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クリスマス、、食べ過ぎか~爽快だったのは、有馬記念。 ディープインパクトの走りラストランとなったディープ。 我家ではパートナーが100円(セコ!)で9600円ほど当てた。「ケーキ買ってくるか?」勘弁して~昨日ホットケーキにアイスとモンブランクリームがのったアレ(不二家)とショートケーキ夜あんみつと・・・今日ラムレーズンアイスを(いただきもの)食べたよって、もう赤信号。 やっぱり師走。 でも12月31日から寝て、起きるだけのこと。主婦は正月も何かと忙しい~ 今日は、パソコンが重くてダメだ~。蹴飛ばしたの何回? ん? 脚が痛い位。長い文章(ラストシーン)を書いても、写真が出ない!登録が押せない! ボタンひとつに振り回されてストレス細胞増やした。しばらく、お休みしようと思う。なんか、私ってやっぱり「天然」なんかな~可笑しな性格! 変わり者? アンバランスでチグハグ。 一日でこんなに心が変るなんて。 同年の女性の方、どうでしょう? 不安定なのは?・・・・ やっぱ性格? けっこう周囲、傷つけてるんだろうか? 普通にしてるのに。 これが私なのに。 自然でしかいけないんだ私。仲良くしたいんだ~してほしいんだ! 競争やはり合いは苦手なんだ・・・ああ、嫌だ! 何もかも嫌だ~ 昨夜は遅くまで校正、(表紙は今日まで決定~出版社へ) やっぱり、しばらく・・・お休みだ~ 冬眠 皆さん! よいお年を・・・ TOP撮影kazu0873さん 追伸: 東京も捨てたもんじゃない! 携帯より撮影 私の精一杯東京タワーより 2006.12.26 kaoto-megumi
2006/12/25
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あれから20年 圧力隔壁 ひび割れた空路 失われた平常心 方向舵 昇降舵 機能危機 交信 使命 500人の生命 遺書 迷走飛行 眼前に迫る山 乗客名簿 相田 茂 相田 春海 死亡確認 夏海 9歳 選択 真夏の海 選択 孤独 血縁のあの人 昔みた背中 喪服 黒く染まる空 果しなき未来へ続く爆音 飛んだ羽 落ちた体 迷走し続けた日々 「今更なぜ? 」 「すまないけれど・・・」 発覚 竜 8歳 確認 裏切りの証 3歳 「今は? 」 「・・・・」 「すまない」 愚かな俺 妄想が駆け巡る 向風を受けて 飛ぶ 逆風を受けて 飛ぶ スピードダウン 着陸 誤算 失うバランス 「その人の名は? 」 「春海 五十嵐春海。 遠い昔のこと」 「五十嵐・・・」 安堵の溜め息を傾けた方向に吐き出す その人に気づかれぬよう ゆっくり 細く 視線を落としながら 俺はのこりのコーヒーをすする 重厚感 大げさなカーテン どっしりとした家具 そこにある「相変わらず」を見渡しながら シャンデリアの輝度が僅かに変ったことに気づく 油絵を照らす光 俺を見下ろす灯り 成長を見届けた空間 あの頃のひんやり 今も変らぬ冷笑 ひかれたレールに逆らい 暴れた時代 拾われた俺 僅かな隙間から覗き込んだ幸運 基準のない幸運 鍵に手を伸ばした俺 蘇生して見失ったレール 今 平凡という時を得て知る幸運 夏海 なつみ NATUMI ほどよい距離感 後ろにまわって姿をくらまし 突然ポケットに現れる指 多くを求めず 同化を好まず それでも陰りを散りばめながら 癖になる声 受信の電波 待って待たれて 絡まれて 地下鉄に乗って いつしか身を潜め 足早に地上にあがる俺がもし ほんの少しいい加減を持ち合わせ 浅はかな記憶を消していれば 出会わずに済んだ衝撃を 夜は容赦なく俺に与えた 撮影kitakitune05さん
2006/12/22
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「どうして生きているんだろうね」 「どうしてかな」 「どうして死ぬんだろうね」 「さあ・・・生きているからかな」 「孤独? 」 「少なくても今は違う。 君は? 」 「不感症。 孤独かもしれないけれど、そう」 「あなたの話を聞かせて」 「......俺の? 」 「知らない方がいい? 」 「知りたくなったんだ」 「他愛もないことでいいから、何か話して・・・」 「じゃあ、腕を戻すよ。 君でも重たい。 ずっとこの態勢はきついな」 「痺れた? 気づかなかった」 「さて・・・ 俺は、昔むかし・・・」 「うん、何? 」 「あの人の背中が上下に震えていた晩、 俺はドアの影からウィスキーの瓶を・・」 「・・・」 「持って、去ろうとする人を殴ろうかと思った」 「そうしなかったことを悔いている? 」 「いや」 「ただ、どこかに存在する人であの人は苦しみ続けた」 「仕返しは? 耐えただけ? 」 「おとなしそうな顔をして・・・不思議な人だな君は」 「まじめな人ほど、ひょんなことで、まじめに崩れていく」 「そうかな」 「こころの傷を埋めようと・・・ああ、それはちょっと違うかな」 「あの人は違った。 俺が壊れた。 今は普通にやっている俺が」 「普通って微妙。 都合のいい言葉」 「親も環境も性別も、選べない。 不公平だな子どもって」 「幸せって きっと温かいものに包まれているっていうこと」 「君は包まれていた? 」 「少なくとも、笑顔に包まれていたのかな。 裕福とは縁無しでも」 「俺と逆だな・・・あっ! 何か飲む? 」 「さっきの、まだ半分残ってる。 咽喉が渇く。 心は潤っているのに」 「・・・・・・・こうやって誰かにも口移しするの? 」 「しない」 「慣れている! 嘘」 「さあ、どこまで話したかな? 」 「誤魔化して! 」 「背中を向けるなら、もう止めよう」 「やめない 夜は短い 地下鉄の終電・・・」 「そうやって嫌っていた携帯を便利に使う」 「あなたも私以上に嫌ってた癖に」 「あと40分 こうしていられる」 「シャワーの時間も入れた? 」 「もちろん ここを出たら別の顔」 「いつからそんなに割り切れるように? 」 「二度は話さない。 でも,去っていかれるのが怖いから、はじめから去っている人を」 「寂しいな、そんなの」 「少なくとも俺は去っていない。 形で待っても心で待つ人はいない」 「夜の街に追い出された男は、ああやって振り向くものなの? 」 「人の気持ちはハサミで切れない」 「心で待たない人も、今のあなたを切れないようにね」 「確かに・・・・。 一本吸うよ」 「灰皿に水をちょっと入れてね」 「心配性」 「ホテル火災は嫌。 話が途切れた」 「俺、どこかに妹がいるらしい」 「へえー! いないな私。 いればいいのに・・・そんな存在。 飛行機が落ちたから」 「飛行機? 」 「どうしてそんなに驚くの? 親は死んだって言ったのに」 「辛くない? 一日8時間以上空港にいるんだろ君? 」 「私のことはいいじゃない。 途切れた話、返してあげる」 「・・・・そうやって髪を握る癖」 「あっ! 携帯鳴ってる」 「バイブでも煩いな」 「出たら? 」 「いいよ」 「未来につながる愛じゃない? 送信者も、それから私も」 「送信者は半年前から俺を見てない」 「関係ない」 「結局、同じ事をしているんだな。 あいつと」 「送信者じゃなくて、妹をつくった方? 」 「まあ・・・。 君は何でも喋らせる、曝け出さなくていい事までつい! 」 「流れそうになった話、裕福の頂点にいてあなたの妹を他人に産ませた人」 「一流企業のエリートが街で見つけた少女を薬漬けにして」 「え? 」 「押収されたビデオテープ、逮捕されたグループの中にいたってさ、エリートさん」 「さっきのニュース? ドラッグ絡みの」 「人はわからない、男と女はもっとわからない」 「わからなくていいじゃない。 わかっているのは明日の為に夜が言ってる。 もう帰りなさい!ってね」 「シャワー・・・」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・かおと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 先週は胃腸が不調で食べれらなかった。 食欲が戻った今週は、美味しいそう! が目の前で誘惑する。みかん、柿、りんご、イチゴ、ホタテ、新潟のお米でついた餅、カフェオーレ大福。「くびれ」が消えていく。 やばい! クリスマス、正月とまだまだ食べないと!呑まないと! いけないのに。 色気より食い気。 食い気より健康か~
2006/12/21
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私は信じていた 何もない平凡な日々が明日も 当たり前のように続くのだと そう信じていた あの夏の あの一瞬まで 大空を繋ぐ者ありとも 運命の旋回 落下 激突 誰が繋いだ命を手離すものか 相田 茂 相田 春海 21年 空に飛び立ったまま 降りてこない笑顔 今か今かと空港で待つ グランドホステス 離発着 多くの旅立ちと見送りを眺めながら たぶん待つ人の笑顔と涙を想いながら とりたて追い返す不幸でもなく 受け入れる不運でもなく 気づいたら そんな自分がここにいた 俺は信じていた 僅かにくい込む指輪を時折 安穏の積み重ね 幼な心に そんなふうに見ていた 平凡が落ちる時 存在する見知らぬ誰か 真夜中の争い 存在ばかりを主張する皮の匂い 涙の叫びは 竜と言い 罵倒の卑怯は 暗がりに逃げた 夜が奪ったもの その夜から俺は知らない あの人の笑みを 安穏を 平凡という幸福を 時が経ち 俺は知った 裏切りの後ろと遭遇し 予期せぬ重荷を抱えこんだ 裏切りの後ろ 春の海 そのまた後ろ 夏の海 ランプはふたつ みっつ よっつ・・・・・ 曇天の靄に点滅を持って叫ぶ 離陸寸前 滑走路前方 俺は無事戻ってきたと 主翼を思い切り見せ付けながら 偉そうな垂直尾翼の赤を止める 脈 鼓動 点滅と同じ速度 生誕 循環 停止 地 細胞 水 血液 火 体温 風 呼吸 空 心 こころ 合致した小宇宙 かえして! 空が奪ったもの 着信あり メール受信一件 返信 「了解 」 モノレール 夜景 息を切らせた君がみえる 山手線 東京上野方面 待ち合わせ 有楽町 Sビル地下 紙風船 黒い格子の引き戸 レトロなランプ ほの暗い空間で 君が言う 「待った? 」 ずいぶん待った たった五分 君を待つ五分 狂った秒針 狂った俺 重森建設 設計一課 重森 竜 妻 映子 婚後恋愛中 撮影しば桜さん
2006/12/20
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時計の針は本当に一定のリズムで「カチ カチ・・・」と動いているの?朝の時間、昼、夕方、夜、深夜・・・10日前、昨日、今日・・・家族と、身内と、友人と、仲間と、あの人と、この人と・・・家事、仕事、趣味、遊び、・・・どきどき、わくわく、イライラ、のんびり、満足、我慢、・・・「あと30分しかない~ 」「まだ30分もある! 」 この感じ方の違い。 秒針は悪戯 時は意地悪 リズムの歩調は気まぐれなの? 時計は気ままな顔をして こっちをじーっと見ているよ 心に沿って 心に反して いつもいつも カチ カチ カチ♪ 年頭から夏までは長かった。 夏が過ぎ秋が訪れ、紅葉だ暖冬だという間に街は待ちきれないクリスマスイルミネーションが煌く。 さて、あなたの心の時計は? どんな時、意地悪に急ぎ どんな時、悪戯にアクビをしてる?
2006/12/19
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撮影kitakitune05さん アポロキャップを斜めに被り 加減のいい可愛さを魅せる 組んだ両手の甲の上にちょこんと顎をのせ 挑発と無茶苦茶で俺の心を解剖する 上目遣いに甘え声 どうしたものかと また躊躇 「今度は何処へ? 」 「赤レンガ 横浜」 「お決まりコース つまらない」 許せるわがまま 逆算しつつ 悪戯笑みの魔法をかけて 軽く軽く口ずさむ はぐれ者を何処へ 試着して何処へ 連れていくのか 不思議な人 不思議な時間 次の約束もなく さりげにまとわりついて それが自然で嫌味なく 君はぎりぎりを魅せながら 心の半分を隠し そのまた半分を閉ざし 残りの開放を持って 俺とまどろむ 水平線に両手を広げ 君は言う「この時間があればいい」 肩幅位 脚を広げ 砂のかかったGパンを掃いながら 君はまた言う「だから何も聞かない私」 暮らしの匂い 指輪の跡 翼を広げきれない俺の心 承知の上よと言わんばかりに 暗黙の了解 凄まじいパンチ 小悪魔天使 一期一会 夢と思うに切なく 切ないほどに愛しく きっと裏切りの後遺症 空いた穴を 俺で埋める きっと裏切りの復讐 ちょっとのつもりで 君と会う 着信あり「from NATUMI 」 メール受信中「from 竜 」 送られた海の写真 春の海「今日 肌に沁みこんだものよ」 俺が見た文字 写真より コンマ5秒意識したもの 春の海「私 夏海! 夏の海。 空飛ぶ大鳥が奪った海 春の海・・・」 俺は「の」がありがたい 春と海の間のそれが・・・・・ 「メール削除しますか」 YES 「メール一件削除しました」 ・・・・・・・・・・・・・・・・香 乙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ご心配おかけしました。偏頭痛、変頭痛、片頭痛~ PC我慢時、早朝、真夜中、お風呂上り、 帰宅時、夕方、つまり何かに夢中になっている時は比較的楽。 なんで? MRI 異常なし 中間にひいた風邪「私、ノドウイルスかも? 」 家族の一人「 いや、ノロウイルスだよ 」 「え! やっぱりそう思う? どうしよう! 死ぬかも!」 「違う違う、ノド咽喉じゃない! ノロ・・・・・・」 「ああ、似たようなもんじゃん! 」 肩こりはヨガ、ストレッチ、ダンス、針、マッサージで徐々に。ただ、同じように徐々に年齢が・・・・同年、同職(特にこっち)はバックに常備。「私はバファリン!」 「私、ケロリン」 「私はほらイブ! これ一発」 「私セデスよ」こんな会話。 接客と図面、カタログの文字も老眼?で蟻んこのように・・・笑顔の後ろの緊張とストレス。 この辺りかな? ブログ小説6作目。 確かにお目目は使う。 でも書いてないとイライラして だから「バランス」「よい加減」が大事なのかも おやすみなさい
2006/12/17
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風邪にひかれて ダウン。コメントのお返事書けなくてごめんなさい めぐみ かおと
2006/12/15
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撮影しっぽ2さん 君の小細工を堪えながら サイドブレーキをひく 優越感が 自信か自然か?・・・ 俺は あいまいをもてあそび 心の隙間を狙う女を 今 混乱を退け 俺の軌道に無理やり引きずり込もうと試みる 野放しにできない さりとて侵略し続けるであろう君の魅惑 葛藤の末 俺は引き寄せる 君のなだらかなラインを 君の悪戯な瞳を 君の陰りの訳を 水が器に添うように 君は崩れる 限りなく艶やかに 力尽きて 崩れる 支配と抵抗 大胆と躊躇 すべてが君だとすれば とんでもない罰がくだる すべてが君だとすれば 俺の心は転倒を逃れられない 君の一過性 俺の野蛮 時が過ぎ 流れ 今が過去になったその時 俺はきっと悔いるだろうか 永遠の幻を打ち消そうと もがくだろうか 君に落ちた俺がもし はびこる自由と奔放に 来る日も来る日も頭を抱えてしまっても 俺は放せない 抱きしめて 抱きしめて 君の吐息が衝撃に変る瞬間まで この手を放さない 逃さない 地下鉄に乗って 地上のまどろみを想うことなく 今 ひと時を想うことなく 君が飄々と去ろうとも 思考の逆流がちょっかいを出そうとも ひるまない 見かえり美人が囁いた 男の匂いが染み付いたエプロンに 彼女の指に 囁いた そうして俺が犯した今夜の同罪 脈打つ携帯 見入る視線 裏切りの視線が 宙を舞う 彼女は背を見せながら 見え透いた演技に夢中になる 俺は騙されながら その背を騙す 復讐とは違う 仕打ちとも違う ただただ 時をずらして 降りてきた天使に 俺はやられた ざまー見ろ! 窓越しのカーテン 水を含んだ みかえり美人 潤ってやまない熱帯の葉が微かに揺れる まるで俺の心臓の高まりにあわせるように 受信中 流れ星 NATUMI 返信 RYU 俺は言えない 君は触れない 今ここが どこかという愚かを 確実にあいまいな 現実に夢ふうな 扱いに不慣れな うつつを 俺は 抱きしめるしかない 告げ口 直感 激白 発覚 警告 まるで垂直尾翼のように 堂々と 騙し 騙され 地上200メートルのぎりぎりで 滑走路を失う瞬間 頭を空に向け 精巧を操り 操られ 見返り美人の微笑みが消えるまで 時の過ぎ行くまま 俺はまた 地下鉄に乗って 地上に降りた天使に会いに そう きっと 君の唇を塞ぎにいく 君の心の冷たさに逆らうほどの陽炎に そう きっと 溺れるために 俺はいく 彼女がそうしてきたように いいんだよ 儀式の場所も 無味乾燥な言葉もすべて いいんだよ 痛々しい微笑も 力がこもった背もすべて 振り返るごとに唾をのみ込んで カウンターの上半身で 俺を騙し続けなくても 俺は全身で 裏切るから 惚れればいい 気の済むままに 心と言う空気みたいな気体を どこの誰が自由にできよう 束縛できよう 俺がもし 君に出会っていなければ 闇にともし火を得る事も 人の前を照らすことも 大海に一滴を注ぐ事も知らず つり革を握り締め 淡々と都会に溶けていたのだろう ・・・・・・・・・・・・・・・・香乙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 寒いです! 本当に寒い! ぬくもりがコタツ? 寂しいなこんなベンチで、ぬくもりを・・・空想は自由! 石焼き芋でも食べながら、ふ~ふ~言って、そんな現実になるんだろうな私。 撮影しば桜さん
2006/12/12
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「おれ、窃盗やってた」 いいんだよ。 「私、援助交際やってた」 いいんだよ。 「おれ、暴走族やってた」 いいんだよ。 「私、リストカットやってた」 いいんだよ。 「おれ、いじめやってた」 いいんだよ。 「私、シンナーやってた」 いいんだよ。 「おれ、カツアゲやってた」 いいんだよ。 「私、家に引きこもってた」 いいんだよ。 昨日までのことは、みんないいんだよ。 「おれ、死にたい」 「私、死にたい」 でも、それだけはダメだよ。 「夜回り先生」 水谷修 60万部突破 今、読んでいる本でした。 ・・・・・・・・・・・きっかけ・・・・・・・・・・・・ こんな事はないだろうか? 地下鉄通路、乗り換えとか出口までとか歩いている。 夕方なんて人が多いのに、何時もと変らぬ人、時間、流れ、匂い、アナウンス。 そんな普通。 すれ違う人なんか凄くたくさんいる。 気にもせず、時々気になるのは 奇抜なファッションしている人とか、凄くスタイルがいい人だとか、知人に似てる人だとか まして、振り返るなんてめったにない。 私は遠い遠い昔、一度あった。 何って上手く言えないけれど、ふ~っと気になって 振り返った。 特別ステキな男性でもなく普通の人だった。 そうしたら、向こうも振り返っていた。 一瞬目が合ってドキッと!・・したけれど 通勤ラッシュの静まるギリギリ、そんな微妙な波にさりげなく流れてしまった。 歩いていて気になった。 そうして思った。 もし、あの人とあと二回くらい会ったら、、何かがはじまるのか? そして、早速書いてみた。 ブログ一作目「夏色のときめきを」。 それを新たにシンプルにしたのが「俺がもし・・・・」 きっかけ? 出版社の方から「男性を主人公に書いてみては?」と、ふと言われたこと そうやって書いてきたんだ私。 もし? こうだったら? こうなったら? そうしてペンを走らせる快感と空想を覚えてしまった。 高校2年生の国語の授業中「クラスメイト」というのを書いたのは最初だと思う。 下町浅草付近? なぜか個性的なクラスに平凡な私?がいた。 「この光景を残したい! 大好きな仲間を書きたい! もし、ここにイカス転校生がやってきたらどうなる?」 なーんて! せっせと書いた。 あれが原点。・・・・・・・・・・・・・・・・香乙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 味付けくらげ ささみ アゲ 春雨 サニーレタス 笹かま ごま油 醤油など少々 覚えた一品にアレンジしてみた。 これは「黒ひとまき」 胡麻のロールケーキ。 一本1120円だったかな? 直径7センチ位。 追伸: 「俺がもし・・・・・」 シリーズ 8 昨日UPしてあります。 恵 香乙
2006/12/11
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撮影しっぽ2さん 地下鉄の窓の黒 ガラスに映る俺がいた ガラスまでの距離と同じだけ向こうの俺 黒いトンネルに動画が去った ストップ ストップ 走る闇で「私をみつけて!」 描かれた黒の中の風景 見逃すものか 赤坂見附 シルバーメタリック点滅 着信あり 「from 流れ星」 優しい指先が宙を舞った 「夏海です。 四ッ谷方向に・・・」 「わかった」 慣れない指が それでも必死に四文字にいく 冷ややかに慣らされたはずの携帯が 君と唯一つながっていく唇に変った 笑ってくれ! 彼女の裏切りを知った物体に つり革ほどの物体に 俺は今 心臓をつくり 片時も離せない君を閉じ込めた そうして 彼女を許しながら 俺も君に会いにいく 「たとえばね! 」 君はホームで突然言った 丸の内線の頭が見えた時 れいの熱風がふたりを遮った それでも 君は 「イブを待ちきれないイルミネーションが・・」 突飛がはじまる 癖になる 未知と魅惑 「あの頃は他人だった・・・そうでしょ? 」 俺のポケットに紛れ込んだ君の指 汗がじわじわと おそるおそる 絡みに戸惑いながら 触れるより強く 握るより優しく 戯れた 地上への階段 ふたりの階段「あのね・・・」 俺が言えない そいつを 無神経に 無邪気に まるで心を片つけようと 君は俺が困るほど 言葉の連打で響かせる 復活した携帯のいきさつ 息を切らせながら 指を絡ませながら・・・ 俺は頷く間も 与えられずに それもこれも 君の計算なのか 揺さぶりをかけられながら 時の悪戯に 出会いの神秘に 未だ夢か 現実か 問いながら 俺は微笑む夜景に肩を寄せ 歩く 同じ波長 同じ傷 同じ匂い どこか懐かしい声 懐かしい温度 揺れる髪 しなやかな肩 透き通った声 見上げる瞳の悪戯に つかまった俺 街が許す ネオンが微笑む ブレーキの赤 信号の青 夜空に向かうビルの白 誘惑のオレンジ 地下鉄通路 すれ違い 振り向き 車内 ドア横の銀の手すり 見つけた背中 泥酔した男 落ちた階段 膝を抱えた君 090 夏海 NATUMI なつみ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・香乙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 一週間の大好き! 1. 励まし 2. 迅速 3. 配慮 4. 東京タワー 5. 水しぶき 6. 自分の滑走路 7. その道のプロ イブを待てぬイルミネーションが肩をたたく 結果はスタート はじまりのホイッスル!! 自らの力だけではできぬ不可能を叶えてくれるもの 時の悪戯にはまった私とギアを合わせた「ひたむき」 単数&複数
2006/12/10
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撮影 SOUさん(親友) 作品名 「紫輝」 著者名 恵 香乙 「母を亡くし、その後原爆で父をも亡くし多希子にふりかかるさまざまなできごと。それらを乗り越えて成長していく姿に・・・・ 現代ではありえないような状況を乗り切る強さに・・・・どんなに辛い境遇の中でもいつも前向きで、明るさを失わない主人公の姿・・・・そんなひたむきさを忘れがちな現代の若い世代にはぜひ触れて欲しい世界といえます。会話文も巧みで、それぞれの情景をリアリティをもって伝えてくれています。小説のような感覚で読み進めることができる文章で、そこに著者の表現力の豊かさを・・・ 戦争、原爆投下といった事実を忘れてはならないことを改めて痛感させられるとともに、昭和という時代を振り返るきっかけを与えてくれる作品でもあります。 」 選評 本日、出版社より届きました。残念ながら12作品には入りませんでしたが、第一次審査を経た時点で何人かの審査員の方の目に触れたこと、そうしてこのような選評をいただいたこと、このブログを通してたくさんの仲間(皆様)に応援をいただいたこと、すべてに感謝しております 「本作品をぜひ世の中に送り出していきたいと思っております。またこの作品は価値あるものだと感じました」との担当プロデューサーの文面も同封されてきましたが 1. 共同出版(たぶんこの形態になる)に疑問を感じていること2. 尊敬する方の言葉{賞をとるために書いているのではなく}に共感できたこと。 3. 感謝の異名で書いた「紫輝」を亡き両親にも、育ててくれた方達にも報告できたこと。 印刷文ではあるけれど よって、「紫輝」は再度読み直して今後どうするか未来を大切にしていきたいと思います。 来春出版予定の「奏でる時に」ベストセラーでも人気作家でもない私。本屋のうーんと片隅に(まるで私のように奥ゆかしく)収まっているので出版社名とタイトルを店員さんに言わないと、見つからないと思います。事前に毎日新聞で紹介があり、300書店名もここでお知らせできますが、現状はそうなんです。 このページを開いて11か月。いろんな方の思いや声援、アドバイス、ご感想、励まし、それから出会いの中でパワーをいただき、6作目を書いている自分がいます。 作品などとは程遠いですが嬉しいことです。自分らしい飾り気の無い物を少しずつ書いていきたいと思います。 そうして、こう言いながら「チャンス」には「チャレンジ」精神を捨てずに、価値判断をしていきたいと思います。 好奇心と度胸と感傷の固まり。 そういうチグハグがここにいます。 2006年 12月6日 水曜日 恵 香乙
2006/12/06
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処置のあと 君は3秒ばかり 頭を下げ 彼等に普通の女性を見せて 冷たいドアノブを回した たくさんの顔を持てる「普通」 それでほとんどの社交辞令は事が済む 俺も普通の扱いと運の支配と 時折グルになってやってくる仕打ちに 振り回されない素振りを保ち 地球がまわるに任せて 少しばかりの財力に 格別幸運とも思えぬ親の思い込みに 見切りをつけることも 手放すつもりも無く くる日もくる日もあいまいに 心を装う 一過性 揺るぎい軌道の上を ただハリケーンのように通り過ぎる君 手放したくない たぶん俺が知る素のままの君 誤魔化しもせず 何かをあざ笑い 虚しさを瞳に抱え 冷静の中の混乱に 同じ匂いを見る 思考の流れに 勇気をもらい 俺は意識の外に存在していた数字を 慣れない手つきで 顔を赤らめながら いつか 浮かれた彼女の裏切りと 同じようにまどろんで 心の隙間で 大きな錯覚に陥るのか 君が去ったあと ひっきりなしに俺は問う 遠い昔に胸を痛めながら 俺は問う 090 「いつか お礼を・・・・・・改めて」 君は水色のノートを潔く一枚とって たぶん初めて俺を見て 少し無理な笑顔も見せて 波打つ俺の鼓動に勘付いて 彼等の前での パフォーマンス それでも 俺は090を君に渡した 振り返った君の 鋭く悲しげ 惹きつける実態を 俺は 手放さない 潜んで笑う そいつに 静かに歩み寄る 「携帯、壊れてもいいんです」 「私も・・俺も携帯は好きではない」 あんなこと言った後で 手段は携帯 君がのみ込んだ言葉 俺の緊急事態のシルバーメタリック 君と接続 温度のなかった物体に 文字が動きはじめる予感去っていく君の 背を掻きあげて流す後ろ髪に触れる指をひとりよがりでいい俺が束の間 酔った愚かな俺が小宇宙の中で 君の指に托した 着信 「重森 竜 さんですか? 」 「はい」 「先日お世話になった相田です。 相田 夏海です」 俺は数日後 冷ややかに眺め続けた 携帯を 初めて愛しいと思った 相田 夏海 本当は俺が生涯逢うべき人でははかった 逢うべき人だったのか? 夏海 NATUMI なつみ 夏の海 俺は春の海を知っていた 遠い昔に 涙のわけを辿って知った 接続された運命のコンセント まさかの充電 待つ 着信 受信一件 「from 流れ星 NATUMI」 俺がもし・・・・・・
2006/12/05
