FFいれぶんのへたれな小説とか

FFいれぶんのへたれな小説とか

January 25, 2005
XML
カテゴリ: 七番目の魔法塔
 ジュノが栄える大きな要因として、交通の利便性がある。飛空挺により三国間を安全かつ高速に行き来できるという利点は大きい。駆け出しの冒険者にとっては空に浮かぶその姿を眺めることしか出来ないが、中級の冒険者くらいになると、自由に飛空挺で各国を飛び回ることも出来るようになる。トコもLSの仲間達と共に、飛空挺から見渡せる風景を楽しんでいた。
 昔は恐ろしかったジュノへの道のりも、大空から見下ろすとちっぽけなものに見えた。冒険者として成長したと思えるのは、こう言った瞬間なのだとつくづく思う。
 時間は静かに流れ、やがていつか踏みしめた時を振り返るときが来る。苦労した時も、涙した時も、笑って思い出せる今があるなら、決して悪いものじゃない。
 そんな感慨を思い浮かべている間に、飛空挺は徐々にその高度を落とし、水しぶきを上げてウィンダス港に着水する。我先にと飛び出す冒険者達をしばらく待った後、甲板に上がるジュノへの冒険者と一礼を交わし、石の区を目指した。
 盛況な水の区や森の区と違い、石の区はウィンダスに暮らす国民の姿の方が多い。今日も意気揚々と演説を語るおじさんや、ガーディアンと呼ばれる自律型人形の周りを不思議そうに駆け回る子供など、国政のお膝元であるはずのこの区画は、国柄を象徴するようにのどかな光景が広がっている。大戦時の傷跡をあえてそのまま修復せずに、孤島となってしまった小島同士を橋で繋いだ水と緑の区画。なるほど魔法と自然の国ウィンダスの中心としてはこれほどふさわしい場所も無い。
 しかしそのほのぼのとした気分も、目的の家が近づくに連れ、寒々とした気分へと変わって行った。
「・・・ね~、やっぱ行かなきゃ駄目かな?」
「あの人の場合、行かなきゃ行かないで呪い殺されるんじゃないかなぁ・・・」
「行ったら行ったで直接魔法でやられそうだけどな」
 物騒なヒトとルーツの言葉に怯えているトコを尻目に、ツィンがゆっくりと戸を開ける。既に進退窮まったトコは、凍ったようにその場に直立不動したまま、ゆっくりと開く木製の扉を見つめていた。
「御免、シャントット博士殿はご在宅か」
 その言葉に、広い一室の中心に佇むシャントットはゆっくりと玄関口に並ぶトコ達の方を振り返った。金髪の髪を両側で結び、黒いローブに身を包んだ可愛らしい出で立ち。しかしその外見と内面が全く一致していないことは、冒険者の間では周知の事実だ。
「あら、また冒険者の方かしら。やる気があるのはいい事ですけれど、数ばかりで成果の一つも持って帰られない方が多すぎるのは困り者・・・」
 愚痴のようなものをこぼしかけたシャントットだったが、ツィンの大きな足に隠れるように見つめるトコの姿を見つけると、そこで言葉を止めた。
「あら、確かアナタ。前に黒色クリスタルを持ってきて下さった方かしら?」
「は、はい!トコと言います」
「冒険者の名前なんてどうでもよろしくてよ。それにしても、あなた随分精度の悪い時計を持っていらっしゃるようね」
 じろりと睨まれ、思わず後ずさる。
「・・・まぁよござんす。頼みたい仕事というのは他の冒険者の方と同じ内容ですわ」
 肩で息をつくと、シャントットは早速仕事の説明へと移った。
「先日あなたが見つけてきたこの黒色クリスタル。これはどうやら最近になって出現した新たなホルトト遺跡に眠っているものではないか、という事ですのよ」
 シャントットは懐から先日トコが見つけたものであろうクリスタルを取り出した。わずかであるが、先日見たときよりも漏れ出す淡い輝きが強まっているような気がする。
「あなた方にはあの遺跡の調査、そしてこの黒色クリスタルを探し出してきて欲しいんです」
「幾つか聞きたいことがあるんですが、いいでしょうか」
 そう言ってヒトは一歩前へと出る。
「まず最近になって新たなホルトト遺跡が見つかったというのは?」
「それについては、どうやらその遺跡は何者かの魔法によってその入り口である魔法塔がカモフラージュされ、その存在を見つけることが出来なかったようなのですのよ。ですけどね、20年前の戦争の時にホルトト遺跡のいくつもの装置が大きく損傷した影響か、最近になってその効力が薄まり、まるで突如として出現したかのようにその姿を現したと」
「ふむ・・・。ではその遺跡とそのクリスタルに、何か関係は?」
「マァわたくしはおおよその見当はついてますけれど、関係はある、とだけ言っておきましょうか」
 彼女にしては珍しく言葉を濁すシャントットの態度に疑問を感じたヒトだったが、それを問いただすことはしなかった。
「最後に一つだけ。その遺跡の調査に関わった冒険者の一部が、行方不明になっていると言うのは?」
 その言葉に、シャントットは口元をにやりとさせた。
「それを調べるのも、あなた方冒険者の仕事でなくて?」





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  January 26, 2005 01:23:19 PM
コメント(0) | コメントを書く
[七番目の魔法塔] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: