義洋。中村監督作『映画 怪物くん』などの大野智が、怠け者ながら腕は確かな主人公の忍者を演じる。大野の体を張ったアクションや、武力だけに頼らず知略を駆使した戦いの行方に目を奪われる。(あらすじ)戦国時代、忍びの国として名高い伊賀。超人的な戦闘能力を誇り、虎狼の族と呼ばれる伊賀忍者の中でも特に腕の立つという無門(大野智)は、怠惰な日々を過ごしては妻・お国に稼ぎのなさを叱責されていた。ある日、織田信長の次男・信雄が父ですら手出しするのを恐れていた伊賀への侵攻を、独断で開始する。無門に弟を殺されて伊賀への復讐(ふくしゅう)を果たそうとする下山平兵衛、伊賀の重鎮・百地三太夫や下山甲斐をはじめとする忍者たちの思惑や野望も入り乱れる戦いに、いつしか無門ものみ込まれていくが……。2017年7月9日Movix倉敷★★★☆「メアリと魔女の花」10歳代の子供たちに安心して見せることの出来るアニメでした。ジブリアニメとは明確に違う。宮崎アニメが持っていた「制御出来ないとんでもないエネルギー」は無い代わりに、宮崎息子が見せたようなミスもない、画力、動画、静画、音楽共に合格点が持てるアニメだった。つまり、一言で言えば新鮮味がない作品だった。もちろん、魔女、千と千尋、ラピュタその他、いろんなジブリアニメのアイディアが随所に出てくるのは仕方ない。「もう魔法は必要ない」と高らかに宣言する時、ジブリアニメへの宣言だったのだという批評は、合っているかもしれない。しかし、テーマはそこではない。テーマは、ストレートなくらいに、使い古された、「暴走する科学技術或いは原子力への警告」である。為政者と科学者は、元は良き人だったけど、万能の種である魔女の花を手に入れた途端に暴走し始めて、一度の失敗に懲りずに、動物を犠牲にして準備し、再度の実験を始めて、やはり「力を制御出来ずに」失敗し、メルトダウンと同じ様相を示して、そこで始めて実験を止めようとして果たせず、最後はラピュタよろしく、男の子と女の子の共同の力で止める。大人は直ぐに原発事故と分かるが、子供たちにはその比喩にたどり着くのはもっと先かもしれない。奥行きがないアニメだけど、これぐらいが本来のアニメは良いのだというメッセージならば、そう受け取るしかない。ただし、私たちは二度と見ない。■ あらすじ無邪気で不器用な少女メアリは、森で7年に1度しか咲かない不思議な花“夜間飛行”を見つける。この花は、魔女の国から盗み出された禁断の花だった。一夜限りの不思議な力を得たメアリは、魔法大学“エンドア”への入学を許されるが、あるうそをついたことから大事件に発展してしまい……。■ 解説『借りぐらしのアリエッティ』などの米林宏昌監督がスタジオジブリ退社後、プロデューサーの西村義明が設立したスタジオポノックで制作したアニメ。メアリー・スチュアートの児童文学を基に、魔女の国から盗み出された禁断の花を見つけた少女の冒険を描く。少女メアリの声を務めるのは、『湯を沸かすほどの熱い愛』やNHKの連続テレビ小説「とと姉ちゃん」などの杉咲花。脚本を『かぐや姫の物語』などの坂口理子、音楽を『思い出のマーニー』などの村松崇継が手掛ける。■ キャスト(声の出演)、杉咲花、神木隆之介、天海祐希、小日向文世、満島ひかり、佐藤二朗、渡辺えり、大竹しのぶ■ スタッフ原作: メアリー・スチュアート脚本: 坂口理子脚本・監督: 米林宏昌音楽: 村松崇継2017年7月13日MOVIX倉敷★★★☆「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイと共演したシリーズ第三弾が終わって(2007年)、10年経ったが、時代はなんとその19年後ということになっている。このシリーズは、そもそもジャック・スパロウの過去の因縁から物語が始まる。今回第5弾は、なんと第4弾はなかったのごとく、羅針盤やバルボッサやタコの呪いが再登場。しかも当時の主人公たちの子供の世代になっている。今迄の因縁をチャラにする作品として描かれていて、シリーズ好きには嬉しい場面がたくさん。序盤は、ハチャメチャな海賊振る舞いを堪能させ、中盤はメインの活劇、終盤に大団円という永遠の黄金比は健在。定番化した。私はもうこれで終わりにしたいのだけど、最後の要らないおまけを見ると、ディズニーは続きを見せる気満々。まあ、確かに新ヒーローのイケメン(ブレントン・スウェイツ)は、実際はあまり活躍しなかったし、新ヒロイン(カヤ・スコデラーリオ)はもっと見たいと思うほど魅力たっぷりでした。■ あらすじヘンリー(ブレントン・スウェイツ)は、過去に伝説の海賊ジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)と旅をした父のウィル・ターナー(オーランド・ブルーム)の呪われた運命を、何とかしたいと考えていた。そこで海にまつわる伝説を調査したところ、呪いを解くには伝説の秘宝“ポセイドンの槍”が必要なことがわかる。その後、英国軍の水兵になったヘンリーが船に乗っていたところ、“海の死神”サラザール(ハビエル・バルデム)の襲撃に遭い……。■ 解説ジョニー・デップが孤高の海賊ジャック・スパロウを演じる、大ヒットシリーズ第5弾となるアクションアドベンチャー。ジャック・スパロウが、全ての海賊の滅亡をもくろむ“海の死神”サラザールとの闘いを繰り広げる。過去のシリーズにも出演してきたオーランド・ブルームやジェフリー・ラッシュのほか、悪役に『ノーカントリー』などのハビエル・バルデムがふんし、カヤ・スコデラーリオやブレントン・スウェイツらが共演。監督を、『コン・ティキ』のヨアヒム・ローニングとエスペン・サンドベリが務める。壮大なスケールで描かれる冒険とバトルに注目。■ キャストジョニー・デップ、ハビエル・バルデム、ブレントン・スウェイツ、カヤ・スコデラーリオ、ケヴィン・R・マクナリー、ジェフリー・ラッシュ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ■ スタッフ監督: ヨアヒム・ローニング監督: エスペン・サンドベリ脚本・ストーリー: ジェフ・ナサンソン2017年7月16日Movix倉敷★★★★
2017年08月14日
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「シン・ゴジラ」 昨年度マイベストワンの作品です。ゴジラ映画の伝統を活かしつつも、大地震や原発事故を想起させる新たな性格を付与し、虚構(ゴジラ)と現実(ニッポン)を対比させながら、ポリティカル•怪獣エンタメ映画を描き切った傑作です。 もちろん幾つかの批判も聞いています。 一つは、政治ストーリーになっていて、人間ドラマがなかったのではないか。 一つは、自衛隊の活躍が全面的に出ていて、自衛隊宣伝映画になっているのではないか。 二つの指摘は、それぞれもっともだと私も思いますが、反論してみましょう。 アメリカのゴジラ映画は、必ず家族か恋愛話を無理やりこじつけますが、庵野秀明監督は、見事にそれらをそぎ落としました。平成ゴジラやミレニアムシリーズは、様々な首相が出ていましたが、途中でゴジラに殺される首相(大杉漣)は、今回が初めてです。主人公2人(長谷川博己と石原さとみ)は、むしろ狂言回し的な役割です。「真」の主人公は、「神」のようにミステリアスであり、全く想像もつかなかった造形と能力で登場した「新しい」ゴジラでした。人間ドラマなどを挿入していれば、かえってこの魅力が削がれていたでしょう。もちろんドラマ不在ということは、役者の演技力が無いということではありません。例えば、首都を破壊された直後の高橋一生のわずかな涙を潤ませた表情が、庶民の大きな悲劇を想像させるものになっていました。 今回は、自衛隊全面協力のもとに作られました。自衛隊には実は協力体制の基準が存在します。面白いのは、単なるプロパガンダ映画のみに協力をしていないのです(「自衛隊色を表面に出さず」という基準さえあります)。それは、作品の完成度がなければそもそも宣伝になり得ない反省から来ているというのです。その意味では、今回の自衛隊登場シーンは、今まで怪獣映画では観たことのないリアルさがありました。知っていますか?自衛隊の出演は、実は無料貸し出しなのです。自衛隊員にとっては、ゴジラ映画出演は「聖戦」だと聞いたことがあります。何故ならば、具体的な国を攻撃することなく、純粋に戦うことができる唯一の自衛戦争だからです。そしてネタバレになるので具体的に書けないのですが、私は、今回は国民と自衛隊とが協力した、最も理想的な防衛戦になっていたと思っています。 ただし、仮死状態にあると思われるゴジラの続編を絶対作ってはいけない、庵野監督は監督を引き受けてはいけないし、原作権も譲渡してはいけない、というのが私の意見です。理由を展開すると長くなるなるので、この辺りで。(2016年作品レンタル可能)
2017年07月19日
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後半の四作品です。前後半とも、毎年そうですが、6月は佳作が多かった。「お嬢さん」この作品を、嫌いだという映画仲間もいた。暴力描写が激しくて嫌なのかな、と予想していたのだが、どうも違っていたようだ。希少本の朗読というかたちで、ああいういわゆる「エロ本」の読書会をするのが許せなかったのだと想像した(葛飾北斎の有名な絵を低俗絵画で紹介。私には許容範囲)。しかし、ここにこそ、この映画が作られた肝があり、ヒットした肝があったのだ(韓国人にとり日本の植民地時代は「恨」なのである)。しかも、最近の韓国映画の傾向なのだが、その中の悪役が日本人ではないのだ。植民地時代に寄生する韓国人の嫌らしさとおぞましさを日本語で描くからこそ、意味があるのである。それに、もし間違いがなければお嬢さん秀子は正真正銘の日本人のはずだ。メイドのスッキとの交流を描いたのであり、私にはパク・チャヌクらしからぬ擦り寄りのように思えたのであるが、違うのか?官能場面は予想範囲内だった。しかし、日本の大物女優はこういう映画に出演出来ないだろう(実際長澤まさみが濃厚な濡れ場をこの前拒否して映画出演を断った)。この点だけでも、韓国映画の独壇場は続く。ストーリーは予想の範囲内だった。(解説)第69回カンヌ国際映画祭に出品された、サラ・ウォーターズの小説「荊の城」を原案にしたサスペンス。日本統治下の韓国を舞台に、ある詐欺師が企てる富豪一家の財産強奪の行く末を追い掛ける。メガホンを取るのは、『オールド・ボーイ』『渇き』などの鬼才パク・チャヌク。『泣く男』などのキム・ミニ、『チェイサー』などのハ・ジョンウ、『最後まで行く』などのチョ・ジヌンらが出演。二転三転する展開や、1930年代の韓国を再現した美術や衣装に目を奪われる。(あらすじ)日本の統治下にあった1930年代の韓国。詐欺師たちの集団の手で育てられた少女スッキ(キム・テリ)は、伯爵の呼び名を持つ詐欺師(ハ・ジョンウ)から美しい富豪令嬢・秀子(キム・ミニ)のメイドという仕事をあてがわれる。スラム街から彼女とそのおじが暮らす豪邸に移ったスッキだが、伯爵は彼女の助けを得て秀子との財産目当ての結婚をしようと企んでいた。結婚した後に秀子を精神病院に送り込んで財産を奪う計画を進める伯爵だが……。2017年6月15日シネマ・クレール★★★★「22年目の告白-私が殺人犯です-」私は韓国の本場で、このリメイク作品の元の「殺人の告白」を観ている。よって、二転三転するストーリーに驚きはまったくなかった。注目したのは、リメイクであるにもかかわらず、2週目にして倉敷では珍しくこの上映がほぼ満席になっていたことである。一番館という2、3番目に大きな館なのである。圧倒的に若者が多く、しかもイケメン狙いの観客ではなく、男女ほぼ同数という、ストーリーに興味を持って来たと思われる理想的な観客層だったのである。私は、作品の出来よりもこのことに感動しビックリした。話の筋は、残虐な殺人事件に対して、法によって裁けない場合があったとしたら、その時に人はどうあるべきか?という、よくある問いなのだ。アメリカでは、保安官の伝統があって、大抵は「私設保安官」が登場して、その主人公は捕まらないままに去ってゆくことが多い。日本では、半分社会も許容出来る私的復讐を認める文化はない(歴史上仇討ちは、その唯一の例外時期だったのかもしれない)。しかし、若者は、それに対する最大の「同情」を持っていることもわかった。なぜ、主人公は犯人を殺すことを最後にはやめたのか。ここに、今の若者はたどり着けるだろうか。韓国映画は、こういうテーマを掘り下げることなく、二転三転のエンタメに徹した。それもまた、韓国らしさである。■ あらすじ阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件が発生した1995年、三つのルールに基づく5件の連続殺人事件が起こる。担当刑事の牧村航(伊藤英明)はもう少しで犯人を捕まえられそうだったものの、尊敬する上司を亡き者にされた上に犯人を取り逃してしまう。その後事件は解決することなく時効を迎えるが、ある日、曾根崎雅人(藤原竜也)と名乗る男が事件の内容をつづった手記「私が殺人犯です」を発表し……。■ 解説未解決のまま時効を迎えた連続殺人事件の犯人が殺人に関する手記を出版したことから、新たな事件が巻き起こるサスペンス。韓国映画『殺人の告白』をベースに、『SR サイタマノラッパー』シリーズなどの入江悠監督がメガホンを取り、日本ならではの時事性を加えてアレンジ。共同脚本を『ボクは坊さん。』などの平田研也が担当。日本中を震撼(しんかん)させる殺人手記を出版する殺人犯を藤原竜也、事件発生時から犯人を追ってきた刑事を伊藤英明が演じる。■ キャスト藤原竜也、伊藤英明、夏帆、野村周平、石橋杏奈、竜星涼、早乙女太一、平田満、岩松了、岩城滉一、仲村トオル■ スタッフ監督・脚本: 入江悠脚本: 平田研也2017年6月17日Movix倉敷★★★★「家族はつらいよ2」今週ラストウイークにも関わらず、主役の男性俳優の家族に不祥事があったにも関わらず、50ー70台の友人夫婦を中心に席の半分ぐらいが埋まっていたのには、感心した。この作品の大家族は、いまや私にはもちろん、多くの家族には無縁かもしれないが、それでも共感の笑いが館内に幾度となく沸き起こる。まあ、寅さんと同じ笑いの構造。家族構成は小津に似ていて、当然弟子の山田は意識している。しかし、当然カメラアングルも、現代風の性格付けもオリジナルだ。でも、家族会議は、見習ってどこの会議もした方がいいかもしれない。この前終わったドラマ「母になる」もやっていた。そうやって、みんなで問題を解決する方法がみんなの未来を明るくするのかもしれない。もっとも、前回もそうだったけど。今回も家族会議にうな重の上を7人前も頼んだら、それだけで2万円ぐらいするはずで、あの父親にしろ、長男にしろ、かなりいい会社に勤めていたことが予想されて共感出来ない(^_^;)。■ あらすじ家族全員を巻き込んだ平田周造(橋爪功)と妻・富子(吉行和子)との離婚騒動から数年。マイカーでのドライブを趣味にしていた周造だが、車に傷が目立つようになったことから長男・幸之助(西村雅彦)は運転免許証を返上させようと動く。だが、それを知った周造は意固地になって運転を続ける。ある日、行きつけの居酒屋のおかみ・かよ(風吹ジュン)を乗せてドライブをしていた周造は、故郷広島の同級生・丸田吟平(小林稔侍)と偶然再会。周造は四十数年ぶりに一緒に酒を飲み、丸田を自宅に泊めるが……。■ 解説ワケありクセあり一家の悲喜こもごもを描いたコメディードラマの続編。離婚危機を乗り越えた平田家の面々が、父親の同級生が来訪したのを機に新たな騒動を巻き起こす。監督の山田洋次、 脚本の平松恵美子、キャストの橋爪功、吉行和子、西村雅彦、妻夫木聡、蒼井優ら前作のスタッフ・キャスト陣が再結集する。無縁社会というテーマを掲げ、山田監督が独自の視点で描く家族物語に引き込まれる。■ キャスト橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優、藤山扇治郎、オクダサトシ、有薗芳記、広岡由里子、近藤公園、北山雅康、徳永ゆうき、小林稔侍、風吹ジュン、中村鷹之資、丸山歩夢、劇団ひとり、笑福亭鶴瓶■ スタッフ監督・脚本: 山田洋次脚本: 平松恵美子2017年6月22日Movix倉敷★★★★「マンチェスター・バイ・ザ・シー」最後の処理は物足りないようにも思えるが、あれでよかったようにも思える。「ムーンライト」と同様、大きな事件は起きない。劇的なラストはやって来ない。アメリカのミニシアター系作品なのだろう。ただ、物語の始めとは人間関係の進展は起きている。身近な者の死亡という、身近なテーマなだけに、細かな演技(突然切れる等々)に共感は得やすい。主演男優賞も脚本賞も、そう言われればそうかもしれない、というぐらい。いいのだけど、普遍的な価値がある気がしない。(見どころ)マット・デイモンがプロデューサー、ケイシー・アフレックが主演を務め、数々の映画賞を席巻した人間ドラマ。ボストン郊外で暮らす便利屋が兄が亡くなったのを機に帰郷し、16歳のおいの世話をしつつ自身が抱える過去のトラウマと向き合う姿が描かれる。メガホンを取るのは、『ギャング・オブ・ニューヨーク』などの脚本を担当してきたケネス・ロナーガン。共演には『ブルーバレンタイン』などのミシェル・ウィリアムズ、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』などのカイル・チャンドラーらが名を連ねる。(あらすじ)ボストン郊外で便利屋をしている孤独な男リー(ケイシー・アフレック)は、兄ジョー(カイル・チャンドラー)の急死をきっかけに故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ってくる。兄の死を悲しむ暇もなく、遺言で16歳になるおいのパトリック(ルーカス・ヘッジズ)の後見人を引き受けた彼は、おいの面倒を見るため故郷の町に留まるうちに、自身が心を閉ざすことになった過去の悲劇と向き合うことになり……。2017年6月25日シネマ・クレール★★★☆
2017年07月08日
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6月に観た映画は8作品。二回に分けて紹介します。「ちょっと今から仕事やめてくる」そう言えば、22年間勤めた仕事をちょっとやめた時に、既にいい大人だから別に相談する必要はなかったのかもしれなかったのだけど、なぜか父親だけには事前に相談しなくちゃと思って打ち明けたら、意外なほどにすんなりOKが出たのを思い出した。精神的に参っている事よりも、なんか変な処を心配(もう結婚を諦めたので、これ以上儲ける必要無いのもあり仕事辞める、と言うと、「結婚諦めたのか」と驚かれた)された事も、思い出した。観客は、主演2人目当ての若い女性ばかり。本来観て欲しい疲れた男はほとんどいない。まあ、DVDが出た時に、ふと観てもらえればいいのかもしれない。その時に「応えることのできる作品」になっているのか、どうか。正直、半々だ。それなりにわかりやすくブラック企業の客観的な姿や、自殺を思いとどまる要因、或いは偶然だけど展望ある未来を示してはいるが、やはりまだ明るすぎる、予定調和に思える。1番の危機は、主人公の最初の自殺なのだが、それを数分で流れるように見せたのでは、参っている人たちには、なんだかなあ、と思うのではないか?■ あらすじ激務により心も体も疲れ果ててしまった青山隆(工藤阿須加)は、意識を失い電車にはねられそうになったところをヤマモト(福士蒼汰)と名乗る男に助けられる。幼なじみだという彼に心当たりのない隆だが、ヤマモトに出会ってから仕事は順調にいき明るさも戻ってきた。ある日隆は、ヤマモトが3年前に自殺していたことを知り……。■ 解説第21回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞した北川恵海の小説を、『イン・ザ・ヒーロー』などの福士蒼汰を主演に迎えて映画化。ノルマが厳しい企業に勤め心身共に疲弊した青年が、幼なじみを名乗る人物との交流を通じ生き方を模索するさまを描く。メガホンを取るのは、『八日目の蝉』や『ソロモンの偽証』シリーズなどの成島出。福士演じる謎の男に救われる青年に、『夏美のホタル』などの工藤阿須加がふんするほか、黒木華、小池栄子、吉田鋼太郎らが共演。■ キャスト福士蒼汰、工藤阿須加、黒木華、森口瑤子、池田成志、小池栄子、吉田鋼太郎■ スタッフ原作: 北川恵海主題歌: コブクロ監督・脚本: 成島出2017年6月3日movix倉敷★★★☆「午後8時の訪問者」ダルデンヌ兄弟作品なので、通常のサスペンスではない、犯人探しではないかもしれない、とは思っていた。次第とあぶり出される弱いくて、声を出すことが出来ない人たち、そして良心に苛まれながらもウソをつく人たち。ジェニーだけがウソをつかない。医師として上から言葉になってしまうけど、貧困地区の診療所の医師になるのを全く迷わなかったし、乱暴な患者もいるけど、帰りにオヤツを渡す人たちもいる。ジェニーが人情溢れる街のお医者になってゆく過程を描いて、名医誕生の瞬間を描く作品になっている。(解説)診療時間をとっくに過ぎた午後8時に鳴ったドアベルに若き女医ジェニーは応じなかった。その翌日、診療所近くで身元不明の少女の遺体が見つかる。それは診療所のモニターに収められた少女だった。少女は誰なのか? 何故死んでしまったのか? ドアベルを押して何を伝えようとしていたのか?あふれかえる疑問の中、ジェニーは亡くなる直前の少女の足取りを探るうちに危険に巻き込まれていく。彼女の名を知ろうと、必死で少女のかけらを集めるジェニーが見つけ出す意外な死の真相とは──。作品を発表するごとにカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、2度のパルムドール大賞のほか、数々の映画賞を世界中で獲得しているジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督。本作も第69回カンヌ国際映画祭にパルムドール受賞作『ロゼッタ』以降7作品連続コンペティション部門に出品されるという快挙を成し遂げた。常に上質な映画を作り上げるダルデンヌ兄弟が今回題材に選んだのは“名もなき少女”に何が起こったのかを探るミステリー。ちょっとした判断の迷いから失ってしまった“救えたかもしれない命”。出られなかった電話や読み逃していたメール、そしてドアを開けなかったベルの音──「もしかして何かが変わったのではないか」と思わせる人生の転機はどこにでもある。その転機を探るうちに意外な真相にたどり着く。その真相への道のりの間に、主人公自身にも変化が起きる……。これまでにない極上のヒューマン・サスペンスが誕生した。主人公のジェニーを演じるのは2013年にセザール賞助演女優賞、翌年には同賞主演女優賞受賞とフランス最大の映画賞を席巻し続けている若手実力派女優アデル・エネル。かねてからダルデンヌ兄弟のファンだったというアデルは、少女時代から女優として活躍し、妥協のない作品選びをし続けてきた。名もなき少女の死を受け入れきれない医者という難役をこなした本作の演技をレザンロキュプティブル誌は「彼女にふさわしい唯一の形容詞は『天才』だ!」と最大の賛辞を贈っている。今後、目の離せない女優の出現に映画ファンならずとも胸が躍る。世界が誇る才能ダルデンヌ兄弟と天才女優アデル・エネル。彼らが作り上げた新たな傑作の力強さに誰もが圧倒されるだろう。2017年6月4日シネマクレール★★★★「ローガン」少女を護る強い男の話が好きなので、「Xメンシリーズ」は飽き飽きしていたのだけど、観てしまった。東京を舞台にしたあの作品よりは10倍はいい作品だった。ミュータントが生まれなくなって、15年ほどたった近未来2029年、どうやら数年前の戦いで、ミュータントは ほぼいなくなったらしい。しかし、CIAらしき組織は「人工的ミュータント」は作り続けているらしい。ローラの造形は、悪くはないが、3/4を無口で通したので、おそらく芝居は出来ない(アクションはピカイチ)のだろう。期待した、第二のナタリーは無理。新しいミューズにはなれない。マーベル作品なのに、最後のオマケ映像がなかった。ミュータントは絶滅はまぬがれたが、ローガンやチャールズさえもいなくなったことが明らかになったので、製作は本気でX-MENシリーズを終わらせる積りなのだろう。■ あらすじ近未来では、ミュータントが絶滅の危機に直面していた。治癒能力を失いつつあるローガン(ヒュー・ジャックマン)に、チャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)は最後のミッションを託す。その内容は、ミュータントが生き残るための唯一の希望となる少女、ローラ(ダフネ・キーン)を守り抜くことだった。武装組織の襲撃を避けながら、車で荒野を突き進むローガンたちだったが……。■ 解説『X-MEN』シリーズのウルヴァリンが、傷つきながらもミュータント存亡の危機を救おうと突き進む姿を描くアクション大作。超金属の爪と超人的な治癒能力を持つ不老不死のヒーロー、ウルヴァリンが老いて傷跡残る体で、ミュータントの未来の鍵を握る少女を守るべく戦う姿を活写する。主演をシリーズ同様ヒュー・ジャックマンが務め、監督を『ウルヴァリン:SAMURAI』などのジェームズ・マンゴールドが担当。能力を失ったウルヴァリンの衝撃の姿と壮絶なバトルに注目。■ キャストヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート、ボイド・ホルブルック、スティーヴン・マーチャント、ダフネ・キーン、リチャード・E・グラント、エリク・ラ・サル、イリース・ニール、エリザベス・ロドリゲス、クインシー・フォース■ スタッフ監督・脚本・ストーリー・製作総指揮: ジェームズ・マンゴールド2017年6月8日Movix倉敷★★★★「20センチュリー・ウーマン」「人生で確かなことは、人生がこの先どうなるか、わからないってことだけだよ」1979年。アメリカ地方都市。母親ドロシア、1924年生まれ、1964年に1男子をもうけた。つまり15歳の男の子ジェイミーをどう扱っていいのかわからなくなってきた。離婚して、(おそらく)正規の職を持ちながら、郊外の一軒家の空き部屋に、17歳の家出娘、23歳のパンク好きフォトグラファー女子、30代のヒッピーあがりの整備工たちに部屋貸ししている。印象的な台詞、絶妙な編集の新しさはある。38年前の人々がイキイキとしている、当時の音楽てんこ盛り、当時の風俗・政治情勢までも取り入れる貪欲さ。2017年の現在、ちょっと前だと思っていたむかしが、明らかに歴史になっていることを知らされて驚く。何しろ、ジミー・カーターの演説が、今から見るととっても民主的名演説(ビューティフル)に聞こえるのだ。■ あらすじ1979年のカリフォルニア州サンタバーバラ、自由奔放なシングルマザーのドロシア(アネット・ベニング)は、15歳の息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)の教育に頭を悩ませていた。そこで、ルームシェアしているパンクな写真家のアビー(グレタ・ガーウィグ)と、近所に暮らすジェイミーの幼なじみジュリー(エル・ファニング)に相談する。■ 解説『人生はビギナーズ』などのマイク・ミルズ監督が、自身の母親をテーマに撮ったヒューマンドラマ。1970年代末の南カリフォルニアを舞台に、3人の女性とのさまざまな経験を経て大人へと成長していく少年のひと夏を描く。思春期を迎えた息子を持つシングルマザーを『キッズ・オールライト』などのアネット・ベニングが演じるほか、『フランシス・ハ』などのグレタ・ガーウィグ、『SOMEWHERE』などのエル・ファニングらが共演。■ キャストアネット・ベニング、エル・ファニング、グレタ・ガーウィグ、ルーカス・ジェイド・ズマン、ビリー・クラダップ■ スタッフ監督・脚本: マイク・ミルズ製作総指揮: チェルシー・バーナード2017年6月8日Movix倉敷★★★★
2017年07月07日
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今日と明日で日本平和委員会全国大会in岡山が開催されていて、私も参加しています。なので、これは予約で記事を書きました。それはそれとして、後半の四作品。★5つが出ました!「人生フルーツ」です。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」冒頭のベビー・グルートの視点で描いた怪獣退治の派手な映像は、そのままこの作品の視点にもなっている。即ち、本格的なスペース・オペラの内容をもちながらも、何処か冷めているのである。そういう、「俺たちは決して(SWのような)主流にはならないぞ」という姿勢が、逆にスペース・オペラファンの心を捉えているのだろう。私は巷で言うような傑作とは思わない。いろんな部分が新鮮で、あと一作ぐらいは退屈せずに見ることができそう。それ以降はむつかしいだろう。最後のひつこいぐらいのおまけ映像も一回やる分にはいいかもしれない。■ あらすじピーター(クリス・プラット)は“ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー”のまとめ役として、刑務所で出会ったくせ者たちを率いている。宇宙一荒っぽいアライグマのロケットは、ブツブツ文句を言いながらも小さな相棒ベビー・グルートと共に銀河の平和を守るために奮闘。緑色の肌を持つ美しい暗殺者ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)らと共に行動し……。■ 解説1970年代を中心にヒットした数々のナンバーに乗せ、異色ヒーロー集団が大暴れする『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の第2弾となるSFアクション。銀河の平和に尽力する個性派チームの活躍を描き出す。リーダーのトレジャーハンターを、前作同様『マグニフィセント・セブン』などのクリス・プラットが好演。激しいアクション、つぶらな瞳の“ベビー・グルート”の活躍に注目。■ キャストクリス・プラット、ゾーイ・サルダナ、デイヴ・バウティスタ、ヴィン・ディーゼル、ブラッドリー・クーパー、マイケル・ルーカー、カレン・ギラン、ポム・クレメンティエフ、エリザベス・デビッキ、クリス・サリヴァン、ショーン・ガン、カート・ラッセル、シルヴェスター・スタローン■ スタッフ脚本・監督: ジェームズ・ガン製作: ケヴィン・ファイギ2017年5月18日movix倉敷★★★☆「人生フルーツ」シネマ・クレールの一週間一日一度のアンコール上映。日曜日、会場一杯の100十数人が詰めかけた。評判は聞いていたが、まさかこれほどの傑作ドキュメンタリーとは思わなかった。風が吹けば、枯葉が落ちる。枯葉が落ちれば、土が肥える。土が肥えれば、果実が実る。コツコツ、ゆっくり。人生(は)フルーツ。90歳の元ニュータウン設計家と87歳の奥さん。その一年間と少しをゆっくりと撮った。(経済優先のために愛知県高蔵寺ニュータウンで果たせなかった事を、自分だけでも実現させるかのように)300坪のミニ雑木林を高蔵寺の我が家に作って、40年間住んでいる。夫婦共々、足下は全然しっかりしている。頭も2人とも極めてクリアー。どうしてこんなにも健康なのか。畑仕事と毎日の仕事と、奥さんの自給自足に近い手料理があるからなのか、と想像しながら映像を見る。彼らの生き方がナレーションの樹木希林の生き方とも重なり、いろんな感慨を覚える。しかし、ここまでならば現代社会へのアンチテーゼを含んだ「スローライフの提案」作品である。私もそういう予想で、この作品を観ていた。もっとも、それだけでもすごかった。ところが、撮影して一年後、ご主人が急死する。草取りをした後に疲れて眠って、そのまま起きなかったらしい。木から落っこちたのでも、自転車で転んだのでもない。前半でそういう映像があったので、危なかしいなあ、と思って見ていたけど、(ピンピンコロリの)奇跡のような死に方ってあるんだ。監督は、死に顔をはっきり長く映す。非常に珍しい映像である。そして、傑作になったのは、その後の展開である。時は急に二ヶ月前に戻る。元ニュータウン設計家は、大きな仕事は尽く断っていたのに、九州の小ささな精神療養所の設計を数日でこなしていたのである。その一部始終をカメラは写していた。これも奇跡としか言いようがない。人生フルーツ。落ちる前に最も甘い実が成った。家は生活の宝箱でなくてはならない。やがて、あの家は無くなるだろう。滅びゆくものへ、それを記憶するのは人間である。2017年5月28日シネマ・クレール★★★★★「メッセージ」これはネタバレを絶対してはいけないタイプの作品だった。先ずは「公式あらすじ」を紹介する。(ストーリー)巨大な球体型宇宙船が、突如地球に降り立つ。世界中が不安と混乱に包まれる中、言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は宇宙船に乗ってきた者たちの言語を解読するよう軍から依頼される。彼らが使う文字を懸命に読み解いていくと、彼女は時間をさかのぼるような不思議な感覚に陥る。やがて言語をめぐるさまざまな謎が解け、彼らが地球を訪れた思いも寄らない理由と、人類に向けられたメッセージが判明し……。SF映画でアカデミー賞にノミネートされることは珍しいが、結局如何にもアメリカらしい作品だったことで、こうなったのだ。問題は、「エイリアンがなんの目的で、全世界12カ所に巨大飛行物体で現したのか」その目的が、夢或いはファンタジーだったことだ。それならば、問題は、SF的解釈ではなく、ルイーズの心持ちということになるだろう。「それでも」使命を果たしたのが彼女の自由意思だという処に、物語の薄っぺらさを感じるか、深さを感じるかは、映像と女優の演技次第だったということ。「その国の言語を獲得する者は、その国の文化をも獲得する」というのはその通りだと思うが、描き方に今ひとつ説得力がなかった。■ 解説テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」を基にしたSFドラマ。球体型宇宙船で地球に飛来した知的生命体との対話に挑む、女性言語学者の姿を見つめる。メガホンを取るのは、『ボーダーライン』などのドゥニ・ヴィルヌーヴ。『ザ・マスター』などのエイミー・アダムス、『アベンジャーズ』シリーズなどのジェレミー・レナー、『ラストキング・オブ・スコットランド』などのフォレスト・ウィテカーらが結集する。■ キャストエイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー、マイケル・スタールバーグ■ スタッフ監督: ドゥニ・ヴィルヌーヴ脚本: エリック・ハイセラー2017年5月28日Movix倉敷★★★「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」冒頭、美香の朝の風景。大都会東京で1人暮らしをする女性の「人に群れたくない」孤独を、うまいこと掬い上げている映像に、あっいい新人が出て来たな、と思ったら日本アカデミー賞監督でもある石井裕也作品だった。彼は大作と、このようなインディーズっぼい作品とを交互に作る。石橋静河は、いい具合に花がない。今回は(「河の底からこんにちは」や「ぼくたちの家族」のように)作品途中で、物語の潮目が急激に変わる場面がない。ゆっくりと確実に変わってゆく。最果タヒの「詩」が、上手い具合に台詞の中に溶け込んでいる。私が感じたのが何か、この映画に「共感した若者」(がもし居たとしたならば、だが)判るだろうか。「羨ましさ」である。身近に「死」を感じたり、孤独を感じたり、ある日突然速報が流れて、大事件が起きることを「嫌な予感がする」と感じ続けて閉塞感たっぷりの彼ら彼女らに感じるのは、それでも彼らに開けている「未来への時間」という羨ましさである。当たり前の話だ。それでも、そんな当たり前のことに気がつかせてくれる、発見がいっぱいの佳作である。もちろん、彼らの現実はリアルに描かれていて、彼らが何時も死を身近に感じているのは、理解できる。そういうリアリティがあるからこそ、最後の恋愛映画らしくない彼らの寄り添いが、明るく見えるのである。■ あらすじ2017年東京。看護師の美香(石橋静河)は病院に勤める傍ら夜はガールズバーで働き、漠然とした不安や孤独の中で日々過ごしていた。一方、工事現場での日雇い仕事に従事する慎二(池松壮亮)は、常に死の気配を感じながらも何とか希望を見いだそうとしていた。排他的な都会で生きづらさを抱えつつも、懸命に生きるすべを模索する二人が出会い……。■ 解説『舟を編む』などの石井裕也監督が、最果タヒのベストセラー詩集を実写映画化。東京を舞台に、都会で暮らす若者たちの出会いと恋の始まりを映す。夜はガールズバーで働く看護師を、石橋凌と原田美枝子の娘である石橋静河、日雇い労働者の青年を石井監督作『ぼくたちの家族』などに出演してきた池松壮亮が演じる。そのほか市川実日子、松田龍平、田中哲司らが共演。■ キャスト石橋静河、池松壮亮、佐藤玲、三浦貴大、ポール・マグサリン、市川実日子、松田龍平、田中哲司■ スタッフ監督・脚本: 石井裕也原作: 最果タヒエンディング曲: The Mirraz撮影: 鎌苅洋一2017年5月31日Movix倉敷★★★★
2017年06月10日
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5月に観た映画はまたもや、8本。2回に分けて紹介する。「カフェ・ソサエティ」完璧な30年代のハリウッドの街や、ニューヨークの店の再現。ファッションや車、そして風俗までも再現して見せるが、喜劇ではなく、悲劇でさえも、ましてやサスペンスでもない。そういう意味では終わった後になんだったんだろ、と思わせる。1930年代のボビーは10歳以上アレンより歳上だと思われるが、これはやはりアレンの青春グラフティなんなのではないか。2人の男の間で揺れる若い女性を、スリステンが演じているが、もう老境のアレンには、彼女に手を出す気力がなかっただろう。それが、陰に陽に作品の気力に現れている気がする。もう1人のヴェロニカにブレイク・ライブリーを起用したのは、美人に目をつけるアレンの才能はまだ残っている証しだろうし、ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート、ブレイク・ライブリー、スティーヴ・カレル、彼らは共にアレンのライブラリーに名前が載ることがこの上ない「名誉」であることを知っている。それなりに力演だった。「夢は夢だ」ニューイヤーズ・パーティーの時に、NYとハリウッドで2人が見せる遠い目は、野望と虚しさの、アレンの目そのものなのかもしれない。(ストーリー)もっと刺激的で、胸のときめく人生を送りたい。漠然とそんな願望を抱いたニューヨークの平凡な青年ボビーがハリウッドを訪れる。時は1930年代、この華やかなりし映画の都には、全米から明日の成功を目指す人々が集まり、熱気に満ちていた。映画業界の大物エージェントとして財を築いた叔父フィルのもとで働き始めたボビーは、彼の秘書ヴォニーの美しさに心を奪われる。ひょんな幸運にも恵まれてヴォニーと親密になったボビーは、彼女との結婚を思い描くが、うかつにも彼はまったく気づいていなかった。実はヴォニーには密かに交際中の別の男性がいることに……。監督 ウディ・アレン出演 ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート、ブレイク・ライブリー、スティーヴ・カレル、パーカー・ポージー2017年5月7日TOHOシネマズ岡南★★★☆「追憶」ありがちなストーリーなだけに、降旗康男演出なだけに、どれだけ喋らない台詞に想いを込められるか、がこの作品の肝だったと思う。比較的高い年齢層の観客はそこを観に来たのだと思う。降旗康男は岡田准一を高倉健の次に選んだ、と言われている。ハッキリいって、期待に全然応えられていない。ストーリー上仕方ないかもしれないが、小栗旬が主人公になっても仕方ない作品だった。全体的には観せる作品になっているとすれば、もう何時身罷ってもおかしくはない木村大作撮影監督の力量に負う処が大きいだろう。最初から最後まで厳しい北陸の風景が続く。だからこそ、人間の底辺での優しさが光るのである。もっとも彼ともう1人の撮影監督が居るので、木村の方はキチンと継承ができている。岡田准一以外はみんな良かったけど、まさかのりりぃがまだ出演していたとは思わなかった。ホントに死ぬ直前まで演じていたんだ。長澤まさみが案外良かった。(ストーリー)富山県警捜査一課の四方篤(岡田准一)は、富山湾を臨む氷見漁港に佇んでいた。そこで刺殺体となって発見された男は、かつて共に少年時代を過ごした旧友だった―。1992年、冬の能登半島―13歳の四方篤は、親に捨てられた同じような境遇の田所啓太、川端悟と共に、軽食喫茶「ゆきわりそう」を営む仁科涼子(安藤サクラ)・山形光男(吉岡秀隆)を慕い、家族のような日々を送っていた。しかしある事件をきっかけに、幸せだった日々は突然終わりを告げ、少年たちは離れ離れになった。あれから25年―刑事となった四方篤は、あの日、二度と会わないと誓った旧友・川端悟(柄本佑)と無残にも遺体となった姿で再会を果たす。監督 降旗康男出演 岡田准一、小栗旬、柄本佑、長澤まさみ、木村文乃、安藤サクラ、吉岡秀隆2017年5月7日TOHOシネマズ岡南★★★☆「美女と野獣」昔からの物語 変わらぬ真実91年のアニメ「美女と野獣」はとても新鮮だった。立体アニメになる直前の、立体背景に度肝を抜かれた。そして、王子様を待つお嬢様ではなく、とても行動的なベルにとても好感を持った。実写版もとても新鮮だった。アニメでは到底表現し切れない、村の細かな描写。よって、物語をいくらか複雑にして、若干長くしてもも受け止めることができた。主人公たちの複雑な心理はさすがに実写版の方が上。結果、アニメよりもいい作品になった。実写版シンデレラもよかったが、やはりヒロインは華が必要なのだ。エマ・ワトソンには華がある。そこが、前回と今回の興行収入の違いだと思う。■ あらすじ進歩的な考え方が原因で、閉鎖的な村人たちとなじめないことに悩む美女ベル(エマ・ワトソン)。ある日、彼女は野獣(ダン・スティーヴンス)と遭遇する。彼は魔女の呪いによって変身させられた王子で、魔女が置いていったバラの花びらが散ってしまう前に誰かを愛し、愛されなければ元の姿に戻ることができない身であった。その恐ろしい外見にたじろぎながらも、野獣に心惹(ひ)かれていくベル。一方の野獣は……。■ 解説ディズニーが製作した大ヒットアニメ『美女と野獣』を実写化した、ファンタジーロマンス。美しい心を持った女性ベルと野獣の恋の行方を見つめる。メガホンを取るのは、『ドリームガールズ』や『トワイライト』シリーズなどのビル・コンドン。『コロニア』などのエマ・ワトソン、『クリミナル・ミッション』などのダン・スティーヴンス、『ドラキュラZERO』などのルーク・エヴァンスらが顔をそろえる。幻想的なビジュアルに期待が高まる。■ キャストエマ・ワトソン、ダン・スティーヴンス、ルーク・エヴァンス、ケヴィン・クライン、ジョシュ・ギャッド、ユアン・マクレガー、スタンリー・トゥッチ、イアン・マッケラン、エマ・トンプソン、(日本語吹き替え)、昆夏美、山崎育三郎、岩崎宏美、村井國夫、吉原光夫、藤井隆、成河、小倉久寛、濱田めぐみ、島田歌穂、池田優斗■ スタッフ監督: ビル・コンドン製作: デヴィッド・ホバーマン製作: トッド・リーバーマン脚本: スティーヴン・チョボスキー脚本: エヴァン・スピリオトポウロス製作総指揮: ジェフリー・シルヴァー製作総指揮: トーマス・シューマッハ製作総指揮: ドン・ハーン撮影: トビアス・シュリッスラープロダクションデザイン: サラ・グリーンウッド編集: ヴァージニア・カッツ衣装: ジャクリーヌ・デュランスコア・歌曲・作曲: アラン・メンケン作詞: ハワード・アシュマン作詞: ティム・ライス音楽プロデューサー: マット・サリヴァンスコアアレンジ: クリストファー・ベンステッド歌曲アレンジ・指揮: マイケル・コザリン2017年5月11日Movix倉敷★★★★「帝一の國 」よくできた政界再編シュミレーションゲーム。評価は微妙。自民党(政治家)のドロドロを上手く若者(観客はほとんど20代男女だった)に説明する面もあるけど、結局単に1番になればいいと思っているアホ主人公を最後まで肯定して終わる。若者は、この映画を観てどう思うのか?「こんな欲望丸出しの世界、変えなくちゃいけない」と思うのか、「こんな世界近づかないようにしよう。関心持つまい。選挙も馬鹿らしい」と思うのか、「かっこいい。是非こういう世界で自分の実力を試したい」と思うのか。2番目ばかりのような気がする。若手役者が一堂にかいして、顔見せという面もある。ただし、これであまり演技力は測れない。ところで、永野芽郁はあんなに団子鼻なのに、どうしてあんなに可愛いのだろ。(ストーリー)全国屈指の頭脳を持つ800人のエリート学生達が通う、日本一の超名門・海帝高校。政財界に強力なコネを持ち、海帝でトップ=生徒会長をつとめたものには、将来の内閣入りが確約されているという。時は4月、新学期。大きな野心を持つ男が首席入学を果たす。新1年生・赤場帝一。彼の夢は「総理大臣になって、自分の国を作る」こと。その夢を実現するためには、海帝高校の生徒会長になることが絶対条件。「ライバルを全員蹴落として、必ずここでトップに立つ…そのためならなんでもする…どんな汚いことでも…。2年後の生徒会長選挙で優位に立つには、1年生の時にどう動くかが鍵となる。戦いはもう始まっているのだ!」。監督 永井聡出演 菅田将暉、野村周平、竹内涼真、間宮祥太朗、志尊淳、千葉雄大、永野芽郁、吉田鋼太郎2017年5月14日TOHOシネマズ岡南★★★★
2017年06月09日
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「消えた声が、その名を呼ぶ」 これぞ映画。今月は壮大なスケールで描く歴史大作を紹介します。1910年代のトルコ、レバノン、キューバ、アメリカの歴史セットを再現し、世界的ロケを実現し、150万人のアルメニア人が殺されたという歴史的悲劇を告発し、戦争における庶民の運命、神との相剋、最後まで折れない家族愛、隣人の優しさと無慈悲、多くのテーマを引っさげながら、ナザレットという1人の父親の運命を描き切りました。 とはいっても、いわゆるヨーロッパ映画であり、宣伝は一切されていなかったので、この邦題すら知らなかった人がほとんどかもしれません。 1915年、第一次世界大戦中のオスマン・トルコ。アルメニア人の鍛冶職人ナザレット(タハール・ラヒム)は、夜更けに突然現れた憲兵によって、妻と娘から引き離され強制連行されます。辿り着いた砂漠では仲間を次々に失い、激しい暴行で声も奪われてしまいます。彼は奇跡的に死線を乗り越え、生き別れた家族に会うため、灼熱の砂漠を歩き、海を越え、森を走り抜け、4つの国を渡るのです。 戦争という大きな力がいかに大きな悲劇を産むかということを描いて、中東からヨーロッパ各地に難民が押し寄せている現代にも重なる視点を持つのではないかと思います。また、トルコ政府が認めていない少数民族の大虐殺をトルコ系監督が描いたという事も特記したい。この作品が、ドイツ・フランス・イタリア・ロシア・ポーランド・カナダ・トルコの共同制作になっているのもとても嬉しい。 ナザレットの名前は、キリスト教に由来しています。しかし、アルメニア大虐殺をその身で体験した彼は天に礫を投げ、「神はいない」と信仰を無くします。それでも、第一次世界大戦で負けたオスマン・トルコの民に石を投げることを、彼はしませんでした。また、敵味方含めて、彼の壮大な旅を助けたのは、やはり名もなき様々な人種の民なのでした。大虐殺の背景に宗教対立もあるのですが、作品はそれを乗り越える人類愛も描いていると、私は思いました。 チャップリンの無声映画「キッド」が、ナザレットの壮大な旅のきっかけになり、一つのアルメニア民族の歌が彼の旅を導き、慰めます。満足する映画体験でした。 (2015年ファティ・アキン監督作品、レンタル可能)
2017年05月17日
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後半の4作品です。 「わたしは、ダニエル・ブレイク/(原題)I,DANEL BLAKE」 80歳のケン•ローチ監督が引退宣言を撤回して取り組んだ。その作品は、決して不屈の闘志を持った男の物語ではない。歴史上大きな出来事じゃない。けれどもとても大切なことだった。 「私は、ダニエル・ブレイクだ。人間だ。犬じゃない。‥」 「保護なめんなジャンパー」が作られた小田原市。今回検証委員会が作られた。雨宮処凛さんも元受給者も参加している誠実な委員会らしい。そのことはいいのだが、あのジャンパーが作られるのは(あの事以外にも)其れなりの土壌があったということがその委員会で指摘されている。例えば、最初に申請者に渡す「説明パンフ」。役所言葉で埋め尽くされているらしい。「こういう義務がある」「こういう場合は打ち切られる」等々の申請を諦めさす記述が続いているともいう。これでも問題発覚後の修正すみのパンフらしい。役人たちが何を考えて仕事しているのか、よくわかるエピソードではある。 この一つだけとっても、対岸の火事じゃない。 一人でも多くの人に見て欲しい作品。 (解説) ケン・ローチ監督が二度目のカンヌ国際映画祭パルムドールに輝いた社会派ドラマ。ダニエルは心臓疾患により医師から仕事を止められるが、複雑な制度に翻弄され支援を受けられない。手助けしたシングルマザーの家族と交流を深め、貧しくとも支え合うが……。一貫して社会問題に目を向けてきたケン・ローチ監督は「ジミー、野を駆ける伝説」を最後に劇映画からの引退を表明していたものの、拡がる格差や貧困を鑑み、引退を撤回し本作を制作した。 (ストーリー) イングランド北東部にある町ニューカッスルに住む大工のダニエル・ブレイク。59歳の彼は心臓に病が見つかり、医師からは仕事を止められてしまう。しかも複雑な制度に翻弄され、国の援助を受けられない。そんな中、二人の子供を抱えるシングルマザーのケイティを助けるダニエル。それをきっかけに彼女たちと交流し、貧しくとも助け合い絆を深めていくが、厳しい現実を前に次第に追い詰められていく。 2017年4月16日 シネマ・クレール ★★★★☆ 「トレインポスティング2」 実はこれを観る前日に、「T1」を初めて観た。私はこの作品は、ヤク中の若者を通じて、閉塞感あふれる社会を風刺しているものだとばかり思っていた。ところが「T1」も「T2」も、どちらも閉塞感なんてない。風俗は思いっきりある。20年経って、風俗は思いっきり変わったのに、彼らは全く変わらない。いや、少しだけ落としどころと知恵がついて、体力がなくなって、直ぐに息切れがするところが変わったところか。 前作は名作だという。今作は、前作をなぞるだけだった。名作のコピーは佳作になるかもしれないが、私には名作ではなかったので、佳作にもならない。 ■ あらすじ かつてレントン(ユアン・マクレガー)は、麻薬の売買でつかんだ大金を仲間たちと山分けせずに逃亡した。彼が20年ぶりに故郷スコットランドのエディンバラの実家に戻ってみるとすでに母親は亡くなっており、父親だけが暮らしていた。そして悪友たちのその後が気になったレントンが、ジャンキーのスパッド(ユエン・ブレムナー)のアパートを訪ねると……。 ■ 解説 『スラムドッグ$ミリオネア』でオスカーを手にしたダニー・ボイル監督作『トレインスポッティング』の続編。前作から20年後を舞台に、それぞれワケありの主人公たちの再会から始まる物語を描く。脚本のジョン・ホッジをはじめ、『ムーラン・ルージュ』などのユアン・マクレガー、ユエン・ブレムナー、ジョニー・リー・ミラー、ロバート・カーライルらおなじみのメンバーが再集結。一筋縄ではいかない男たちの迷走が見どころ。 ■ キャスト ユアン・マクレガー、ユエン・ブレムナー、ジョニー・リー・ミラー、ロバート・カーライル、ケリー・マクドナルド、アンジェラ・ネディヤコバ、アーヴィン・ウェルシュ ■ スタッフ 監督: ダニー・ボイル 撮影監督: アンソニー・ドッド・マントル 脚本: ジョン・ホッジ 2017年4月22日 Movix倉敷 ★★★ 「ゴースト・イン・ザ・シェル」 草薙素子誕生秘話を、実写で描く。どこまで機械か、どこまで人間か、わからなくなった世界で、「お前は誰か」とずっと問い続ける話。 人間である条件を、少佐は最後に語る。「なにをするか」が基準になるのだと。その点に絞って、私は観た人と語りたい。 物分りの良い荒巻課長とか、まだ機械目がない頃のバトーとか、まさかの素子の母親の話とか、原作ファンには、やり過ぎだろという声が出るかもしれないが、原作ファンではない私には、わかりやすかった。それでも、一切原作に接していない者にはよくわからない設定があったに違いないとも思う。 ヨハンソンははまり役だと思う。都会の描写も、CGっぽいところが受け付けない人はいるかもしれないが、まあ良かった。美術は美しかった。アクションはかっこよかった。ところが、あまり熱くなれない。あまりにもメインをわかりやすい敵にして、わかりやすい落としどころにしたので、なんだなかあ、と思ったのである。 そして、これは実写の効果なのだが、アニメの時には気にならなかった、この世界の政治体制、世界の歴史的段階、一般市民の意識等が気になって仕方ない。要は、「攻殻機動隊」世界は20数年かけて積み木のように作って来た世界であって、アニメから一歩世界を出るとまるきりわからなくなるのだ。そういうファンタジーは、私は不十分なファンタジーだと思う。 ■ あらすじ 近未来。少佐(スカーレット・ヨハンソン)は、かつて凄惨(せいさん)な事故に遭い、脳以外は全て義体となって、死のふちからよみがえった。その存在は際立っており、サイバーテロ阻止に欠かせない最強の戦士となる。少佐が指揮するエリート捜査組織公安9課は、サイバーテロ集団に果敢に立ち向かう。 ■ 解説 『スノーホワイト』などのルパート・サンダーズが監督を務め、士郎正宗のSF漫画「攻殻機動隊」を、スカーレット・ヨハンソンやビートたけしらを迎えて実写映画化。近未来を舞台に、脳以外は全身義体の少佐が指揮する捜査組織公安9課の活躍を描く。『イングリッシュ・ペイシェント』などのジュリエット・ビノシュや『シルク』などのマイケル・ピットらが共演。敵と対峙(たいじ)する公安9課を、どのように描くのかに注目。 ■ キャスト スカーレット・ヨハンソン、ピルー・アスベック、ビートたけし、ジュリエット・ビノシュ、マイケル・ピット、チン・ハン、ダヌーシャ・サマル、ラザラス・ラトゥーリー、泉原豊、タワンダ・マニーモ、(日本語吹き替え)、田中敦子、大塚明夫、山寺宏一 ■ スタッフ 原作: 士郎正宗 監督: ルパート・サンダーズ 製作: アヴィ・アラッド 製作: アリ・アラッド 製作: スティーヴン・ポール 製作: マイケル・コスティガン 製作総指揮: ジェフリー・シルヴァー 製作総指揮: 藤村哲哉 製作総指揮: 野間省伸 製作総指揮: 石川光久 脚本: ジェイミー・モス 脚本: ウィリアム・ウィーラー 脚本: アーレン・クルーガー 撮影監督: ジェス・ホール 衣装デザイン: カート・アンド・バート 視覚効果プロデューサー: フィオナ・キャンベル・ウェストゲイト 視覚効果スーパーバイザー: ギヨーム・ロシェロン 2017年4月27日 Movix倉敷 ★★★★ 「クーリン街少年殺人事件」 傑作の噂高い本作を初めて観る。約4時間。会員価格で1800円。正直、今年のマイベストに残る作品ではない。しかし、かなりの力作である事は確か。しかも、かなり誠実だ。 出てくるのは、ほとんど外省人のような気がする。小公園グループと271グループの対立は、大人社会の反映であるとは思うのだが、詳しい事はわからない。説明を省いてギリギリの台詞で作っているし、時々「ものすごい映像」があるのはわかるのだが、あまりにも視点が、小四だったり、ハニーだったり、明小だったり、小四の両親だったり、複雑でわからない。もう一度みたらわかるのかもしれないが、観る気力がない。 日本人家屋に遺された日本刀や小刀、上がり台のある玄関、アメリカンポップスの流行る街隅のバー、台湾人との微妙な関係、現在まで続く台湾の闇と光を描いて、すごい作品だったと思う。 (解説 ) 男子中学生によるガールフレンド殺害という実際に起きた事件の再現を通して、1960年代当時の台湾の社会的・精神的背景をも描いていく青春映画。「海辺の一日」「恐怖分子」など台湾ニューウェイヴ映画界の旗手として知られる楊徳昌(エドワード・ヤン)監督の長編第4作目であり、日本における彼の初の劇場公開作。製作はユー・ウェイエン、エグゼクティヴ・プロデューサーはジャン・ホンジー、脚本は楊徳昌、ヤン・ホンヤー、ヤン・シュンチン、ライ・ミンタン、撮影はチャン・ホイゴンが担当。91年東京国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門審査員特別賞、国際批評家連盟賞受賞。1992年4月25日より188分版(配給:ヒーロー)が、1992年6月5日より完全版が公開されている。2017年3月11日より完全版の4Kレストア・デジタルリマスター版を上映(配給:ビターズ・エンド)。 (あらすじ ) 1949年、中国大陸での国共内戦に敗れた国民党政府は台湾に渡り、それに伴って約200万人も台湾へと移住した。1960年、そのように移住した張家の次男スー(張震)は、中学の夜間部に通っており、小公園と呼ばれる不良少年グループに属するモー(王啓讃)、飛行機(柯宇綸)、ズルらと同級生だった。スーは少女ミン(楊静恰)と知り合う。彼女は小公園グループのボス、ハニー(林鴻銘)の彼女という噂だ。ハニーは対立する軍人村グループのボスとミンを奪い合い、相手を殺して台南へ逃げたという。ある時スーはミンと一緒にいたと軍人村グループに因縁をつけられるが、最近スーのクラスに転校してきた軍の指令官の息子マー(譚至剛)がひとりで助けてくれた。スーはミンへのほのかな愛情や、マーとの友情を育んで日々を過ごしていく。スーの兄(張翰)は優等生だが、たちの悪い友人イエズと一緒に軍人村グループのたまり場のビリヤード店に出入りするようになっていた。イエズはコンサートを開いて一儲けしようと企んでいたが、ビリヤードで負けがこみ軍人村グループの現ボス、シャンドンに脅され、彼をズルに引き合わせることになる。シャンドンは歌に夢中になっているハニーの弟アルテヤオを出し抜きズルに小公園グループをまとめさせ、さらに自分がそれを牛耳ろうという腹づもりでいた。そんな頃、ハニーが帰ってくる。50年代のアメリカン・ポップスに沸き立つコンサート当日の会場に彼はやって来てシャンドンと和解しようとするが、シャンドンは走り来るトラックの前にハニーを突き飛ばして殺してしまう。ミンはショックで寝込み、スーは台湾人ヤクザとともにハニーの仕返しに行く。シャンドンは殺された。その晩帰宅すると、スーの父(張國柱)は共産党との関係を問われ秘密警察に呼び出されていた。ある日、スーはミンとのつきあいを注意されてかっとなって反抗し、退学になる。彼は昼間部への編入試験を目指して勉強するが、ズルからミンとマーの仲を告げられる。ミンは失業中の母をお手伝いに雇ってもらい、マーの家に住み込んでいた。下校時のマーを脅そうとしてスーは学校へ行くが、ミンに会い、話しているうちに自分でも分からぬままミンを刺し殺してしまう。 2017年4月30日 シネマ・クレール ★★★★
2017年05月10日
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4月に観た映画は、全部で9作品でした。二回に分けて紹介します。 「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」 冒頭。真っ黒な背景から不安定な音楽が流れ、ジャッキーのアップの顔が登場。知っていたナタリーの顔じゃない。戸惑った。 36歳、ナタリーは順調に階段を上がっている。「レオン」で孤児、「スターウォーズ」でアミダラ姫、「ブラック・スワン」でエキセントリックな役、「マイティ・ソー」で真面目な学者、それらの役を全て咀嚼したうえでこの役がある。ような気もする(^_^;)。彼女を観ているだけで幸せだった。 作品自体は、確かにショックなことがあった直後にしてはしっかりした対応だったと思うが、解説にあるようにそれだけで「ケネディ大統領を創り上げてきた名プロデューサー」というのは、言い過ぎだと思う。 ああいう突発事件のゴタゴタの下で政府がどう動くのか、ちょっと知ることができた。 (解説) “史上最も有名なファーストレディ”“世界で最も愛されたファッションアイコン”として熱狂的な人気を獲得していた、アメリカのジョン・F・ケネディ大統領夫人、ジャッキーことジャクリーン・ケネディ。 だが、暗殺という悲劇的な最期を迎えたケネディ大統領の葬儀の映像が世界中に流された時、人々は初めて見るジャッキーの姿に驚いた。「ただケネディの隣にいる人」と思われていた彼女が、毅然としたストイックなまでのたたずまいで、二人の幼い子供たちを励ましながら、荘厳な国葬を取り仕切ったのだ。 なぜ彼女は、夫の突然の死で人生が一変したわずか3日後に、今も語り継がれる偉業を成し遂げることができたのか? そんな疑問から、ジャッキーがケネディと結婚してからの10年間を徹底的にリサーチし、知られざるジャッキーの真実に迫る感動作が完成した。自らの知性と才覚、そして深い愛で“ケネディ大統領”を創り上げてきた“名プロデューサー”の姿が今、明かされる。 ジャッキーを演じるのは、本年度の賞レースを席巻し、2度目のオスカーの呼び声も高いナタリー・ポートマン。『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキー監督がプロデューサーとして参加し、『NO』でアカデミー賞®外国語映画賞にノミネートされたチリ出身のパブロ・ララインが監督を務めている。 強い想いを貫いた一人の女性の気高くも美しき物語が、ここに生まれた──。 (あらすじ) 1963年11月22日、ジョン・F・ケネディ大統領は、テキサス州ダラスでのパレードの最中に銃撃される。 目の前で愛する夫を暗殺されたファーストレディのジャッキーことジャクリーン・ケネディは、怒りと衝撃に震えていたが、悲しんでいる時間はなかった。すぐに副大統領が新たな大統領に就任して激務を引き継ぎ、刻一刻と夫が過去の人になっていくのを目の当たりにしたジャッキーは、彼の名前と功績が後世に残るかどうかは、この数日間の自分の行動にかかっていると気付いたのだ。 自らの手で築き上げてきた<ケネディ伝説>を永遠にするために、ジャッキーは命の危険さえも顧みず、最後の使命に身を投じる──。 ナタリー・ポートマン 1981年、イスラエル・エルサレム出身。リュック・ベッソンが監督した『レオン』(94)で鮮烈なデビューを飾り、『クローサー』でゴールデングローブ賞助演女優賞、『ブラック・スワン』(10)でアカデミー賞®主演女優賞を受賞。 【その他の代表作】 『世界中がアイ・ラヴ・ユー』(96)、『マーズ・アタック!』(96)、『ジェーン』(16)、99年公開の『スター・ウォーズ』新三部作、『マイティ・ソー』シリーズ 2017年4月2日 シネマ・クレール ★★★☆ 「海は燃えている イタリア最南端の小さな島」 手作りパチンコの名人、12歳のサムエレ少年の日常がレポートされる。その島(ランペドゥーサ、島民5500人)に難民が20年間で40万人が渡ってきた。現代でも、狭いボートで数百人でくる映像もレポートされる。年間5万人が渡って来て少なくない人たちが溺れたり圧死したりしてなくなってゆく。 ナレーションはない。説明はなく、淡々と日常と悲劇を映し出す。想田監督の手法である。ただし、DJの場面とリクエストする祖母の部屋と街角の風景を同時に写しているので、映画的な手法も使っている。それはどれも日常場面なので、ドキュメンタリーとしては嫌味はあまりない。 難民とは何か、意味何か、ということにはあまり答えていない。それよりも、難民も一つの背景として、イタリア最南端の小さな島の、歴史的な一側面を切り取った作品に思えた。メリル・ストリープのいうような、それ程の傑作とは思えなかった。 ジャンフランコ・ロージ監督作品。 (イタリア・フランス作品) 2017年4月6日 シネマ・クレール ★★★☆ 「LION/ライオン ~25年目のただいま~」 おそらく、(恋人との経緯は怪しいが)多くは事実の通りなのだろうと思う。ラストで映された実物の写真がそれを物語っている。だからこそ、想像していた話の構造がかなり違っていたことに驚いた。私は「自分探しの冒険」だと思っていた。現代から始まり、インドに行って探しているうちに過去が次々と蘇るストーリーを想像していた。違っていた。過去から順番にストーリーが進み、インドへ行くのは最終盤だったのである。 テーマが自分探しではなかったからである。インドで、年間数十万に及ぶ子供の行方不明という現実を告発する社会派作品だった。彼が善良な養子先に出会えたのは、完全な幸運だった。彼の未来には、小さらい、或いは他の悪い未来もあり得た。それはカルカッタにたむろしていた無数の子供の映像でもわかる。 しかし、彼が自分の故郷を見つけたのは、執念なのだろう。イーグルマップアースとはすごい! (ストーリー) オーストラリアで幸せに暮らす青年サルー。しかし、彼には隠された驚愕の過去があった。インドで生まれた彼は5歳の時に迷子になり、以来、家族と生き別れたままオーストラリアへ養子にだされたのだ。成人し、自分が幸せな生活を送れば送るほど募る、インドの家族への想い。サルーが抱えた心の大きな穴は、彼を飲みこまんとするほど増大し、遂に彼は決意する。人生を取り戻し未来への一歩踏み出すため、そして母と兄に、あの日言えなかった“ただいま”を伝えるため、「家を探し出す――」と。 監督 ガース・デイヴィス 出演 デヴ・パテル、ルーニー・マーラ、デヴィッド・ウェンハム、ニコール・キッドマン 2017年4月13日 TOHOシネマズ岡南 ★★★★ 「ムーンライト」 いい意味でも悪い意味でも、期待を裏切る内容だった。ストーリーを読む限りでは、今まで散々映画で扱われている、アメリカ社会のクスリ問題、LGBT問題、イジメ、貧困などを扱って、重く暗いラストがやってくるのだと覚悟して鑑賞に臨んだ。 しかし、少年時に出会った売人は「今は母親が恋しい」と云う犯罪人とはとても思えない男だったし、その恋人は生涯少年を大切に扱う。少年どうしの友情は、やがて裏切りに逢うというのが「映画的」定番だが、そうなっていない。その他、重要人物たちは思いも掛けない変貌を遂げる。 しかし、やはり明るく軽い作品ではない。これが、現代アメリカのリアルなのだ、とやっとアメリカが正面から描いた。その姿勢が評価されたのだろう。 ただ、期待したほど「問題」は炙り出ているのか。むしろ、問題を多く設定したことで、ドキュメンタリー擬きの平凡なドラマになっているのではないか。と思うのである。 (ストーリー) 本年度アカデミー賞3部門受賞 作品賞、助演男優賞、脚色賞 名前はシャロン、あだ名はリトル。内気な性格で、学校では“オカマ”とからかわれ、いじめっ子たちから標的にされる日々。その言葉の意味すらわからないシャロンにとって、同級生のケヴィンだけが唯一の友達だった。高校生になっても何も変わらない日常の中、ある日の夜、月明かりが輝く浜辺で、シャロンとケヴィンは初めてお互いの心に触れることに・・・※R15+ 監督 バリー・ジェンキンス 出演 トレバンテ・ローズ、アシュトン・サンダース、アレックス・ヒバート、マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス、アンドレ・ホーランド 2017年4月13日 TOHOシネマズ岡南 ★★★☆ 「夜は短し歩けよ乙女」 原作のファンである。原作ファンから見れば、観る前から気に入らない作品になるのは「運命」である。ただ、よく頑張ったとは思う。言葉で作った世界観を、早く動く時計や、李白さんへの慰め言葉をわかりやすく図式化したり、等々あゝ成るほどね、という映像化だった。発見もあった。改変は、思った以上にはなかった。大学祭編のゲリラ演劇をミュージカルにしたのは、流石の映画的。しかも、原作は一年の話だったが、映画は見事に一夜の話にしたのも良い改変だった。 ところが、「運命」からは逃げられない。黒髪の乙女が、ムンと胸を張り颯爽と歩く場面が魅力的ではないのである。しかも、彼女は一回しかオモチロイと言わない。彼女のキャラ立ちができていという致命的な欠点があるのだ。よって、このファンタジーに入り込めなかった。しかも、映画なのに、京都ロケをしていないかの如く「京都らしさ」がないのだ。 偽電気ブランと閨房調査団と達磨の置物に幸いあれ。 ■ あらすじ クラブの後輩である“黒髪の乙女”に恋心を抱く“先輩”は、「なるべく彼女の目に留まる」略してナカメ作戦を実行する。春の先斗町に夏の古本市、秋の学園祭と彼女の姿を追い求めるが、季節はどんどん過ぎていくのに外堀を埋めるばかりで進展させられない。さらに彼は、仲間たちによる珍事件に巻き込まれ……。 ■ 解説 第20回山本周五郎賞、第4回本屋大賞第2位に輝いた森見登美彦の小説をアニメ映画化。京都の移りゆく四季を背景に、パッとしない大学生と彼が片思いする後輩の恋の行方を、個性的な仲間たちが起こす珍事件と共に描く。主人公の声を、テレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」などの星野源が担当。監督の湯浅政明をはじめ、脚本の上田誠、キャラクター原案の中村佑介ら、森見原作によるテレビアニメ「四畳半神話大系」のスタッフが再集結する。 ■ キャスト (声の出演)、星野源 ■ スタッフ 原作: 森見登美彦 監督: 湯浅政明 脚本: 上田誠 キャラクター原案: 中村佑介 2017年4月14日 Movix倉敷 ★★★★
2017年05月09日
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今月の映画評です。「サウルの息子」ホロコースト(ナチス・ドイツの組織的大量虐殺)映画の傑作です。始まって5分で、このまま観るのは無理、と思ってしまいました。わりと映画慣れしている私ですらそうなのだとしたら、ほとんどの人はそうなのではないか、と心配するような衝撃的な場面から始まります。ところが、最後まで観れてしまうのです。サウル(ルーリグ・ゲーザ)は、アウシュヴィッツ収容所で同胞をガス室に送る任務に就くユダヤ人の特殊部隊「ゾンダーコマンド」です。彼らは他の囚人と引き離され数ヶ月働かされた後、抹殺されます。ある日サウルは息子の死体を見つけます。そしてせめてユダヤ式に正しく埋葬したいと願ったのですが‥。何故、私は最後まで見ることができたのか。話の中心を、サウルが息子の埋葬のために奮闘努力することに移しているので気が紛れるのと、おそらくサウルの心像風景だと思うのですが、悲惨な場面はソフトフォーカスされて鮮明に映されていないのです。そして観客の我々も(残酷にも)直ぐに「慣れて」しまうのです。このことを、あとでつらつら思い返し、ゾッとしました。皆さんもしばらく我慢して観てください。「あの彼らの日常」を平気で観ている自分を発見すると思います。極限にまで効率的に組織された民族殲滅作戦。その実態を私は初めて知りました。そうなのです、ガス室というハード面だけを準備しても、それを運営する労働力がなければ一日で数千人も殺すような「施設」は存在し得ないのです。ガス室に導き、遺った衣服から金目の物を選別し、部屋を掃除し、死体を焼却し、灰を捨てる。おそらく数日でサウルのように顔の表情が無くなる筈です。私たちは加害者と被害者として、ホロコーストを体験する。それは今までの「シンドラーのリスト」などのどの作品にもない「想像を絶し」た経験でした。ユダヤ教では、復活の日に死んだ人間は生き返ると信じられているので、火葬はタブーだし、聖職者(ラビ)の指導の下きちんと土葬しなくてはならないらしい。サウルが拘った所以です。サウルに残った最後の人間らしさが、周りを犠牲にしてでも暴走していきます。ラストでサウルが唯一笑う場面があります。いろんな意味で衝撃的でした。カンヌ国際映画祭グランプリ受賞、アカデミー外国語映画賞受賞作品。(2016年ハンガリー、ネメシュ・ラースロー監督作品、レンタル可能)
2017年04月19日
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後半の四作品です。「SING/シング」ハリネズミは黒人、ゾウはインド系、ゴリラはアフリカ系の黒人等々と、様々に虐げられている人々が、一攫千金、歌で一旗あげようと集まる設定。とっても良くで出来たショーも、スペクタクルも、アニメだから実現出来る、しかも歌は超一流、おそらくとっても面白い。しかし、歌にあまり感動しない私には、普通に楽しいアニメだった。私は字幕版で観たけど、吹き替え版は歌も日本語なんだろ?純粋英語の歌を付け焼刃で日本語訳にしても、歌の心が伝わるはずがないと思うのだけど、どうだろう。(←吹き替え版を観た人は、そちらも充分面白かったそうです)■ あらすじ劇場を運営するコアラのバスター・ムーンは、以前は活気のあった劇場に輝きを取り戻すべく、世界最高の歌唱コンテストをプロデュースしようと考える。感傷的に歌うハツカネズミや、内気なゾウ、25匹も子供がいるブタ、パンクロッカーのヤマアラシらが会場に集結し……。■ 解説全ての人の中にある輝ける部分を見いだすことをテーマに、動物たちが歌唱コンテストで奮闘する姿を数々のヒットソングに乗せて描くミュージカルアニメ。劇場に活気を取り戻すために開かれた歌唱コンテストで、個性的な動物たちが思い思いの歌を披露する様子を映す。声の担当は、マシュー・マコノヒー、リース・ウィザースプーンら俳優陣をはじめ、『テッド』シリーズでテッドの声も担当するセス・マクファーレン監督ら。なじみの深いヒット曲の数々に盛り上がる。■ キャスト(声の出演)、マシュー・マコノヒー、リース・ウィザースプーン、セス・マクファーレン、スカーレット・ヨハンソン、ジョン・C・ライリー、タロン・エガートン、トリー・ケリー、ジェニファー・ソーンダース、ジェニファー・ハドソン、ガース・ジェニングス、ピーター・セラフィノウィッツュ、ニック・クロール、ベック・ベネット、(日本語版吹き替え)、内村光良、坂本真綾、山寺宏一、長澤まさみ、宮野真守、大橋卓弥、MISIA、大地真央、田中真弓、石塚運昇、斎藤司、水樹奈々、谷山紀章、村瀬歩、木村昂、柿原徹也、重本ことり、佐倉綾音、辻美優、河口恭吾、MC☆ニガリa.k.a赤い稲妻、Rude-α■ スタッフ監督・脚本: ガース・ジェニングス2017年3月18日「ひるね姫 ~知らないワタシの物語~」先ずは、倉敷市が予算を組んでいるからといって、いわゆるショーもない「ご当地映画」ではなかったことは言っておきたい。その上で、去年から続いている「良質アニメの波」に、この作品が乗ったかというと、びみょ~と言わなければならない。とりあえず、いくつかの説明不足或いは脚本の破たんの点は置いておこう(父親の東京行き、ココネの落下の経緯、母親が残したはずの記号の行方)。1番の謎は、なぜココネは「ひるね姫」にならなくてはならなかったのか、その必然性が全く見えなかったことである。もちろん、物語を推進したのは、ココネの夢であるし、その基は過去の家族の「絆」であるという説明は、わからないでもない。しかし、だからといって、ねむり姫になる必要は、さらさらなかったはずなのだ。「君の名は、」で見せた見事な伏線回収が、ここでは見事に未回収になっている。この時点で、若者にソッポを向かれるのは目に見えたと言っていいだろう。神山監督は悪い監督じゃないんだけどな。会場では泣いている女性がかなりいた。よっぽど物語に飢えているとしか言いようがない。映像は、可もなく不可もなし。声優も可もなく不可もなし。あ、岡山弁は、現代の若者ではない。気がした。■ あらすじ高校生の森川ココネは家でも学校でも常に眠気に襲われ、ついウトウトと居眠りばかりしていた。2020年、東京オリンピックが間近に迫った夏の日、彼女の家族は事件に見舞われる。実は両親にはココネも知らない秘密があり、その謎を解く鍵は彼女の夢の中にあった。■ 解説『攻殻機動隊』『東のエデン』シリーズなどの神山健治監督が手掛けたアニメーション。岡山県倉敷市児島を舞台に、瀬戸大橋のたもとののどかな町で暮らす親子の絆を、夢と現実を結び付けつつ描写する。NHKの連続テレビ小説「とと姉ちゃん」などの高畑充希が、主人公の森川ココネの声を担当。そのほか、満島真之介、古田新太、前野朋哉、高橋英樹、江口洋介といった面々がキャスト陣に名を連ねる。■ キャスト(声の出演)、高畑充希、満島真之介、古田新太、釘宮理恵、高木渉、前野朋哉、清水理沙、高橋英樹、江口洋介■ スタッフ原作・脚本・監督: 神山健治音楽: 下村陽子主題歌: 高畑充希キャラクター原案: 森川聡子作画監督: 佐々木敦子作画監督: 黄瀬和哉2017年3月22日Movix倉敷「ショコラ~君がいて、僕がいる~」1890年代後半のフランス片田舎のサーカス小屋。座長は元有名コメディアンのフティットの芸を見て「もう20世紀ももうすぐだ。観客は、モダンな芸を求めているんだよ」と諭す。そのあと、フティットが目を付けたのが黒人のショコラだった。白塗り道化師と黒んぼのコンビはそれまでになかった。目新しいモノはウケる。それは古今東西抗いようのない真実である。90年代から2007年ごろまで、私はテレビをほとんど観なかった。特にバラエティ番組を見なかった。ずっと1人で外食していたので、家には寝に帰るだけ、録画もまだハードディスクは普及していなかったので、特別なものしか見なかった。父親が死んで、父が遺した一軒家に住むようになって家で食事を作りながらテレビを観るという習慣が出来た。ゴールデンタイムのテレビをを見始めて何よりもビックリしたのは、芸人の数の多さ、そして芸人を虐めて喜ぶ番組の多さであった。私が見始めたのは、ちょうど身体的な虐め芸風の衰退期ではあったが、芸人の数は減らなかった。今は、あからさまな虐めはなくなり、もっと巧妙な「弄り」という芸風に変わって来ている。AKBのアイドルが「尺が欲しい」と言って「ウケた」のはその頃である。フティットとショコラの芸を観て、ウケていた今日の映画館の観客は1人もいなかった。あの当時、あんなにウケていたのが不思議みたいだが、実際そうだったに違いない。「オセロー」を堂々と演じたショコラに罵声を投げた観客のことを現代では理解出来ないが、当時はそうだったに違いない。フティットは、もっとショコラを認めるべきだった。ショコラはもっと賢くなるべきだった。しかしその頃には「しくじり先生」のような弄ってくれる機会はない。黒人差別を描いた作品ではなく、芸能史の一断面を描いて、「芸とは何か」を描いた作品である。それにしても、フティットのお金の使い道や気持ちをもっと描いてほしかった。そして「~君がいて、僕がいる~」は、そういう「ギャグ」がいつ出てくるのか期待する人がほとんどだと思うので、最近になく最低の邦題である。(解説)フランス史上初の黒人芸人ショコラと、彼を支えた相方の白人芸人フティット。「映画史上初めてスクリーンに登場した芸人コンビ」となり、万人を魅了した彼らの、愛と涙に満ちた感動の実話。20世紀初頭、ベル・エポック期のフランス。白人芸人フティットと、黒人芸人ショコラによるかつてないコンビがサーカスで大衆の人気を集めていた。彼らはパリの名門ヌーヴォー・シルクの専属となり瞬く間に一世を風靡するが、人種差別の根は深く、ショコラはその苦しみから逃れるように酒とギャンブルに溺れていく――。映画の祖リュミエール兄弟がその芸をフィルムに収め、トゥールーズ=ロートレックがその姿をキャンバスに描くなど、数多くのアーティストに影響を与えた伝説の芸人コンビ「フティット&ショコラ」。本作は、奴隷の子として生まれながらもフランス史上初の黒人芸人としてスターに登りつめ、笑いで革命を起こしたものの歴史に名を残せなかったショコラの生涯、そして、誰よりもショコラの才能を信じ支えた相方フティットとのコンビ愛を、丁寧に真摯に描いた感動の実話。本国フランスでは『最強のふたり』を超えるコンビものの感動作として大きな話題となり、エンターテインメント史から忘れられた存在だったショコラが、再び脚光を浴びるきっかけとなった。2017年はショコラ没後100年!映画となって甦った、忘れられた伝説の芸人の波瀾万丈な生涯。ショコラことラファエル・パディーヤ(1868?-1917)が芸人として活躍した19世紀末~20世紀初頭のフランスは、「人間動物園」と称して植民地の有色人種が見世物になるなど人種差別がまかりとおっていた時代。そんな時代下で相方ジョルジュ・フティットとコンビを組み、「フティット&ショコラ」としてエンターテインメント界に革命を起こす偉業を成し遂げたショコラだが、その功績に反してショコラに関しての史料はほとんど残されていない。本作の原案となったのは、「ショコラ――歴史から消し去られたある黒人芸人の数奇な生涯」(ジェラール・ノワリエル著/集英社インターナショナルより絶賛発売中!)。ショコラについての希少な史料をもとにした伝記である。ショコラの成功と転落の人生を映画化した本作は、差別を受け続けた彼の苦悩を描くとともに、ショコラを支えた相方フティットの“コンビ愛”と、周囲の偏見の目にさらされようとショコラに寄り添った妻マリーの”夫婦愛“をも映し出す。芸人としての輝かしい功績が、ショコラが深く愛されていた記憶とともに”映画“となって記録され、ショコラの名は没後100年を経てようやくエンターテインメント史に燦然と刻まれた。『最強のふたり』でセザール賞主演男優賞に輝いたオマール・シーと、 チャップリンの実孫ジェームス・ティエレによる最高のコンビが誕生!ショコラを演じるのは、日本でも大ヒットを記録した『最強のふたり』で黒人として初めてセザール賞最優秀主演男優賞を受賞したオマール・シー。のびやかな身体を活かした“動”の演技に加え、ショコラの苦悩を “静”の演技で繊細に表現した本作は、彼の主演最新作にして新たな代表作となった。相方のフティット役には、喜劇王チャーリー・チャップリンの実孫、ジェームス・ティエレ。チャップリンの娘ヴィクトリアと、「シルク・ヌーヴォー(新しいサーカス)」の旗手として知られるバティスト・ティエレを両親にもち、4歳からサーカスに出演していたというティエレは、まさにはまり役。観客を笑わせながらも、その素顔はまじめで人一倍孤独なフティットを見事に体現した。監督は、自身も俳優であり『デイズ・オブ・グローリー』(06)でカンヌ映画祭最優秀男優賞を受賞したロシュディ・ゼム。そのほか音楽のガブリエル・ヤレド、衣装のパスカリーヌ・シャヴァンヌなどヨーロッパを代表するスタッフが顔を揃え、ベル・エポック期を駆け抜けたアーティストの生涯を鮮やかに彩っている。2017年3月26日シネマ・クレール★★★★「キングコング:髑髏島の巨神」思った以上に、演技派の俳優を使っていて、ちゃんと見せる作品だった。思った以上に、設定はきちんとしていて、コングが神になった経緯がよく分かる。「あらすじ」の「島には骸骨が散乱しており、さらに岩壁には巨大な手の形をした血の跡を目撃する。そして彼らの前に、神なる存在であるキングコングが出現。」というのを読んで、当初の脚本が変更された可能性があると思った。おそらくコングを中盤まで出さずに初代「ゴジラ」のように神秘性を高めようとしたのだと思う。しかし実際は最初にコングを登場させた。わたしは、今回の脚本で良かったと思う。サミュエル演じるベトナム歴戦の大佐の思想は、海兵隊思想を借りた私怨に軍力を使う考え方であり、それは当の仲間から否定される(当たり前)。一方、コングの思想は、島を守る神ではなく、テリトリーの死守と単なる小さな人間をもメスは気にかかるスケベ心であり、それを神とするのは、どうかな。次回作の予告も最後にあるので、決して帰らないように。ということは、トム・ヒドルストンとアカデミー賞俳優のブリー・ラーソンはまた出てくるということか!■ あらすじコンラッド(トム・ヒドルストン)率いる調査遠征隊が、未知の生物を探すべく、神話上の存在とされてきた謎の島に潜入する。しかし、その島は人間が足を踏み入れるべきではない“髑髏島”だった。島には骸骨が散乱しており、さらに岩壁には巨大な手の形をした血の跡を目撃する。そして彼らの前に、神なる存在であるキングコングが出現。人間は、凶暴なキングコングに立ち向かうすべがなく……。■ 解説キングコングを神話上の謎の島に君臨する巨大な神として描いたアドベンチャー大作。島に潜入した調査隊が正体不明の巨大生物と遭遇し、壮絶な死闘を繰り広げる。監督は、主にテレビシリーズに携ってきたジョーダン・ヴォート=ロバーツ。調査遠征隊のリーダーを『マイティ・ソー』シリーズなどのトム・ヒドルストンが演じるほか、『ルーム』などのブリー・ラーソン、サミュエル・L・ジャクソンらが共演。巨大な体でリアルな造形のキングコングの迫力に圧倒される。■ キャストトム・ヒドルストン、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・グッドマン、ブリー・ラーソン、ジン・ティエン、ジョン・C・ライリー、トビー・ケベル、ジョン・オーティス、コーリー・ホーキンズ、ジェイソン・ミッチェル、シェー・ウィガム、トーマス・マン、ユージン・コルデロ、MIYAVI、(日本語吹き替え)、GACKT、佐々木希、真壁刀義■ スタッフ監督: ジョーダン・ヴォート=ロバーツ脚本: ダン・ギルロイ脚本: マックス・ボレンスタイン脚本: デレク・コノリーストーリー: ジョン・ゲイティンズ2017年3月30日Movix倉敷★★★★
2017年04月18日