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地上へ姿を出した頃 窓越しに思わず振り向いたホームを思い出す 見つめられたのはカスミ草か それとも・・・・・・。 感じる視線は 悪戯で 嫌な直線にすぐ気づく 曲がった視線の先は いつも絡んでも去るか すれ違う そうして見事なくらい直撃をさけて 控えめで 戸惑っているから 損をする アドレスを変えた 緊急事態 ただそれだけになるかもしれない 一斉送信 「アドレス 変えました。 登録よろしく NAGAREBOSI NATUMI ] 「流れ星? なんでまた~ 可愛いけど」 1975 NATU-MI これにちょっと 飽きただけ それさえ言わない。 捨て切れなかった携帯 未練ではない 一つの恋が終わったこと だから何よ! そんなあいつを! 同じ操作で消しただけ 「 削除! 」 長い夜が続いた 音だけ鳴ってるテレビ コーヒーが底で輪を作って固まって ポトスタンドからあいつの姿が消え 誰かにもらった白樺の写真がおさまった。 飛行機事故で失ったすべてに 最初は同情して 少しばかりの愛情もかけてみたり すこしは興味を示す職業に バカな男が寄って来る。 親から貰った小宇宙 そんな悲観はすまない 肉親を空から地上に叩きつけ 私を21年 孤独に落とした運命 歯を食いしばった 必要以上に遠慮も覚えた そうして意地も張って つっぱって わたしが出来上がった ツインタワーを出て いつもの夜に溶け込む 春だというのに 冬がいる 心の底に そいつはいる 三愛 松坂屋 有楽町国際ホール 人 人 プランタン 三越 和光 人 人 街を行く高級車、星に負けないネオンを抱えたビル 地下鉄の階段を降りる 新しいパンプス 案の定の靴擦れ どうでもいいかと思う 痛めつければ 何かを忘れる ふたりでゆらめいた影が壁に映り 真実だった囁きが 嘘に変わる 人の気持ちに鍵はできない 時が流れるように 川が流れるように 雲が流れるように そうして 私はひとり。 ずうっと離れない もう騙されてはいけない言葉 信じてはいけない私 A-4 そこを降りると あの熱風がやってくる パンプスが響く もう一つの階段を急ぐ 大声がする わずかに匂う アルコール 日比谷 珍しい漂い 漂流者はいない 私は後ろからやってくる大声に 無視と意識の間で 冷静と戸惑いの間で やはりパンプスが早打ちになった瞬間 大声が後ろから襲った 倒れこんだ人のドミノ 声がでない ぼやーっとしていた罰 そう言い聞かせ 脱げたパンプスに手をかける 去っていく酔っ払い 痛さも感じぬ麻痺 「バカや郎! 何とか言ったら! 」心で叫ぶ ふたりが去った。 起き上がれないのは 気分のせいだと そのまま階段に腰掛ける 起き上がれないのは 大声が上階から落ちてきたせいだと 笑いながら 座って 流れる一筋の血液を見る こんなものよ! 「大丈夫ですか? 」 傍観が去って行く中 男の声が腕と一緒にやってきた すぐ傍にやってきた 振り向くと 男が少し驚き 躊躇い そうして 言った 「怪我してますよ! あっあのう・・立てますか? 」 「大丈夫 ええ、立てば立てます」 「血・・・・・ それに これ? あなたの携帯ですね? 」 「あ, もうそれは壊れてくれてもいいんです! 」 男は膝をかかえる私を見ていた 皮が剥けた手の平で染み出る血液をふき取った 「私も・・・俺も携帯は好きではありません」 「はい? 」 男の目を見た どこかでつぶれた酔っ払いが運んでくれた 男の三度目のチャンスに そうして背中で信号を送り 心臓で受信を続けた あの人と とうとう出会ってしまった 拒否をしながら。 瞬間に10くらいの心が変化する それにやられた 私は おなじ空洞でふり返ったあの人を 吐息を感じる程 言葉に詰まる程 何が起きたかわからぬ偶然の中で 見つけてしまった「立てますか? さあ・・つかまって! ヒールのかかとが取れてます 」 あの人の手は大きく 暖かく それでも心の底辺は高さを掛けても割れない冷たさ 私は男のコンパスにはならない 円は歪になって私を裏切る そうして縁も そう思いながら あの人の手に触れた たぶん にこりともしないで 撮影 kitakitune05さん
2006/12/03
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撮影yuu yuuさん 寒風に置き去りにされた俺の心 手が届きそうな春 そして空 おまえは俺を見捨てなかった 俺が二度目に君を見つけたのは 銀座四丁目を新橋方向に数分歩いた たぶん とてもありふれた花屋の店先だった 少しくねった栗色の髪と しっかりと意思を持った横顔に はっ!としたんだ 人ごみでも 目を惹いた 俺は聞いた 「かすみ草! 」「バラとか・・よろしいんですね? 」 ジーンズ姿の若い女の確認を遮り つくり笑顔で言ったんだ「メインフラワーはいりません。 引き立て役だけいただくわ! 」「ああっ! それいいですね。 ステキ ステキ! 」 白い小花の束に君はほんのり満足げ そうして直ぐにふたり目の君が見えた 歩き出すと同時に違うスイッチがオンになった あの晩の去った心の寂しげと「何よ!? 」と言う瞳 みかえり美人 俺は愛が去ったリビングで佇む あの植物を思い出す 地下鉄に乗ると かすみ草を庇うように隅っこで ドアの開閉に背中を向けて たぶん「何よ!? 」と言っている 俺は鏡代わりの窓の黒に 春色のコートに包まれた綿花のような束を 本当はひたすら繊細な心で包み込む 君を映し 君にやられる 俺の視線に逆らうように 何の関心も示さず 時折45度ほど視線を落とし「何よ!? 」に負けるまつ毛が優しい 負け犬かもしれない俺と 痛々しいばかりの君の囁き ふたりが思わずふり返った訳 たまらなく健気で まっすぐで たぶん君も つり革代わりに携帯を操る奴らに どこか冷めて どこか避けて そんな視線も見逃さない 俺はドアの右にいる君に 吸い寄せられながら 心してドアの前に立った 君との間にあったもの もう一度チャンスがあれば そんな期待と 触れたぬくもり この先の沿線で 降りる君を思いながら 冷めたホームと 長く急なエスカレーターに身を任せ 心ここにあらず そして 決別間直 あの部屋の扉をあけるんだ 地上は川 地下は多くの心が動く 歩く 消える 大都会 東京 爪の上に必死に乗った砂 賭け 次に会ったら 俺はその砂を手の平にサラサラと拾う そうして 三度目のチャンスは運命だと信じよう 何よ!? と言われても 惹かれる理由を 未だ正当化できない感情を もう少し知りたい・・・・・・・・・・・香乙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12月に入りました。 今日はいいお天気。 ちょっとドジを踏んで落ち込んでいた昨日。 心をリセットして ケセラセラ♪ 目の前のことを順序良くコナシテいくしかない。 杞憂はやめよう! 週末は仕事。 気持ちを着替えて、別の顔。 化粧も久々、変身に驚く家族を後に しっかり夕飯の準備をして。 だから今日は買出しと掃除。 まどろんでる暇はない。 感情型、起伏大きい、流される、几帳面なのにここ!という所で意外にドジ! 悲観、 殆どのことが素早いのに、立ち直りだけは非常に遅いこれ、私 では また来週
2006/12/01
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撮影しっぽ2さん 心なし 人が早く過ぎ去る きのうと同じ歩幅なのに 心なし 街灯が目にしみる これ以上うつむけと言うのか 花屋の前に差しかかる エプロン笑顔に一瞬見せた思案顔 さっとかわして足早に 耳にかけた長い髪を戻し 頬を隠す 黄色いマフラーを二重に巻いて 顎を引く 役に立たない小細工に 容赦なく 陽気声「今夜はいいの? カスミ草? 」 線路つたいに並んだ自転車 私の隣にいなくなる 寂しさ抱えてひたすら歩く 闇に同化した外壁に 月あかりをおびた白い格子窓 私が灯りをともす部屋 ひんやり冷めた一握り 日になんども握りしめた恋の電波 息もせず もちろん言葉も失って 当然 気も失いかけて バックから放り出されたオレンジメタリック 目を反らして 心反らさず やたら肌触りのいいラグカーペット 温もりに落下しただけ幸せと思え たかが70センチの衝撃 着信あり 田原 朗 落下の訳 「今夜は最高だったな 東京湾の夜景も捨てたもん じゃないな」 私は夏海 そう,NATUMI! 「もう一年か 君に言われて、ああそうかと思ったよ」 私は夏海 ホテルの最上階を知らない ナツミ! 今夜はひとりの夏海 そう、なつみ! 男の愚か 自分の愚か 進化の愚か 軽率の愚か オレンジメタリックは愛の囁きも裏切りも知り 許容を超えて 捨てられた しとやかに 騙され続けるか そうして 復讐にまわるか 受信 一件削除しますか YES 削除しました 馬鹿げたことで錆びるほど 落ちぶれはしない 恋の仕掛けに浮き沈み うつろいで 消えるに任せる 私は知らない ラグのぬくもりに落ちた物体が 脈打ち 息を吹き返していることなど 未だ知らない そんな日がやって来ようとは たった一度のふり返り 未知の背中 見聞の声 無機質がささやく ラグの上で静かに微笑む「 充電中! 」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・香乙・・・・・・・ 携帯電話 青春時代にこんなものがあったら? 10円玉が落ちる音を気にしながら、外で今か!今か!と待つ人を気にしながら、 恋人と話す時間の短さよ 待ち合わせの勘違い、東口、西口、、待てど暮らせど現れない。 もう振られたのか? 事故? そんなやきもきも無い現代。 「ねえ、今どの辺? じゃあそっちに向かうわ! 」 便利は便利。 一歩間違えると、、、浮気がバレル。 これほど確実なものはない 本日はそんなシーンを そうして今、ハマっているもの「私 」 ここにブルーベリージャムと黄粉と擂りごまとプロテインを入れてよーく混ぜて食べる。 ヘルシー
2006/11/30
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いつもの店でかるく一杯ひっかけて さっきの女(ひと)はどこに消えたのだろうかと 日比谷方面を浮かべながら 俺は駅に向かう 気がすすまなくたって 沈んだ夜は必ず明ける その気にならなくたって ぬくもりのない部屋の扉を開ける あいつは言う 「おかえり! 」 俺はご機嫌のさらにその奥に潜む あいつのご機嫌を また感じなくてはならない 探る必要がなくなったそれは 艶やかな色を俺に見せつけ 色以外のすべてを隠し続けて笑うんだ 多くを語らない俺が 嘘をつき通すあいつが 風通しのいい部屋であたかも幸せを装う ダクトレールから零れるスポットライト 明かりはテーブルのシチューやサラダを照らす たぶん ことこと煮つめられたのは あいつの心の先ばかりで 時を誤魔化し シチューに溶け込んだあいつを 俺は すすりながら見つめる 心ここにあらず そして窓辺で陽を浴びたらしき 鉢植えのグリーン 名前「みかえり美人」 浮きすぎる白のレースに かわいそうに 俺はたまらない 260センチの天井に 吊り下げられた眩しい白が たまらない そこに美しく佇む 観葉植物 鉢に刺さった文字 すれちがった女 みかえり美人 もう二度と会うことはない その人を 思った瞬間 同じ罪ではないと 大きなスプーンで皿をすくった その朝も 夕暮れも ラッシュ通過後も どいつもこいつも携帯電話を心臓の脇に隠し つり革の数ほど存在する唇と血管に瞬きもせず 交差の中で 電磁波にやられながら ひとり小説を読む愚か 受信 そんな文字に心ときめく日が おとずれるはずがない 誤算 俺のたぶん最初で最後の誤算 バイブレーション 体の一部がわずかな振動に歓声を上げ 心を着替えて わかりきった自分に浸る僅か数秒 メール受信 一件 受信BOX 8:55 流れ星NATUMI 電流が走る 指が走る そんな日がやってこようとは 俺がもし・・・・・・・・・・・・・・・ 香 乙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 最高のお天気 今日は髪をCUT ロングに見切りをつけれないからセミロングで 明日から「奏でる時に」~ 出版に伴う作業、打ち合わせ。 このシリーズは続行。 もう書いてないといられない体に 撮影ANEさん
2006/11/29
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すこし萎びた有楽町のガードをくぐり 左の路地をたぶん180度以内におさまる視野に入れながら 右に丸の内のオフィース街を意識しながら 正面に日比谷ツインタワービルの白さに驚きながら 私は歩いた 蔦のからまる古い喫茶店を見上げると さっきの男(ひと)もこの前を通ったのだろうかと もう一ぺん後ろを振りかえる そうしてコンマ1秒の誤差もなく たぶん惹かれてできた瞬間の視線の送りっこに 星の数ほどの男と行き交う都会の路上の偶然に 侘しくもあり 未だ捨てたものじゃない などと 胸の火傷に言い聞かせ 地下鉄の階段を 足早に降りながら 気になるひんやりに指が触れる 絞られたバックの口をこじ開け 右手で握ったタイミングを待つ やっぱり今かと 立ち止まり 人気の少ないタイルの壁によりかかり さも私はいい女と言わんばかりのポーズで 実は一番できなかった決断のボタンを押す 着信履歴 全消去しますか YES 暗証番号は ------- 迷うことに疲れた今 左の親指が私の心にけじめをつけに 作動する まるで別の誰かのように 親指が4桁の数字を押しに来てくれ それはあっけなく終わった 着信履歴はありません 全着信 0 事は早かった 過ごしてきた時間の長さなんかまるで無視して 溜め息と一緒に宙に消えた そうして新しい笑顔の唇の隙間から 幸せを入れ込めばいい だってそうでしょ? 受信メール削除しますか OK 削除しました 田原 朗 メールアドレス削除しますか? YES メールアドレスを削除しました 地下道にモワーっと熱気がやってくる 私に急げとやってくる 地上では何食わぬ顔で ガード下の屋台の男達のように 映画館の看板を見上げるカップルのように 普通が夜にとけこんでいるなんて 思わず愚かな寄りかかりから体を離し みきりの一歩を踏み出すんだ そうして地下鉄に乗って いつもの指定席に立って 銀色の手すりの縦を右手でにぎって 走り行く黒に自身の姿を時折映し 目の前の見慣れた乗り降りに 心を背けて 片隅に体を馴染ませ続ける やがて地上の灯りが縦長の窓に姿を現す 息苦しさから開放される瞬間が いつもなら好きなのに 今夜はずっと黒いトンネルに包まれていたい 撮影kitakitune05さん・・・・・・・・・・・・・・・・ 香乙 ・・・・・・・・・ 今ひとつのお天気。 洗濯の中途半端をコインランドリーで乾燥! 気分爽快に。 なんせアトピーが一人いるものだから、量が多い。 私、平日はほとんどスッピン。土日は家族が「お~! 塗装作業ご苦労さん 」という。 けして厚化粧ではないのだけれど。 おでんをことこと煮ながら、東野圭吾の「手紙」を読んでいた。昨日までは村上春樹。 さてと! おでんで一杯・・・じゃない! 今夜はJ.ダンス。 ヨガとストレッチ、そうしてダンス。 今宵はこれにて・・・
2006/11/28
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俺がもし あの街角で 君を見つけていなかったら 俺の風向きは 変わることなく 僅か数センチ 砂漠に足が触れぬように 僅か数ミリ 海面に指が触れぬように 刺激とも平穏とも 甘さとも危険ともかかわることなく 低空飛行を続けていたんだ そうして 焦点が絡まぬ時の流れを 退屈にただ見届けていたのだろう 君がもし あの雨の街角で 合図も無しにふりむかなければ たとえ俺が 君の煌きに負けて 雨のささやきに負けて わずか120度ばかり 去っていく君の背を追いかけたとしても 愛の仕掛けにやられることはなかった 雨の街角で 俺は君に 心の溜め息をもっていかれた 限りなくスローに せつなく過敏に ほど良く絡んだ視線を もう ほどく事などできない 濡れた路上で 置き去りにされた 透明の傘のように 少しの倦怠と未だ捨てきれぬ期待を 惜しみなく俺に魅せつけた 知らないなんて言わせない どこか冷めた瞳の奥で そのまま過ぎ去るには惜しいのだと 言わんばかりの悪戯に 俺はやられた 背と背が離れていくことに 戸惑いながら もう二度と逢えぬ人だと せかされながら 絡んだ偶然を振り払い 去って行った君を追うことができない・・・・・・・・・・・・・恵 香乙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 詩の連結作業で「STORY」という列車が夜空を走ったらいいなあ そんな遊び心がふつふつと・・・一回こっこりで終わったらごめんなさい 撮影pooh0529さん
2006/11/27
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一説によると遺伝子が関係しているともいわれるストレス。冷静になれば深刻なことでもないのに、その時の心の状態で必要以上に過敏になる。受けとめ方の個人差。 あるな~ 今日、ある本を読んでいた。 傾向性の一例 性格 几帳面でまじめ 神経質で、ものごとにこだわる 感じやすい 周りの人に気をつかいすぎる 融通がきかない ライフスタイル 仕事にかかる比重が高い 気分の切りかえが下手 生活に変化がなく刺激がない 趣味がなく暇な時はごろごろしている こんな感じだった。 健康な心の9か条というのも・・・誠実であること・・・自身に誠実、他人の為に自分を必要以上に犠牲にしない責任を負うことができる寛容であること・・・自分の考えと異なることでも受け入れることができる確実でないことも受け入れられる・・・変わる可能性のあることも容認できる考え方が柔軟であること客観的に考えられる・・・自己中心的でなく周りの人間関係についても~。かかわり合いをもてる・・・人生のいろいろな状況に関心をもち~。挑戦できる・・・必要とあれば多少の危険をおそれずに挑戦してみようという気持ち自分を受け入れられる・・・長所、短所含め、自身を受け入れ、生きていることに感謝 時代が大きく変わる、社会不安の波がこころの時代をゆるがしている。こころの不安は、ストレスと向き合う力を低下させ、やがてからだの調子も狂わせる。「楽観主義」がいいみたい。 簡単に理解しただけ楽観主義と自己中とは違う。 これを勘違いしている人はたぶんストレスをばら撒いてる。 ~~~~~~さて! 今日は定期的に行っている眼科へ。コンタクトを取りに、メンドクサイ~「検眼してからお渡しします」「 C 」・・・上、 右、 左、 下 正直、ほぼ暗記しちゃってる「 い へ く ま よ ~~」・・・これもだいたいポジション覚えちゃったし検診(検眼)の意味あるのかなあ? その後は○ックタウンに買い物明日は土曜日、よって今日お給料日の方も多く銀行も列、宝くじ売り場も列、レジも列。振込みになって「一ヶ月ご苦労様! 」の言葉が日本の家庭から妻から消えたのでは?私もそうだった。 だから今日は勇気を出して・・・渡された明細を手にして小さなささやき・・・いつもはあんなに大きな声で笑ったり怒ったりするのに駄目だな私。 買ってきたものを整理して、洗濯物、お布団をとりこんで、バタバタ。CD1970代の曲(THE 70’S no.2)を聴きながらそのうち体が動きだし、週2行ってるダンスの振り付けの練習に変わった。それから、アクションにめりはり付けるドラムが気になり、2階へトコトコ「ああ、かわいそう! 眠っているわ・・・」 夕飯の準備をしないと5時半には家族が帰る。 エンジンの音は時刻を知らせる。 信号でずれたりしないのか? 不思議な車。夕方、子どもの声がしていたあの頃。今は犬がワンワン吠えるばかり。 散歩コースになっている家の前の道。風景が変わった。子どもが成長して、おまけに少なくなった近所。あの夕暮れのにぎわいは何処へ 私は5人兄弟の長女。 偉そうに言えない! 一番親不孝してきたかも末の弟とは14歳離れている、たぶん。 たくさんいて忘れた。高齢化社会に少し貢献。 彼と尚ちゃん(かわいいお嫁さん)は4人も子どもを! (今年の七五三の写真)私は一人しか生めなかった。 尊敬だ~! では今宵はこのへんで・・・香乙
