FFいれぶんのへたれな小説とか

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February 19, 2005
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「小生は、パクヤナクヤと申す者です。龍王様の墓守をさせて頂いております」
 駆け寄ってきたタルタルは、お辞儀をしながらそう名乗った。膝元くらいしかない彼を、ユウイチはどうしたものかと、頬を掻きながら見下ろしている。
「あー、俺はユウイチ。で、こっちはナギサ」
「これはこれはご丁寧に。で、ユーチーさん」
「ユウイチだっ!」
 早速名前を間違えられ、ユウイチは声を荒げる。パクは詫びる様子も無く、両手を掲げる。
「そこの美しいお嬢さんも、お聞きくださいな。実は小生、今日この頃悩みに明け暮れ、眠れない夜を幾度と無く過ごす次第でありまして」
「……どうでもいいけど、パク、あなた話し方が仰々しいわね。年寄りくさいと言うか」
 そう言い放ち、ナギサはじと目でパクを見下ろす。すると、パクは不思議そうに小首をかしげた。
「恥ずかしながら、小生も随分長く生きながらえておりますから」
「長くって。あなた、いくつなの?」
「この世に生れ落ちて、かれこれ50の年月を数えましたかな」
 ナギサとユウイチはぎょっと顔を見合わせる。タルタル族はある程度成長すると外見が変わらなくなるが、子供にしか見えない外見でナギサ達の倍以上生きていると言われると、改めて驚きを感じる。
「まあ、そんな事はよいのです。問題は、ここ最近夜な夜な徘徊するダークストーカーの事でありまして」
「DSが?」
 ダークストーカーとは、生前腕を磨いたエルヴァーンの亡霊の総称である。主にエルディーム古墳や氷河の遺跡などでその姿を目撃されるが、ここ龍王の墓では見たことがない。その理由は諸説あるが、遺体の腐敗や損傷が激しいとゴーストやスケルトンになってしまうと言うのが有力な説である。そして、それらアンデットとダークストーカーの違いは見た目だけではない。死の間際に身に着けていた強力な武具や、より強く残った残留思念からくる剣技の高さなど、その戦闘能力は他と一線をなす。
「あんた、さっきのを見ると結構腕が立つみたいだけど、そのDSはそんなに強いのかい?」
「それもあるんですが、ユーガスさん、そのDSがまた特殊でありまして……」
 ユウイチは名前を訂正しようとするが、他種族の名前は覚えにくいのか、パクは片っ端から間違えてみせた。ナギサは嘆息しながら、話を戻そうとする。
「で、そのDSがどうしたっていうのよ」
「よくぞ聞いてくださいました! ナギサさんっ!」
「おい、なんでナギサの名前は間違えないんだよ!」
「美しいものの名前は、自然と頭に入ってくるものなのですっ」
 ぐっとこぶしを作り、パクは力説する。なおも食って掛かろうとするユウイチを、ナギサは手で制する。このままでは話が進まない。
「で?」
「おっと、小生としたことが……。実はですね、最近になって龍王様の眠るこの聖地に、こっそりと墓を立てた不埒な輩がいることが判明したのですっ」
 がっくりと肩を落とすパク。墓守と名乗った事をはじめとする話の内容と、強力な白魔法。本当に落胆する様子が見て取れる。
「その墓には名も刻まれておりませんで、他の方はただの石ころと思われたのでしょうな。しかしどんな些細なことも見逃す小生ではありません。それが墓だと推測するに足る証拠を幾つか見つけまして、これは一大事だと、小生その墓をさらに詳しく調べていたのです。すると……事もあろうに!DSが怒涛の勢いで切りかかってまいりましてっ」
 一々大げさに身振り手振りを交えて話すが、その小さな体と甲高い声ではもう一つ緊張感に欠けるなと、ナギサは苦笑する。
「小生も白魔法の心得が多少ありまして、応戦したのですがその剣技や烈風のごとく。命からがら逃れたのですが、明晩再び訪れたそこには、供物を手向けるDSの姿があったのです」
「アンデットが墓参りしてたってのかよ」
「それはわかりません。しかし小生、これは何か事情がありそうだなと躊躇ってしまったのも事実。そこで助っ人を頼もうとしていた所に、あなた方が現れた次第なのです。見た所あなた方は腕の立つ冒険者のご様子。いかがでしょう、龍王様の墓の平穏を守るのを手伝って頂けないでしょうか」
「まあ、報酬貰えるなら俺は構わ――」
「……条件があるわ」
 二つ返事で頷こうとするユウイチの言葉を遮って、ナギサが前に出る。その勢いに気圧されたのか、パクは少し後ずさる。
「あたし達、ここで探し物をしてるの。サンドに住んでるお婆さんの持ち物。グリフィンが描かれた古いティーカップとか、年代物の装備品とか。見たこと無いかしら」
「えっ、もしかして、墓荒らし!?」
「……違うわよ。落し物探しってところかしら」
「ふむ……そうですか。ティーカップ……」
 そのまま横に転倒しそうなほど、首をかしげながら考え込む。ふと、その大きな頭が中空で止まる。
「それならば、小生の悩みを解決して頂ければ手掛かりが掴めるかもしれませんっ」
「と、言うと?」
「何を隠そう、そのDSが備えていたのは、ウィンダス茶葉だったのですよ! ああっ、運命の因果の臭いがぷんぷんと小生には感じられますっ」
 その言葉に、思い当たる。ウィンダス茶葉は、その名の通りウィンダス産の高級茶葉。それを発酵させたものは、サンドリアティーの原料になる。
 やってみる価値はある。ナギサはそう判断を下した。





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Last updated  February 23, 2005 04:50:37 PM
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