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3月に観た映画は9作品でした。二回に分けて紹介します。「ラ・ラ・ランド」私はこれまでアカデミー賞(日本のならばなおさら)の主要賞を獲った作品をその年のベスト3に推した事はほとんどない。それだけ私の映画評は偏っている事を先ず認めたい。しかし、映画体験というモノは、一期一会なのだ。人と人が恋に落ちるのと同じように、最終的には相性が合うか、どうかである。ミアとセバスチャンの出会いは定番ではあるが、良かったと思う。しかし結果を云えば、この作品は絶対ベスト3には入らない。私との出会いは、いうまでもなく冒頭シーンである。ハリウッドの街の渋滞で全然動かない高速道路、1人の(主要人物でもない)女性がスターへの夢を歌い出す。それに連られて道路上の全車の人が踊り歌い出すのである。高速道路上の人が全員俳優希望ならば、壮大なオープニングになるだろう。しかし当然違う。単なる見映えだけを気にした映像に他ならない。そして前半部分の歌の数々も技巧は凝っていたけど、全然心に響かなかった。中盤辺りから、2人の気持ちがビンビン伝わるようになり、最後の曲の場面は、CMで植え付けられたイメージがすっかり騙しに使われていた事がわかって悪くない意外感を持ってしまった。私は本格ジャズが好きだという事もあり、悪くない楽曲だったとも思う。悪くない作品なのである。しかし彼らの夢には、我々一般ピープルの夢とは重ならない気がする。これは「夢をみよう!」という映画である。私はこれで夢を見られない。久しぶりに、いろんな所がロケ地めぐりが出来る作品に仕上がった。これは狙いだろう。悪くないという気分と、あざといなあという気分と、両方ある。■ あらすじ何度もオーディションに落ちてすっかりへこんでいた女優志望の卵ミア(エマ・ストーン)は、ピアノの音色に導かれるようにジャズバーに入る。そこでピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と出会うが、そのいきさつは最悪なものだった。ある日、ミアはプールサイドで不機嫌そうに1980年代のポップスを演奏をするセバスチャンと再会し……。■ 解説『セッション』などのデイミアン・チャゼルが監督と脚本を務めたラブストーリー。女優の卵とジャズピアニストの恋のてん末を、華麗な音楽とダンスで表現する。『ブルーバレンタイン』などのライアン・ゴズリングと『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』などのエマ・ストーンをはじめ、『セッション』でチャゼル監督とタッグを組んで鬼教師を怪演したJ・K・シモンズが出演。クラシカルかつロマンチックな物語にうっとりする。■ キャストライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、キャリー・ヘルナンデス、ジェシカ・ローゼンバーグ、ソノヤ・ミズノ、ローズマリー・デウィット、J・K・シモンズ、フィン・ウィットロック、ジョン・レジェンド■ スタッフ監督・脚本: デイミアン・チャゼル製作: フレッド・バーガー製作: ジョーダン・ホロウィッツ製作: ゲイリー・ギルバート製作: マーク・プラットエグゼクティブプロデューサー: モリー・スミスエグゼクティブプロデューサー: トレント・ラッキンビルエグゼクティブプロデューサー: サッド・ラッキンビル撮影監督: リヌス・サンドグレンプロダクションデザイン: デヴィッド・ワスコ編集: トム・クロス衣装デザイナー: メアリー・ゾフレス作曲: ジャスティン・ハーウィッツ作詞: ベンジ・パセック作詞: ジャスティン・ポールエグゼクティブ音楽プロデューサー: マリウス・デ・ヴリーズ音楽監督: スティーヴン・ギシュツキ振り付け師: マンディ・ムーア「Start A Fire」パフォーマンス: ジョン・レジェンド2017年3月1日Movix倉敷★★★★「未来を花束にして」古今東西、世の中を変える運動の成功例の共通点は何か。それは世論を味方にする事、である。森鴎外の「椋鳥通信」には、1910年の婦人参政権を求める25万人ものロンドンデモの記述がある。50年「平和的な婦人参政権運動」をして変わらなかった運動家エメリン・パンクハーストはその直後から「過激運動家」に変貌したらしい。この作品は、1912年のロンドン洗濯工場で17年間働いてきた24歳の母親の話ではあるが、彼女が次第と過激派の運動に入ってゆく過程が丁寧に綴られる。そしてたった100年前の女性に対する意識が劇的に変わった事を示す。過激派と言っても、彼女らの目的はあくまでも世間の注目を浴びて「知ってもらう」ことに一義を置いていた。だから窓ガラスを割ったり、ポストを爆破したり、大臣別荘を爆破しても、人に危害を与える事だけは避けていた。この戦術に当時も賛否両論がある事が描かれていたが、結果1918年に部分的参政権を勝ち取るのだ。決定的なのは、競馬場での死を賭した運動家の「行動」が、当時の最先端の映像として世界を駆け回ったことによる。「言葉よりも行動を」というこの時の戦術は、正しかったということになるだろう。幼顔のキャリー・マリガンの、母親の顔と女性の弱い顔と強い顔が、この作品を支えている。小さな「抵抗組織」の「マイノリティ」がやがて「マジョリティ」に変貌する秘密を描いて、良い映画だったと思う。(解説)20世紀初頭、参政権を求めて立ち上がった女性たちの生きざまを、実話を基に描くヒューマンドラマ。さまざまな困難に見舞われながらも女性の未来のために闘うヒロインを、『17歳の肖像』などのキャリー・マリガンが演じるほか、アカデミー賞の常連メリル・ストリープ、『英国王のスピーチ』などのヘレナ・ボナム=カーター、『007 スペクター』などのベン・ウィショーらが共演。脚本を『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』などのアビ・モーガンが手掛ける。(あらすじ)1912年、ロンドン。夫と幼子との3人で生活しているモード・ワッツ(キャリー・マリガン)は、サフラジェット(女性参政権運動の活動家)の友人の代わりに公聴会に参加し、これまでの生き方に初めて疑問を持つ。その後WSPU(女性社会政治同盟)のリーダー、エメリン・パンクハースト(メリル・ストリープ)の演説を聞き、デモにも参加するなど運動にのめり込んでいく。しかし、活動を快く思わない夫に家を追い出され息子と引き離された上に、職場でクビだと言われてしまう。2017年3月2日シネマ・クレール★★★★「彼らが本気で編むときは」男性1100円の日に来たのに、会場は約30人、見事に女性ばかりだった。男性よ、臆したか!気持ちはわかるけど、男性、情けないぞ!いい映画だったと思う。設定は(観てないけど)2014年のハリウッド話題作・衝撃作だった「チョコレートドーナツ」と似ている。しかし、日本と米国とは、かくも違うものかは。リンコは、表面上では、職場・公制度での差別を受けていない。トモを引き離すかに見えた児童相談所の職員は、2人を認めた。屈辱感はある。だからこそ、彼らは本気で編む。ただこれはLGBT問題の作品ではないのだ。「女性・性とは何か」を描いた作品なのである。よって、ここに出てくる全ての女性がテーマである。ちょっと侠気があるけど、か弱い所もあるトモ、中学生の時からリンコを認め守って来た母親、自分の中の女性性に目覚め出した同級生の男の子、その性向を全否定して自殺未遂に追い込んだその母親、育児放棄に近い子育てをして来たトモの母親は、自分の中の母親も女性も持て余していた。母親の母親は、子どもだけにわかる醜い女性を見せていた。それをりりぃが演じる。寝顔が死に顔のようで辛い。さっぱり性格の同僚の綺麗な花嫁姿。様々な女性の人生の一断面を、荻上監督らしく、さりげなく提示している。リンコは、様々な葛藤を表面に出さない。あれだけの108個の擬似男根を編みながら、目の前に提示して、いつもゆったりする。それはひとえに女性のひとつの典型だろう。桐谷健太は、だから、想像以上に存在感がない。柿原りんかがあまりにも良かった。これはまぐれなのか?他の作品も見てみたい。■ あらすじ母親が家を出てしまい置き去りにされた11歳のトモ(柿原りんか)が、おじのマキオ(桐谷健太)の家を訪ねると、彼は恋人リンコ(生田斗真)と生活していた。トランスジェンダーのリンコは、トモにおいしい手料理をふるまい優しく接する。母以上に自分に愛情を注ぎ、家庭の温もりを与えてくれるリンコに困惑するトモだったが……。■ 解説『かもめ食堂』『めがね』などの荻上直子監督が手掛けたオリジナル脚本の人間ドラマ。母親に育児放棄された少女が叔父とその恋人に出会い、共同生活をするさまを描く。女性として人生を歩もうとするトランスジェンダーの主人公リンコを生田斗真、その恋人マキオを桐谷健太、母親に置き去りにされたトモを子役の柿原りんか、彼らを取り巻く人々を、ミムラ、田中美佐子、小池栄子、りりィ、門脇麦が演じている。■ キャスト生田斗真、柿原りんか、ミムラ、小池栄子、門脇麦、柏原収史、込江海翔、りりィ、田中美佐子、桐谷健太■ スタッフ脚本・監督: 荻上直子製作: 石川豊製作: 藤島ジュリーK.製作: 井上肇製作: 水野道訓製作: 追分史朗2017年3月9日Movix倉敷★★★★「モアナと伝説の海」基本的に南太平洋民族の気持ちに寄り添った映像と脚本だったと思う。ずっと昔は海洋民族だったモアナたちの一族は、小さな島で閉じこもり、それでも幸せで豊かな生活をしていた。文明的に言えば、弥生時代の生活かもしれないが、高い装飾品の水準を見れば、彼らの生活水準は都会の生活よりも良かっただろう。しかし、ある日島の植物に疫病が流行る。内海の魚も採れなくなる。しかし村長の父親は、外洋への冒険を許可しない。その時に1人の英雄が立ち上がる。これは古今東西英雄伝説のパターンである。それを見事な海の映像で見せたディズニーは流石というしかない。南洋民族の祖先は、台湾に発する民族であるという研究結果がある。そのさらに祖先は、中国の民族だっただろう。身体の刺青に、自らの全ての「物語」を刻むのは、文字を持たない民族にとっては必須の自己アピールになるのだろう。歌は面白くなかったが、日本語吹き替えしか公開されていない現場では何とも言えない(他の映画館では字幕版はあったらしい)。考古学ファンにとって興味深い作品だった。■ あらすじ誰よりも海を愛する少女モアナは島の外へ行くことを禁止されていたが、幼少時に海とある出会いを果たしたことで運命が決定する。モアナは愛する者たちの救済のため、命をつかさどる女神テ・フィティの盗まれた心を見つけ出して再び平和な世界を取り戻そうとする。未知の大海原へと向かったモアナは伝説の英雄マウイと出会い、冒険を共にする。■ 解説『アラジン』『ヘラクレス』などのロン・クレメンツとジョン・マスカー監督が再びタッグを組み、南太平洋に伝わる不思議な伝説を基に描くアニメーション。幼少時のある出来事をきっかけに海と強い絆で結ばれた、16歳のヒロインの大冒険を描写する。新人のアウリイ・クラヴァーリョがヒロインに抜てきされた。南太平洋を舞台につづられる少女のアドベンチャーと、その歌声に魅せられる。■ キャスト(声の出演)、アウリイ・クラヴァーリョ、ドウェイン・ジョンソン、レイチェル・ハウス、テムエラ・モリソン、ニコール・シャージンガー、ジェマイン・クレメント、アラン・テュディック、(日本語吹き替え版)、屋比久知奈、尾上松也、夏木マリ、ROLLY■ スタッフ監督: ロン・クレメンツ監督: ジョン・マスカー製作総指揮: ジョン・ラセター製作: オスナット・シュラー脚本: ジャレド・ブッシュ2017年3月9日Movix倉敷★★★★「チア☆ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」試合の前にする彼女たちの掛け声「明るく、すなおに、美しく」は、正しく彼女たちの三年間だった。「日本のダンスの取り柄は、揃っていることだけ。それじゃまるで軍隊だ」と、軍隊の本場の米国のアナウンサーが揶揄する。でも、彼は決勝の踊りを観てすっかり意見を変えるのだ。森友学園や北朝鮮では、決して出来ない踊りがそこにある。広瀬すずのキャスティングは、ちゃんと狙い通りだったと思う。明るさは、彼女の天性で何とかなる。「すなおに」は、決して「従順に」ということじゃない。実際話の中で、彼女たちはずっと反発していた。けれども、すなおに教えを受け止めてもいた。それが全米まで行かせたのだ。約半年、俳優として彼女たちはマジに練習を頑張ったらしい。映画マジックで、それで世界一の踊りに見せるように映す。しかし、フラガールのような完璧さ・「美しさ」は、流石に出ていなかったように思う。あまりにも忙しい彼女たちの、それは限界なのかもしれない。テンポいい脚本、笑いと汗と努力と涙と勝利と友情の脚本、アイドル映画ではなかった。■ あらすじ友永ひかり(広瀬すず)は、県立福井中央高校に入学する。中学からの同級生である山下孝介(真剣佑)を応援したいと思った彼女は、チアダンス部に入る。だが彼女を待ち構えていたのは、アメリカの大会制覇に燃える顧問の女教師・早乙女薫の厳しい指導と練習だった。先輩たちが次々と辞めていく中、同級生のチームメート玉置彩乃(中条あやみ)と切磋(せっさ)琢磨しながらチアダンスに打ち込むひかり。チームは一丸となってトップを目指していくが……。■ 解説2009年に福井県の高校チアリーダー部が、アメリカのチアダンスの大会で優勝した実話をベースにした青春ムービー。軽い気持ちでチアダンス部に入部した女子高生が、厳しい顧問や個性豊かな部員たちと一緒に全米大会制覇を目指す。監督は『俺物語!!』などの河合勇人。『ちはやふる』シリーズなどの広瀬すず、『劇場版 零~ゼロ~』などの中条あやみ、『MARS~ただ、君を愛してる~』などの山崎紘菜らがキャストに名を連ねる。およそ半年にわたる特訓を経た、広瀬や中条らが繰り出すダンスに圧倒される。■ キャスト広瀬すず、中条あやみ、山崎紘菜、富田望生、福原遥、真剣佑、柳ゆり菜、健太郎、南乃彩希、陽月華、木下隆行、安藤玉恵、緋田康人、きたろう、天海祐希■ スタッフ主題歌: 大原櫻子監督: 河合勇人脚本: 林民夫2017年3月17日Movix倉敷★★★★
2017年04月17日
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今月の県労会議の機関誌に投稿した映画評はこれです。「レヴェナント 蘇えりし者」 私はこれまで米国と日本のアカデミー賞の主要賞を獲った作品を、その年のマイベスト3に推した事はほとんどありません。それだけ私の映画評は偏っている事を先ず認めます。しかし、映画体験というモノは、一期一会です。人と人が恋に落ちるのと同じように、最終的には相性が合うかどうか、なのです。そして私のように年間129作(去年実績)観るような者でも機会を逸すれば見逃す事が多々あるのです。ちなみに、今年だけは結果としてマイベスト3(あと二つは「シン・ゴジラ」と「この世界の片隅に」)が、日米の主要賞を獲ってしまいました。 去年のアカデミー監督賞(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ)と主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)を獲ったこの作品を初めて観た時に、私の心は震えました。ずっと観たかった映像がそこにあったからです。 私は映画館で二回観ました。自然光のみで撮ったこの作品、リバイバル上映はまず無いと思ったので、映画館でもう一度観たかったからです。DVDで観る時には少なくとも次のことをお願いします。必ず部屋を真っ暗にして、雑音が無い環境で観ること。私もDVDで試してみましたが、不満はありますが、なんとか伝わるモノはありました。 シベリアで息子を殺された男の復讐劇というあらすじは、実は大きな意味を持ちません。 1800年代、人間が自然を破壊する直前、人間の文明が等身大で自然と相対することの厳しさを見事に映し出す作品でした。 灰色熊と互角に渡り合うディカプリオはすごいです。ここで彼は人間の持つ極限の能力と生命力を体現します。無から火を生み出し、馬を使いこなし、マイナス20度の極寒の地で生き延びる知恵を持ちます。納得の主演男優賞です。しかし、それでも彼が生き延びたのは偶然に過ぎない。キリスト教精神に満ちた隊長の判断と、インディアン族の知恵が示した助け合いが、彼を救いました。人間は、共同体の中でしか生きられないのです。 一方で、人間は争い殺し合う。ディカプリオの復讐と、酋長の娘が攫われたインディアン族の復讐劇が、同時並行で進みます。人間的な営みを嘲笑うかのように、隕石はシベリア平原に落ち、雪崩は一つの森をなぎ倒すだろう。「人間は野蛮だ」これは見事な文明批判の作品です。(米国2016年作品、レンタル可能)
2017年03月18日
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後半の5作品です。「君と100回目の恋」岡山がロケ地になっていると聞いて観た。「種まく人」とは違って、大きな脚本的な破綻はない。牛窓とか、岡山市とか、ロケ地が分かるアイコンは無くして、海が見える学園都市という架空の町を作っているのも好意が持てる。いわゆる「リセット」モノである。最近の恋愛映画は、こういうSF要素をぶっ込んで来るけど、言っておくけど、こういうのは「本格」SFじゃないから。悪慣れしてしまって、白けてしまって泣けない。葵海は、最初のリセットの直後に何故自分が戻れたのか、キチンと知ろうとしなければならないだろう。(私でさえ、予想がついたのに)それをしない葵海は、陸のことを本当に愛してるとは思えなかった。miwaは頑張ってはいるが、やはり演技しようとしている。監督も本当に自然な演技を望んでいなくてアイドル映画を目指しているのだから、彼女の責任ではない。ただ、岡山ロケ地映画でなければ決して見なかった作品とは言える。【ストーリー】誕生日である7月31日に、事故に遭ってしまった大学生の葵海(miwa)。だが、ふと目を覚ますと事故に遭う1週間前の教室にいた。混乱する彼女の前に幼なじみの陸(坂口健太郎)が現われ、時間をさかのぼれる不思議なレコードを使って何度もタイムリープしては、事故から救っていたと告げる。二人とも抱いていた恋心を伝えられずにいたが、この出来事を機に1年前へと戻って恋人同士になって楽しい時間を過ごす。こうして再び7月31日が近づき……。「ヒカリヘ」「Faith」などのヒット曲で知られるシンガー・ソングライターのmiwa、『ヒロイン失格』『俺物語!!』の坂口健太郎が主演を務めたラブストーリー。事故に遭う運命にある女子大生と彼女を助けるべく何度も時間をさかのぼる幼なじみの青年に待ち受ける試練と、二人の恋の行方を見つめる。監督に『黒崎くんの言いなりになんてならない』などの月川翔、脚本に『ダーリンは外国人』などの大島里美らが結集。ときめきと切なさが詰まった物語に加え、鍵となるmiwa書き下ろしの曲にも注目。【監督】 月川翔【脚本】 大島里美【出演】 miwa、坂口健太郎、竜星涼、真野恵里菜、泉澤祐希、田辺誠一、太田莉菜、大石吾朗、堀内敬子2017年2月4日イオン・シネマ★★★「幸せなひとりぼっち」CMで展開はほとんどわかってしまうが、キモはそこでは無く、実はオーヴェの半生が丁寧に描かれているところ。ほとんど松竹喜劇。涙と笑いである。最後のエピソードは、いらないと思う人も多いだろうが、あれこそがスエーデンの人情喜劇の定番なのだろう。無くてはならないものだったのかもしれない。(解説)スウェーデンのアカデミー賞にあたるゴールデン・ビートル賞で主演男優賞と観客賞に輝いた人間ドラマ。気難しいオーヴェは妻に先立たれ、生きる希望を失う。しかし隣りに引っ越してきたパルヴァネ一家から次々に厄介事を持ち込まれるうちに、心を開いていく。世界 30 ヶ国以上で刊行されるフレドリック・バックマンの小説をベースに、人の生き方について問いかけていく。監督は「青空の背後」(スウェーデン映画祭2014にて上映)のハンネス・ホルム。隣人との交流の中で変わっていく主人公を、「アフター・ウェディング」のロルフ・ラスゴードが演じる。(あらすじ )妻に先立たれたオーヴェは、これから一人で生きていくことに希望が持てず、哀しみにくれていた。しかし隣りにパルヴァネ一家が引っ越してきたことから、彼の暮らしは一変。一家は車の駐車やハシゴの貸し出し、病院への送迎、娘たちの子守りなど、オーヴェに罵声を浴びせられても次々に厄介事を持ち込んできた。やがてオーヴェは隣人に心を開いていき、愛する妻との思い出を話し始める。2017年2月15日シネマ・クレール★★★★「ヒトラーの忘れもの」200万個の地雷を2000人で除去したということは、単純計算で1人1000個以上の地雷の信管を外し(半数は途中退場したのだから、以上になるはず)、輸送等の処理もしたということになるだろう。軍曹の子どもと言っていいような少年兵たちばかりに軍曹は、最初からショックを受けていたが、一切顔に出さない。地雷映画は、しかし作り方はひとつしかない。緊張と弛緩である。このままいけば爆発するに違いないと観客は思う。今度か今度か、と思いながら何とかやり過ごした後にボンとくるのである。そのいろんなパターンが、なんと101分の間に5回も繰り返されるのだから、監督官の軍曹も堪らなかっただろうと思う。だから、もう緊張が解けたあとにあのような決定を聞いて、もう辛抱効かなくなったのだろう。あの決断は、しかし、軍法会議必至であるが、もしかしたら死刑モノかもしれない。地雷映画というものが、もしあるとすれば、これはその中でもトップクラスの傑作だろう。映画的なウソは、いくつがあるはずだ。監督官が、軍曹1人というのはあり得ない。下士官2人がつくのを省略していたのだろう。(解説)アカデミー賞外国語映画賞のデンマーク代表に選出された、史実に基づく人間ドラマ。ナチス・ドイツの降伏後、デンマークの海岸に埋められた地雷の撤去作業に、捕虜のドイツ少年兵が駆り出される。指揮官はナチスへの憎しみと無垢な少年たちとの間で葛藤する。当時実際に地雷が埋められていた場所で撮影された。劇場公開に先駆け第28回東京国際映画祭コンペティション部門にて上映(上映日:2015年10月23日、24日、27日/映画祭タイトル「地雷と少年兵」)、指揮官を演じたローラン・モラーと少年兵の一人を演じたルイス・ホフマンが最優秀男優賞を受賞した。(あらすじ )1945年5月。ナチス・ドイツが降伏し、戦争中にデンマークの西海岸にドイツ軍が埋めた200万個もの地雷撤去に捕虜のドイツ兵たちが駆り出された。その多くが10代の少年兵であり、最低限の爆弾処理訓練しか受けずに命がけの作業に当たった。指揮を執るデンマーク軍軍曹ラスムスン(ローラン・モラー)は残忍な侵略をしたドイツ人たちへの憎悪から、少年兵たちに食事も与えないまま毎日浜に向かわせた。地雷の暴発や撤去失敗により、一人、また一人と命を落としていく少年兵たち。彼らの姿を見るうちに、ラスムスンは良心の呵責に苛まれていく。監督・脚本 マーチン・サントフリート2015年デンマーク・ドイツ作品2017年2月18日シネマ・クレール★★★★「サバイバルファミリー」矢口監督の原案・脚本なので、まさしく日本発オリジナル映画である。ハリウッドが作れば全く違った作品になるのは明らか。アメリカならば 、突然の無政府状態に明らかに資源を持った者のヒエラルキーが発生して、ミニ「マッドマックス」状態が発生するだろう。一方、日本のこのファミリーの命の危機は、溺死と野犬の襲撃だけだったのである。まあ、それでも死んだかもしれないけど。ともかく、真面目に真面目に作っている。真面目に作れば、キチンと笑いが取れることを予想して作っている。しかし、基本は真面目なサバイバルであり、停電の原因が核戦争ではない限りは、あんな平和な世の中が出現するだろうという予想である。と、ここまで書いて、電源喪失をするから各地の原発事故は必至で、しかも韓国や台湾のそれも爆発するから、あんな桃源郷は絶対出現しないことに気がついた。やはりファンタジーとしての、ファミリー映画だったのである。でも、いくつかの困難を克服すれば、あれはあれで快適な生活を送れるのではないか。電気がある日突然使えなくなれば、とっても大変だけど、でも日本人ならばやっていけるのではないか。そんなことにも気づかせてくれる、案外傑作かもしれない。(あらすじ)東京に暮らす平凡な一家、鈴木家。さえないお父さん(小日向文世)、天然なお母さん(深津絵里)、無口な息子(泉澤祐希)、スマホがすべての娘(葵わかな)。一緒にいるのになんだかバラバラな、ありふれた家族…。そんな鈴木家に、ある朝突然、緊急事態発生!テレビや冷蔵庫、スマホにパソコンといった電化製品ばかりか、電車、自動車、ガス、水道、乾電池にいたるまで電気を必要とするすべてのものが完全にストップ!ただの停電かと思っていたけれど、どうもそうじゃない。次の日も、その次の日も、一週間たっても電気は戻らない…。情報も絶たれた中、突然訪れた超絶不自由生活。そんな中、父が一世一代の大決断を下す!監督・原案・脚本 矢口史靖出演 小日向文世、深津絵里、泉澤祐希、葵わかな2017年2月16日TOHOシネマズ岡南★★★★「相棒-劇場版IV- 首都クライシス 人質は50万人!特命係 最後の決断」というのが、正式な題名らしいです。長いし、若干ネタバレになっているし。最近の「相棒」は、推理ものに比重が傾いていて、社会批判や人生物語は落ちているような気がするのは、私だけでしょうか。「テロとの戦いを始めたら、(アメリカのように)終わりのない戦争になってしまう」というテーマは分かるのだが、若干我田引水の気味がしないでもない。いつも観てはがっかりするのだけど、それでも観てしまうのは、やはりテレビマジックにかかってしまっているからかな。■ あらすじ7年前、駐英日本領事館関係者の集団毒殺事件で生き残った少女が国際犯罪組織に誘拐されていた。そして現在。特命係の杉下右京(水谷豊)と冠城亘(反町隆史)は、国際犯罪組織バーズを追って来日した国連犯罪情報事務局の元理事マーク・リュウ(鹿賀丈史)に同行することになる。そんな中、7年前に誘拐された少女の現在の姿の動画が公開され、犯行グループは身代金を要求し……。■ 解説2000年に誕生以来、水谷豊が相棒と共に事件解決に挑む警視庁特命係の刑事にふんして、好評を博しているドラマシリーズの劇場版。主人公の杉下右京と反町隆史演じる冠城亘が、謎に包まれた国際犯罪組織を追い詰める姿を活写する。2代目相棒の及川光博や甲斐峯秋役の石坂浩二、さらには社美彌子役の仲間由紀恵らが出演するほか、北村一輝や山口まゆ、鹿賀丈史らが共演。監督は、長年『相棒』シリーズに携わってきた橋本一。エキストラおよそ3,000人を集めたパレードの中での見せ場など、劇場版ならではのスケールに期待が高まる。■ キャスト水谷豊、反町隆史、北村一輝、山口まゆ、鹿賀丈史、鈴木杏樹、川原和久、山中崇史、山西惇、六角精児、神保悟志、片桐竜次、小野了、益岡徹、江守徹、仲間由紀恵、及川光博、石坂浩二■ スタッフ監督: 橋本一脚本: 太田愛音楽: 池頼広2017年2月23日Movix倉敷★★★
2017年03月15日
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二月に観た映画は全部で10作品。この時期は、毎年そうだけど力作が多い。二回に分けて紹介する。「不思議なクニの憲法」去年の夏に話題になったので、てっきり2015年の戦争法当時の取材を編集したものかと思いきや、前半30分以上は、去年の参議院選挙前後になっていてとってもタイムリーな映画になっていた。拡大版(2時間30分)らしいからあとで編集し直したのかもしれない。改憲をめぐる人々のインタビュー集である。ネットでのみ知っていて、会いたいけど生の映像や声をあまり知らない人たち(長谷部恭男、斎藤優里彩、太田啓子、高塚愛鳥、安積宇宙)が出演していて嬉しかった。その他名前のみ知っている人たちが大勢。何故ならば、今彼らはテレビの電波に乗らないからである。しかし、現在日本の市民運動は、彼らを一部とする学生、アイドル、若い弁護士、若者、母親、知識人そして市井の人々等々がつくっているのである。ハッキリ言って、政党や労組は参加しているけど、「主導」というほどにはなっていない。そしてそれは戦後日本の民主主義にとっては画期的なことだと私は思う。憲法学者の伊藤真さんは9条の「戦争を放棄する」主語は誰かと学生に問うたらしい。「政府?」「天皇?」とかいろいろ出てくる。しかし、主語は日本国民である。国民が主体的に努力して戦争にならないようにしていくと説明する。そこまでは、9条議論は誰もが納得するのだろうが、このインタビューの中で「護憲議論」は百家争鳴になった。まあ、それも面白いが、映画の中だけでは叩き台の材料は出ていない。我々がその続きをせよ、ということなのだろう。その他の12条から25条に至るまでの女性たちの議論には、争鳴の余地がなかったのも、又面白い。今日本国は、自由民権運動以来の国民が草莽の如くに立ち上がり変わりつつある。それはSEALDsが立ち上がったからではない。国の非常に基層のところで、国民の危機意識に触れるべき何かが変わってきたからであると、私は思った。ひとつひとつの議論は別として、それを眺めることの出来るいいドキュメンタリーだと思う。(解説)監督 松井久子憲法には「私はどう生きるべきか」書いてある。私たちが決めなければならないのに、 “どこかの偉い人”たちが決めている、 私たちは、とっても不思議なこのクニの国民。『ユキエ』『折り梅』『レオニー』『何を怖れる』の松井久子監督が 今だからこそ世に問う、ドキュメンタリー作品第二弾 参院選後のリニューアル版!憲法で守られてきた私たちの権利が、危機に晒されている。 憲法に「戦争はしない」と書いてあるのに、戦争をする国になろうとしている。 主権者=国のかたちを決める権利を持つはずの国民が、 政治から離れていき、その最後の砦を手放そうとしている… 学生、主婦、フリーター…あえて本当に小さな存在に思える彼らに注目し、 幅広いジャンルの識者たちの言葉とともに送る、 今見ておきたい、耳にしておきたい意見、活動を追った必見のドキュメンタリー。 <映画の内容>●声を上げる若者たち ●立憲主義って何? ●歴史に学ぶ(敗戦から日本国憲法成立まで)●Peopleを主役に(国民主権)●侵されてはならぬもの(基本的人権の尊重)封建制度からの脱却(男女平等)●対米自立と某国追随の系譜 ●沖縄は憲法を手にしているか? ●進む憲法の空文化(9条をめぐって)●生活のなかの憲法 ●緊急事態条項から変えるのですか?︎2017年2月4日水島生協会館★★★★「ザ・コンサルタント」クリスチャンの本当の正体を明かすのが目的のサスペンス。だから彼は万能選手でなければならない。いくつかの謎は、予想できたものの、財務捜査局長の意図だけは予想できなかった。結局、局長は彼女の能力を測っていただけなんですよね。映画のテーマは、ハリウッドらしくとってもわかりやすい。自閉症は子供の病状であって、能力は様々な形で開花する。でもこれで終わりにして欲しくない。とても魅力的なキャラクター。■ あらすじ小さな町で会計士として働くクリスチャン(ベン・アフレック)のもとに、ある日大手企業からの財務調査のオファーが寄せられる。調査を進めるうちに彼は重大な不正を発見するが依頼は突然取り下げられ、それ以来クリスチャンは身の危険を感じるようになる。実は、彼は闇の社会の会計士として各国の危険人物の裏帳簿を握るすご腕の暗殺者だった。■ 解説『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』でバットマンを演じたベン・アフレックが、複数の顔を持つアンチヒーローを体当たりで演じるアクション。夜な夜な巨悪に鉄槌を下す片田舎の会計士が、裏社会で壮絶なバトルを繰り広げる様子を映す。『ピッチ・パーフェクト』シリーズなどのアナ・ケンドリックや、『セッション』などのオスカー俳優J・K・シモンズらが共演。複雑なストーリー展開に手に汗握る。■ キャストベン・アフレック、アナ・ケンドリック、J・K・シモンズ、ジョン・バーンサル、ジーン・スマート、シンシア・アダイ=ロビンソン、ジェフリー・タンバー、ジョン・リスゴー■ スタッフ監督: ギャヴィン・オコナー2017年2月1日Movix倉敷★★★★「湾生回家」「湾生」とは、日本統治下の台湾に生まれた日本人をさす。その人たちの台湾に向かう想いと、彼らを暖かく迎え入れる台湾人を通じて、日本と台湾との関係を映したドキュメンタリー。ついこの前、台湾を旅して来た身にとってうなづく処の多い映像だった。私は去年までは「台湾に親日家が多いのは、あまりにも酷かったその後の国民党政治に対する反動なのだ」と整理していた。しかし、それだけではないな、と今回の旅で確信した。今回クローズアップされたのは、一つは花蓮だ。何もないところへ日本人がやって来て、一から開拓した。水牛の導入や灌漑事業、日本国の食糧確保のためとはいえ、台湾の近代化と治安維持に対して、台湾人は率直に評価しているのだろう。朝鮮半島よりも統治する時間に若干余裕があったことや、儒教文化はあまり酷くなく、その前も漢民族による原住民統治は経験していたことによる慣れがあったなど違いにより、朝鮮ほどの創氏改名に対する反発は無かったのかもしれない。そんなこんなが、湾生が戻ってきた時に、地元民が直ぐに好意的に名前を思い出した瞬間を映した(ドキュメンタリーの醍醐味である)場面になったのだろう。台湾人によって、日本統治下における「悪いところ」の言葉は無かった。しかしこれは製作者はほぼ台湾人なのである。そこにもびっくりする。ただ、統治下の言及はむしろ日本人の「言葉」を拾っている。監督の狙いだろう。(解説)台湾で異例のロングランヒットとなったドキュメンタリー。1895年から50年に渡り日本が統治していた台湾で生まれ育った約20万人の日本人“湾生”は敗戦後、そのほとんどが日本に強制送還された。そんな湾生たちの里帰りを追い、望郷の念をすくい取る。金馬奨最優秀ドキュメンタリー賞ノミネート、大阪アジアン映画祭2016観客賞受賞。(あらすじ) 下関条約の締結された1895年から1945年までの50年間、台湾は日本に統治されており、戦前の台湾で生まれ育った約20万人の日本人のことを“湾生”と呼ぶ。当時、日本から公務員や企業の駐在員、また農業従事者も移民として台湾へと海を渡った。そして敗戦後、中華民国政府の方針によって彼らのほとんどが日本本土に強制送還された。引揚者は、一人あたり現金1,000 円(当時)とわずかな食糧、リュックサック 2つ分の必需品しか持ち出すことを許されなかった。敗戦によって台湾から日本本土へ強制送還された日本人は軍人・軍属を含め 50 万人近くおり、彼らの多くにとって、台湾は仮の住まいではなく一生涯を送るはずの土地だった。しかし残りたいという願いは叶わなかった。台湾で生まれ育った約20万人の“湾生”にとって、台湾は紛れもなく大切な故郷だった。このドキュメンタリーは、敗戦という歴史の転換によって故郷から引き裂かれ、未知の祖国・日本へ戻された“湾生”たちの里帰りを記録し、彼らの望郷の念をすくい取る。撮影隊は40名近い“湾生”に取材をし、そのうち6 名の物語を中心にまとめている。時の流れを超えて彼らは台湾で過ごした日々との再会を願い、失ったものを探し求める。ある人は幼馴染の消息に心を震わせ、ある人は自身のルーツを求めて台湾の地を踏み、またある人は日本に引き揚げて初めて差別もあった台湾統治の真実を知る。自分たちの居場所はどこなのか、台湾への里帰りは、戦争に引き裂 かれたアイデンティティーを修復する旅でもあった。2017年2月2日シネマ・クレール★★★★「マグニフィセント・セブン」やっぱり、「七人の侍」を原案にすると謳う以上は、一人ひとりの7人にきちんと性格つけをして、一人ひとりそれにふさわしい死を与えなくてはならない。その基本的な部分で失敗している。銃の達人たちに、ガトリング銃を対置するのはいい。きちんと死ぬ見せ場を見せなくちゃ。一人ひとりの街に向かう動機が弱く、リーダーのサムに至っては、勘兵衛さんとは遠く離れている。俗な動機。これではダメでしょ。■ あらすじ悪漢バーソロミュー・ボーグ(ピーター・サースガード)によって牛耳られ、絶望を感じながら生きているローズ・クリークの町の人々。住民の一人であるエマ・カレン(ヘイリー・ベネット)は、賞金稼ぎのサム(デンゼル・ワシントン)、ギャンブラーのジョシュ(クリス・プラット)、流れ者、拳銃の達人といった7人の男を雇って、バーソロミューの手から町を救い出すように頼む。金のためと割り切って戦いに身を投じるサムやジョシュだったが……。■ 解説黒澤明の傑作『七人の侍』と同作をリメイクした『荒野の七人』を原案にした西部劇。冷酷非道な悪に支配された町の住人から彼を倒してほしいと雇われた、賞金稼ぎやギャンブラーといったアウトロー7人の活躍を追う。メガホンを取るのは、『サウスポー』などのアントワーン・フークア。『トレーニング デイ』『イコライザー』でフークア監督とタッグを組んだデンゼル・ワシントン、クリス・プラット、イーサン・ホーク、イ・ビョンホンらが結集する。熱いストーリーと迫力のアクションに注目。■ キャストデンゼル・ワシントン、クリス・プラット、イーサン・ホーク、ヴィンセント・ドノフリオ、イ・ビョンホン、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、マーティン・センズメアー、ヘイリー・ベネット、ピーター・サースガード、ルーク・グリメス、マット・ボマー■ スタッフ監督: アントワーン・フークア脚本: ニック・ピゾラット脚本: リチャード・ウェンク製作: ロジャー・バーンバウム製作: トッド・ブラックエグゼクティブプロデューサー: ウォルター・ミリッシュ2017年2月7日Movix倉敷★★★「弁護人」流石のソン・ガンホ。保守的な高卒弁護士だった彼が、世話になった食堂の息子が国家保安法(韓国の治安維持法)違反で捕まった時に、憲法を盾に目覚めるのが、実に自然だった。そこまでがものすごく長いのだけど、全然退屈しない。事実をいくらか脚色してはいると思うが、81年当時の全政権初期の雰囲気がよく出ていた。あとで韓国のともだちに聞いたところによると、最終盤の軍医官の証言は脚色らしい。しかし、事務の兵士が脱走して証言した事実はあり、これをモチーフにしたのだろうということです。おおまかな内容は歴史的な事実をもとに作られているらしい。それにしても、本当にE・H・カーの「歴史とは何か」が、共産主義を扇動する書物として証拠書類の一つに数え揚げられているとは、国民の教養が舐められていたとしか思えない。あの本は普通に読めば「マルクス・レーニンも、どの歴史家の歴史観も歴史の産物にすぎなくて、必ずしも真実とは言えない」ということを説得力を持って説いている本なのである。当時はこんな書物さえ禁書だったので、証拠書類としてでっち上げても大丈夫だと思っていたのだろう。親父が特攻警察だった公安刑事が、国を守るために必要悪をしていると嘯く。ほんの35年前である。日本の特高のDNAが35年間も生きていた。亡霊は何時でも這い出てくるだろう。海を渡った日本でも。この作品は、ノムヒョン元大統領の弁護士時代の釜林事件(81年)を下に作られている。(解説)民主化勢力弾圧のため学生らが不当逮捕され、当時弁護士だった盧武鉉元大統領が受け持った釜林事件を題材にした人間ドラマ。クッパ店の息子ジヌが突如逮捕され、彼の変わり果てた姿を見た税務弁護士ソン・ウソクは、誰もが避けるこの事件の弁護を引き受ける。監督は、本作が初長編作品となるヤン・ウソク。「スノーピアサー」のソン・ガンホが事件をきっかけに人権派に変わる弁護士を演じ、第35回青龍映画賞主演男優賞を獲得。アイドルグループ『ZE:A』のイム・シワンが不当逮捕されたジヌを演じる。一般公開に先駆け、新宿シネマカリテの特集企画『カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016』にて先行プレミア上映(上映日:2016年8月6日)。(あらすじ )1980年代初め。釜山で税務弁護士をしているソン・ウソク(ソン・ガンホ)は、学歴こそないものの実力を身につけ、今や多くの案件を抱えている。大手企業から声がかかり、ついに全国区の弁護士になろうとしていた折、ウソクが駆け出しの頃にお世話になったクッパ店の息子ジヌ(イム・シワン)が事件に巻き込まれたとの話を聞く。店主スネ(キム・ヨンエ)の痛切な思いに動かされ拘置所にジヌと面会しに行くと、彼は信じがたい姿になっていた。ウソクは誰も弁護を引き受けようとしないこの事件を受け持つことにするが……。2017年2月9日シネマ・クレール★★★★
2017年03月14日
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毎月労働組合の機関誌に投稿している映画評の今月は、台湾旅の成果を活かして「KANO」にしました。記事の下に、投稿時には載せることのできなかった八田與一像の写真を付け足しました。「KANO 1931海の向こうの甲子園」 この年末年始に台湾を旅して来ました。同じ植民地だった韓国と比べて台湾に何故親日家が多いのか。それは政治上の問題だけでなく、他の理由があることをこの旅でつかんで来ました。そしてこの映画でもやはり同じことを描いていました。 私は、この作品では大沢たかおが演じている八田與一の墓と銅像がある鳥頭山ダムに行きました。嘉南平野の灌漑事業を指導して、台湾最大の穀倉地帯を作った立役者です。彼は台湾・日本人を差別なく待遇し、台湾で最も尊敬される日本人になっています。私の見た彼の銅像は1931年に完成し、戦中の金属供出の命令時には住民が隠し、国民党政権の破壊命令にさえ抗して、世に出たのは1990年代だったそうです。膝を崩して完成したダム湖を眺めているその像は、無名の作品ながらも傑作だと思いました。 この作品は、八田與一と同時代、日本からやって来た元松山商の野球部監督が、嘉義農林高校の草野球に出会って、たった二年で彼らを甲子園に連れてゆき準優勝を果たす物語です。 近藤監督(永瀬正敏)は、台湾人を侮蔑する日本人に言い放ちます。「混成チームの何処がいけんとよ。蛮人は足が速い。漢人は打撃が強い。日本人は守備に長けている。こんな理想的なチームは何処にもない」連戦連敗だった彼らが台湾で優勝し、海を渡ります。死力を尽くした三試合は、甲子園映画としてもかつてない見応えがありました。 当時の嘉義の町並みを再現したセットや、緑濃い台湾の農村部を俯瞰で撮った美しい映像の数々や、亜熱帯の泥んこの練習場で汗を流す生徒たちの姿を詩情豊かに描いています。 ー美しい心には、美しい心が応える。 それが、今回の旅とこの映画を観ての私の確信です。それが台湾に親日家が多い大きな理由です。この作品のプロデューサーや監督も同じ想いのはずです。何故ならば、球児が準優勝した1931年の実に一年前に、日本統治時代最大にして最後の反日抗争である霧社事件が起きています。実は、それを映画化し、私が二年前にここで紹介した「セデック・バレ」を監督したのが、この映画のプロデューサー、ウェイ・ダーションであり、出演していたのがこの映画の監督マー・ジーシアンなのです。つまり、彼らにとって、前作と今作は、一枚の台湾という絵の裏と表の関係であり、その二作で一つの表現だったのです。その二つとも台湾で主要映画賞を獲っていることが、現在の台湾の人たちの気持ちを代弁しているともいえるでしょう。(2015台湾作品、レンタル可能)鳥頭山ダムの八田與一像。
2017年02月18日
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1月に観た作品はたった四作品でした。よって紹介も数回に分けずに一回こっきりに(おそらく初めて)なります。でもそのうち三作は見事な作品でした。 「湯を沸かすほどの熱い愛」 泣かしのストーリーではない。むしろ、それを極力避けるように作られているのではあるが、ボロボロ泣いてしまった。 宮沢りえと杉咲花が絶品である。絶対逃げない双葉の教育方針は、時には反対効果を持つことはあるが、これは教育映画ではないのだ。双葉のやり方が賭けならば、双葉が選んだすべての行動が賭けだろう。しかし、人は一回こっきりの人生にこそ、感動するのである。 想えば、物語当初、双葉以外の登場人物は尽く「逃げ腰」だった(杉咲花、オダギリジョー、伊東蒼、松坂桃李)。彼らが最終場面で全員で逃げずにあることをやり遂げる。素晴らしいストーリーだったと思う。 【ストーリー】 1年前、あるじの一浩(オダギリジョー)が家を出て行って以来銭湯・幸の湯は閉まったままだったが、双葉(宮沢りえ)と安澄(杉咲花)母娘は二人で頑張ってきた。だがある日、いつも元気な双葉がパート先で急に倒れ、精密検査の結果末期ガンを告知される。気丈な彼女は残された時間を使い、生きているうちにやるべきことを着実にやり遂げようとする。 『紙の月』などの宮沢りえと、『愛を積むひと』などの杉咲花が母娘を演じ、余命宣告を受けた主人公の奮闘に迫る家族ドラマ。行方不明の夫を連れ戻すことをはじめ、最後の四つの願い事をかなえようと奔走するヒロインの姿を捉える。『チチを撮りに』などの中野量太が監督と脚本を担当し、物語を紡ぎ出す。母親と娘の強い絆はもとより、人生の喜怒哀楽を詰め込んだストーリーに夢中になる。 【監督・脚本】 中野量太 【出演】 宮沢りえ、杉咲花、伊東蒼、篠原ゆき子、駿河太郎、遥、松原菜野花、江藤修平、三浦景虎、田中壮太郎、リリィ、松坂桃李、安藤聖、泉光典、高木悠未、西田薫子、木村知貴、小澤雄志、新井郁、田中えみ、田中佐季、辻しのぶ、中谷仁美、佐藤真子、鈴木士、住田萌乃、鈴、関口智樹、オダギリジョー 2017年1月12日 イオンシネマ岡山 ★★★★☆ 「人間の値打ち」 四章からなる、視点が変わるサスペンス。謎解きは平凡で、あっと驚く仕掛けもない。最後の字幕説明の一言にすべてがあるのだろうけど、そんなに考える映画とも思えない。 (チェック) ひき逃げ事故をめぐって交錯する3組の家族の人間模様を描き、イタリアのアカデミー賞といわれるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の7部門で受賞したサスペンス。『見わたすかぎり人生』などのパオロ・ヴィルズィ監督が、登場人物の欲望が複雑に絡み合うさまを通して、金と人間の関係について問い掛ける。キャストには『ふたりの5つの分かれ路』などのヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、『ブルーノのしあわせガイド』などのファブリッツィオ・ベンティヴォリオらが集結。 (ストーリー) 不動産店経営のディーノ(ファブリッツィオ・ベンティヴォリオ)は娘セレーナ(マティルデ・ジョリ)のボーイフレンドの父親である富豪のジョヴァンニ(ファブリツィオ・ジフーニ)に近づき、大金を得るために借金をしてジョヴァンニが手掛けるファンドに投資する。一方、ジョヴァンニの妻カルラ(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)は裕福な生活を送りながら、心は満たされない日々を過ごしていた。ある日、町で唯一の劇場が老朽化のため取り壊される予定であることを知った彼女は、劇場再建のために奔走するが……。 2017年1月12日 シネマ・クレール ★★★ 「沈黙-サイレンス-」 いろんなことが頭に過ぎった。カムイ伝第一部最終巻において、巧妙に正助を裏切り者に演出した代官の錦丹波のことや、戦前では同じ治安維持法下の転向者であった、2人の哲学者。亀井勝一郎と古在由重との違い。 権力による思想統制は、我々が教科書で習った「踏み絵」以上に巧妙さで飴と鞭を使い分けていた。鞭は凄惨を極める。熱湯、波死、溺れ死、逆さ吊り、火あぶり、首切り等々。人物に合わせて最も効果的な殺し方が発明される。飴は、時には「形式だけでいいから」等々と、心に届くように転向するように誘導してゆく。イッセー尾形演じる外国人から見れば知識人の長崎奉行は、「日本のために、キリスト教はそもそも日本には合わないのだ」と分析する。確かにその部分はある。しかし、だからといって、日本人が1人もキリスト教の本質を自分のものにしなかった、というわけでは決してない。 亀井勝一郎は、転向してロマン派思想家になり、古寺などを研究して一生を終えた。古在由重は、後にわかるのだが、はっきりと偽装転向をした。しかし、2人の思想が判明したのは、たまたま日本が負けて思想の自由が保証されたからに他ならない。 神はいるのか。 それは「沈黙」のキモではあるが、無神論者の私には、そもそも心に響かない問題である。それでも、この作品は心に響いた。けだし、日本と世界に普遍的な問題が横たわっていて、現代にその問題は無関係ではない。からである。 原作ファンからほとんどクレームがついていないのもこの作品の特徴である。しかし原作をパラパラと読むと、すべてロドリゴ等の一人称視点で描かれていて、その点だけでも映画とは違う。キチジローの位置づけや、最後の十字架のエピソードなどは実際どうだったのかは、やはり原作を紐解く必要があると、今感じている。 総ては台湾ロケだった。見事に江戸時代地方の日本を描いていた。予算上で仕方なかったのかもしれないが、残念だった。 (解説) 信仰を追究した遠藤周作の代表作を、マーティン・スコセッシ監督が構想28年を経て映画化。師がキリシタン弾圧に屈したとの報を受けた司祭ロドリゴは長崎に潜入。幕府の厳しい取締りや裏切りに直面し囚われの身となり、信仰か信者たちの命か選択を迫られる。司祭ロドリゴ役の「アメイジング・スパイダーマン」のアンドリュー・ガーフィールド、棄教した宣教師フェレイラ役の「96時間」のリーアム・ニーソンに加え、窪塚洋介や浅野忠信らが参加。 (あらすじ ) 17世紀。江戸初期頃の日本では、幕府により厳しいキリシタン弾圧が行われていた。日本での布教活動に情熱を注いでいた高名な宣教師フェレイラが捕らえられ棄教したとの報に接した弟子ロドリゴとガルペは、日本人キチジローの手引きでマカオ経由で長崎に潜入。そこでは、想像を絶する光景が広がっていた。弾圧の目をかいくぐった隠れキリシタンたちの現状も目の当たりにする。幕府は一層取締りを強化、キチジローの裏切りに遭い、ロドリゴたちも捕らえられてしまう。頑なに信心を曲げないロドリゴに対し、長崎奉行は彼のために犠牲になる人々を突き付ける。信仰を貫くべきか、棄教し目の前の人々の命を守るべきか。追い詰められ自身の弱さを実感したロドリゴは、選択を迫られる。 ( 出演) アンドリュー・ガーフィールド (Rodrigues)、リーアム・ニーソン (Ferreira)、アダム・ドライバー (Garrpe)、キーラン・ハインズ (Father Valignano)、窪塚洋介 (キチジロー)、浅野忠信 (通辞)、イッセー尾形 (井上筑後守)、塚本晋也 (モキチ)、小松菜奈 (モニカ)、加瀬亮 (ジュアン)、笈田ヨシ (イチゾウ)、遠藤かおる 、井川哲也 、PANTA 、松永拓野 、播田美保 、片桐はいり 、美知枝 、伊佐山ひろ子 、三島ゆたか、竹嶋康成 、石坂友里 、佐藤玲、洞口依子 、藤原季節 、江藤漢斉、EXILE AKIRA 、田島俊弥 、北岡龍貴 、中村嘉葎雄 、高山善廣 、斎藤歩 、黒沢あすか 、累央 、山田将之 、菅田俊 、寺井文孝 、大島葉子 、西岡秀記 、青木崇高 、SABU 、渡辺哲 2017年1月24日 Movix倉敷 ★★★★ 「ヒッチコック/トリュフォー」 もしも、「ヒッチコック展」というものが企画されるとしたならば、その冒頭で流されるべき展示物であり、予算がなければ、その一本だけで充分であり、観覧者も一応満足して帰るべき内容。尤も本当の満足は、絶対出来ないようになっている。何故ならば、ヒッチコックの全作品をその展示会で全て「展示」しないと、観覧者は満足出来ない。それは、時間的にも権利上の問題からも不可能だろうから。 ずるい作品だ。ヒッチコックの作品、特に初期の作品、それから「めまい」をすぐにでも観たくなる。確かに、言葉でいくつかのヒッチコックマジックの秘密はわかった。しかし、それはあれだけの短い映像では正直よくわからなかった。 ヒッチコックがセリフよりも映像を重視し、様々な仕掛けを工夫し、工夫は最後まで続いたことが、素晴らしいと思う。それを引き出したトリュフォーの想いと映像も出ては来るが、基本的にヒッチコックの作品である。 (解説) 本作は、ヒッチコックとヌーベルバーグの名匠フランソワ・トリュフォーとの1962年インタビューから生まれ、世界中の映画人に影響を与えた書籍「定本 映画術」(晶文社)に基づいたドキュメンタリー。マーティン・スコセッシ、デヴィッド・フィンチャー、ウェス・アンダーソン、リチャード・リンクレイター、黒沢清ほか現代に生きる10人の映画監督へのインタビューをまじえながら、巨匠の映画術に迫る。 2017年1月28日 シネマ・クレール ★★★★
2017年02月14日
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12月に観た映画第四弾。TOHOフリーパスポートは、初めて20作観たということになります。一日6作観た日が二日ありました。それを含めて新記録でした。本気で取り組めば、一か月で25作くらい行けたかもしれませんが、もうTOHOからはポイント消費をすれば縁を切る予定なので、パスポートをゲットもないと思います。いい経験でした。「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」TOHOフリーパスポート19作目。映画の題名でも予測できるのですが、SFチックラブ・ストーリーです。見る前の予想は、タイムトラベル物かと思っていたが、結果はまさかの◯◯◯◯世界物でした。しかし、あとで考えれば考えるほど、この純愛物語を成立させるために無理矢理こじつけた理屈にすぎない。もしこれがあり得るとすれば、この壮大な「現実世界」が成り立たなくなるだろうと予想できるので、「ファンタジーだから」と許せない設定であり、私的には、「自分のためならば世界を犠牲にしてもいい」思想を持った製作者ということで、評価は下がります。まあ、そんな理屈をこねるようなデート相手とはすぐに別れたくなるとおもうので、デート映画として観た場合は、素直に「感動」するのが、正しい見方だとは思います。小松菜奈は今年映画主演三作目。アイドル女優まっしぐら。「溺れるナイフ」が1番の意欲作だった。それなりにこなしているが、まだまだアイドル演技しかできていない。このままだと、あと10年で終わると思う。■ あらすじ京都の美大に在籍する20歳の南山高寿(福士蒼汰)。ある日、彼は電車で大学に行こうとしたところ福寿愛美(小松菜奈)という女性に出会い、瞬く間に心を奪われてしまう。高寿は愛美に声を掛けるが、高寿のある一言を聞いた途端に愛美は涙を流す。その理由を尋ねることができずにいた高寿だったが、その後二人は付き合うことになる。周囲からもうらやましがられるほど順調に交際が進み、幸せな日々がいつまでも続くと考えている高寿。だが、愛美から思いも寄らなかった秘密を打ち明けられる。■ 解説「学園とセカイと楽園(がくえん)」「君にさよならを言わない」などで知られる七月隆文の小説を基にした青春ラブロマンス。一目ぼれした女性と恋人同士になった美大生が、彼女の抱えている思いも寄らぬ秘密と向き合う姿を追い掛ける。メガホンを取るのは、『ホットロード』『アオハライド』などの三木孝浩。『ストロボ・エッジ』などの福士蒼汰、『近キョリ恋愛』などの小松菜奈が、主人公のカップルを好演する。爽やかで切ない物語や、舞台となる京都の美しい風景も見もの。■ キャスト福士蒼汰、小松菜奈、山田裕貴、清原果耶、東出昌大、大鷹明良、宮崎美子■ スタッフ監督: 三木孝浩原作: 七月隆文脚本: 吉田智子音楽: 松谷卓主題歌: back number製作: 市川南2016年12月18日TOHOシネマズ岡南★★★「バイオハザード:ザ・ファイナル」TOHOフリーパスポート20作目。これでフリーパスポートもザ・ファイナル!この手の作品は観ないはずなのに、結局シリーズ全六作のうち4作も観てしまった。一作目は好奇心で。ニ作目パス。三作目CM調査の無料券で。四作目東宝のフリーパスポートで。五作目パス。そしてこの六作目もフリーパスポートで。だったように思う。違うかもしれない。どれを見損なっても、結果このファイナルですべての謎が明らかになるので、基本は一作目とファイナルだけを観れば、ほとんど話は通じるようになっています。綺麗に終わった。16年もかけて、こんな無駄な作品をなぜ作ったのか。それは即ち儲かるからに他ならない。そういう意味ではアンブレラ社と全く変わらない。その間にジョボビッチの美しさはほとんど変わらなかった。驚異という他はない。ともかくラストは綺麗に終わった。あまりにも定番な展開だった。それがそもそもバイオハザードなのだから仕方ない。アンデッドやアリスの秘密も、使い古された人類淘汰説と実は彼女は敵の中枢と同一人物だった、という展開。ネタバレだけど、これだけだと何がなんだかわからないと思うので書いときます。ゾンビ映画の老舗。あと百年ほどすると、この流行が人類にとってどういう意味を持っていたのか、学者が分析してくれるかもしれない。■ あらすじアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は、レッドクイーンから48時間後に人類が滅びると告げられる。そして、宿敵アンブレラ社が放った膨大な数のアンデッドが地上を占領。アリスはラクーンシティに戻って、生還したクレアやコバルトらと合流し、アンブレラ社の心臓部であるハイブを潰そうとするが……。■ 解説ミラ・ジョヴォヴィッチがヒロイン・アリスにふんし、激しいサバイバルを繰り広げる超大作アクションシリーズの第6作にして最終章。人類最後の生存者となったアリスと、宿敵アンブレラ社が仕掛けるアンデッドとの最後のバトルを活写する。メガホンを取るのは、シリーズ全作に携ってきたポール・W・S・アンダーソン。 アリ・ラーターや、日本でモデルやタレントとして活躍中のローラが共演。ミラの見応えたっぷりのアクションはもちろん、壮大なバトルに期待。■ キャストミラ・ジョヴォヴィッチ、イアン・グレン、アリ・ラーター、ショーン・ロバーツ、オーエン・マッケン、フレイザー・ジェームズ、ルビー・ローズ、ウィリアム・レヴィ、ローラ、エバー・アンダーソン、イ・ジュンギ■ スタッフ監督・脚本・製作: ポール・W・S・アンダーソン2016年12月24日TOHOシネマズ岡南★★★「ミス・シェパードをお手本に」1974年から1989年まで、実際にホームレス・バンの老女を庭に住むことを許したある作家の周辺の話。物語の間中に、この赤の他人を周辺に住まわせることを自分は許すだろうか、自分の庭に◯◯◯を落っことしたのを処理するのは、自分なのに、である。何度も自分は無理だと思うだろう。しかし、これがイギリスのしたたかなところなのだが、これを脚本化することをシェパードはベネットを揶揄しながらも決して嫌っていなかったのである。ベネットも二重人格や心で思ったことを作品の中で実際にしゃべらせたり、したたかに「経験」を積んでいる。つまり愉しんでいる。そうなのだ。介護とは結局こういう「日常」なのだ。死んだあとにもう一度シェパードが現れる。それは見事なエンディングだった。(解説)『英国万歳!』『ヒストリーボーイズ』などで脚本家としても活躍する劇作家、アラン・ベネットの回想録を実写化したコメディードラマ。車上生活を送る風変わりな女性と劇作家の15年にも及ぶ交流を見つめる。メガホンを取るのは、『センターステージ』などのニコラス・ハイトナー。同回想録を基にした舞台版でも主演を務めてきたオスカー女優のマギー・スミスが、ミス・シェパードを快演する。何ごとにもとらわれずに自由奔放に生きる彼女の姿に力をもらう。(ストーリー)ミス・シェパード(マギー・スミス)は、ロンドン北部カムデン・タウンの通りに黄色い車を停め、自由気ままな車上生活を送っていた。劇作家ベネット(アレックス・ジェニングス)は、路上駐車を注意される彼女の姿を目にしたことから自宅の駐車場に車を停めることを勧める。一時的に駐車させるつもりの彼だったが、シェパードは15年も居座り続ける。彼女の高圧的で予想のつかない言動に翻弄(ほんろう)されながらも不思議な絆を育む中、ベネットはフランス語が話せて音楽にも詳しい彼女に興味を覚えるが……。2016年12月25日シネマ・クレール★★★★「92歳のパリジェンヌ」老いさらばえたブヨブヨの身体と同時に、射抜くような表情、チャーミングな笑顔も見せて、この女性が尊厳死を選ぼうとしているのも判ると思わせる。同時に、どうしても自分ならばどうするのかを自問自答する。家の中で死ぬ方法もあるじゃないか。と説得するだろう。しかし、死を待つ時には既に自分の死に方は選べなくなっているのだ。本人の意思は変わらないだろう。ホントに家族に伝えるべきだったのか。しかし伝えなければ、残された家族はもっと悲しんだかもしれない。これは出来るだけ理想的な形でおしまいまで持っていたったが、ホントはさまざまなバリエーションがある話に違いない。マルト・ヴイラロンガを初めて観た気がするが、素晴らしかった。(解説)チェックフランスの元首相リオネル・ジョスパンの母の実話を基に、自ら死を選ぶことを決意する92歳の母親と家族との最期の日々を描いたヒューマンドラマ。助産師として働いてきた女性が92歳の誕生日パーティーで2か月後に死ぬと宣言し、家族が反対しても信念を貫き通そうとする彼女と、母の姿に心を動かされる娘たち家族を映す。主演は、『冬の旅』などのサンドリーヌ・ボネールと『私の好きな季節』などのマルト・ヴィラロンガ。尊厳死という重いテーマを家族の物語としてつづり、爽やかな感動に包まれる。(ストーリー)助産師として働き、子供や孫にも恵まれたマドレーヌ(マルト・ヴィラロンガ)。まだ元気だが、最近は一人でできないことも増えてきた。ある日、92歳の誕生日を祝うために集まった娘たち家族を前に、2か月後にこの世を去ることを宣言する。最初は反対していた家族も心を動かされていき……。監督 ・脚本 パスカル・プサドゥー2016年12月25日シネマ・クレール★★★★Facebookの「死の期限を決める意味とは?」の質問に人間には自由があるけれども、「死」に関しては、残念ながら多くの人間には自由は与えられていない。私はこの8年間に立て続けに親族を3人看取ったけれども、彼らに自由を与えなかった。全員不本意な死に方だったと後悔がある。だからこその尊厳死。看取ったからこそ、それを簡単には認められない自分もいる。これは大きな「問いかけ」の映画です。