2006/11/24
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終着駅(ラストシーン) ラストの交差点。 余韻に浸りながら、さて「 何を言いたい小説だったのか? 」 もやもやしながら、KEYを打っている自分。 エネルギーを使い果たしてしまったかな さて! 頭をリセットして、体も心もリセットして、一年を素敵に締めくくろう3月1日~ たぶん全国300書店の片隅に並ぶ本のタイトルは「奏でる時に」。うちの家族は 「奏でる欲望」 と言っていた。 情けない・・・ 真面目な顔をして話していたから黙ったいた ~ 30年後の玉手箱 ~ あと30年、生きたとして、可愛いおばあちゃんになっているか、醜いおばあちゃんになっているか(心身共に)、それは生き方次第。 生きられたらいいなあ・・・と今は思う。 これだけの時間があれば(脳と体が自由のは10年かな)いろんなことが出来るはず。それは今年、ブログをアップして尚、強く感じたことでもある。見知らぬ人との出会い(画面上だからこそ本音を言えたり、不思議な世界だった)自分への新たな挑戦、もともとの思い切りの良さ(=無防備な大胆と度胸=長所=欠点)が幸いして(=災いして)アンテナに素敵がいっぱい。 ツリーより素敵!現実ではないのに限りなく大きな存在。 心温まる居場所がもうひとつできた。 今年の大収穫。・・・と同時に、自然体と天然で(言い訳)ひと言、ふたこと、三言、振る舞いなんかで傷つけた人もいるかもしれない。 心のままにただただバカ正直に突っ走る私は・・・やっぱり未来線の運転手はできないのかな? とも思う。 自分がいやになる。 「 ごめんなさい! 」 ただ、5つの物語を書いた今年、エネルギー燃え尽きつつも・・・やっぱり今後も書き続けていきたいと思う。 バカはバカなりに書ける。 私の色がきっとある未来線に乗ってどこまでも、体と頭と時間と心が許す限り。読後感が「いいな~! 」 ってものを書きたい。 文章に埋もれたたわいも無い一言には多くの思いが込められている。他の小説や詩、随筆などから、どれだけ希望を貰ったか。 その為に、微妙な曲がり角にきている心身の健康(年齢とも言うかおばさん!とはっきり言おう、潔く! )を今は大事にしないと。そうして来年、形になって世に出る本を横目で見ながら、自由にのびのび書いていきたい。その為に、(土日の本業で得る些細な収入で)旅もしたい! 芸術(ライブや美術館、自然)にもっともっと触れていきたい! 人とも会って語らいの中から嫌味なく自然取材して (常識的に)アンテナに宝石をくっ付けたい。 感動したい! 共感したい! たくさん笑いたい!そうしてもっと成長したい! もう若くない。 でも時間が許す限り、一度しかない人生、今生きていられることに感謝して羽ばたきたい!「ああ、だんだん元気になってきた! 書くってこういう効果があるんだ~」 撮影 kitakitune05さん
2006/11/23
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photo byしっぽ2さん 玉手箱の紐を解く。紫音を去って一年半が過ぎた。スクランブル交差点。 人の波が無頓着にクロスしてあっけなく散る。梅雨が明けるのを待ちわびる太陽が悪戯に顔を出し、光のシャワーを注いでいた。上手に交わした太陽は雲を追い払い、時の流れを静かに見守る。背を丸めたサラリーマン、密着したアベック、流行のファッションで身を包むOL.夕暮れは三色のシグナルで速やかに移動する彼等を、心拍数を高めながら見届ける。「なぜ、そんなに急ぐのか? 」 女は出版社の名前が入った封筒を小脇に抱え、知的な額ににじむ汗を拭きながらシグナルの青を待つ。 きりっとした猫目が女の意思を見せていた。「急がないと! 」 白いシャツを捲り、腕時計を見る。 対角線上に舟形に髪を結った和服の女がシグナルの青を待つ。紫色の桔梗のかんざし。 白いうなじが男達を振り向かせ、尚艶やかに頬を染める。 鮮やかに染まり行く大都会のネオンにくちづけをしようと、夕暮れがやってきた。シグナルが青に変わった。ふたりの女は中心に向かう。 軽快に、そしてそよそよと磨耗から復元した意思を抱いて歩き出す。小走りの女の肘が和服の女にぶつかった。「ごめんなさい! 」「いいええ・・・」 ふたりは一瞬振り向いた後、波の移動に逆らえぬまま行くあてに進む。「千春さんかと思ったわ! まさかね・・・・・」「元気のいい子だこと。 昔いたわね、ああいう子。 美月ちゃんを思い出したわ・・・まさかねえ? 」 千春はしっとり去っていく。美月も待つ者の元へ走っていく。太陽と月が空にあった。 両者はにっこり微笑んだ。 意思と感情の強弱の狭間でもがきながら時が過ぎた。 明快は希望という効用によって真正面に虹を架ける。 闇から過去からくぐり抜け、架けられた虹の下をゆっくり歩けばそれでいい。七色にまどろみながら、捨てない希望を小脇に抱えて泣きながら微笑めばいい。 もう一つの玉手箱が開いた。 さらに2年が経った。男はゆるやかなメトロノームの音を聞いた。あれから四年。 停滞の中でわずかに聞こえる鍾乳洞の囁きに似た声。歳月を頭上に見送り、時折それに耳を傾けながら再び立った大都会。不規則な氷が琥珀に溶けだし、カキンと音をたてるまで見惚れた指先。 見惚れた瞳。 夕暮れの交差点。 隣の親子になぜか五感が反応する。懐かしい口調に覚えがあった。「ねえママ、あれが東京タワー? 」「うん。 尖っているでしょ? お空に向かって。 ね? 」「海も見えるの? あそこから」「どうかな? 今度行こうか、ママと海に。 ね? 」「お仕事止めたから、ママ、僕を連れてってくれるの? 」「うん。 悦郎も海が好き? ママもよ。 ね、金沢に行こうか! 海だけを見に! 」「うん、行きたい。 それ、遠くにあるの? 」「お顔に電気のお目めが二つ付いた電車に乗っていくのよ。 ね? 」 「・・・・・ね? 」 男は戸惑った。 多くの細胞から汗が噴出した。「あ! 悦郎、信号がウィンクしてる! さあ、走ろう! ね? 」「転ばないでね、ママ! 」 隣にいながら金縛り。 時は悪戯に早く過ぎた。 男は瞬間、幼児の手を引く女の背中を捕らえた。「うしろから抱きしめて! 」 その声を聞いた。戸惑いと金縛りに負けた数秒、人波に攫われたふたりはどんどん小さくなっていく。女の背中は男と同じ温度を残して街にのまれ、やがて消えた。 月が叫んだ。「追いかけて来て!・・・・・・」 完 長い間、ありがとうございました。カメラマンの皆さん、つたない文章をこんなにも引き立てて下さり感謝しております。 恵 香乙
2006/11/21
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photo by kitakinute05さん ぬかりなく望ましい指示に心が決まる。遭遇する出会いや出来事は、しなやかな強さと代謝のよさで美月に生への歓びをもたらす。「だから・・・事実と紫音を交換しに行くんだ私」 赤らんだ満足げを見送りにでた華たちは、街行く男達の視線を集めながら月の反射に煌いた。「またのおこしを! お待ちしておりますよ社長! 」「ああ、ありがとう」 一人が去った。「早坂様、お気をつけて」「今度は美月ちゃんに会えるだろうね? 」「ええ、それはもう! きっと・・・・・・」 純子が抱えた不安の百倍の笑みと蓄えた美声を夜に放した。黒塗りの車が静かに止まった。日向がそっと手を振ると、御一行が黒岩を囲って静かな夜を閉じて消えた。艶やかな日向がふわりと身を翻すと、華たちが一斉に街に背を向けた。「おい! 日暮! いるか?・・・・・・」事務所に小走りにやってきた日暮は、支配人が手にした白い封筒を見た。「何か? 何かありましたか? それは・・・・・」 日暮は差し出された温もりを手にした。 優しい温度が指に伝わった。「退職届? 」「馬鹿な女だ! この業界でこんな物を見たのは初めてだ、ん? 何を考えている?今、あの娘を手放せないぞ日暮! 」 日暮は眉間にしわをよせた支配人から目を反らした。「はい! ただ・・・・」「最近、何か変わったことは? はりきっていただろう? 新しい客もついた」「それはもう! だから・・・・きっと彼女は戻らない。 よくよくのことでしょう。残念です。 いつもあの子は突然で、連れ戻せるならそうしたい」「男か? 馬鹿は落ちたということか? 」「そうではないでしょう! 」 素早い一発に悲しげな余韻を残し、やがて言葉を失ったふたりはフロアーに向かった。「みんな、今日もご苦労さん。 ちょっとかけてくれ・・・・・・」 華たちはロングソファーに沈みはじめた。 渚と胡美、純子と明海、日向と揺香、そしてルナが不安な面持ちで腰掛けた。ミラーに囲まれた空間にワインレッドが浮き上がると、日暮が便箋を開いた。 切ない咳払いの後、それは流れた。 「 紫音のみなさんへ 突然の我儘を許して下さい。 扉を開いて十ヶ月、何もわからぬ素人の私に優しくしてくれてありがとう」「美月ちゃん!? そうなの? マネージャー? 」 渚が遮った。 てんでに顔を見合わせ、深夜の突然に慌てふためく。「最後まで聞きましょう」 日向が幅をきかせて不安を斬った。「みんなの顔を見ると辛くなる。 だからこれをマネージャーが読む頃はきっと私はこの街にいない。 すみません。 そしてありがとう。 日向さん、けじめをありがとう! 明海さん、華の誇りをありがとう! 純子さん、最初に声を掛けてくれてありがとう! 上原を交わした晩、懐かしい。 揺香さん、華連さんとふたりで守ってくれてありがとう! 渚さん、風雅でのコーヒー、楽しい語らいありがとう! 胡美さん、ケンカのホロー、ありがとう! ルナさん、武器を・・・ありがとう!裏方キッチンのお二人さん、カウンターでの内緒の一杯、内緒の相談ありがとう! ピアノの奏さん、素敵なメロディーをありがとう!日暮マネージャー、多くの配慮をありがとう! よきリーダーに恵まれました。最後に支配人、こんな私を拾ってくれて・・・ありがとう!あの晩私に「このままここで! 」と勇気の声を、本当に本当に感謝しています。 美月は大丈夫。 きっとまたどこかで再会の乾杯を! 辛くなるのでこの辺で。 昭和51年 12月26日 美月 」「馬鹿ねあの子ったら。 この業界でホステスが・・・退職届だってさ。 最後まで天然記念物だわ、本当! 馬鹿! 」 明海が目を潤ませてそう言った。僅かに声が震えていたことで、静まり返った空間に意地っ張りの涙がこぼれた。日暮は純子と目を合わせ、ひずんだまどろみを噛締めた。そのわけにある確信を得た日向が、いったん崩れたバランスを取り戻そうと煙草に火をつけた。大きな溜め息にのった煙が、囲まれたミラーの真ん中に肥大しながら広がった。 威勢の華が一輪消えた。疎外も希薄も寄せ付けない、本当は普通でありたい華が静かに街を去った。 年が明けた。 クラブ「紫音」 いつものロングソファーに純子と揺華がなめらかに佇む。隣でのんきに紅を指す胡美と渚に目をパチパチさせるルナが微笑む。「ねえ、口紅の色を変えたの。 わかる? ほら? 」「わからない」「見てないくせに、ほら! 美月ちゃんの忘れ物よ、このリップ」「それが言いたかったのね。 ねえ、日向さんみたいにこの指でこうして・・紅をつけられると色っぽいと思わない? 」「十年早いわよ貴女! そうそう、帆影の千春さん、東銀座にお店をだすそうよ」 明海がやってきたタクシーが止まってくれるのを確認した後、浅島に言った。「ねえ、見て? 綺麗な月! 」「本当だね」「星がこんなにたくさん! 」 明海は月を囲む宝石に見惚れた。「あの子、どうしているかしら? 」「ああ・・・・・・」 タクシーのドアがあいた。 まるでいつものように街は流れ、夜空がネオンに微笑みかける。「いらっしゃいませ。 ようこそ紫音へ」 次回 「紅つけ指」 最終回 「あなたに托します・・・・『追いかけて! 』 」
2006/11/19
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撮影・・kitakitune05さん 届かぬ手紙 悦史へ 日向さんよ、見て! ねえ。 夜行列車「能登」を教えてくれた。 あなたと左手だけの別れをさせてくれた人。 私よ、見て! ねえ。いつかこんな女になっている。 その時記憶が戻っても、あなたは私をわからない。まだ持ってるの、あの時の文字。くしゃくしゃよ、雨にぬれた手で書いたからよ。 「すまなかった 怖い思いをさせた あなたでよかった・・・・」 文字を見れば 声が聞きたくなる 声を聞けば 会いたくなる 会えば 肩を寄せたくなる 触れれば 唇を重ねたくなる まどろめば 肌のぬくもりを感じたくなる 合わせれば 離れられなくなる ずっと 一緒にいたくなる いられなければ 辛くなる そうして いっそう惹かれてしまう 愛は天国? 愛は落とし穴? 天使の素振りに躊躇い、 小悪魔の悪戯に落ちる 追いかけっこに疲れても 身をかわされると そっと下から覗き込む 「こっちを向いて! 」 そんな迷路をうろうろと 時も所も無いくせに 溶けたふたりの束の間が なぜか奔放に 戯れはじめる・・・・・・今、ここに。 あなたを追わない美月より 絵画・・小島 茂氏 65歳 いただきものです。 前回「風にふかれて」のチャコちゃんの絵と同じ位、大切なものです。
2006/11/18
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photo by pooh0529さんさん 声は心に乗っていく。 そしてその心には色も形もない。それでも声は沈みや歓びや戸惑いや期待を含んで放つ・・・嘘もつけずに。 紫音は活気に満ちていた。じっくりと酒を味わい、華と語らい憩う。 ピアノの傍では美月が言った「武器」を披露するルナがいた。 クラブ帆影の千春と会った晩、ルナを大輪に紹介した。「噂のルナさんね? ぜひ一度あなたの歌を聴きにいきたいわ」サパークラブ夕舞でのひと時は、ルナに釘を刺す美月のお節介に過ぎなかった。それでも今できること。 喪失、継続、保身、放任、好意、反発、それらを当てはめて行動は思考より早く一人歩きする。 巻きこむかもしれない感情や危険を省みることも予知能力も欠けたまま事を進めてしまう。 そうやって自分を保ってきたのかもしれない。運がよかった。 見守る者がどこかに控え、諍いを逆手に取って味方に変えた。 ただ、危険を救った悦史との再会。 落ちた恋。 別れのプラットホームがなかったならば美月の無防備に追い討ちをかけることは無かったのだろうか。 「あの子、変わったわ! 態度も体も小さくなったわ」 渚がピアノの横でしっとりと歌い上げたルナを見てそう言った。隣で明海が美月に視線を移した。「変わったのは彼女の方かもしれない」 琥珀の液体のまどろみを色も形も見えない心で見つめながら、隣の団欒に肩を寄せる。「美月ちゃんのイブのパーティー券、ルナが全部さばいたって自慢していたのよ」客を取られたも同然よ」 ヘルプでついた胡美が囁く。 美月の微笑返しが承知の視線、明海の目にしっかり届く。 揺香は更衣室で戻ってきた現金をバックにしまったおうとして、再び便箋を開いた。美月の文字がさらさらと流れていた。「揺香ちゃん、これで何も聞かずにいてくれる? もう大丈夫。 きっと大丈夫だから、ね?・・・・・・」 何かが始まり、何かが起きてなにかが終わった。 揺香は人が戻らぬうちに部屋を出た。 それでも地球はまわっていた。明くる晩も、その次の晩も、同じように夜が落ちて微笑む月に星が散りながら悦んだ。「いらっしゃいませ早坂様。 美月と申します」「やあ! 美月ちゃんだね? さっ! 掛けてよ。 帆影の千春から聞いてきたんだ。 ライバル店の女王に可愛がられるホステス、君だったの? 」「そうでしたか! 千春さんには可愛がっていただいています」 いつからどのように繋がったかわからない人がいる。自然のままに、時のすすむままに、関わりも別れも流れ流れて海に行く。「今後とも帆影ともども御ひいきに! 」 ルナの歌がステージ化され、8時になるといつも紫音は満席になった。イブの賑わいと売上げを先取りした空間に大きな男の笑いが止まらない。美月は日暮の合図で、キューブにパンプスの音を引きつれ名刺を差し出す。そうして程よい笑顔で静かに言うのだ。 「美月と申します」 日暮は空間に神経を張り巡らせ、華たちに数種の合図を送って空間を仕切る。サービスの限りを尽くすため、ヘルプの四人が使命に徹する。 自信を得た使者は嬉しい指名を得て新たな華へと変身をとげる。「マネージャー! 日向さんの席、あと二十分待ってください。 これではお客様が落ち着きません」「美月さん、よろしければ私がその間? 」「頼むよ、晴美ちゃん」「それから純子さんの席、どうでしょう? 大人数の接待です。 ルナさんは? 」「了解だ」 日暮は気配りが行き届く美月にわずかな不安を抱きながら、ルナに合図をした。ピアノマンの指は心の響きを鍵盤に充電して打っていく。 まるでドラムを叩くように。軽快なジャズが流れると、体を揺らし、かかとでリズムを取る男達がミラーに映った。 贅沢なイブが終わった。 融合はいくつかの分離をかき集め、夜のステージを最高のものにした。 「紫音」始まって以来のスタッフと華とリーダーの団結心、客の満足げ。「シャンパンを! 」「メリークリスマス! 」「乾杯ー! 」 男達は紫のリボンで包んだ小箱を手に、ビルの階段を上った。 「ああ! いい夜だった」 街のネオンを再び浴びて、夜風に頬を冷やしてもらうと彼等は散った。まるで万華鏡に散りばめた色彩の破片のように、速やかに街へ散った。 弛みない指令のスイッチがオフになった。選択は、美月の前にある日暗幕のように降りてきた。復活の扉を閉めるのか? 美月は駅の傍の歩道橋の上に立った。昼夜活動を止めいタクシー、人の群れ、ホームのアナウンス、活気の暮らしを見下ろした。天体の中で小さな営みが繰り返される。 「この街が好きだった・・・・・・」 過去に手を伸ばそうと掴めぬブランコを引っ張った。 涙が溢れた。 続く (取材ご協力ありがとうございました) {ご紹介}・・携帯に入ったものです。「亡き少女の作品、コメント・・泣いてしまいました。ひかれる男性~同性から好かれる人。包容力のある人 来世も一緒にいたいと思う人。一線を超えぬ大人の愛~B.そんな人もいると思う。 私は全身で愛したい!都内でバリバリ仕事を。すでにお孫さんがいる美しき親友からでした.
2006/11/17
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心のままに この絵、私が3年前から大切にしてるもの。彼女チャコちゃんは高校2年生でした。 動物の絵、ヒーロー、アイドル、花等、彼女は才女だった。お母さんとは友達。 絵を書いた子のお姉ちゃんが、息子と同級生(小学生時)。3年前、姉妹は国道16号線で右折の際、直進トラックにぶつかりました。雨の土曜日夕方のことでした。 残念ながら、20歳と18歳の未来ある姉妹は亡くなりました。 ほとんど即死でした。今でもあの日のことは鮮明に覚えています。 ニュースにもとりあげられ・・・・辛かった。 数ヶ月後、町の芸術祭(小規模ですが)が行われました。会場のインテリアを任された私、作品のデイスプレーを考えながら、彼女の絵を思い出しました。お母さんに「ぜひ!」と相談して油絵含む7点程お借りすることができました。当日、彼女の作品の前に「元気な笑顔」の亡きチャコちゃんの写真を置き、ちょっとだけ他より(漆塗り、硝子芸術、習字、短歌、手芸の数々、押し花、他)力を入れてしまいました。 当日、訪れた方の中に、彼女の作品を前に泣き崩れる同級生もいました。 彼女の絵は校長先生も、担任も、クラスメートも才能を認めていて学校の数箇所に彼女の大判の絵が飾ってありました。 芸術デザインの専門学校へ進む予定だったのに。 お母さんは、2年程娘さんの部屋の掃除も、カーテンも洗うことが出来なかった。私は同時に二人の子を亡くした彼女と、ただただ一緒にいることしかできなかった・・・ご主人とおばあちゃんも涙の日々。 今、三人は少し笑顔を取り戻し、仲良く暮らしています。 夏の終わりに、「何か1枚チャコちゃんの絵を欲しいな! 」そう言って頂いた絵が上の物。 小学生に人気のキャラクター?らしい。絵の下の「ありがとう!」の文字にチャコちゃんのすべてが出ていると思いました。誰にでも好かれる明るく元気が子。 皆に同じように優しくできる人気者。お姉ちゃんは偶然私と同じ名前。 おとなしくて(私と同じ)真面目で家族を大事にする子だったな。 息子も二人の死を・・・ 独り言 若者の会話から拾った・・・・・「ブラジャーって詐欺だよな! 」 ある病院で誰かが・・・・・・・MR検査。 トンネルが怖くて準備の着替えを済ませても 躊躇。 どうしよう! トンネルから出られなかったら? 「準備できました? 」 「はい・・・・」 検査室で思い切り泣きそうになった。 やったら「なーんだ! こんなもんか!」 恥ずかしいミス・・・・・・・「おとしまえ、つけな! 」 紅つけ指、前回の章のラストの啖呵。「つけな!が漬け菜!になってるよ~」 美月ごめん! カッコいい啖呵が『漬物』になってどうする~ ある晩のこと・・・・・・・・「オフクロ~! 最近二階の観葉植物どう? 元気?」 「はー? 何でまた? 」 息子の言ったのは「青年の木」 「どうして? 気になるの? とっても生き生きしてるけど」 「そうか、ならいい」 にやり 「言いなさい! 観葉植物に興味あったっけ? 」 「・・・俺が飲みきれなかった酒、たまに捨ててるんだ、鉢に」 焼酎が多いらしい。 取材。ご意見をお願いします 女性の方へ・・・・・あなたが「ひかれる人」(男性)とは? 簡潔にm(--)m 男性軍へ・・・・・・あなたが「かわいい人」(女性)と思う人は? 々 一線を越えぬ大人の愛と勇気・・・A.きれい事だよー!と思う.あり得ない B.あったら素敵だと思う、有り得ると思う。(独身同士ではない設定で。3月出版予定の「奏でる時に」のあとがきの文章で参考にしたいと思っています。 ) ケ・セラセラ 声を出して笑う自分がいる。 同じ位、最近涙も流す。 同じ位、ズボラになってる。 まあ、それもまたいいか! なるようになれ~ 次回予定 「社宅ときめき物語り」 ある繋がりからの年頭からのリクエスト 「もう一度、読みたい! 」 平成4年作。 廻り回って、今だ原稿が帰って来ない。 「次はアレね! ねえ社宅のアレ! 」 簡単に言うけれど、思い出しながら書くしかない。 たぶん、来年。 では・・夕飯の支度にかかります。 主婦 恵 香乙
2006/11/15
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Photo by kitakitune05さん 待機用のロングソファーにルナがズドン!と腰かけた。するとしなやかに脚を組んでいた純子がふっと浮き上がった。「うさん臭い子だわ! 」 胡美がぼやいた。バランスを崩した心がやっと始動し始めた美月は、苛立ちの声を聞きながら日向の隣に座った。「指定席はいいの? 」「ええ、そんなもの最初から無いんですよ」 渚がハート型のピアスを揺らしながら耳元で囁いた。「美月ちゃんのパー券、あの子が全部さばいたのよ! 生意気に」「そう、ありがたいわ。 一週間休んだ罰ね。 イブはヘルプで頑張るわ」 ルナがヒソヒソに気付いて美月の前にやってきた。純子がまたソファーに沈んだ。美月は大胆な切り替えのあるドレスを見上げた。「美月さんっていうの? 私、ルナ。 よろしくね」「こちらこそ」「私の歌を遮るほどの魅力があるのね、きっと貴女」「遮ったつもりはないのよ。 ごめんなさい・・・まだ半年目の若葉なの、お手柔らかに」自信ありげは小心者の裏返し。 下出にでてゆっくり探る。 敵も味方も紙一重。 あらかたの客がルナの歌と活気上昇の紫音を満喫して上機嫌で去って行く。まどろんだ優雅で高貴な空間に、スタミナのあるメリハリが付くことに戸惑う間もなく時間が去った。 新しい刺激を楽しむ常連、ルナとともに雪崩れ込んだ客は個性の華に魅せらる。そうして、いつしか接待にもってこいのクラブ「紫音」が再開しはじめた。 更衣室で揺香の困惑の瞳を捉えた。華連が香港へ帰ったように、こんどは台湾に帰るなどという究極はないだろうか?美月は少し錆びたロッカーにもたれかかった揺香に尋ねた。「どうした? 」 心を映し出す鏡が歪んでいる者同士は、バランスを崩して出くわせる。その晩、シガレットケースを取りに戻った美月は見た。反射的なポーズに言い訳は似合わない。 ルナが揺香のロッカーの前で振り向いた。「何していたの? 手を開いて見せて! 」「別に! 何か用事? 」「それはこちらのセリフでしょ! 早くその手を開いて! 」 揺香の言葉がやってきた。『たびたび・・・。あの子が店にやってきてから』『You doubt her? 』 疑っているの? 彼女を・・・・・・『・・・・・・』 それまで無かった事がある時を境に起こった場合、自然に考えられる答えを揺香もうすうす感じていた。 証拠がない。 よって固有名詞は口にしない。 美月は賭けに出た。 「さあ! その手に握ったもの、見せなさいよ、早く! 」「どうにでもしなよ! しょっ引くならどうぞ! 」「開き直るの? 見苦しい女ねえ、 落とし前つけなさい! 」「何だよそれ! 」 ルナは汗で濡れた合鍵を床に投げた。「癖なら今直ぐ出て行きな! 汚い流れ星はさっさと消えな! 」「美月、あんた何様? 」「雑音なんか聞きたくないんだよ! あんたの歌が雑音なら、その札も偽札だ! 」「雑音? 」 ルナが大きな体で立ち上がると、目を痙攣させながら美月の肩を突いた。「ほーら! 誇りがあるのね、歌に。 少しは見直したわ。 あんたね、転落するならまっさかさまに落ちろ! 半端なことやってんじゃないよ! ん! 人の健気を盗むなよ! 」 ルナの手が震え出した。 湖のような瞳の持ち主、やつれかけた慎ましやかな体、剥き出しにされたパワーはいったい何処に潜んでいたのか? ルナはたちまち言葉を失った。「消えるなら今すぐ! 残るなら・・・残るなら、てめえの武器で落とし前つけな! 」 続く
2006/11/14
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Photo byしっぽ2さん 夢うつつが頭の上をかすりながら去っていく。突っ張った心がポキンと折れても、意地悪がこれでもか!という程追いかけてきても息を止めずに、心が指差す方向へ歩いて行けばいい。 噛締めることに疲れた唇に紅を指して向かった先は夜の故郷。少しでも空に近づくようにと背すじを伸ばす美月。 クラブ「紫音」の文字がほんのり灯っていた。 いつか降りた階段と同じ感触をヒールの底で味わいながら重い扉を開けた。「試しに一曲歌わせたんだ! いや、これが上手いんだなあ、今まであんな歌の上手いホステスは知らないよ! 」 大きな体から有頂天が露出していた。険しい顔が待っているはずだった。 悦史とのけじめ、その為に仕事に穴を空けている。支配人は事務所に入った美月に気付いていない。 まるでコインの表と裏。状況は刻々と変化し、人の心も同じところに留まりはしない。「クリスマスは紫音がいただきだな。 顔の造作もあの歌がカバーしてるさ!贅肉? そんなものご愛嬌だー」 やがて無神経な受話器が置かれ、回転椅子がくるりと回った。「ん? なーんだ! 美月ちゃん、生きていたのかい? 」 百歩譲って楽観と受け取る最後の言葉。「すみません! 今夜から店にでます」 (客と寝るバカは落ちて行く! 私はそれを言わせないんだ! ) 上機嫌は、浅島が話していた歌の上手な新入りのお陰だと再確認した後静かに事務所を後にした。「こんなものよ」 そう思いながら華連からもらった桃白色のチャイナドレスに着替え、孤独感に苛まれぬよう濃い目の紅を指した。 扉を開けた。 空間は声量のあるルナの歌で快活な別世界になっていた。空気の肥大を感じながら、懐かしいワインカラーに目を向けた。満席だった。 注目が美月に傾きながらストップモーションの映像が流れた。「美月ちゃん! 」 思わず声をあげた純子に続いてポロポロと華たちが振り向く。ひとつ、ふたつ。 ぼやけたスクリーンにくっきりと仲間の顔だけがアップになった。一瞬ルナと目が合った。 それでもルナは大きなアクションとパンチの効いた歌声で客を引きつけていた。 リクエストのメモがピアノに並ぶ。 「いいねー! なかなかじゃないか! 」ルナを追ってきた客と常連があちらこちらに散っていた。 昨夜、言葉に出来ぬ心を汲み取ってくれた浅島がいた。 月に触れることもなく微笑みかけた真心の発露が美月の温もりに入り込んだ。そうして空間が鮮色から淡色へ変わったことに日暮の機転が始動する。「美月ちゃん、日向さんの席へ」「はい」 黒の御一行が賑わいだ空間に馴染むことなく淡々と時に酔っていた。「おかえり、美月ちゃん」「ただいま、姉さん」 黒岩が若い男に合図をすると、美月の前にグラスが置かれた。 素早さはどんな華も敵わない。 「けじめに乾杯!」 日向がグラスをあげた。「バーボン? 」 日向はそれ以上触れなかった。 悦史のことも急行「能登」のことも・・・何も。それでも心は多くを語っていた。 ルナという茎の太い華を迎えた空間。 少しシラケタ華たちが美月に視線を流す。遠くから近くから、賑わいを放りなげてグラスを交わした。キューブの中で華が微笑んだ。「美月ちゃん、お帰り! 待っていたのよ、きっと戻ってくるってね」 続く
2006/11/13
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PM 8:50仕事から帰宅。 2時間半、乗り換え意外は眠っていたな。乗り越さなかっただけましかも。 携帯のバイブが起こしたくれた。いつもは二つ先の駅まで行って、反対のホームへ何事もなかったかのように向かうんだ私。階段もしんどい、凄いロス! 寝ぼけ眼で恥ずかしい。 でも帰宅後、こんな届け物があった。さっそくインテリアに。「やったー! 」いきなり笑顔! 嬉しいな~。 手つくりだし・・・・・・あっちにうろうろ、こっちにうろうろこっちは玄関の花瓶の下に敷いた。 写真が大きいのは喜びの大きさ「お袋、飯食ったら? 」「お風呂、入ったら? 」そして、今夜はお風呂が先。 まどろんで癒されて、いろいろ思い浮かべて 「紅つけ指」 次回「アンバランス」の章を書いていたら、自分がアンバランスになった~なんで! 影響されやすいな、私。 バランスをとりもどしたら、アップしようと思う。 意外な美月のラストを是非見て下さい。 アンバランス 消えた月 あなたに托します(最終章) では、おやすみなさい。 恵 香乙
2006/11/11
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Photo by yuu yuuさん 分別を握り締め、美月は浅島の待つ夕舞へ向かった。「ごめんなさい! 」 浅島は緩やかな角度で息を切らせてやってきた美月を包み込んだ。長く感じた一週間の空白を埋めるのにふさわしい形無き一瞬の抱擁。分別が優しく微笑んだ。でしゃばらないセンスと知性だから傲慢などという厄介が存在しない。安堵のグラスがふたつ並んだ。 「元気そうだね」 あえてそう言った不自然が美月の心を詰まらせた。「浅島さん? 」「なんだい? 」「縦糸は涙。 横糸はね、ほら、こーんな感じの笑顔、ね? わかる? 」「うん、そうだね」 主語のない話が痛々しい。 (あるがままに受け入れよう! さあ、楽にならないと・・・・・・)「紫音はどうですか? 」 美月の話が反れた。 「浦島太郎にはなっていないよ。 安心していい」「そう? みんな元気なのかな? 明海さんも、純子さんも・・それから・・・・・」「ああ、君を待っているんじゃないかな」「明日から店にでようと思うの。 だから、けじめ! けじめなんだ」「そうか、俺は無害だからな」 穏やかな口調に優しい眼差しの香辛料が加わる。「そうじゃない、いえ、そうかもしれない。 浅島さんじゃなきゃ駄目な『けじめ』」 儚い束の間の快楽はいらない。 心を埋めるどころか新たな傷を増やす愚かもいらない。「けじめの乾杯といこうか! 」「すみません・・・・・・」「なんだ、口癖だな。 すみませんはいらない、さあグラスを持って」「・・・・・・」「こんな私の為に・・・私はどこかで利用している。 きっとそう! あなたじゃなきゃ駄目」「危ない言葉だな。 最後のひと言」 無防備は相手を選ぶことを心得ている。 (忘れさせて!なんて言わないから)(だからこうして会いに来た) 絡んだ視線のまどろみが危険から去った。 男にも女にもなり得る悪戯を、懸命な浅島が速やかに追放した。「もうすぐクリスマス。 クラブのイブは初めてだろ? 忙しいよ美月ちゃん」「イブ? そういえば、街の灯りが緑と赤に変わってる。 ね? 」「君がいないと店は月のない夜空になる」「星がたくさんいるでしょう? 」「月のいない晩は星もいない」 美月は心に安らぎを覚えた。 まるでビクともしない大木に寄りかかって小鳥のさえずりを聴いている心地になる。 「歌の上手い子が一人、入った」「歌? そうなの? 私先輩になったのかな? なーんて偉そうに言えないね、馬鹿だから私」 美月はいつのまにか浅島のペースに馴染んでいた。 単純なのか、素直なのか、染まり易いのか、察知直後の利口の作動か、今だ掴めない浅島。男を横に置き去りにしたまま、魅せる月の軌道を横道からさり気に戻す。「無理は禁物だよ美月ちゃん」「はい」 浅島は追加の本心をグラスに托した。 氷をカラカラさせながら琥珀と話した。(復活して大いに咲き誇るといい。 存分に咲いた後、引き際のチャンスがやってくる。タイミングを逃さず、月から太陽になるといい。 その時はいつでも『けじめ』になる。」 美月は去っていったタクシーをしばらく見届けた後、あえて消さなかった部屋の灯りを見上げた。 夜露がしんみりと肩を冷やしても灯りが暖めてくれることを覚えてしまった。「もう、暗がりの扉にはしっかり鍵をかけたから! 私は大丈夫! ね? 」