2017年01月18日
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12月に観た映画の第三弾。エンタメ作品ばかり。そんなにひどくもないけど、よくもない作品群。「ローグ・ワン」を評価する人が多い。作品の完成度は悪くはない。(ネタバレだけど)全員死亡するという悲劇性がかえって受けたのかもしれない。また、ならず者で小さなコミュニティを守るというのは西部劇以来のハリウッド映画の伝統だという指摘もある。あれを西部劇だとは、私は思えない。むしろ、誰がために鐘は鳴る式の抵抗戦争の話だとは思う。しかし、アメリカがこれを作る意味が現在では全く分からなくなっている。むしろ、ISにこそこういう映画を作りそうな世界情勢になっている。スターウオーズにある現代批判が今回は空振りしているという意味で、私は大きく評価しないことにした。「モンスターストライク THE MOVIE」TOHOフリーパスポート15作目。想像していたよりもひどい作品ではなかった。映像はしっかりしているし、一応ファンタジーの世界感は作っている。けれども、脚本がやっつけ仕事なのか、キャラクターがあまりにもあっけなく消滅させられたし、辻褄の合わない部分が多すぎる。シリーズ化したいみたいだが、一週目にもかかわらず、客が2人しかいなかった。やっつけ仕事のツケを払わされるだろう。(解説)「モンスト」の開発に協力する小学生、 焔レンと3人のチームメイトはある日研究所の地下で、現実世界にいるはずのないドラゴンを目撃する。大人たちの陰謀から逃れ、ドラゴンを元の世界へかえす旅に出る少年たち。その目的地は、考古学者であるレンの父が失踪した場所でもあった。父の背中を追い求めるレンは、仲間とぶつかりながら、自分が一人ではないことに気づきはじめて――はじまりの場所へたどりつくとき、 すべての謎が明かされる。監督 江崎慎平声の出演 坂本真綾、村中知、Lynn、木村珠莉、河西健吾、小林裕介、福島潤、水樹奈々、山寺宏一、北大路欣也[ 上映時間:103分 ]2016年12月15日TOHOシネマズ岡南★★★「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」TOHOフリーパスポート16作目。もともと結末は知っている(デス・スターの設計図を盗むことには成功する)ので、興味の半分は(1)ニューヒロインのジンが生き残るかどうか(2)スターウォーズ世界が何処まで広がるか、にあった。(1)は、まあストーリーの必然ではある。しかし、これだとあまりにも物語が閉じてしまわないか。誰かを残すとか、もっとやってもよかったのではないか。それと、Kー2型のロボットは今回初めて登場したが、いっときの流行だったのか?(2)について。チアルートによれば、フォースはほとんど「神」に置き換えれる。あれだけ精神力が高くても、フォースを持つことが出来ないとすれば、フォースとは「選ばれし者」と同義語かもしれない。科学的にいえば遺伝的性質なのか。今回によってデス・スターの弱点を実はルークが突いたのだった、というのはわかった。ならばなぜそれを「フォースの覚醒」で修正しなかったのか、不思議でならない。全体的に長いと感じなかった。やはり一流のエンタメだ。しかし、閉じた物語なので、本編ほどの感動はなかった。スター・ウォーズは基本的に繰り返しの物語ではあるのだが、それでも未来に向かって開かれている部分があるからこそ、「ロマン」が感じられるのである。やはり「本編」が観たい。■ あらすじ帝国軍の誇る究極兵器デス・スターによって、銀河は混乱と恐怖にさらされていた。窃盗、暴行、書類偽造などの悪事を重ねてきたジン(フェリシティ・ジョーンズ)は反乱軍に加わり、あるミッションを下される。それはデス・スターの設計図を奪うという、困難かつ無謀なものであった。彼女を筆頭に、キャシアン(ディエゴ・ルナ)、チアルート(ドニー・イェン)、ベイズ(チアン・ウェン)、ボーティー(リズ・アーメッド)といったメンバーで極秘部隊ローグ・ワンが結成され、ミッションが始動するが……。■ 解説世界的に人気のSFシリーズ『スター・ウォーズ』のサイドストーリー。圧倒的な破壊力を誇る帝国軍の宇宙要塞デス・スターの設計図を奪うという任務を遂行した反乱軍兵士たちの戦いを追う。監督は『GODZILLA ゴジラ』などのギャレス・エドワーズ。『博士と彼女のセオリー』などのフェリシティ・ジョーンズ、『ラストキング・オブ・スコットランド』などのフォレスト・ウィテカー、『偽りなき者』などのマッツ・ミケルセン、『イップ・マン』シリーズなどのドニー・イェンらが出演。帝国軍と反乱軍の戦争秘話が見どころ。■ キャストフェリシティ・ジョーンズ、ディエゴ・ルナ、ドニー・イェン、ベン・メンデルソーン、マッツ・ミケルセン、アラン・テュディック、フォレスト・ウィテカー、リズ・アーメッド、チアン・ウェン■ スタッフ監督: ギャレス・エドワーズ脚本: クリス・ワイツ脚本: トニー・ギルロイ2016年12月18日TOHOシネマズ岡南★★★☆「映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!」TOHOフリーパスポート17作目。アニメと実写を「妖怪のせいにして」連動させるというアイディアは、よくできていたとおもう。細かい処をわざと変えていて、ギャグ化しているなどとはなかなかだった。隣の女の子は、2時間ずっと突っ込みを入れていて、そのエネルギーに圧倒された。遠藤憲一がウィスパーのリアル顔を演じていて、あそこが1番受けていたかもしれない。とは言え、やはり子ども映画ですわ。■ あらすじケータたちが暮らすさくらニュータウンに、空飛ぶ巨大クジラが出現。クジラの発した大きな声と共に、ケータや妖怪たちは実写の世界へやって来てしまう。髪を引っ張ってみると痛みを感じ、手にはしわ、さらには肌には毛穴まで見え、ジバニャンたちも困惑する。ケータたちはアニメと実写の世界を行き来しながら、その原因を探ろうと奔走し……。■ 解説アニメやゲーム、コミックで子供たちを中心にブームを巻き起こしたシリーズをアニメと実写の融合で映画化した、劇場版第3弾。空飛ぶ巨大クジラの一鳴きにより主人公のケータや妖怪がアニメの世界から実写の世界へ次元を超えて移動してしまい、その原因を突き止めるために彼らがアニメと実写の世界を行き来しながら冒険を繰り広げる。戸松遥や関智一、小桜エツコらボイスキャストに加えて、実写パートにはケータ役の南出凌嘉、山崎賢人、斎藤工、武井咲らが出演。実写のキャスト陣と人気キャラクターたちの共演が見どころ。■ キャスト南出凌嘉、山崎賢人、斎藤工、浜辺美波、黒島結菜、澤部佑、遠藤憲一、武井咲、(声の出演)、戸松遥、関智一、小桜エツコ■ スタッフ製作総指揮・原案・脚本: 日野晃博監督: ウシロシンジ実写パート監督: 横井健司脚本: 加藤陽一2016年12月18日TOHOシネマズ岡南★★★「海賊とよばれた男」TOHOフリーパスポート18作目。劇場は満員だった。しかし、「永遠の0」のような、熱のこもった見方はされていない。物語は、あまりにも浪花節が目立つ。男が泣き過ぎる。エネルギーをめぐって民族系資本を残した国岡商店(出光興産なのは明らか)の駆け引きは、それなりに重要な戦いだったと思うが、政府の思惑もメジャーの陰謀も歌舞伎からは離れていない。本来は、これとは大きく違った物語をつくるのも可能だったかもしれない。イランとの貿易で、他ならない日本が初めて成功したのは平和憲法を持つ軍隊のない国だったことを、作品は当然無視するのだけど、そういうことを強調するやり方もあったのである。これをみて、世界を理解することは出来ない。商売はわからない。男のセンチだけが分かる。まぁそういう映画です。そんなに反動的じゃありません。■ あらすじ敗戦後の1945年、東京。石油会社・国岡商店を率いる国岡鐡造(岡田准一)は、日本人としての誇りを持ち復興に向け突き進もうと従業員を激励する。戦後の混乱期にもかかわらず誰も解雇せず、独自の経営哲学と行動力で事業を広げていく。やがて欧米の石油メジャーも国岡を警戒し、その強大な包囲網により同社の石油輸入ルートは全て封鎖されてしまうが……。■ 解説第10回本屋大賞を受賞した百田尚樹のベストセラー小説を、『永遠の0』の監督&主演コンビ、山崎貴と岡田准一のタッグで実写映画化。明治から昭和にかけて数々の困難を乗り越え石油事業に尽力した男の生きざまを、戦後の復興、そして世界の市場を牛耳る石油会社との闘いを軸に描く。日本人の誇りを胸に、周囲の仲間との絆を重んじた主人公・国岡鐡造の青年期から老年期までを、主演の岡田が一人でこなす。共演は吉岡秀隆、鈴木亮平、綾瀬はるか、堤真一ら豪華俳優陣がそろう。■ キャスト岡田准一、吉岡秀隆、染谷将太、鈴木亮平、野間口徹、ピエール瀧、須田邦裕、飯田基祐、小林隆、矢島健一、黒木華、浅野和之、光石研、綾瀬はるか、堤真一、近藤正臣、國村隼、小林薫■ スタッフ監督・脚本・VFX: 山崎貴原作: 百田尚樹2016年12月18日TOHOシネマズ岡南★★★
2017年01月17日
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12月に観た映画第二弾。ちなみに、「ミュージアム」は今年のワーストに決定です。「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」TOHOフリーパスポート 11作目。最初ハリウッド映画によくある、国の法律体系を無視する西部劇保安官タイプの作品かと思っていたのだが、ジャックは徹頭徹尾軍隊の法体系を守っていた。アメリカ保守派の中の良心派の映画という感じ。しかも、本来ハードボイルド畑の男がひょんな事から娘(かもしれない)女の子の命を守らなければならないという、しかもこのサムという女の子(ダニカ・ヤロシュ)がジャックばりに頭もいいし行動力もあるという「レオン」タイプの話になっている。思った以上に私の「好み」でした。今回相棒になるターナー少佐も凛々しくて、すっかりこのシリーズのファンになりました。年寄りのトム・クルーズには酷でしょうが、もう一本ぐらい作って欲しい。(ストーリー)ターナー少佐(コビー・スマルダーズ)は、リーチャーがかつて所属していた陸軍内部調査部の軍人。彼女は、身に覚えのない国家への反逆行為の罪で逮捕される。リーチャーは、ターナーを脱獄させ、巨大な政府の陰謀の裏に隠された真実を暴き、彼女の身の潔白を証明しなければならない。彼らは逃亡犯として捜査網をすり抜け、重大な秘密を知ることになる。監督 エドワード・ズウィック出演 トム・クルーズ、コビー・スマルダース、ダニカ・ヤロシュ、ロバート・ネッパー[ 上映時間:118分 ]2016年12月8日TOHOシネマズ岡南★★★★「ミュージアム」TOHOフリーパスポート12作目。この作品の感想としては、赤川次郎の最近のサスペンスに対する危惧がそのまま私の感想になるだろう。(略)私も作家デビューして40年が経ちますので、いろいろな文学賞の先行委員をさせていただく機会があります。2010年の第一回山田風太郎賞でも選考委員を務めさせていただいたんですが、このときの受賞作が貴志祐介さんの「悪の教典」(文藝春秋)でした。最終選考に残ったのが本作と綾辻行人さんの「Another」(角川書店)。両方の作品で殺される人の数を合わせると百人を超えるんです(笑)。これは貴志さんや綾辻さんのような実力のある作家が紡ぎ出した力をもった作品であれば成立します。一方、こうした作品に影響を受けたのか、新人賞の応募作、つまりこれから作家になろうとする人の作品に大量殺人を扱ったものがものすごく増えています。まるでたくさん人を殺すのが小説的サービスだとでも思っているかのようです。しかも「もう勘弁して」と言いたくなるくらい執拗に残酷な描写が続く。単に刺激的であることによって目立とうとしているのかもしれません。新人賞の場合、作品が目立たなかったためにスルーされてしまうくらいなら目立った方がいいという考え方が実際にあると思います。それにしても、大量殺人を安易に扱っているとしか思えない作品が多いのです(略)。監督は全然新人ではないのですが、結果的に何か猟奇的殺人が起こって、人間の闇らしきものを描けば、深い物語になると勘違いして作っているとしか思えない。この派手な殺人ショーが社会に訴えるものは何もない、むしろこういう異常者は早く見つけて排除せよ、という風潮を助長しかねない。プロデューサーの幼稚性が垣間見える。ラストカットも、ありがちなやり方で、メッセージなんかない。クズ映画。(ストーリー)雨の日に起きる連続猟奇殺人事件。犯行現場に残された謎のメモ、そして見つけられることを前提としたかのような死体。犯人はカエルのマスクを被った通称・カエル男。事件の関連性に気付いた沢村刑事が捜査を進めると、驚愕の次のターゲットが浮かび上がる。カエル男の次のターゲットとは…。犯人を追うはずの沢村が、逆に絶望的な状況に追い詰められて行く。果たして、カエル男の真の目的とは…?監督 大友啓史出演 小栗旬、尾野真千子、野村周平、丸山智己、田畑智子、市川実日子、伊武雅刀、大森南朋、松重豊2016年12月8日TOHOシネマズ岡南★「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」TOHOシネマズフリーパスポート13作目。かつてこのシリーズを半分以上まともに観た事がない。なぜか必ず寝落ちするのである。きっと、この魔法世界のいろいろな用語が私の脳に拒否反応を起こさせるのに違いないと思っている。今回、なんと八割型「起きて」いた。私としては画期的。よって、作品そのものを批評出来る。ファンタジーとはいいながら、この世界はあまりにも「人間世界」のことを大事にして、意識し過ぎていると思う。人間の価値観から離れられない。ファンタジーの面白味がそれで半分以上削がれていると、私は思う。また、最終的には白魔術と黒魔術の闘いになっているのだが、単なる序章に過ぎなくて、大きな出来事があったにもかかわらず、敵は過去の経緯を忘れたかのようにすっぱりと消滅させられたし、母親を殺されたあの幼女のその後についてなんの考慮もしないという、無神経さも示す。この世界観、好きじゃない。魔法世界と1930年代のニューヨークセットは、すごいと思う。散りばめられた次回作への伏線は、物語に広がりを持たせた。今回は大人の物語になっていて、安心して観ていられる。次回作も観るかどうか。(ストーリー)魔法使いのニュート・スキャマンダーは、優秀だけどおっちょこちょい、そして魔法動物をこよなく愛する変わり者──。世界中を旅しては魔法動物を集め、不思議なトランクに詰め込んでいる。ある時ニュートは、旅の途中でニューヨークへ立ち寄ったが、そこでひょんなことから自分のトランクが普通の人間のトランクと入れ替わってしまう!トランクの中から魔法動物たちは逃げ出してしまい、ニューヨーク中を巻き込む大騒動に!そこで出会う仲間たちや奇想天外な魔法動物とともに、ニュートの新しい冒険が始まる!監督 デイビッド・イェーツ出演 エディ・レッドメイン、キャサリン・ウォーターストン、アリソン・スドル、ダン・フォグラー、エズラ・ミラー、サマンサ・モートン、ジェン・マーレイ、フェイス・ウッド=ブラグローブ、コリン・ファレル[上映時間:133分 ]2016年12月9日TOHOシネマズ岡南★★★☆「聖の青春」コンセプトはリアリティ。聖のマンガだらけの部屋も、酒の飲み歩きも、ケンイチの見事な役作り(小説やマンガでしか彼を知らないのに、正に本人がいるとしか思えない)も、それでも最後まで羽生と互角に戦ったという事実の前に、一つの伝説を作る。将棋の棋譜はほとんど明らかにされないので、将棋を知らなくても大丈夫。唯一有名な羽生を東出が演じていて、頑張っているが、所々羽生ではないように思えるのは、少し不利かもしれないが、マイナス要因。1番大事なセリフをほそのまま再現したのは、わかりやすいかもしれないが、無駄だった。原作を読んでいないと、聖が簡単に頂上決戦をしているかのように思える。将棋界の弱肉強食は少しは出ているが、エピソードを繋げる脚本と共に少しむつかしかった。■ あらすじ幼少期から難病を患う村山聖は、入退院を繰り返す中で将棋と出会い、15歳で森信雄に師事する。10年後、名人になる夢をかなえるべく上京した聖(松山ケンイチ)は周囲に支えられながら将棋に全力を注ぎ、七段に昇段したころ、同世代で名人のタイトルを獲得した羽生善治に激しいライバル心を抱く。さらに将棋に没頭する聖だったが、がんが彼の体をむしばんでおり……。■ 解説29歳の若さでこの世を去った天才棋士・村山聖の生涯をつづる大崎善生のノンフィクションを、松山ケンイチ主演で映画化。幼いころより患う難病と闘いながら将棋の道を突き進んだ村山の壮絶な人生を、羽生善治をはじめとする同世代の棋士との死闘や、彼を支える師匠や両親たちの愛を通して描く。『宇宙兄弟』などの森義隆がメガホンを取り、『マイ・バック・ページ』などの向井康介が脚本を担当。大幅な体重増量など徹底した役作りに挑んだ松山の熱演が光る。■ キャスト松山ケンイチ、東出昌大、染谷将太、安田顕、柄本時生、北見敏之、筒井道隆、竹下景子、リリー・フランキー■ スタッフ原作: 大崎善生監督: 森義隆脚本: 向井康介主題歌: 秦基博2016年12月10日MOVIX倉敷★★★★「シークレット・オブ・モンスター」TOHOフリーパスポート14作目。駄作。どうしてこれが部門賞とはいえ、ヴェネチアの監督賞を獲ったのか不思議。まるでハネケのカンヌ受賞の名作、ヒトラーユーゲント誕生の前日譚を描いたかもしれない「白いリボン」のような作りではあるが、思わせぶりな章立と思わせぶりな音楽で、出るぞ出るぞと驚かせてネズミ一匹出るというお粗末。私入れて観客は四人だった。(解説)心理ミステリーの最高峰『羊たちの沈黙』のジョナサン・デミ監督が「身震いする緊張感、戦慄の映画」と評し、2015年ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門で監督賞と初長編作品賞を見事受賞。ジャン=ポール・サルトルの短編小説「一指導者の幼年時代」から着想を得て、ヴェルサイユ条約締結直前のフランスを舞台に、アメリカから来た政府高官の幼い息子が、やがて狂気のモンスター ="独裁者"へと変貌してしまうまでの謎に迫る怪作。音楽は『ポーラX』以来16年ぶりとなるスコット・ウォーカーが担当する。監督 ブラディ・コーベット出演 ベレニス・ベジョ、リアム・カニンガム、ステイシー・マーティン、ロバート・パティンソン、トム・スウィート[ 上映時間:116分 ]2016年12月15日TOHOシネマズ岡南★★
2017年01月16日
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12月に観た映画は、全部で18作品でした。もちろん、TOHOフリーパスポートをゲットしていたために多く鑑賞できたわけです。よって、今回は4回に分けて紹介します。冒頭の「この世界に」は一度ブログで出していますが、再掲します。私としては、ずっと私の世界の片隅に大切にとっておきたい作品になりました。「この世界の片隅に」二回目鑑賞広島の八丁座は八割がた埋まっていた。映画の日の平日午後。地方ではそんなものかもしれないが、ここは地元の広島、しかも老舗の八丁座なのだ。少し意外な気がした。客層は正に老若男女だった。終わったあと、みんなあまり泣いていなかった。もちろん、無理やり泣かすような作品ではなかったものの、広島の人たちには特別な感慨を起こさせるのではないかと思っていたので、それも意外だった。老齢の女性が眼鏡の奥の涙を拭いていた。改めて傑作だと思う。どこまで歴史考証を重ねたのかは、例えはすずの実家の江波の海岸から広島地方気象台が小さく見えていた事からも推察出来る。私は当日そうとは知らずにその辺りを歩いていた。正に海岸線から見える当時の景色そのままだっただろう。一事が万事、実に細かいところまで、当時の景色を再現しているのだ。ところが、絵柄は厳しい写実性を持っていない。終始淡い絵の具のような絵であって、この作品世界すべてが、いま生きているならば90歳くらいになっているに違いないすずおばあさんの夢の中の思い出のように思える。だから、ところどころ爆発は綺麗な具材を使って描かれるし、大切なものを失くしたときは、極端な抽象絵画になる。「君の名は。」のように、脚本的な派手な仕掛けやPOPな音楽を採用しなかったし、「聲の形」やジブリ映画のような顔の表情の細かな演出はない。しかし、大人の教養に裏打ちされた骨太の脚本と、絵のタッチそのものが雄弁に語る日本セルアニメの到達点が、ここにあった。そして、のんの声の演技が細かい表情をサポートしていた。一回目のときはクラウドファンディングのリストを追うので精一杯だったので、その下のラフ絵は見る事ができなかった。今回じっくり見て、遊女のおりんさんの半生だと知れた。原作にはない背景も知る事が出来て良かった。白いタンポポの群の中に、一つ旅して根付いた黄色のタンポポのように、「普通に」「この世界の片隅に」すずは生きてゆく。2016年12月1日広島・八丁座★★★★☆「RANMARU 神の舌を持つ男」TOHOシネマズフリーパスポート7作目。予想通り、テレビドラマレベル。監督がこのギャグのオンパレードを、おそらくテレビ関係者と酒をのみながら10数年温めてきたのだろう。もうこんな人をおちょくる作品作りは止めたらどうだろうか。(ストーリー)伝説の三助の孫・朝永蘭丸(ともながらんまる/向井理)は放浪の旅の末、鬼灯(ほおずき)村にたどりつく。ところが温泉に溺れてしまってさぁ大変!人口呼吸で助けられた蘭丸はその女医・りん(木村多江)に一目惚れし、村の温泉で働くことに。甕棺墓光(かめかんぼひかる/木村文乃)と宮沢寛治(みやざわかんじ/佐藤二朗)が蘭丸を追って来るがその時、地面が大陥没! 鬼火が発生! 黒い水が湧き出し、ついには死体を発見! 村人は、三人がいにしえの呪いを呼び覚ました! と大激怒。謎の黒装束軍団に追われながら、果たして彼らは殺人事件の犯人を暴き、呪いの謎を解き明かす事ができるのか!?監督 堤幸彦出演 向井理、木村文乃、佐藤二朗、岡本信人、渡辺哲、矢島健一、春海四方、落合モトキ、永瀬匡、中野英雄、市原隼人、黒谷友香、財前直見、木村多江2016年12月8日TOHOシネマズ岡南★★「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」TOHOシネマズフリーパスポート8作目。夫の献身的な純愛物語でも、奇跡を呼び起こすミュージックドラマでも、とんでもない喜劇でもない。少し不実なところもあるけれども、おかしな愛を貫いた夫と、KY的な資産家フローレンスの一生懸命な生涯と、それをコメディと解釈しながらも、結果的に戦時でありながら余裕を持って愛したニューヨーク社会を描いた作品である。こんな国と戦争していたら、負けるよな、とも思う。ジャズナンバーで乱痴気踊りをする様は、実に8年後の東京で同じような事をやっていたのを、私はこの前はからずも「生きる」という映画で見てしまった。アメリカの模倣は、こんなにも遅れてやって来ていたのだ。フローレンスは、あのカーネーギーホールリサイタルのすぐあとになくなって居る。68歳だった。そういう意味ではすごいリサイタルだったのかもしれない。(ストーリー)ニューヨークの社交界のトップ、マダム・フローレンスの尽きない愛と財産は、夫のシンクレアと音楽に捧げられていた。ソプラノ歌手になる夢を追い続けるフローレンスだが、彼女は自分の歌唱力に致命的な欠陥があることに気づいていない。愛する妻に夢を見続けさせるため、夫のシンクレアはマスコミを買収し、信奉者だけを集めた小さなリサイタルを開催するなど忙しく献身的に立ち回っていた。しかしある日、フローレンスは世界的権威あるカーネギーホールで歌うと言い出して―。持病を抱えながらも音楽に生きる彼女の命がけの挑戦に、シンクレアも一緒に夢をみることを決める。さあ、笑いと涙で包まれた奇跡の公演の幕があがる!監督 スティーヴン・フリアーズ出演 メリル・ストリープ、ヒュー・グラント、サイモン・ヘルバーグ、レベッカ・ファーガソン[ 上映時間:111分 ]2016年12月8日TOHOシネマズ岡南★★★★「疾風ロンド」TOHOシネマズフリーパスポート9作目。2年前に原作を読んだときは、東野圭吾のやっつけ仕事(いきなり文庫本だったし)なので、2時間ドラマになったらいい方だと書いた。ほとんどスキー場でロケをするので、そんなにお金はかからないはずだ、と踏んだわけである。私のプロデュース能力もまだまだだと反省した。なかなかの映画作品に仕上がっていた。あの時は、こんなにもコメディ要素があると思わなかった。本来はとんでもない大事件なのだけど、それをコメディで包む事で都合のいい展開の謎解きサスペンスも、うまい具合に誤魔化す事が出来た。阿部寛、大島優子はそれぞれ持ち味を生かしてちゃんと役柄を膨らましており、ムロツヨシ、堀内敬子は小悪人を見事に演じ、戸次重幸、濱田龍臣、志尊淳、野間口徹らの次世代男優がきちんと若者になっていた中で、最もテーマらしきものが現れた家族の絆や憎しみの連鎖を解きほぐす最も重要な麻生祐未の台詞で、素直に感動出来た。(ストーリー)大学の研究所施設から、違法生物兵器「K-55」が盗まれた。 研究所所長の下に届く犯人からの脅迫メール。「人質は全国民。身代金の3億円を用意しろ」 警察には頼めない…しかも残された時間は4日間…。そんな窮地に白羽の矢がたったのは、何故だか、しがない主任研究員。秘密裏に生物兵器を捜す命を受けるも、全く手掛かりがない…。そんな中、一本の電話が。≪犯人死亡!!≫まさかの事態に呆然とする一方で、刻々と迫りくる大惨事へのタイムリミット。 生物兵器の行方も完全に不明になったと途方に暮れていたその時、犯人の遺品から僅かな手がかりを掴むのだった。監督 吉田照幸出演 阿部寛、大倉忠義、大島優子、ムロツヨシ、堀内敬子、戸次重幸、濱田龍臣、志尊淳、野間口徹、麻生祐未、生瀬勝久[ 上映時間:109分 ]2016年12月8日TOHOシネマズ岡南★★★★「ブレア・ウィッチ」TOHOシネマズフリーパスポート10作目。普通ならば絶対劇場では観ない作品。なんと日曜日一週間目にもかかわらず、私1人の劇場独占状態でした。生涯で二回目くらいかな。それ程までに二匹目のドジョウを見たい人は少ないということなのでしょう。今回は登場人物全員に小型カメラはついているし、GPSはあるし、ドローンも使うので、かなり臨場感あり。その分ドキュメント感はなくなった。ともかく音と映像で驚かすアメリカスリラーは、もういい。とはいいながら、劇場が明るくなるまで席を立てれなかった。途中一つだけ、1人のはずの部屋で後ろから音がしたので(笑)。(ストーリー)かつてヘザーは、“ブレアの魔女”をテーマにしたドキュメンタリー映画製作のため、ブラック・ヒルズの森を訪れたまま消息を絶った。しかし彼女の失踪から20年後、弟のジェームズはYouTubeで姉らしき人物が映った映像を見つける。姉を救うため、そして“ブレアの魔女”の謎を解くために仲間たちと共にあの「森」に踏み込むのだが・・・。監督 アダム・ウィンガード出演 ヴァロリー・カリー、ジェームズ・アレン・マキューン、ウェス・ロビンソン[ 上映時間:90分 ]2016年12月8日TOHOシネマズ岡南★★
2017年01月15日