2006/11/08
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Photo by pooh0529さん バラードが奏でられる。曲線のおりなすリズム、光のグラデーション、華の香り。三重奏は空間をゆらゆらと舞う。 昨夜まで奥ゆかしく灯っていたライトスタンドが、早々に置かれたツリーの煌きに追いやられ、ひっそりと佇む。 まるで姿の見えない美月のように身を潜めている。 閉店後、クラブ「帆影」と同じ光景が繰り広げられる。日暮がクリスマスパーティ券を華たちに配った。 華やかなイブの夜の裏には浮かない顔がいくつも並ぶことを街は知らない。 他店や仲間同士の競い合いを生じるにふさわしいチケット。 強いられたノルマ。 ただ一人、大きな腹と楽観を露出した支配人が、売上げ貢献にもってこいの異質な華の飛び入りに喜ぶ。 美月の留守中に流星のようにやってきた新入り・・・幹の太い華。 予想のつくロボットのような人間には興味が向かない。 何をしでかすか見当がつかない人間には近寄らない。 そして人は必然と偶然の間を無意識の安全地帯として生きることしかできない。 美月は去った愛の後遺症の錘を引きずりながら、スズランから零れる灯りを悲しげに浴びていた。 冷えきった部屋、秒針の音が妙に響きはじめると何処からともなくやって来る。 あの青い物体、夜行急行「能登」。 虚ろな闇に引き込まれながら覚醒に陥る。「ねえ、悦史? 聞こえる? 」「ああ・・・・・・眠れないの? 」「違う。 もったいない、眠ったらすぐに朝がきちゃうでしょ! 」「しかたないな、こっちへ来る? 」「嫌だ、行かない! 私の方へ来れば? 」「俺は行かない」「じゃあ寝よう! お や す み 」「・・・・・・」「ねえ、寒い。 まだ冬じゃないのに足が冷たい」「だから? 」「暖めて? 」「駄目だ」「どうして? 」「俺が冷たくなる」「いいじゃない! さっきまで熱かったんだし」「可笑しなことを! 意味が通じない」「昼間のもみじのように、ほら!まだ青い。 赤く染まりたいってこの手も、ね? 」 美月は手の平を毛布から出して、隣のベッドに見せつける。「それなら素直にこっちへ来ればいい」「私のこと好き? なら来て、こっちへ」「うるさい! 眠れなくなった」「ああーっ! 照れてるの? 困ってるの? 」「・・・・・・」 そうして濃紺の夜の彼方へ再び消える。 気力のないふたつの目を光らせながら切ない声でうなりながら、悦史を連れて暴走する。 しらじらと夜が明けた。 スズランの灯りが朝陽に負けていた。手を離した瞬間、悦史は新たな線路を行った。 行く先に待っているのは温もりだけではない。 緩やかな暮らしが直ぐに両手を拡げているとも限らない。 それでも生きていくしかない。美月も時の悪戯にぐずぐず痛めつけられる事を好まない。 ならば・・・・・・「浅島常務さん、いらっしゃいますか? 」 それは一本の電話から始まった。 続く 次回「時の悪戯 2」
2006/11/07
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「紅つけ指」 第一章闇花 たぶん私は 陽炎 夕星 バカは落ちていく 美月デビューの晩消えない灯り 殺気「雨の訪問者」 消えた訪問者 綺羅星 はじめての指名「黒の御一行」 華達の戦い このままじゃ終わらない 第二章紫音香「再会」 消えた客席 誘惑 小悪魔の条件 あの人・・・・・・紅をさす時 うしろから抱きめて・・1~3 扉があく時 リーダーの小指華連 ピンクの封筒 忠告 静笑「追われる車」 真昼の月 第3章追突 俺がもし・・・・・・ 荒波 ラストチャンス 朝よ来ないで! ぬくもりふりむかないで・・・1,2 今後の予定~ 時間の悪戯 アンバランス 消えた月 最終章「あなたに托します!」 クラブ「紫音」 美月&遠くにいる悦史 あえて連名にて
2006/11/06
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Photo by kitakitune05さん なめらかな膨らみのある唇に煙草を近づけた渚が思い出したように言った。「ナンバーワンもたった一発の打ち上げ花火だったわけ? 」「そんな言い方するものじゃないわよ」「ああ、やっぱり男なのね。 今の純子さん見てわかったわ! 一週間近く店を休む理由は他にないものね」 純子はロッカーの扉をガタン!と閉めた。かつて純子の妹分だった胡美が、渚の隣に腰掛けた。金ラメをあしらった黒のドレスは華連のお気に入りだった。 純子は香港へ帰った華連のドレスを、まるで当たり前のように着ている胡美に少し腹がたった。「美月って、ジェットコースターみたいだわ、まったく! 」 純子は自由奔放な二人の会話を背中で聞きながら更衣室を出ようとした。「気取った冷たさもあるけど、飾り気が無いから許せるのよ」 鮮烈なデビューを果したクラブ「紫音」の異質な華一輪。 気品も誇りも縁遠い夜の華、独自のこだわりを繰り返す華・・・美月。 ただ甘いだけの果実を零しながら、おおらかに戯れる渚と胡美。 おぼつかなげな光をおび、肌触りのよい毛布で体の隙間を埋めながら昨晩ベッドの中で純子に言った日暮の言葉。「周りを放っておけないから、周りも放っておかないんだ」 交わりの余韻にまどろみながら、何となく頷いていた自分が蘇る。 純子が我にかえって「さあ、そろそろ開店よ! 」と言う。渚はハンガーに掛かった華連のドレスを手早に見始めた。「ねえ、これなんかどう? 私も頂こうかしら? 」「馬鹿ね! チャイナドレスはね、揺香さんみたいに首がこうーやって長くないと似合わないのよ」 胡美が笑いながら顎を天井に向け首を摩って見せた。「美月ちゃんが帰ってきたら、どれを着るつもりかしら? 」「気になるのね、彼女のこと」「てめえら! 嘗めんじゃねえよ! これが紫音のベテランの姿かよー! ってあの子、いい度胸してたじゃないね」 二人はリンチの晩を思いながら、姿が見えなくなって知った月の存在をか噛締めた。 16番ホームが現れた。 美月がのぼった階段の先に閑散としたプラットホームが待っていた。8号車の位置する辺りに疲れたベンチがあった。美月は氷のようにつめたいベンチに静かに腰掛け、見たくない時計に目をやった。9時10分。 人の気もしらないアナウンスが流れた。深呼吸を数回しながら夜空を見上げた。 ふたりだけのスクリーンが展開された。「どこが好き? 」 「アルプス」「何が好き? 」「りんご、オーロラ、それから・・・・・・あなた! 」 クールな顔がほんのり和らいだ。 「お巡りさんみたいな連発」「連発に即答してるな、君らしい。 りんごとオーロラがどう繋がる?」「じゃなくて、りんごと俺が何故同じ答えの中に存在する?って言いたいくせに! 」 やがて階段から聞こえる子供の声でスクリーンが閉じられた。幼い男の子の手を引いた小柄な女性に添って悦史が現れた。美月は反射的に顔を反対側に向け、限りない他人になりきった。旅を終えた晩、涼しい笑顔で手を振った悦史が違う笑顔で佇んでいる。いとおしい気持ちが許容量を越え過ぎた。 16番線にのっそり青々とした車体が入ってくるなり、美月は体の振るえを必死にくい止めた。悦史と妻子を包み込むように添う、もう一人の男が美月に気付いた。「まさか! 」の視線が一瞬美月に刺さったが、いとも容易く平常心を取り戻すと男は悦史に全神経を向けた。 「金沢署です。 クラブ紫音の美月さんでしょうか? 」 見覚えが的中した。「大丈夫! 私は何にもしない。 ほんの数秒の目的の為にここにいるだけ! 」美月は列車がブレーキを踏むまで、ベンチから離れず男に信号を送った。そうしてコートから小さい両手を出して見せた。 男は意思のある動作を見逃さず美月の覚悟を信じる動作を返した。 囲いのある空間には確かにあったぬくもりがすっぽり消えたホーム。夜風がしなやかに通り過ぎる。 美月の片腕分の半径の中に悦史がいたならきっとしがみ付いて離れない。 悦史を連れ去る青い物体はホームにぴったり寄り添ってしまった。 夜空から可動の合図があった。 美月はベンチからゆっくり立ち上がった。 その瞬間を迎えた。妻子と悦史の間に男が入り込んだ。 妻子に微かな笑顔を浮かべながら話し掛ける。一歩を出した。 列車に向かって数歩あるくと直ぐに方向を変え、列車と平行に進みだした。 熱く燃えたいとおしい恋人が他人になってすぐ傍にいる。秒針と鼓動が同時に波打って美月を誘導していった。列車の扉が開かれた。 悦史のすぐ脇に辿り着いた美月の左手、通りすがりの見知らぬ女の左手が、悦史の左手をぎゅっと握り締めた。わずか一瞬の出来事だった。 静かな予感が漂った。「気づかないで! そして、少しだけ気がついて! 」 今ひとたびの哀れが微笑んだ。 導線上にもう誰もいなくなった途端、神経の集中から開放された細胞の多くが崩れ始めた。 「ん?・・・・・・」 悦史が振り向いた。 人のいないホーム、そして女が去って行った。確かに感じた手のぬくもり、懐かしい感触が残った。 悦史は左の手のひらを見た。「さあ! 林崎さん、乗りましょうか」 男が悦史の肩に手をかけた後、足早に去って行く美月の後ろ姿を見た。掴んだぬくもりをポケットに仕舞い込むと、悦史との最後を見届ける星の群れが精一杯の煌きを放ちながら、たった一つの月を励ました。小さな手に充電させた悦史との想い出を、誰にも奪われることもなく生きていける。漏れていく潤いが雫の形を失って唇に流れ込むと、肩が僅かに震え始めた。「さようなら・・・・・・私を見ないで! 振り向かないで、さっさと消えて!能登に乗って彼方に去って! 」 21時30分、急行「能登」金沢行きが発車した。 続く
2006/11/04
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Photo byしっぽ2さん 何くわぬ顔で太陽が顔を出す。光に包まれた街を見下ろしながら、母国香港へ早々に帰って行った華連を想う。 ベランダには息絶えぬ鉢がいくつか並んでいた。余力で水を注ぎ零すと、乾いた土が素早くそれを吸いんでいった。 「惜別の涙が枯れてないのなら、時よ! 早く目の前から消えて行け! 」 美月はやがて何処からともなくやってきた飛行船に目を移す。それはあまりに無神経で平穏で、どうしようもなく幸せそうに浮かんでいた。裏腹に背を向け、手にした便箋を読み返す。「日暮マネージャへ いつも配慮をありがとう。 今夜もまた、わがままを許して下さい。 店に行かれなくなりました。 黙って去ることはしません、美月は・・・・・・ 同伴の約束の浅島様は明海さんにお願いしました。 黒岩様には日向さんから、美月が留守のことを伝えてもらいます。 けじめをつけてから紫音に帰ってきます。 純子さんにも心配しないよう伝えて下さい。 それから華連さんが辞めた時においていったドレス、勝手をしました。 今夜、クリーニングからもどるはず。 胡美さん、揺香さん、渚さんが時々着てくれたら喜ぶと思います、華連さん。 よろしくお願いします。 ご迷惑をおかけします。 美月より 」 あっけなく日が落ちていった。 雑踏を見つめながら、硝子ごしに「上野駅」の文字を目に叩きつける。冷めたコーヒーを最後の一滴まで喉に通し、人垣の移動の繰り返しを見届けた。交差点ではいくつもの人生がすれ違う。 家路に向かう人、これから始まる夜の世界へ気持ちを着替える人。 透明なバリアを突き抜けながら裏腹がすれ違う。 「時」がやってきた。 どんな荒んだ景色もやがては人込みにまぎれて輪郭を失うのだろう。 シワくちゃになった心も、やがてざわめきが剥れていくのだろう。 美月は決心を立てた。北の玄関口に向かって歩き出す。 明るさを寄せ付けないその駅に一歩を入れた。「上野発21時30分 急行「能登」金沢行き。 16番ホーム 8号車」白いコートの襟を立て、夜の華を脱ぎきれない女が意思を持って歩く。コツコツとパンプスの音が響く。 「あと30分」 時計をちらりと見た。 横たわる漂泊者を視野に巻き込みながら、低いコンクリートの天井に圧迫されながら疲れを漂わせた空気をいっそのこと体に染み込ませながら・・・・・・歩く。 続く
2006/11/02
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Photo by kitakitune05さん 「届かぬ手紙を書きます。 悦史様・・・・・・ まずは、ありがとう!を言わないと、ね? あんな出会いの後、こんな意地悪な別れが来るなんて あなた、想像していた? 失った記憶、いえ失わされた記憶のお陰で せっかくあなたの温もりに出会えたのに 触れ合えたのに 愛し合えたのに 突然の深夜の訪問者に包丁を向けた私 刺さないんですか? そう言った覚悟の瞳 あなたの中に私を見た時、私はあなたの濡れた髪を拭いた 消えてしまったあなたとの再会「紫音」 あそこはね、私を救ったお部屋なの どうしてふらっと来てしまったの? ねえ? 過去を押しつぶそうとして少しもがいた私 明日を恐れない私を作ろうと、ちょっと頑張っていた私 ふたりはきっと無意識層の底の底で呼び合った、ね? 綺麗な目をしてロックを呑んでた 平静を装い、運命の悪戯に「なんてことしてくれたの!」 「ありがとう! 」でもなく、「困るじゃない! 」でもなく ただただ、目の前のあなたを静かに受け入れる振りをした そうして運命の子悪魔が三度目の悪戯をしにやってきた 今度はあなたが私を助けにきてくれた たったそれだけの事、ね? どうって事ないじゃない、ね? 車で抱き合い、束の間の幸せをかみ締める旅に出た 後ろから、何度も抱きしめられた 多くを語らないあなたの呼吸をいつも聴いてた 胸の鼓動と煙草の匂いが好きだった 愛は時間の長さじゃなかった、ね? 引きかえにして持っていかれた私との想い出 私は返して!とは言わない 言いたいけれど、言わないんだ 明日、行くからね プラットホームで最後のあなたを感じにいくから 夢の中に連れて行ってくれたあなたに そっと手を振りにいくからね だからもう・・・・・・泣かないんだ私 消えた記憶のお陰で 私達は「永遠」を手に入れた、ね? 封じ込めた愛の「ひたすら」があれば 犯されない「絆」があれば 無邪気と照れの「惹かれあい」がふたりをきっと 素敵にしてくれる だから強くなるんだ私 いつかどこかで 爽快な青空の下、スクランブル交差点で もし私とすれ違ったならば 愛のキューブを丸くしようか! どんどん溶かしてしまおうか、ね? 溶けた時からふたりではじめようか、ね? 何を?って、今度こそ意地悪な出会いじゃないんだから 一緒にずーっと、ずーっと一緒にいたいんだ! 傍にいて欲しいんだ! 大きな腕で包んでほしいんだ! 私も微笑みかけるから! もう泣かないから! ね? 美月