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「アデライン、100年目の恋」 今年最後の映画評では、クリスマスから正月にかけて、恋人や家族で愉しめる、ハリウッド発のラブ・ファンタジーを紹介したいと思います。 2014年の大晦日。年越しパーティーに一人の若く美しい女性が現れます。彼女の名前はアデライン・ボウマン(ブレイク・ライブラリー)。見た目は29歳、しかし実は100歳を優に越えています。1937年のある事故によって歳をとらなくなったのです。しばらくはごまかしていた彼女も、1953年FBIによって拉致されかけて以降は慎重になり、偽名を使い、10年ごとに住居を変えて生きてきました。そんな彼女がパーティーで出会ったエリス(ミキール・ジョーンズ)という青年と恋に落ちて、運命が転回し始めます。しかも、彼の父親(ハリソン・フォード)は、アデラインが過去唯一名前を明かすほどに愛した男性だったのです。ハリソン・フォードが、初めて息子の恋人としてのアデラインに再会した時、長年連れ添った妻が隣に居る事を忘れるほど驚き、そしてはしゃぎます。私も初恋の女性が当時のままの姿で突然目の前に現れたら、同じ反応を示すかもしれません。しかし話は、父親の目線からでもなく、何も知らない息子の目線からでもなく、知識だけは増えていくけど常に「時」にとり残されるアデラインの目線から語られています。この葛藤が、今までのラブストーリーでは見た事がなくて、とても新鮮でした。 彼女が、歳をとらない女性だということを周囲に悟られないために、いかに知恵を絞り気を配ってきたかは、作品前半で細かく語られています。「好きになっても一緒に歳を重ねられない」時の流れにとり残される苦悩はどんなものなのか、想像力が掻き立てられます。また、彼女の実の娘は83歳なのですが、ベテラン女優のエレン・バースティンが出ていて、「老女が母親を心配する」特異な役を上手く演じていました。 主演女優は映画俳優としては新人で、しかもミステリアスの美しさを持っていて、物語を印象的なものにしていました。80年間に渡って様々なファッションの変遷を1人で体現しているのも見どころです。 (2015年リー・トランド・クリーガー 監督作品DVDレンタル可能)
2016年12月25日
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11月は17作品でしたが、この三作品はそれほどでもない作品で終わりました。「溺れるナイフ」TOHOフリーパスポート4作目。わりと頑張った小松菜々。しかし菅田将暉の存在感には負けていた。上白石萌音がまさか最後にあんな表情を出すとは。美味しい役だし、熱演だった。早く大人になる女の子と比べて、男はなかなか自信が持てない。だから、不良の男は美人の同級生とは別れざるを得ない。でも、それを超える事件が起きれば、思い出は永遠になるだろう。那智勝浦と新宮町のロケが、中上健次感を出して、なかなかだった。新人監督の編集は素晴らしいが、途中の挿入歌や何度も出す回想シーン等々まだまだという気がする。(ストーリー)東京から転校してきた美少女モデルの夏芽(小松菜奈)は強烈なオーラを放つ地元の少年コウ(菅田将暉)に出会い一瞬にして惹かれていく。コウも夏芽の美しさに同類の力を感じ、ぶつかり合いながらも付き合うことに。しかし、火祭りの夜にある悲劇が二人を襲う・・・。深く傷つきコウと別れてしまった夏芽。孤独な彼女を救ったのは同級生の大友(重岡大毅)だった。彼の優しさに癒されながらも、コウに急接近する幼馴染のカナ(上白石萌音)に心を乱され、行き場を失う夏芽。そんなある日、芸能界復帰のチャンスが訪れる―。夏芽の決断は?コウの想いは?永遠を信じていた二人の恋の行方は?監督 山戸結希出演 小松菜奈、菅田将暉、重岡大毅、上白石萌音2016年11月24日TOHOシネマズ岡南★★★「orange -未来-」TOHOフリーパスポート5作目。アニメだった。おそらく、実写版では描かれていない未来を描いていることで、テレビアニメを編集して付け足したのだろう。あまりにも安易な絵柄と安易なストーリー。これでよくもお金をとるものだと思う。こういう作品が映画館にかかるから映画人口がなかなか増えないのだ。(ストーリー)26歳の春――。須和弘人は、高校の同級生の茅野貴子、萩田朔、村坂あずさ、卒業後に結婚した高宮菜穂、そして、二人の間に生まれた子供と共に、桜の舞う弘法山を訪れた。彼らはそこから沈みゆく夕日を眺めながら、10年前に亡くなった成瀬翔のことを考えていた。成瀬翔は高校二年生の始業式の日に、東京から松本市に引っ越してきた転校生。すぐに翔と親しくなった須和は、彼と菜穂が互いに思いを寄せ合っていることを知るが、それに気付かないフリをしてしまっていた。そして、17歳の冬に突然、翔は全てを置いて亡くなってしまう。監督 浜崎博嗣声の出演:花澤香菜、山下誠一郎、古川慎、高森奈津美、衣川里佳、興津和幸2016年11月24日TOHOシネマズ岡南★★「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」TOHOフリーパスポート6作目。最終回の主なテーマは、貧困ビジネスと不良弁護士。金にまつわる日本の貧困に関わる闇金の目を通して、本当の日本の闇を映すシリーズはこれでおしまい。ウシジマの過去の少し見ようによってはいいところを、同級生の目から少し見せて終わった。最終カットは、狙いだろうけど、ウシジマは同級生を助けなかったと思う。(ストーリー)トゴ(10日で5割)、ときにはヒサン(1日3割)という違法な高金利で金を貸すアウトローの金融屋・ウシジマ。借金を返せない客をシビアに追い詰めるウシジマには、彼にその生き方を選ばせる過去があった。「あのウサギは元気なの?」人の善意を信じ、自分を犠牲にしてまで他人を救おうとするウシジマの同級生・竹本がカネを借りるためにウシジマの前に12年ぶりに現れたことでいままで決して明かされることのなかったドラマがついに明かされる。これまで語られることのなかったウシジマの過去。ウシジマは本当に血も涙もない、冷たい人間なのか。12年の年月を超えた因縁の対決の果てにあるのは希望か、絶望か?和解か、決裂か?※PG12監督 山口雅俊出演 山田孝之、綾野剛、永山絢斗、最上もが、玉城ティナ、安藤政信、八嶋智人、高橋メアリージュン、崎本大海、やべきょうすけ2016年11月24日TOHOシネマズ岡南★★★☆
2016年12月07日
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11月に観た映画の第四弾。なぜ今回は鑑賞作品が多かったかは、要は下の理由でもって一日に6本見たからです。とりあえず、そういうことで12月も多くなります。「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」TOHOフリーパスポート1作目。ついに6000時間分のポイントを貯めて、一ヶ月のパスポートをゲットしました。今日から一ヶ月の間、無料で映画見放題です‼一ヶ月20作を目標にします。とりあえず、今日は6作観るぞ!さて、ブリジットシリーズ3作目。ネタバレですが、43歳で出産、アラフォーの女性に、勇気を与える作品です。テレビプロデューサーなので、しっかり手厚い健康保険を使っているとはいえ、仕事も恋もまだまだ波乱万丈、まだまだ続きがありそうです。ブリジットがずっと年相応の容貌しているのは、この作品が彼らに合わせて作ってきたからだと言える。だからこそ、とても貴重なシリーズです。アラフォー出産のあとは、高齢子育て。まだまだ需要はありそうです。(ストーリー)アラフォーになったブリジットは、なぜか未だ独身。彼女が愛した男はといえば、なんとダニエル(ヒュー・グラント)は事故で亡くなり、マーク(コリン・ファース)は別の女性と結婚し、さらには離婚調停中。しかし今やテレビ局の敏腕プロデューサーとなったブリジットにハンサムでリッチ、性格もナイスなIT企業の社長、ジャック(パトリック・デンプシー)とのドラマチックな出会い(モテ期!)が訪れる。いつもの天然っぷりから彼と急接近する一方で、マークとも再会を果たすブリジット。またしても2人の男性に揺れ動くことに…。2人のイケメン男性どちらを選ぶのか?今度こそ結婚?監督 シャロン・マグワイア出演 レニー・ゼルウィガー、コリン・ファース、パトリック・デンプシー、ジム・ブロードベント、ジェマ・ジョーンズ、エマ・トンプソン、ダン・メイザー2016年11月24日TOHOシネマズ岡南★★★☆「私の妻と結婚してください」TOHOフリーパスポート2作目。まあ、想像した通りの展開。普通無理があるから(嫌いになったから離婚してくれというのは)すぐバレるよね。その後の展開もほぼ想像した通り。でもそれでも、涙ちょちょぎれるストーリーでした。未婚の私でさえ、そうならば既婚の人たちはもっとだったのかもしれない。織田裕二以外の演技には不満。監督の力量か、演技者の力量かは、判断できない。「結婚ていいですよ。例えば中華料理を食べるでしょ。1人では数品で食べれなくなるのが、2人ならば何品も頼めれる。そして美味しい」作品全体を通じて、家族の「たいへんを面白いに変換する」魔法が一杯詰まっていた。確かに「結婚ていいかもね」と思わせる作品だった。でもそれだけだけどね。(ストーリー)バラエティ番組の放送作家である三村修治は、12本ものレギュラーを抱え、このところ忙し過ぎるとは思っていた。体に異変を感じて検査を受けた結果、告げられたのは末期のすい臓がん。余命6ヵ月という驚くべき診断だった。放送作家として、今までずっと世の中の色々なことを好奇心で「楽しい」に変えて来た修治は、自分がいなくなっても、妻が前を向いて進めるようにある企画を思いつく。「妻の結婚相手を探そう!」そんな時、元仕事仲間の知多かおりが現在結婚相談所の社長であると知り、妻にとって最高の結婚相手を探し出してもらうことに。まさに命を懸けた一世一代のプロジェクト、家族に遺せる「最期の企画」が動き出す…。監督 三宅喜重出演 織田裕二、吉田羊、原田泰造、高島礼子2016年11月24日TOHOシネマズ岡南★★★☆「オケ老人!」TOHOフリーパスポート3作目。芸達者な老役者たちに、杏のコメディエンヌは絶品で、彼女がふとした仕草をもし計算尽くでやっているとしたら、結婚して子どもが出来てひとつ演技の幅が広がっているのかもしれない。今年度最高の邦画コメディだった。年老いても、まだまだ人生勉強中であり、それは高齢者もアラサーも変わりないということを、さらっと描いていて、とっても終わり方が良かった。足利市と福生市の全面ロケで、地方も元気にしているかもしれない。(ストーリー)梅が岡高校に赴任してきた数学教師の千鶴(杏)は、ヴァイオリン演奏の経験を活かすべく、その町のプロ並みのアマオケに入団・・・したつもりが、入った先は年寄りばかり、素人丸出しの≪梅が岡交響楽団≫だった。千鶴の入団を大喜びする老人たちに「楽団名を間違えた」と言い出せず参加することになり、しまいには指揮棒を振るはめに…。そこへエリートアマオケ≪梅が岡フィルハーモニー≫も現れ、危機が訪れる。どうする千鶴?! オケ老人?!果たして彼らは演奏会を成し遂げられるのか!?心躍るクラシック音楽が全編を彩り、千鶴先生と日本一個性豊かで熱い老人たちが感動のフィナーレをお届けします!!監督 細川徹出演 杏、黒島結菜、坂口健太郎、左とん平、小松政夫、藤田弓子、石倉三郎、茅島成美、喜多道枝、森下能幸、萩原利久、フィリップ・エマール、飛永翼(ラバーガール)、光石研、笹野高史2016年11月24日TOHOシネマズ岡南★★★★☆
2016年12月06日
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11月に観た映画第三弾。ここから三作のみの紹介になります。「ニュースの真相」(原題 Truth)2004年、大統領選を戦うブッシュ大統領に軍歴詐称疑惑が立ち上がる。それを報道したCBSのスタッフは、直後から証拠の偽造を疑われ、それを遂に反論できない。アメリカのメディアは時々時の政権中枢に打撃を与える報道を起こす。現在のクリントンに対するメール問題もその一つだろう。キリアン文書に関していえば、決定的な証拠がコピーだったことが1番悪かった。だからこそ、状況証拠を固めて満を侍して報道したのだが、相手は国家権力なのだ。何でもやっただろう。映画は陰謀論に与しない。しかし、偽造が真相かといえば、明らかに違うとも主張する。世論は偽造論が全面に出されて、軍歴詐称疑惑が立ち消えになった。これは、現在の日本で今現在も起きていることかもしれない。TPP是非論が話されずに、農相の失言問題ばかりが論じられる。そうやって「真相」が忘れられる。ブッシュは再選を果たした。その結果がイラク戦争の泥沼化であり、ISの台頭だった(日本で云えば長期小泉政権、そして安倍独裁の準備)ことを考えると、「真相」に対する「国民の態度」が、世界史を変えたのだとも言えるだろう。これは、一見「メディアの失敗」を描いた作品のようにも思える。しかし、そうではない。メディアの勇気を描いた作品である。私はアカデミー作品賞を獲った「スポットライト 世紀のスクープ」よりもこちらの方を評価する。CBSの詰めは甘かったかも知れない。けれどもだからこそ、メディアの持つ問題点や闘うべき相手はより鮮明になっている。ブロガーやウェブの攻撃(日本の場合は炎上手法でもっと簡単)、権力による周到な証拠隠し、内部調査委員会という名前のスタッフ潰し(NHKクローズアップ現代の攻撃を思い出す)、極めて現代日本に通じる問題だった。(解説)2004年にアメリカを騒然とさせたスクープ報道が巻き起こした波紋の一部始終に迫る実録ドラマ。CBSの看板番組のプロデューサー、メアリー・メイプスの自伝を基に、ジョージ・W・ブッシュ大統領の軍歴詐称を報道するも後に証拠文書が偽造ではないかと指摘され、名司会者ダン・ラザーらが批判にさらされる姿を描く。メガホンを取るのは、『ゾディアック』などの脚本家ジェームズ・ヴァンダービルト。メアリーは『ブルージャスミン』などのケイト・ブランシェット、ダンを名優ロバート・レッドフォードが演じる。(ストーリー)アメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領が再選を目指していた2004年、放送局CBSのプロデューサー、メアリー・メイプス(ケイト・ブランシェット)はダン・ラザー(ロバート・レッドフォード)が司会を務める報道番組で、ブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑をスクープする。それはアメリカで大反響を呼ぶが、後に証拠は偽造されたものだとブロガーが指摘したことから、メアリーやダンら番組スタッフは世間から猛烈な批判を浴び……。スタッフジェームズ・ヴァンダービルト脚本・監督・製作キャストケイト・ブランシェット(メアリー・メイプス)ロバート・レッドフォード(ダン・ラザー)エリザベス・モス(ルーシー・スコット)トファー・グレイス(マイク・スミス)デニス・クエイド(ロジャー・チャールズ中佐)ステイシー・キーチ(ビル・バーケット中佐)2016年11月6日シネマクレール★★★★☆「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」昔漫画編集者になりたくて仕方なかった。才能があるかどうかの目利きだけがあれば、あとの才能は必要ないと思っていた。しかし最近の「重版出来!」などを見ると、それだけでは済まないということもやっと承知して早々に諦めて正解だったと思うところである。コリン・ファースはもちろん、ジュード・ロウの思いもかけない熱演、そしてニコール・キッドマンの凄みは、流石としか言いようがない。が如何せむ、トマス・ウルフは一行も読んだことはなく、幾つか訳文で文章が紹介されるけど、まるで詩のようでとても長編小説の一節とは思えない。そんなこんなで、彼の本を知っていたならば、いろんな感銘があったのかもしれないが、少々退屈だった。ただ、世界恐慌下のニューヨークの下宿屋の屋上で、「四万年前から、人々は闇の中で物語を欲していて、君はそれを作ることができる」と励ますパーキンズの言葉には普遍性がある。(チェック)『英国王のスピーチ』などのコリン・ファースと、『コールド マウンテン』などのジュード・ロウが共演を果たした人間ドラマ。A・スコット・バーグの原作を基に、実在の名編集者と若くして生涯を終えた天才作家の短期間だが濃密な友情を映す。作家を支える愛人を、『めぐりあう時間たち』などのニコール・キッドマンが好演。親子のような深い絆で結ばれた、編集者と作家の魂の交流によって生み出された数々の傑作の存在に圧倒される。(ストーリー)1920年代のニューヨーク。敏腕編集者パーキンズ(コリン・ファース)は、F・スコット・フィッツジェラルドやアーネスト・ヘミングウェイらの名著を世に送り出してきた。あるとき、彼は偶然手にした無名の作家トマス・ウルフ(ジュード・ロウ)の原稿を読んでいち早くその才能に気付く。パーキンズはウルフの陰になり日向になり支え続け……。2016年11月20日シネマクレール★★★★「ある天文学者の恋文」私の隣の中年のおばさんは、始まりから終わりまでグスングスン言っていた。琴線に引っかかった何かがあるんでしょう。私はグスンのグの字もなかった。ここまで用意周到、死んだ後に最愛の女性がどのように行動するか、ある程度予測してまで(一年後まで正確に言い当てていた)いろいろ準備するのは確かに楽しい。病気を忘れるぐらいだっただろう。でも行動に移せない。間違っていたら、彼女が一気に冷めるんじゃないかと気になり、勇気が持てなかっただろう。実際、順番間違えてトンチンカンなことを書いた時に、彼女は怒っていたじゃないか。これは男の夢だ。これは女の夢かもしれない。お伽話が終わったあとに、男は女に何を望んだのか。それがよくわからない。(解説)『ニュー・シネマ・パラダイス』『鑑定士と顔のない依頼人』などのジュゼッペ・トルナトーレ監督が放つ、ミステリードラマ。死んだはずの恋人から手紙やプレゼントが届き続ける女性が、その謎を解く姿を彼女の秘めた過去を絡めながら追う。『運命の逆転』などのジェレミー・アイアンズが天文学者である恋人を、『007/慰めの報酬』などのオルガ・キュリレンコがヒロインを力演。深い謎と、舞台となるエディンバラやサン・ジュリオ島の美しい風景に魅せられる。(ストーリー)天文学者エド(ジェレミー・アイアンズ)と、教え子のエイミー(オルガ・キュリレンコ)は、愛し合っていた。だが、エイミーのもとにエドが亡くなったという知らせが飛び込む。悲しみと混乱の中、死んだはずのエドからのメール、手紙、プレゼントが次々と届く。不思議に思ったエイミーは、その謎を解くためにエドの暮らしていたエディンバラや、二人の思い出の地サン・ジュリオ島などを訪れる。やがて、エドが彼女の秘めた過去を秘密裏に調べていたことがわかり……。2016年11月20日シネマクレール★★★
2016年12月05日
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11月に観た映画の第二弾。ここに紹介した「オーバー・フェンス」と「この世界の片隅に」は傑作です。まだ観れる環境のある方はぜひ観てください。「オーバー・フェンス」職業訓練校の描写で、私の経験と違うと思った所は二点のみ。後は訓練校あるあるなので、訓練校とは正にこういう所なのだ、とよくわかる映画になっている。「普通」とは、ナントむつかしいことなのだろう。ここに出てくる登場人物たちは「普通だから、許せない相手とは思わない」(森)「普通だから、好きになる」(聡)「普通だから、久しぶりに会ってびっくりする」(元妻)「普通だから、俺といた時には普通でなくなっていたのだと初めて気がついた」(白岩)。と告白している。だから、私にはほとんど気がつかなかった白岩のちょっとした目つきに、聡は激しく反応したのだ。最初は単に振り回すタイプの女性だと思った聡が、実は深刻な発達障害だとわかる(もちろん映画ではその病名は出てこない)。もともと、妻を追い込んで別れた経験のある白岩は、避けたいタイプの女性のはずだ。けれども、2人は惹かれ合う。若い女性と飲みながら白岩は「笑っていられるのは今のうちだけだ。直ぐに、生きて死んでくだけたと気がつく」と毒を吐く。白岩だけではなく、登場人物たち全員がそうなるかもしれないという想いを思いながらも、希望を持って生きていた。訓練校とはそういう所だ。私ならばどうしただろう。私は八割方、聡を受け付けないだろうけと、あと二割の所で惚れるかもしれない。その一瞬の微妙な瞬間を、しかし映画は描くのだ。(解説)オダギリジョー、蒼井優、松田翔太らが顔をそろえ、佐藤泰志の小説を映画化したラブストーリー。『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』に続く「函館3部作」の最終章として、愛をなくした男と愛を望む女の出会いを描く。監督を務めるのは、『松ヶ根乱射事件』などの山下敦弘。41歳で他界した作家の実体験を基につづられた原作の魅力が光る愛の物語に心奪われる。(ストーリー)これまで好きなように生きて来た白岩(オダギリジョー)は妻にも見放され、東京から生まれ故郷の函館に舞い戻る。彼は実家に顔を見せることもなく、職業訓練校に通学しながら失業保険で生活していた。ただ漫然と毎日を過ごしてしていた白岩は、仲間の代島(松田翔太)の誘いで入ったキャバクラで変わり者のホステス聡(蒼井優)と出会い……。2016年11月9日シネマクレール★★★★☆「何者」最初観るつもりはなかったのだけど、トランプ大統領誕生の報を受けて、世の中に蔓延する「閉塞感」の中身を探したくて、この中にあるかどうかは全くわからないのだけど観ることにした。一般に思うような閉塞感は、この中には無かった。主人公たちは、確かに就職がなかなか実現出来なくて追い詰められてはいる。けれども、精神的に追い詰められているだけで、ホントに追い詰められるのはこれからだよ、とつい言って見たくなるような感じ。そもそも閉塞感の作品でもなかった。どんでん返しがすごい、と宣伝していたので、「第一のどんでん返し」があった後に、ホントのソレは何かな、と身構えたらそれで終わってしまった。しかし、あれはどんでん返しなのか?就活の普通の感覚なのではないか?もう少しドロドロを予想していたら、あまりにもあっさり作品なので肩透かし。■ あらすじ就職活動の情報交換のため集まった大学生の拓人(佐藤健)、光太郎(菅田将暉)、瑞月(有村架純)、理香(二階堂ふみ)、隆良(岡田将生)。海外ボランティアの経験や業界の人脈などさまざまな手段を用いて、就活に臨んでいた。自分が何者かを模索する彼らはそれぞれの思いや悩みをSNSで発信するが、いつしか互いに嫌悪感や苛立ちを覚えるようになる。そしてついに内定を決めた人物が出てくると、抑えられていた嫉妬や本音が噴きだし……。■ 解説『桐島、部活やめるってよ』の原作者である朝井リョウの直木賞受賞作を、演劇ユニット「ポツドール」を主宰する『愛の渦』などの三浦大輔が映画化。就職活動対策のため集まった5人の大学生が、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする本音や自意識によって彼らの関係性が変わっていくさまを描く。就職活動を通じて自分が何者かを模索する学生たちには佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生といった面々がそろい、リアルな就活バトルを繰り広げる。■ キャスト佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之■ スタッフ原作: 朝井リョウ監督・脚本: 三浦大輔2016年11月12日MOVIX倉敷★★★「デスノート Light up the NEW world」つくづく二部構成でなくて良かったと思う。思えば八神月が天才Lと警察機構と対等に渡り合えたのは、ひとえにデスノートという荒唐無稽な物の存在を月とその信奉者以外は知らないという前提があったからである。この10年、全世界の国家権力は全力でこの未曾有の殺人兵器の対策を立てていなければおかしい。その前提が崩れた世界で、まだ天才キラが存在したとしても、どう考えてもこのように子供でも引っかかるようなやり方で潰される訳がない。あまりにも脚本が酷い。頭脳戦のアイディアは、一割ほどを引いて、前回作品の焼き直しを使っている。キラはあのラストの展開を当然あり得ることを想定して計画を練らなければならなかっただろう。美沙は三回目の死神の目を持ったわけだが、それでも生きていたのが、すごい。本来は100歳くらい生きる定めだったのかもしれない。10年も経っていたのに、デスノート対策のハードもソフトも作られていなかったのが笑えた。今回は渋谷の大虐殺があったわけだから、もう世間に真相を隠すことはできないだろう。新しいデスノート新世界が始まる。しかし(続編はないだろうけど)観たくもない。■ あらすじデスノートの力で多数の凶悪犯を破滅させた夜神月と、彼を追い詰めた天才Lの伝説のバトルから10年の歳月が経過。またしても死神がデスノートを下界にまき散らしたため、世界中が混乱していた。夜神総一郎が設立したデスノート対策本部は健在で、キラ事件を熟知する三島(東出昌大)をはじめとする特別チームが事態を注視しており……。■ 解説東出昌大、池松壮亮、菅田将暉が共演し、大ヒット作『DEATH NOTE デスノート』シリーズの10年後の世界に迫る続編。夜神月とLの死から10年後の情報社会を舞台に、捜査官と探偵、サイバーテロリストによる争いを最新のVFX技術を駆使して映し出す。監督を務めるのは、『GANTZ』『図書館戦争』シリーズなどの佐藤信介。前シリーズの遺伝子を受け継ぎつつさらに進化した、デスノートをめぐるバトルが楽しめる。■ キャスト東出昌大、池松壮亮、菅田将暉、川栄李奈、戸田恵梨香、中村獅童、船越英一郎■ スタッフ原作: 大場つぐみ原作: 小畑健監督: 佐藤信介脚本: 真野勝成2016年11月5日MOVIX倉敷★★★「この世界の片隅に」個人的に「君の名は。」「聲の形」よりもこちらの方が上です。「おまえはなんもかんも普通じゃ」そう言って、異常な戦場に帰って行った郷里の男友だち。夢の中の出来事だと思っていた鬼の人攫いのエピソードは、いったん現実の優しい周作さんとして登場し、最終盤にまた、南海の島でワニと結婚した鬼兄として夢の再会を果たす。それもこれも、もうすぐ人生を終わろうとしているすずおばあちゃんの昔話かもしれない。片渕須直監督の原作を十二分に咀嚼して、膨らます所は大胆に膨らまし、削る所は大胆に削った演出に、唸った。冒頭で、広島の人ならば一目で分かるであろうビルの一隅ですずが佇んでいる場面で、私は既に涙目になっていた。途中何度も笑いが起こり、隣の女の子などは時々声を出して笑い、時々不思議な顔をしていた。今はこの場面の意味がわからなくても、いつかこの水彩画のような絵を思い出すような気がする。製作者の綿密な時代考証は、原作をも凌駕し、すずの右手と同じようにアニメ画面として、「今はなき街並や暮らし」が再現される。そして、最後になくなった右手が我々に「お元気で」と手を振るのだ。【ストーリー】1944年広島。18歳のすずは、顔も見たことのない若者と結婚し、生まれ育った江波から20キロメートル離れた呉へとやって来る。それまで得意な絵を描いてばかりだった彼女は、一転して一家を支える主婦に。創意工夫を凝らしながら食糧難を乗り越え、毎日の食卓を作り出す。やがて戦争は激しくなり、日本海軍の要となっている呉はアメリカ軍によるすさまじい空襲にさらされ、数多くの軍艦が燃え上がり、町並みも破壊されていく。そんな状況でも懸命に生きていくすずだったが、ついに1945年8月を迎える。「長い道」「夕凪の街 桜の国」などで知られる、こうの史代のコミックをアニメ化したドラマ。戦時中の広島県呉市を舞台に、ある一家に嫁いだ少女が戦禍の激しくなる中で懸命に生きていこうとする姿を追い掛ける。監督にテレビアニメ「BLACK LAGOON」シリーズや『マイマイ新子と千年の魔法』などの片渕須直、アニメーション制作にテレビアニメ「坂道のアポロン」や「てーきゅう」シリーズなどのMAPPAが担当。市井の生活を壊していく戦争の恐ろしさを痛感する。【公開日】 2016年11月12日【製作年】 2016年【製作国】 日本【上映時間】 126分【アニメーション制作】 MAPPA【製作】 「この世界の片隅に」製作委員会【配給】 東京テアトル【原作】 こうの史代【企画】 丸山正雄【監督補・画面構成】 浦谷千恵【キャラクターデザイン・作画監督】 松原秀典【美術監督】 林孝輔【音楽】 コトリンゴ【プロデューサー】 真木太郎【監督・脚本】 片渕須直【出演】 (声の出演)のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世、牛山茂、新谷真弓、小山剛志、津田真澄、京田尚子、佐々木望、塩田朋子、瀬田ひろ美、たちばなことね、世弥きくよ、澁谷天外2016年11月17日イオンシネマ岡山★★★★☆
2016年12月04日
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11月に観た映画は全部で17作品でした。五回に分けて紹介します。この時期の特徴かもしれませんが、玉石混交です。「インフェルノ」話の筋は、「よくある話」である。厄災によって、人口を減らすことが人類の為になるのだ、という信念に固まった犯人と「正論」で相対する主人公との対決を描く。確かに人口は鼠算式に増えているので、何処かで地球は立ちいかなくなるだろう。そうなる前に、「痛み」で人類の方向転換を作るという考えに、この映画でいえば天才的な知識人ほど賛同している。ラングドン教授は主人公なので、同じ天才だけどそれには与しない。教授は「その危機意識があるならば、君が人々を目覚めさせ導けばいい」と反論する。うーむ正論だけど、あまり現実的じゃない。100年前から繰り返し使われた冒険小説の「ネタ」である。でも、未だにこんな映画が作られるということは、人類はこの課題を克服で来ていないということなのだろう。しかも、知識人ほどこういう考えに蝕められるというのは、アインシュタインも言っていることである。映画的には、フレンチェ、ヴェネツィア、イスタンブールの遺跡・美術品がこれでもかと出てくる。そういうのが好きな人には堪らない作品には違いない。私の専門は日本の古代なので、ふーんというしかなかった。■ あらすじ記憶喪失状態でフィレンツェの病院で目覚めたロバート・ラングドン教授(トム・ハンクス)は何者かに命を狙われるも、医師のシエナ・ブルックス(フェリシティ・ジョーンズ)の手引きで事なきを得る。やがて二人は、人口増加を危惧する生化学者バートランド・ゾブリスト(ベン・フォスター)が人類の半数を滅ぼすウイルス拡散をたくらんでいることを知る。彼らは邪悪な陰謀を阻止すべく、ゾブリストがダンテの叙事詩「神曲」の「地獄篇」に隠した謎の解明に挑むが……。■ 解説人気作家ダン・ブラウンのベストセラー小説を映画化した『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズの第3弾。主演のトム・ハンクス、監督のロン・ハワードが続投し、これまで数々の歴史や名画の謎を解明してきた宗教象徴学者ロバート・ラングドン教授が、詩人ダンテの「神曲」の「地獄篇」に絡んだ世界を揺るがす陰謀に挑む。ラングドンと共に謎を追う医師を『博士と彼女のセオリー』などのフェリシティ・ジョーンズが演じるほか、『ジュラシック・ワールド』のオマール・シーとイルファン・カーンらが共演。■ キャストトム・ハンクス、フェリシティ・ジョーンズ、オマール・シー、イルファン・カーン、ベン・フォスター、シセ・バベット・クヌッセン■ スタッフ監督: ロン・ハワード原作・製作: ダン・ブラウン2016年11月1日MOVIX倉敷★★★「種まく人 夢のつぎ木」まともな監督が演出して主要人物はちゃんとした役者を揃えていることもあり、ご当地映画にありがちな見るも無残な作品にはならなくて済んでいる。ご当地映画だから無理やり赤磐の主要スポットを出したり岡山市の観光スポットを出すのはまだ許せる。しかし、脚本は誰が書いたのかわからなかったが酷すぎる。思いだけが先行して、独りよがりなものになっていた。困っているぶどう農家が二三日で元気になったり、桃を諦めた畑が数日で草茫々になったり、一ヶ月数週間単位の出来事を無理やり一週間ほどでまとめていたり、リアリティがなさすぎる。その他細かい処でいろいろ気になった。それから決定的なこと。農林水産省の木村くんがいる意味が、最後までわからなかった。斎藤工抜きでも十分話は通じるのである。職人監督 佐々部清のやっつけ仕事だったと思う。美人姉妹として出ていた新人女優の辻伊吹、海老瀬はなが気になる。■ あらすじ9年前、片岡彩音(高梨臨)は女優になるという夢を追い掛けて上京する。両親亡き後は兄の悠斗が桃農家を継いで桃の栽培を手掛けていたが、ある日、兄は病に倒れ、そのまま他界する。実家に戻り、兄の悲願だった新種の桃の栽培を始めた彩音の前に農林水産省の職員木村(斎藤工)が現れ……。■ 解説『わたしのハワイの歩きかた』などの高梨臨と『虎影』などの斎藤工が共演する、『種まく旅人』シリーズ第3弾。岡山県赤磐市の桃農家を舞台に、兄の遺志を継ぎ帰郷して新種の桃栽培に挑戦するヒロインの奮闘を描く。メガホンを取るのは『ツレがうつになりまして。』『群青色の、とおり道』などで知られる佐々部清監督。人間ドラマを得意とする佐々部監督のタクトで、高梨や斎藤らが見せるストーリー展開に期待。■ キャスト高梨臨、斎藤工、池内博之、津田寛治、升毅、吉沢悠、田中麗奈、永島敏行、井上順、辻伊吹、海老瀬はな、安倍萌生、川藤幸三■ スタッフ監督: 佐々部清2016年11月1日MOVIX倉敷★★「暗殺」久しぶりの韓国映画。相変わらず、最後まで二転三転の飽きさせない作りは流石である。そして、今回は国民的感情を刺激する抗日独立運動に関わる暗殺者たちの暗躍を扱っているので、(韓国映画にありがちなよく失敗するパターンの)情に流されて 脚本的に破綻する場面がほとんどない。祝日の営業なのに、シネマクレールには20人もいなかった。反日映画であることが反映しているのか?韓国アイドルが出ていないせいか?九割が男だった。日本の観客の成熟度もまだまだ課題がある。反日と言いながら、日本の軍人はあっさり殺されるので、実は「反日色」は薄い。きちんと演技するのは、当初は独立闘志だったヨムが裏切り者として転向し、最後まで悪人として立ち回る他、日本に寝返った韓国商人など、韓国人にとっての「近親憎悪」の描写が多いのだ。そもそも戦前の韓国を扱って抗日を扱わない方がおかしいというべきだろう。基本エンタメなので、そんなに史実を元にしてはいないのだが、キム・グ(金九)などの韓国内では有名な抗日闘士が顔出しで出ているのは、映画・ドラマで見たことなかったので新鮮だった。また、昭和時代のロケ施設を全面的に使ってはいると思うが、相変わらず韓国の昭和モノはセットをつくるのが上手いと思う。美術は素晴らしかった。ただ、日本語の発音でスムーズなのは一言もなかった。いくら日本の公開を意識していないとしても、これは酷い。(解説)1930年代の上海と京城(現ソウル)を舞台にしたアクションサスペンス。日本政府要人と親日派の暗殺任務を負ったスナイパー、速射砲の名手、爆弾のプロに待ち受ける運命を活写する。メガホンを取るのは、『10人の泥棒たち』などのチェ・ドンフン。『猟奇的な彼女』などのチョン・ジヒョンが美貌の天才スナイパーを演じ、その脇を『ビッグマッチ』などのイ・ジョンジェ、『テロ,ライブ』などのハ・ジョンウらが脇を固める。二転三転するスリリングな展開や、壮絶なガンファイトにも注目。(ストーリー)1933年。中国杭州に作られた韓国臨時政府は、日本政府要人と親日派の暗殺計画を進める。その実行を、独立軍最強のスナイパーとうたわれるアン・オギュン(チョン・ジヒョン)、速射砲の名手、爆弾のプロに命じる。三人の招集を任された臨時政府警務隊長にして日本政府の密偵でもあるヨム・ソクチン(イ・ジョンジェ)は、臨時政府を裏切って計画の阻止を決意。殺し屋ハワイ・ピストル(ハ・ジョンウ)に、オギュンらを消すように依頼する。そんな陰謀がうごめいているのを知らず、上海から京城へと潜入したオギュンたちは……。2016年11月3日シネマクレール★★★★「白い帽子の女」彼らが離婚する一年前に撮りあげた作品だからこそ、の作品である。アンジェリーナ・ジョリー・ピット製作・出演・脚本・監督、ブラッド・ピット製作ということからもわかるように、何から何まで2人のことを2人によって2人の為に作られた作品のように感じた。あまりにも時がゆっくり流れるので、最初少し意識が飛んでしまったけど完全ノープロブレムだった。一応2人には何か謎があるかのような構成で始まるけれども、時々起きるアンジーのフラッシュバックによって、2人の問題は直ぐに推察がつく。これで2時間持たせようという方が無理ということでおそらくあらゆる国で低評価だったろうと思う。しかし、2人の離婚があったおかげで、この作品を離婚の危機にあった2人の役者と製作者の共同作業になっていると、観客が想像することで、とんでもなく「奥深い」作品に変貌するのである。脚本的には「2人の過去にあった出来事で妻が精神不安定に陥り、夫がそれをサポートすることでなんとか乗り越える」話になっていて、アンジーは大袈裟なくらいの焦燥した顔を見せる。しかしこれは、アンジーの脚本なのだ。実際は、「妻と夫の立場は逆転していて、夫の裏切りをアンジーはサポート仕切れなかった、ホントはこの撮影が最後のチャンスだったのに、ブラッドはそれを活かしきれなかった」と見るのが正しいのかもしれない。と私は推理する。それにしても、改めてヨーロッパ人のヴァカンスはホントに何もしない優雅なものなのだ。あんなマルタ島で一ヶ月ほど暮らしたい。いいなあ。(解説)交際のきっかけとなった『Mr.&Mrs. スミス』以来となる、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー・ピット共演のラブストーリー。1970年代の南仏を舞台に、あることがきっかけでそれぞれの殻に閉じこもった夫婦の関係を映す。『ミモザの島に消えた母』などのメラニー・ロランや、『わたしはロランス』などのメルヴィル・プポーらが共演。監督も務めるアンジーをさまざまな側面で支えたブラッドとの力作に注目。(ストーリー)1970年代、アメリカ人小説家ローランド(ブラッド・ピット)と妻ヴァネッサ(アンジェリーナ・ジョリー・ピット)は、バカンスで南仏を訪れ、海辺近くのリゾートホテルに滞在する。ある出来事によってお互いすれ違ったまま、夫は村のカフェに通い詰め、妻はホテルに引きこもっていた。そんなとき、ハネムーンで若い男女(メルヴィル・プポー、メラニー・ロラン)が隣室にやってきて……。2016年11月3日シネマクレール★★あるいは★★★★
2016年12月03日
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先月に観た映画、最後の四作品です。「怒り」この主演女優は誰になるのだろう。是非とも宮崎あおいに渡して欲しい。彼女の気持ちだけが、人の気持ちの中がわからない登場人物ばかりのこの作品の中で、1番輝いていた。あらすじはわかった。テーマもなんとなくわかった。しかし、観客の我々に何を思えというのだろう。あれだけの材料でいったい何がわかるというのか。しかもご丁寧に、全員黒子の跡があるじゃないか。残念ながら、今年を代表する作品にはなり得ない。■ あらすじ八王子で起きた凄惨(せいさん)な殺人事件の現場には「怒」の血文字が残され、事件から1年が経過しても未解決のままだった。洋平(渡辺謙)と娘の愛子(宮崎あおい)が暮らす千葉の漁港で田代(松山ケンイチ)と名乗る青年が働き始め、やがて彼は愛子と恋仲になる。洋平は娘の幸せを願うも前歴不詳の田代の素性に不安を抱いていた折り、ニュースで報じられる八王子の殺人事件の続報に目が留まり……。■ 解説『横道世之介』『さよなら渓谷』などの原作者・吉田修一のミステリー小説を、『悪人』でタッグを組んだ李相日監督が映画化。現場に「怒」という血文字が残った未解決殺人事件から1年後の千葉、東京、沖縄を舞台に三つのストーリーが紡がれる群像劇で、前歴不詳の3人の男と出会った人々がその正体をめぐり、疑念と信頼のはざまで揺れる様子を描く。出演には渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、宮崎あおい、妻夫木聡など日本映画界を代表する豪華キャストが集結。■ キャスト渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、佐久本宝、ピエール瀧、三浦貴大、高畑充希、原日出子、池脇千鶴、宮崎あおい、妻夫木聡■ スタッフ監督・脚本: 李相日2016年10月16日Movix倉敷★★★★「七人の侍」午前10時の映画祭で「七人の侍」鑑賞。映画館で観るのはこれで3回目。前回観たのは水島プラザのさよなら興行だったから、もう30年近く前で、今回の4K映像と比べて画質も音も全然違って割れていた。今回も一切退屈すること無く3時間30分を楽しんだ。今回感じたのは、1954年作品ということで、やはりまだまだ色濃く戦争の影が残っているということだ。志村喬の「恋女房」と言われる加藤大介と再会した時、話は前回の戦争時の「九死に一生を得た」話になってしまう。しかし、志村が「今度こそ死ぬかもしれない」といいながらも戦への参加を願うと、加藤大介は二つ返事で参加するというのである。そこには、同じ死線を彷徨ったものだけが持つ、二度と離れたくない独特の感情がある気がする。三船敏郎は、20歳ぐらいの設定だろうか、水車小屋の場面で、戦災で独り生き残った孤児であったことが分かる。この頃は戦災孤児がちょうど次々と大人になっていた頃だろう。また、戦争前の緊張を解きほぐす幾つもの知恵を侍たちは縦横に示す。当時の知識人である侍と、庶民の百姓の間を埋める溝は最後まで埋まらない。その溝を埋めつつあったのは、やはり百姓出身の偽侍の三船敏郎と、明るい話術と人情で確実に百姓に溶け込んでいた千秋実の2人だったが、千秋実の方は最初の犠牲者となり、この時だけは百姓全員が涙に暮れていた。また、三船敏郎は最後の敵の1人を倒して死に絶えた。今回参議院でも、遂には庶民に市民運動の願いや前衛党の運動は充分に届かないで、投票率は微増に終わった。侍たちは命をかけたのに、なぜ二つの溝は埋まらなかったのか。いや違う。あの戦いは、侍と百姓の連携が百パーセントできていたと捉えるべきなのかもしれない。一つの目的がしっかりと共有されている時、庶民と知識人との共闘はうまくいくが、それがずっとは続かない。と見るべきなのかもしれのない。2016年10月23日TOHOシネマズ岡南★★★★「バースデーカード」ありがちなストーリーだけど、別に映画的なすごいロケや、仕掛けも無いし、豪華な俳優陣というわけでもないけど、しっとりと見させて、満足を感じる作品だった。宮崎あおいの目力は、優しい目をしている時も健在。若いお母さんをきちんと演じていた。弟役の須賀健太が、ちゃんと胡椒役を演じていた。いい役者になりつつある。(解説)他界した母から娘に毎年届くバースデーカードを通して母娘の深い絆を描く人間ドラマ。カードに託された母のメッセージを受け止め、人生を切り拓いていく主人公に、『リトル・フォレスト』シリーズなどの橋本愛がふんし、少女から大人の女性へと成長していく心の機微を表現する。成長を見届けることができない子供たちへ手紙を書き残す母を宮崎あおいが演じるほか、父役でユースケ・サンタマリア、弟役で須賀健太が共演。『旅立ちの島唄 ~十五の春~』などの吉田康弘がメガホンを取る。(ストーリー)紀子が10歳のとき、自身の余命を悟った母・芳恵(宮崎あおい)は子供たちが20歳になるまで毎年手紙を送る約束をして亡くなる。生前の約束通り彼女のもとに届く母からのバースデーカードには、人生を輝かせるヒントなど内気な娘を思う母の愛情があふれていた。やがて紀子(橋本愛)が20歳を迎えた最後の手紙には、10年前に彼女が投げかけた質問への返事が記されており……。2016年10月23日TOHOシネマズ岡南★★★★「スター・トレック BEYOND」このシリーズには、至る処に「地球時代」のエピソードが散りばめられる。今回は、オフロードバイクと(この時代ではかなりのクラッシックらしい)ロック音楽が然りである。その二つとも作品の中でかなり重要なアイテムとなる。また、「戦争によって平和をもたらす」という価値観と、「既に戦争は無くなった」世界の価値観とがぶつかり合う。これも今回の特徴である。しかし、エンタメ映画の為に深められることはなかった。ただ、世界の警察官たるアメリカで、こういう世界観がずーと愛されていることは素晴らしいと思う。でも、スポック大使ってスポックの未来から来た人じゃなかったけ。なんかよくわかっていないのは、私だけ?■ あらすじカーク船長(クリス・パイン)率いるエンタープライズ号は、未踏の星に不時着した探査船を捜索していた。すると突然、謎の異星人・クラール(イドリス・エルバ)がエンタープライズ号を襲撃。カークたちは脱出するも、艦は墜落し、クルーは散り散りになってしまう。不時着した見知らぬ惑星で、カークは約100年前に消息を絶ったエディソンが乗艦していたフランクリン号を発見。そこには、あるものが残されていた。■ 解説長年人気を誇るシリーズをJ・J・エイブラムスが再構築したシリーズの第3弾で、エンタープライズ号クルーによる宇宙の最果てでの戦いを活写したSFアクション。未知の領域を探索していたクルーが、彼らの存在意義を問う敵の登場により、新たな戦いに導かれる姿が描かれる。J・J・エイブラムスは製作に回り、『ワイルド・スピード』シリーズなどのジャスティン・リンがメガホンを取る。クリス・パイン、ザカリー・クイントや2016年に急逝したアントン・イェルチンらが前2作に引き続き出演している。■ キャストクリス・パイン、ザカリー・クイント、ゾーイ・サルダナ、サイモン・ペッグ、カール・アーバン、アントン・イェルチン、ジョン・チョー、イドリス・エルバ、ソフィア・ブテラ、ジョー・タスリム■ スタッフ製作: J・J・エイブラムス監督: ジャスティン・リン脚本: サイモン・ペッグ2016年10月30日Movix倉敷★★★★
2016年11月06日
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中盤の三作品である。「ジェイソン・ボーン」彼が身を潜めていたのは難民キャンプだったり、ギリシャ危機の暴動的な集会を全面的にパクって「背景」として使ったり、「スノーデン級のハッキングだ」というセリフがあったり、世界的なSNSをCIAが密かに盗むことを画策しているのが、全てポール・グリーングラスらしさだった。社会派を気取ったエンタメ或いはエンタメを利用した社会派(しかしあの場面、ギリシャ国民は激怒しないのだろうか)。しかし、あそこまで面割れしているボーンが世界を股にかけて(特にアメリカ国内を)歩けるのが不思議だったり、ちょっとおかしなところはある。確かにこのままでは密かに暗殺されるし、だからといって全面的にCIAに戻るのは元の木阿弥というボーンの葛藤はわからないではない。そういう意味では、超人ボーンは、既に「カムイ伝」のカムイの位置づけなのだ。しかし、このボーンには正助はいない。つまり、グリーングラスに「外伝」は作れても、本伝を作る度胸はない。■ あらすじひっそりと暮らしていたジェイソン・ボーン(マット・デイモン)の前に、CIAの同僚だったニッキー(ジュリア・スタイルズ)が姿を現す。彼女はCIAが世界中を監視・操作するための極秘プログラムを立ち上げたことと、ボーンの過去にまつわるある真実を告げる。これをきっかけに、再び動き始めたボーンの追跡を任されたCIAエージェントのリー(アリシア・ヴィキャンデル)は、彼を組織に取り込もうとするが……。■ 解説記憶を失った暗殺者ジェイソン・ボーンの孤独な戦いを描くスパイアクションシリーズの第5作。シリーズ第2作、第3作を手掛けたポール・グリーングラス監督と主演のマット・デイモンが再びタッグを組み、自身の隠された過去の秘密をめぐり、ボーンが新たな戦いに身を投じるさまが展開する。CIAの元同僚役でジュリア・スタイルズが続投するほか、オスカー女優アリシア・ヴィキャンデル、『トランス』などのヴァンサン・カッセル、ベテランのトミー・リー・ジョーンズらが出演。■ キャストマット・デイモン、ジュリア・スタイルズ、アリシア・ヴィキャンデル、ヴァンサン・カッセル、トミー・リー・ジョーンズ■ スタッフ監督・脚本・製作: ポール・グリーングラス脚本: クリストファー・ラウズキャラクター原案: ロバート・ラドラム2016年10月13日Movix倉敷★★★★「永い言い訳」いつもマイベストに入り込む西川作品なので期待値を上げて鑑賞したのだが、いつもの切れ味はなかった、という気がする。「ゆれる」以降、西川の真骨頂だった登場人物のゆれる心情が、今回は常に側に子供がいる事で予定調和になってしまった。主人公たちは確かに揺れてはいるが、落としどころが透けて見えるのである。また、主人公は作家であり、今回はかなり監督の分身に近い気がする。そういう意味でも、今ひとつ客観視できなかったのでは。主人公が常に小説のためのメモ帳を持っていて、印象的なセリフをメモしているのは、実は西川自身の習慣である。この前テレビで見た。彼女はこのノートを「私の武器だから」と言っていた。映画の中では、これが重要な役割を持つ。最初のメモする場面ではきっちり楷書で書いていた。最終盤、子どもに助言するために言っていた言葉を思いついて、帰りの電車で(初めて)泣きながら書いていた文字はチャラ書きだった。本木も竹原も、演技的には文句はない。子供たちもすごいと思う。むしろ、あまりにも自然でびっくり。と思ったら、企画協力に是枝監督の名前があった。(解説)『ディア・ドクター』などの西川美和が、直木賞候補となった自らの小説を映画化。『おくりびと』などの本木雅弘を主演に迎え、交通事故で妻が他界したものの悲しみを表せない小説家が、同じ事故で命を落とした妻の親友の遺族と交流を深める様子を映す。共演は、『悪人』などの深津絵里とミュージシャン兼俳優の竹原ピストル。繊細で鋭い心理描写に定評のある西川監督によるストーリー展開に注目。(ストーリー)人気小説家の津村啓こと衣笠幸夫(本木雅弘)の妻で美容院を経営している夏子(深津絵里)は、バスの事故によりこの世を去ってしまう。しかし夫婦には愛情はなく、幸夫は悲しむことができない。そんなある日、幸夫は夏子の親友で旅行中の事故で共に命を落としたゆき(堀内敬子)の夫・大宮陽一(竹原ピストル)に会う。その後幸夫は、大宮の家に通い、幼い子供たちの面倒を見ることになる。2016年10月14日TOHOシネマズ岡南★★★☆「続・夕陽のガンマン(午前10時の映画祭)」初見である。とっても面白かった。現在のイーストウッド監督の面白さに通じるような、淡々としているけれども、随所に工夫を感じる、エンタメ要素がふんだんにある。流石、セルジオ・レオーネはイーストウッド監督の魂の師匠だけある。セルジオ・レオーネ&クリント・イーストウッドのゴールデンコンビが放つマカロニ・ウェスタンの金字塔!<キャスト&スタッフ>ブロンディー…クリント・イーストウッドエンジェル…リー・ヴァン・クリーフトゥーコ…イーライ・ウォラック監督:セルジオ・レオーネ製作:アルベルト・グリマルディ音楽:エンニオ・モリコーネ<ストーリー>南北戦争の混乱の中、賞金稼ぎのブロンディーは賞金がかかった悪党と手を組んで荒稼ぎをしていた。そんな折、巷で話題になっていた20万ドルを盗み隠した男の死に際に出会う。たった一人隠し場所を訊いたブロンディー。だが彼の周りには軍隊、賞金稼ぎ、賞金首の男……それぞれの男たちの欲望が、友情と裏切りの狭間で死闘を繰り広げるのだった。果たして20万ドルは本当にあるのか? 最期に手にするのはいったい誰なのか……?2016年10月20日TOHOシネマズ岡南★★★★
2016年11月05日
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今回10月に観た作品は全部で10作品でした。三回に分けて紹介します。「ストリートオーケストラ」オリンピックで注目されたブラジルの貧困VS音楽という芸術教育の効果。期待した分、肩透かしを食った。もっとしっかりとしたドラマがあるのかと思った。実話かどうか、が問題なのではない。彼らの演奏は本物かもしれないが、最も肝心な事故が起きたあとの教室がまとまった瞬間をドラマで映さなかったのは、致命的。(解説)挫折したバイオリニストがブラジルのスラム街に暮らす学生たちに音楽を教え、やがて交響楽団を誕生させた実話を基にしたドラマ。教師となった主人公が屋根もない教室で楽譜の読み方から教え始め、やがて才能を開花させる生徒たちと共に苦難を乗り越えて演奏会を目指すプロセスが描かれる。監督は、『セントラル・ステーション』やテレビ映画などに携ってきたセルジオ・マシャード。胸を打つストーリーと、クラシックやブラジル人ミュージシャンによるラップなど物語を彩る音楽に注目。(ストーリー)バイオリニストのラエルチ(ラザロ・ハーモス)はサンパウロ交響楽団の最終審査に落ちてしまい、仕送りや家賃のためにスラム街の学校でバイオリンを教えることにする。しかし教室は屋根もなく、生徒は意欲的なサムエル(カイケ・ジェズース)を除いて問題児ばかり。ある日、ギャングに脅されたラエルチが見事な演奏で彼らを黙らせたことから、生徒たちも音楽の力を実感し、熱心に取り組むようになるが……。2016年10月2日シネマ・クレール★★★「生きる」(午前十時の映画祭)昭和27年の東京の歓楽街の描写が新鮮。7年前には焼け野原だったはずなのに、ホントに数年であそこまでモダンにポップに建て直しているわけだ。30年勤めていた役所の機構もそうだが、戦前と戦後は、戦中を例外として、確かに連続していたのだなと思う。物語の大筋を知っているので、葬式の場での種明かしは少し退屈する。しかし、公開当時は、あそこで涙腺をいくらでも絞ったのに違いない。小田切みきが、私の記憶よりも遥かにまるまる太っていてびっくりした。そして上手い。(説明)無気力な日々を過ごしてきた公務員の渡辺(志村喬)は、ガンで後半年の命と知らされ、恐れおののき、嘆き悲しんだ末、市役所に懇願する人々の願にこたえて公園を作ろうと努力していく…。 黒澤明監督が、人間の尊厳を高らかにうたい上げたヒューマン・ドラマの傑作。そこにはどんな者であれ、人はここまで高められるのだという希望と同時に、ルーティンワークに甘んじる体制社会、およびそこに安住する人々への痛烈な批判も込められている。黒澤映画のいぶし銀、志村喬の代表作。自由奔放にふるまう部下のとよ(小田切みき)との交流の数々もせつなく印象的だ。後半、いきなり主人公の葬式シーンへと飛躍し、周囲の者が彼について回想し始めていくという構成も、実に大胆かつ秀逸。最期に主人公が公園で歌う流行歌『ゴンドラの歌』は、本作の功績によって今ではスタンダードな名曲として讃えられている。(的田也寸志)内容(「Oricon」データベースより)ガンに冒され自分の死期を知った男が、僅かに残された人生をどう生きたか。勇気と無残さの入り混じるその残照を重厚に描いた故黒澤明監督の代表作のひとつ。監督・脚本: 黒澤明 脚本: 橋本忍/小国英雄 撮影: 中井朝一 音楽: 早坂文雄 美術: 松山崇 出演: 志村喬/小田切みき/小堀誠/金子信雄/千秋実/菅井きん/宮口精二/加東大介2016年10月6日TOHOシネマズ岡南★★★★「聲の形」「君の名は。」の真逆の、ストレートな少年ドラマを扱ったアニメ。原作ありき、むしろあまりにも原作に忠実。そして、絵も人物の表情にはジブリ以上に繊細な表現をしているけど、それ以外はあまりみるべきものはない。それだけに、かえって微妙な少年少女の気持ちの揺れを実写以上に写し取ったのかもしれない。公開三週間目にもかかわらず、何と土曜日昼間のハコが満員になっていた。障がい者との向き合い方や、単にイジメを加害・被害の立場から描かない立体的な描き方が、とても誠実。西宮硝子があそこまで追い込まれていたのが、どうも説得力不足の面があり、そこだけは瑕疵かな。もちろん、私泣かされました。因みに、このあとマンガを読んだ。その感想はここにある。■ あらすじ西宮硝子が転校してきたことで、小学生の石田将也は大嫌いな退屈から逃れる。しかし、硝子とのある出来事のために将也は孤立し、心を閉ざす。5年後、高校生になった将也は、硝子のもとを訪れることにし……。■ 解説元ガキ大将の主人公と聴覚障害があるヒロインの切ない青春を描いた大今良時のコミックを基に、『けいおん』シリーズなどの山田尚子監督が手掛けたアニメーション。主人公の少年が転校生の少女とのある出来事を機に孤立していく小学生時代、そして高校生になった彼らの再会を映し出す。アニメーション制作を京都アニメーション、脚本を『ガールズ&パンツァー』シリーズなどの吉田玲子が担当。ボイスキャストには入野自由と早見沙織らが名を連ねる。2016年10月8日Movix倉敷★★★★
2016年11月04日
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県労会議機関紙に掲載された今月の映画評です。12月に公開される「スターウオーズ」のスピンオフ「ローグ・ワン」も実は「七人の侍」ジャンルではないかと予測しています。「七人の侍」 年に一度は「映画館で映画を観よう」と、呼びかけることにしています。「午前十時の映画祭」として10月22日より2週間TOHOシネマズ岡南で上映されます。 四方田犬彦によれば、映画にロード・ムービーやグランド・ホテル形式というジャンルがあるように、「七人の侍」ジャンルというのがあるといいます。(1)圧倒的な敵の脅威に晒されている気弱な共同体がある。(2)共同体を支援するために、外部から助っ人が駆り集められる。(3)助っ人は「無用な人」で「強烈な個性」を持つ。卓抜な指導者のもと、全員がまとまり、大きな力を発揮。(4)激しい戦闘のあとに、敵は敗北、共同体を守り抜く。(5)生き残った助っ人は、死んだ同胞のために喪に服す。 この特徴は、確かにこの作品以降世界の映画で見られます。それが5人だったり(「シコふんじゃった」)、11人(「少林サッカー」)だったり様々で、去年もナチスの盗んだ絵画を取り戻す部隊を描いたジョージ・クルーニー主演「ミケランジェロ・プロジェクト」という快作が生まれています。世界の古典たる所以でしょう。 この作品の公開当時の予告はこうでした。「時は戦国。ある山間の小さな村に侍の墓が四つ並んだ。野心と功名に憑かれた狂気の時代に、全く名利を顧みず哀れな百姓達のために戦った七人の侍の話。彼らは無名のまま風のように去った。しかし、彼らのやさしい心と勇ましい行為は今なお美しく語り伝えられている。彼らこそ、侍だ!」最初、黒澤明監督もこのイメージで脚本をつくりました。だから、映画を観た人も、七人を「英雄」と勘違いしている人が多いと思います。その人は是非、もう一度観て欲しい。途中で脚本が変わっているのです。百姓達は「哀れな」わけではなかった。侍は「美しく語り伝えられて」はいません。 207分の映画を大画面のスクリーンで集中して観る経験は、様々な「再発見」を、必ずもたらすはずです。 この作品が生まれた1954年は、奇しくも「ゴジラ」「君の名は第三部」が封切られた年でもあります。今年二つの同じ名前を持つ作品が大ヒットして因縁を感じます。公開当時は、情勢の影響を受けて再軍備宣伝映画と批判されたそうです。むしろ、私はこの作品から、抵抗組織のあり方、戦争との向き合い方など、現代にも通じるテーマを感じるのです。(1954年作品、レンタルも可能)
2016年10月17日
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