2006/11/01
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Photo by kitakitune05さん 日向の視線に頷きながらタクシーを降りた美月が、小雨の中に消えていく。路上は仄かに反射し、折れそうなハイヒールを痛々しく眺める。灯りの消えたいくつもの窓が並ぶアパートの階段を上りはじめた時、背中でタクシーが走り去る音を聞いた。 「守ってやりたい」 公園のブランコでひとり寂しく揺れている美月がいたなら、そっと近づき言うだろう。「こっちへおいで! そんなに漕いだら危ないよ。 さあ、降りておいで・・・・・・。 震えた手でグラスに琥珀色の液体を注ぎ、馴染めぬ空間に戸惑いながら焦点の合わぬ絡みや仕掛けに目をぱちぱちさせてきた君。 扉を開けた男たちが何を求め、どうすれば惜しみなく払われる万札に見合う気配りができるか? そんなことをまともに背負ってノートにせっせと記しながら、やがて華を知り、男を知り、夜を知ってきた君。それでも心を着飾ることなく紫音に溶け込み、いつしか奇妙な存在感を醸し出す。「ちやほや」に酔うこともなく、目の前のひとりを大切に液体を注ぎ、心を注いだ君。 ある時は嫌悪と怒りを払い除ける為、危険に惜しみなく身をさらしてきた三日月。鋭いナイフが闇夜に刺さり、しっぽを巻いて去った欲望の牙からの復習。 出逢い。紳士なリーダーは菩薩観音が彫られた背を黒で纏い「何かあったら力になる」と言う。荒げた客に八重歯の視線を向けた後、対等にして限りなく優しい佇みに守られる君なのに。 さあ! もうブランコから降りておいで! 何をそんなに頑張るんだい? 空に舞い飛ぶほど漕がなくたって空は逃げない! 」 美月は冷えたベッドで自分で自分を抱きしめながら、悦史との別れを受け入れまいと夢に落ちる。夜行列車「能登」 上野発21時30分 金沢行き白い紙を握り締め、枕を濡らしながらゆらゆらと夢に落ちる。 「この子、これでなかなかやるのよ」 日向が囁く。 「だろうな」 「勘違いしてんじゃねえよ! 紫音のベテランの姿がこれかよ! ん? 姉ちゃん達よう!情けなえなあ、おまえ等!」 美月が叫ぶ。 「そうかと思うと恋には馬鹿がつくほど純で甘ちゃんなの」 「だろうな」 「ねえ、あのベンチまで、こうやって、ほら! お姫様のあれ! 抱っこして?・・・・・・えっ? 聞こえなかった。 もう一度言ってよ、ねえ」 「うちの組に来ないか」 「固くご辞退させていただきます」 「気にいったよ、美月ちゃん」 もし今、夢から覚めたら叫ぶのだ。交差点の真ん中で膝を抱えてしゃがみこみ、煙草を一本吸ってから潔く立ち上がり桃白色の陽光が頬を照らさぬうちに、叫ぶのだ。「朝よ! 来ないで!」 続く
2006/10/29
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Photo bypooh0529さん 心の闇につけこんだ夜空に星はない。一言の悲劇「家族がいます・・・・・・」うっすらとぼやけていた雲が明快な言葉になったとき、美月の胸の錘(おもり)が破裂した。 日向とタクシーを降りると、比較的ネオンが少ない闇に「オレンヂ」と書かれた看板が目に入った。 「美月ちゃん、ここよ」「はい・・・・・・」 なぜか「はい」と返事をしながら、僅かに夕焼け色のライトに引き込まれて行った。紫音から離れた場所にある和風スナック「オレンヂ」の扉を開けると、その狭い空間に助けられた思いがした。 古い壁紙にもうひとつ「追恋路」おれんじと言う文字があった。 男が一人カウンターで日向に優しい目を向けた。「マスター、悪いわね」「どうぞ、好きな席に。 見ての通り、いつもの連中は今さっき帰っていったよ」 日向の揺り篭は、その姿に似合わぬ古い小さなスナックだった。だから美月は日向が好きなんだと思いながら、日向が迷うことなく向かった奥のボックスに静かに腰掛けた。 憩いの空間、癒して充電する揺り篭がどの華にもある。美月の揺り篭は狭いアパートのレモン色のテーブルの上だった。 そこにいつもあるノートとペン。いつでも疲れた美月に「おかえり」と微笑んでくれるのだ。 「美月ちゃん、軽く呑む? 」「温かいものをお願いします」 からだが冷えていた。 心に付き添って冷えているからだを暖めたかった。 日向も、たぶんいつもより言葉少なに美月に添ってくれている。 その空気を男がよむ。「マスター、私はいつものね! それからこの娘に何か温かいものを」痩せた男がカウンターの向こうで合図地をうつと、日向がバックから金色の刺繍が美しいポーチを取り出した。「さあ、話していいかしら? 」 事後の漂いならいいものを「あとずさり」したくなるような時に挟まれた漂いは苦手だ。だから美月はポーチから目を離し、素早く日向に覚悟の視線を送ったのだ。「あなたの恋人、わかるわね? 実はね、彼がいる病院のつまり担当医、私のこれなの」親指をさりげなく色っぽく示した日向に言葉を失った美月。その目が一瞬大きく見開いた。「それで?」と後を急ぐこともできぬまま唖然とした。「どうして?・・・・・・」「頭を強く打ったことは警察から聞かされたでしょう? それから・・・あなたも辛いわね」そう言った後、まるで忘れていた飲み物がテーブルに運ばれてきた。 品の良い器にお通しがふたつ。漬物が数枚並んだ小皿がふたつ。 男の気配りに美月の神経が少し潤んだ。「店の名前、紫音。 それから貴女の名前、つまりそういうこと。 運ばれたベッドの上で彼はそれを何度も口にしちゃってたのね。 ああ、いやだ! ついでに私の親指もベットの中では医者を捨てたのかしら? 私の魅力のせいね、きっと」「私の名前を? あの人が? でも警察は、金沢から追ってきた・・・・・・」「あっちの事件にハメられた人、でも金沢署が家族に知らせて到着する前のことよ。 安心なさい。 あなたそこの所も気になったのね? 馬鹿ね、本当に・・・じれったいわ」「私達のことをどうして? 」「わかりやすいの、あなた達。 明海が言ったでしょ? ねえあなた、そういう女だから」「すみません」「どうして謝るるの? それから今言ったわね?私達のことって。 あなた悪い事ができない。あっはははっ! 美月ちゃん、渚や胡美を相手に、悪の上原相手に途轍もない度胸が座る。組からお誘いが来てもいい女。なのに全く裏腹を持ち合わせてて、おまけに純で!」 紫音という紅つけ指が争う空間で自信に満ちた和服の女王。今ここにいる陽気で自然な一人の女。 美月は同時に影と陽を受け入れながらこう言った。「あの人に会いたいんです! どうしても! 日向さんの恋人は何て? 」「正直ね、惚れたのね?それもまた素敵なこと! あなたは過去に辛い思いをしたでしょう?また同じ目に合う。 でもどこかが違う・・だから人肌脱ぐ気になったの、わかるかしら? 」「過去のそれとは違うんです! 私は違うんです! この覚悟が有耶無耶な過去を消す。私はあの人とけじめをつけなければ、私は私のままなんです! だから・・・・・・」「私を召し上がれ! そういうことが出来ないから苦しむのよ貴女。 昔の私ね・・刺激が強い言葉だったわ。彼は来週退院する。 日本海に帰って行く・・現実が蘇ったと同時に貴女との月日が消えた。どうする? 」 美月は淡々と吐かれた極めつけに留めを刺された思いがした。それは日向が一番伝えたかったことであり、躊躇の末の優しさでもあった。ぽん!と托された事実を引き出しにしまおうか? 覚悟で呑みこもうか? 少しの沈黙があった。「普通の暮らしが待っているなら、引きかえにされた記憶で私が去ってしまったなら・・・・・・あの人を温もりの彼方へ返してあげないと! ね? 」 日本海のしがない漁港・・罠・・幻覚の白い粉・・宿命・・。 あの人と出逢えた訳、悪戯な訳が今度は私からあの人を奪っていく・・・・・・美月は囁いた。「温もりの中で感じていました。 あの人にはきっと、どこかで待っている人がいるって。だから、ずっと記憶が戻らなければ!って願っていた私。 罰があたった、きっとそう」「逢いたい? 」「逢いたい! 最後にひと目」「彼は貴女がわからない、いいのね? 」「消えてしまったなら、都合がいい。 大切な人にも悟られなずにお別れができる・・・・・・私は運がいいのかな? ね? 日向さん? 」 咽びながら泣き、泣きながら咽ぶ美月にカウンターの男がじっと耐えていた。お気に入りのポーチから白い便箋を出すと日向が言った。「手を貸すわ! はい、これ! けじめ、つけていらっしゃい」 夜行 急行「能登」 上野発ー金沢行き 21時30分発 続く
2006/10/27
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今日の予定「ラストチャンス」は都合により、明日夜UPします。 恵 香乙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 編集者との打合せ 「 」の使い方。 半角ずらすなど。 ひらがなの方がいい言葉。「全て」・・・「すべて」 「傍で」・・・「そばで」 「暫く」・・・「しばらく」 「欲しい」・・「ほしい」 文中の・・の「・」は6つ。 「愛してる・・・・・・」となるらしい。 横書きから縦書きに製本されることで%はパーセントへ 40歳は四十歳へ happyは「ハッピー」へ !や?の後は空白、ワンスペース。 小学校で習ったことも多々。 文学科などとも縁がなかった普通のおばさん、好奇心と書くことが好き、、ただそれだけの主婦を相手に、とても親切な編集者さん。表紙、帯の言葉(前と後の文の違い)、あとがきについて等打合せ。3月1日~15日には全国300書店に並ぶ。 事前に毎日新聞「新刊紹介」に出る。たくさん大事なことを聞いたのだろう。 他人ごとのような感じ。 疲れたのかな?未だピンときてなくて・・・・・・。同時に気になる「紫輝」の最終審査。 中途半端な「入選」「佳作」に○○権が発生して?なことになる。 ポプラ社の募集もちょっと気になるけど、遅い。昨日の性格診断の通り、考えるより行動!がこういう時はマイナスに働くのかな。「紅つけ指」のワード打ち込みと整理の作業も一端中断だ。 講談社&TBS ドラマ原作大賞第一回。 プロの方がどれだけ応募するんのだろう。しみじみ知らされた自分の無知識と無才能と、何より「現実」。 かなり図々しいしし! あははっ! 身の程知らずただ、チャレンジ精神は失いたくない! シナリオにも興味がある。 無いのは才能と時間。 正直に書いてしまったな。 ありのままだ! これでパソコンのボタンを押せば、ね? でも、私は押すんだな。 ここの部屋の仲間が大好き。 「紫音」はみんなで考えた店の名前だったし。 帆影、夕舞、いろいろあったな。 来春出版の本、「奏でる時に」はタイトル変更なし。 作者「恵 香乙」もそのまま。 表紙は作者の希望、イメージをデザイン担当者に伝える。 2006年1月16日から「夏色のときめきを」「奏でる時に」「天使の梯子」 「紫輝 「紅つけ指」を休みなく書いてきた。 その中で自分の自分らしい、 そして「奏でる時に」の 主人公「加奈子」らしい表紙が出来そう! これは嬉しい。 編集者Yさん 「今どきは、加奈子さんのような女性はいないんでしょうね?・・きっと」 香乙 「そうですね、加奈子さんのような決断、んー・・・・・・たぶん?」 では おやすみなさい
2006/10/25
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photo by kazu0873さん ~ 日本歴史占い ~ 粋なベイシスト♪ makobassさんの23日の日記からお借りしました。 いろんな占いを楽しめます。 で、、今回は我が家でも大受け! 笑いは健康にいいから、身内、友人の分までやってしまい、大笑い。 何故って? 当たってるらしい、、うん、たぶん。 あなたは・・・「応仁の乱」のきっかけを作ったトラブルメーカー 日野富子 刺激を求めて走り回る行動派。あなたが苦手なのは平凡と退屈。 おしゃべりしていないとストレスが溜まるので、常に動いていないと気がすまない。何をするのも手早いのですが、うっかりごとが多いのでトラブルも続出。 口が災いすることも、ままあります。室町幕府8台将軍の妻も、タイミングの悪さつきまといました。 気性は激しいのですが裏表がなくフランクなので、友人には大事にされます。頭脳、知性・・・・頭の回転が速いが、一つのことに執着しない。 次々と新しい遊びを見つける発見のプロ。センス・・・・・・短期集中型。 その都度、結果結論を出したいタイプ。 短いスパンで明確な目標が設定されたら強い。 一気化成にやり遂げる。 感情・・・・・・・感情がストレートに顔に出る。 嬉しい時は子どもみたいに無邪気、怒った時はまるで鬼。 気性が激しいと思われているが、実は裏表がなく正直者の証拠。外見、言葉・・・・人が1つ言う間に、10くらい言っている。 情報の絶対量が多い分、トラブルを引き起こす確率が高い。 反応が早いので、早とちりもするが、明るさと活発さで フォローする。行動・・・・・・・軽快なフットワークが持ち味。 考えるより先に体が動き出し、勢いよく弾んだゴムマリみたい に一目散に駆け出している。 しかし、行き先を確認しないことがある。 途中で気が変ることも。 愛犬「オグリキャップ」
2006/10/24
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photo by kitakitune05さん なぜか未だ見た事のない日本海が頭の上で、荒波を立てて叫ぶ。金沢署が押さえた輪島漁港。 白い粉が地味に出入り可能な目隠し・・・入手の手口も闇の靄も萎びた平穏に付け狙うルートなど、今の美月にはどうでもいい事。刑事の僅かな言葉より、寒々しい荒海の見える岸壁に佇む悦史の夢を見ながら、うなされる。何度も何度も打ち寄せた波に消えはしないかと両手を伸ばす。 荒んだ暮らしが続いた。紫音の隙間を埋める背の高い観葉植物の影から、日暮が窮地に立たされた月を見つめる。「ここからが勝負だな・・美月!・・咲くか朽ちるか? おまえはどっちだ?」明海が他席に動いた後、黒のご一行から移動をしてきた美月。まるで意思のない足取りで浅島の横に腰掛ける。 「いらっしゃいー! やっと隣にすわれる・・・この席が一番安らぐのよ私・・」無防備な言葉に慣れた浅島が思うのだ。 (そんなことを言うのは、ここだけだろうね? 君が言うと、お世辞にも社交にもならない)「煙草、吸い始めたんだね・・・」 浅島がシガレットケースだけを見て、そう言った。「ええ、、ホステスだから」 つっけんどうな正直。 V.S.O.P.をグラスに注ぐと、目を合わせずにいる浅島に寄りかかりたい衝動にかられる。不自然な空間が出来上がってしまったと思いつつ、時は静かに流れてしまう。日暮は悦史と美月がその席で無言でまどろんでいた晩を思い出す。 「駄目だよ、そんな呑み方は・・」 浅島が言った。美月が両手て強くグラスを握り、胸にそっとあてていた。浅島への安堵と懐かしい父性感、最後の一滴が全身にまわると、ラストの曲が流れた。ピアノマンは静かに悟っていた。 孤独な男は空間のもつれを音色で柔らかく解きながら揺れる。「太陽がいっぱい・・」 奏が閉じられる頃、浅島が言った。「・・・話したくなったらいつでも力になる・・・必要なければそれでいい」切り刻まれてきた心が、まな板の上で悲鳴をあげる。美月の唇が僅かに震えた。「そんなに酔って! 言ったでしょう! 店に来たら私生活を脱ぎなさいって! ホステス失格・・まったくこの子ったら!」 凄まじい明海の言葉が響く。 もう一つの優しさが包んだ。「美月ちゃん、うちに泊まっていきなさいよ、あなたの部屋より近いし・・」純子が腕を優しく捕まえて、そう言った。「大丈夫ですよ私、何でもないんだし。 嫌だー!みんなでどうしたの? 酔ってなんかない!」白髪交じりの紳士、浅島が動ぜずして言い残した言葉より引き付けるものは何一つない。ただ、ありがとう・・と心がうねる。 悦史を連れ去ってしまうであろう日本海の波に負けない叫びで、心がうねる。 うねってうねってどうしようもない。 やがて美月はゆらゆらと波に揺れながら店を出て行った。 穏やかな口調、遠い昔に感じた懐かしい匂いに混じって、異質が続々と現われる。 「この女、たまらないだろう?!」 上原。 「日本の女に飽き飽きだ・・」 華連を狙った嫌な奴。 ありとあらゆる出たら目、女に貢がせる天性の持ち主。 硬い仮面を被って、ひょうひょうと悪を働くお役人。 どこか憎めぬ、金いらずの遊び人。 華を華として扱った数人の男達、弁護士、ニュージーランド牧場主。 美月が自分を高めた厚いノートが文字で埋まっていた。そうして最後のページに一列に並んだ華の名前。 純子・・・最初に声を掛けてくれた人。 上原の牙を交わした、、ざまー見ろ! 明海・・・自分にも人にも厳しいベテラン。 スパン!とした気性が好き。 日向・・・黒のご一行に添う、限りなく魅惑の人。 華連・・・暮らしの為に日本の景気を利用する健気と利口と不器用と・・・。 揺香・・・無意識な存在感。 清楚で可愛い華一輪。 渚・・・・はしゃぐ敵?あるいは味方、エネルギッシュ。 胡美・・・リンチ、嫉妬。 ストレートな若葉の魅力。 マネージャー日暮・・・命の恩人、それは忘れないように! ね。 美月!と言い聞かせ・・。 ピアノマン・・・・・・奏。男の粋、苦労と遊びの一体。 紫音の大切な宝。 カウンターマン・・・・扉の向こうとこっち。 きっと知り尽くした裏方ふたり。私を取り巻く仲間達。 中身の無い白い冷蔵庫、裸のハンガー、締めっきりのカーテン、転がった空き缶、溜まった吸殻、走り書きのメモ。「美月ちゃんへ 明日、スナック「オレンヂ」へ・・・店が引けたら。 日向より 」 更衣室からいそいそと去る寸前に、帯から抜いた白いメモ。冷え切った手に握らせた温度のある薄っぺら。 和服の添い加減に似た流れるような文字。 ( スナック「オレンヂ」・・・あえて、選んだ遠い店。 あなたの大切な人のこと・・・来る来ないはあなた・・・) 悦史の病室が落ち着き始めた頃、美月の心が葛藤の渦に泣き叫ぶ。 沈む事を人にさせない月が自分を沈ませずにいられるか、、今、再びの瀬戸際。 レモン色のテーブルに頬を置き、幻想に刺されながらうとうとし始める美月。意地悪な朝陽がカーテンの色を明るく変えていった。 続く 明後日「ラストチャンス」
2006/10/23
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photo by pooh0529さん 美月が顔の前で可愛く手を振った。「ここよ! ねえ、、どこを見てるの? 何を考えてたの・・・?」「別に・・」「怪しいー・・!」格子の引き戸の奥に存在感のない狭い和室。 迫る襖を開けると十畳程の部屋があった。お行儀よく並んでいた座布団が、座卓と一緒に脇にずれていた。真っ白い寝具が眩しい。 ふたつ敷かれた布団を照れくさそうに見ながら言った。「遅かったな・・」「・・で、しびれをきらせて部屋に戻ったの? 普通はお風呂の出口で待ってるのよ」「そういうことは苦手だ・・」「温泉に来て、何を格好つけてるの? おかしな人!」 毛並みの無いツルンとしたカーペットの上に籐の椅子が二脚、丸いガラスのテーブルが顔を出して二人を見る。窓辺に立った悦史を覗き込むように見た美月の髪がさらりと解けた。「見てごらん、・・・山が眠り始めた」「んー? ・・・」 窓にオデコを当てて腰を屈めて「どこー?」と美月が言うと長い髪に少し触れてみたくなった。 その手は浴衣の帯紐に向かった。「本当! 月と星しか見えないー。 山が眠った証拠ね」悦史は即座に両手を引っ込めた。 「俺の月はここにもいるよ・・」 咄嗟に誤魔化してみた。「あっ! 今、何かしようとしたでしょ? どうして止めたの? 意気地なし!」「困った人だな、君は・・背中に目がある」「そうよ、あるのよ・・ほーらね」近づけた美月の背中と悦史の胸が密着した。 両手が美月の胸の前で絡み始めた。 「よく眠っています・・・薬が効いてますから」「はい、・・気がつくのでしょうか? 先生?」「大丈夫ですよ。 意識も戻ります」「・・・あなた・・」ぽたりぽたりと落ちる点滴の音か、滴る血液の音か、 寄り添う人の涙の音か、、静寂の中で周囲を観察するもうひとりの自分がいた。 ふたつの世界を行ったり来たり、揺れる波にひたひたと背中を浮かせ水底から不思議な光を浴びたかと思うと、空から誘う陽光が誘い上げる。次第に宙に浮く。 凍りついた身体が一瞬金縛りに合う。 「行かないで!・・・ひとりにしないで! 傍にいて・・身体を放さないで、隙間をつくらないで!」 突然、しなやかな手が伸びる。 すると、背にあたる柔らかな陽射しが揺り篭へと導く。屈託のない笑顔がふたつ。 少し事情が違うなどと戸惑いながら、健やかに馴染んでいく。風化しつつある街並み。 潮風に吹かれながら心温まり街に微笑みかける。燈る灯り。 遠ざかったいた安定に連れていかれる。 割り込んできた小悪魔が天使の顔を見せながら、扉を開く。ミラーに映る華達は、色とりどりのドレスを纏い、ラメをきらきらさせながら微笑の光線を仕掛けてくる。 手を引いた小悪魔がもたれかかり、囁いた。「ずっと、待っていたのに。 このソファー覚えがあるでしょ? ロックでいいわね?ピアノはひまわりでいいわよね? 紫音の美月・・・忘れたの?」調和のとれた時間と空間にまどろみながら、悲しげな瞳で見つめれらると何故か自分が自分でなくなっていく。 「本来」がありえない方向へ心地良く向かって行く。明日のことは思わない! 昨日のことも・・・今このひと時さえあればいい!肌を重ねるたびに、そう女は繰り返す。 愛しいもだえ、激しい息使い、やがて到達した空中から、真っさかさまに振り落とされる。 「全ては終わったのよ、ねえあなた。 いつでも帰ってきていいの」「利用され続けるなんて、あなたらしい。 許せ!なんて言わなくていい。 私達の所に帰りましょう。 日本海・・あなたが好きな水平線・・ちょっと寄り道しただけ。 影は見なくていいの、陽のあたる所に戻りましょう」安らかな眠りに変った。 気がかりが去っていった。 失った記憶が戻ったその時、運命がオマケの悪戯をした。半年間の記憶が消去された。 罠と知らずに運んだ白い粉も、誘惑の肉体も、企ても脅しも、ゼロになったと同時に、鉄の扉が閉じられた。 そうして扉は悲しいことに、美しい月の姿を夜空から消し去ってしまった。ひきかえにされた記憶は埋没に向かってあっけなく遠ざかった。 続く 次回月曜 「荒波」 美月は今月いっぱいでさよならします
2006/10/20
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紫音が穏やかに明けて暮れる。訪れる客にも迎える華にも日々変化があるにも関わらず、何食わぬ顔で佇む空間。 それは悦史に手を振ってから二日目の晩だった。活気の上昇が早く、下方のワインレッド、真ん中のミラー、トップから落ちる光色がいつもより鮮やかに映る。彼等は曲線を織り成す華達を追いかける。 作られたキューブに運ばれるボトル、交わされるグラスに笑顔が何よりのツマミになっていた。日常を脱ぎ捨てた男達は鬱屈を解き、少しのハードルを越えてきた華に癒しを求める。 純子は白と黒の大胆な切り替えのタイトスーツで、優雅にキューブの光を浴びる。そうして対角線上にいる美月をちらりと見る。夜の世界に降りてきたばかりの美月のお気に入りを、純子は何度か美月に貸した。「今日はこれにする! いい? 純子さん・・いつもいつもごめんなさい・・初給料が入ったら、クレジットで買う。 マネージャーの言葉に甘えて、それから純子さんにもすっかり甘えて・・・」「そんなことはいいのよ。 サイズが合うから良かった! ねえ、これ好きなの?」「ピアノの鍵盤みたい・・・白黒はっきりしていて、めりはりついてて、、、ね!」 そんな会話を交わした頃から輝きを増していった美月が、儚げな表情で浅島の席に添っていた。 艶やかな唇を魅せる明海が、浅島と美月の間で少しのジェラシーの距離を保とうとしている。 「どうって事ないわ!」 明海の仕草がそう語る。 「美月ちゃん・・」 言葉の変わりの合図だった。日暮がこぶしを軽く耳にあてた。暗号に見えてならなかった。 直感が空間を数ミリずらした。「事務所ですか? ピンク電話?・・」「事務所・・」日暮はろくに顔も見ずにフロア-に消えてしまった。浅島と明海に「ちょっと・・・」と言い残し、ピアノの後ろを速やかに歩いて事務所入った。 黒い受話器を持った。「もしもし!・・」「金沢警察の小室と申します。 突然ですが、、クラブ紫音の美月さんですね?」「金沢・・?! はい、美月ですが?」「林崎悦史さん、ご存知ですね? あなたの名刺がありました。」「彼が何か! 何かあったんでしょうか!?」 美月の前に黒い雲が覆った。「事故です。 あっ、命に別状ありません。 ただ・・地元の署まで来ていただけますか?」「病院は何処です?! 教えて下さい! 怪我は? 怪我はないんですか?!」表情が変わった。 足が振るえ、受話器に力が入った。 大きな欠伸をしながら支配人が入って来た。「落ち着いて下さい・・・、とにかくこちらの署でお待ちしてます」「支配人! 早退します! マネージャーに伝えて下さい。 急用だって!」「ちょっとー! ・・・」 支配人を振り払い、何をどうしたのかわからぬ状態で外に出た。雨で路上が濡れていた。 空車もタクシーが目の前を通り過ぎて行く。「何なの! 止まって!・・・行かないで!」 ブレーキの音の後、後方の扉が「待ってました」とばかりに開いた。偶然だった。あの晩の運転手が振り返った。 上原の牙を交わした純子と美月を乗せた孤独の走り屋。「お見事ですね!」 そう言って軽く微笑んだ男がいた。「あなた、、でしかた? どこまで?」「警察! 急いでくれる?」「はい、・・・あなたはいつも危険と隣り合わせだ」不安定な身体で助手席のシートを後ろから抱き抱えた。無言の男が夜の街を急いだ。 乱れた髪から雨の雫が滴った。硬い塊に囲まれながら美月は急いで階段を上がった。 張り裂けそうな心臓が悲鳴をあげる。 取って付けたような間仕切りの奥にやっとの思いで腰掛けた。「大丈夫ですか?・・濡れてますよ」刑事の冷静に腹を立てながら、呼吸を整えよ!と自分に言い聞かせた。「美月です! 彼の病院は? 会わせて下さい、お願いします! どうして、、どうして金沢なんですか? ここは・・違う街です・・」「落ち着いて下さい! 貴方の本名を聞かせていただけますか?」「・・・」「警察です。ここは・・そういうところです。 ある事件が絡んでいます。 その為に我々はここにいるんです。 もう解決に向かいますが、、念のため」「高田美波です。 美波・・・です」 遠ざかっていた自分を口にした。気のせいか、まるで他人の名前を呼んだような気がした。もう一人の男がペンを走らせる。 (とっくに調べているくせに、、?それは無理か?)「林崎悦史さんは、お客様ですね? あるいはそれ以上の・」「そうです! だから会わせて下さい。 何も隠しません! 彼が何をしたんですか?事故は何処で何時?」 一変した空間の中であの度胸の引き出しが開いた。次に来るであろう「ひた隠し」への覚悟はすでに出来ていたのかもしれない。それでも、ろくなことがないのなら、今、この場から立ち去りたい! 片っ端から病院を探せばいい。 そういう衝動に襲われながら美月はゆっくり腰を上げた。「お待ち下さい! 大事なことを伝えてない。 さあ、、掛けて。」「・・・」「病院、、病室にはご家族がいらっしゃいます」「家族...?」 血が引いていった。 水槽の底から足が離れた。「はい。 奥様と4歳になる息子さんです・・・ただ、貴方の名前を呼んでいました。頭を強く打っています。 異常はありませんが、ただ・・・あなたご存知だったでしょう?彼が記憶喪失だった事を」「・・・はい・・・。 戻るんですか? 記憶?」「さあ・・・。 林崎の事にかかわりが無い、、今のあなたはそういう事ですね」どうでもいいことを凹凸のない言葉で並べているのか、少しの哀れみが隠れているのか「名前を呼んだ」・・・その言葉だけを繰り返しながら、あの晩のことを思った。 photo by yuu yuuさん 「俺が、もし・・」 「ん? なーに?・・」 「いや・・」たくましい腕を枕に聞いた悦史の言葉は重かった。 だからその後、空いた右手を隣の胸で這わせながら、言いかけた独り言を追い払おうとした。 「きれいさっぱり忘れてあげる! 」裏腹が叫んだ。 緩やかな下り坂を心のカカトが独り歩きしていく。何処で飢えを凌ごうか?何を思い巡らせようか?濁りきった川に沿って、行く宛てもなくとぼとぼと歩くのか? 少し目じりが落ちた刑事が咳払いを一回すると、そのまま俯いた。うろたえながら冷静を作る健気な月が色を失っていった。 予感がせせら笑った。 「ざま-見ろ!・・・」 (今にきっと! 運命、あなたこそ、、今に泣きを見るのよ! 私を見くびらないで!)結論は出ていた。 自分が自分である為のそこに、必死で辿り着く為に・・・ 美月は泣いた。 閑散とした空洞に静々と涙が散っていった。 続く (明日、「悲嘆...引き換え」)
2006/10/19
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photo by kitakitune05さん 運命が嘘をつけばいい。思い切り嘘をついてくれればよかった。 そっと握った束の間。 手を少しずつ開いて満足げ。 僅かな思案顔に桃白色の陽光がさし、天使は微笑む。秋の悪戯に日焼けのしたくをする山々を後に、車が現実に帰って行く。 程よい乱れの明けた後、ききわけの悪い美月を降ろした悦史。心のこもった「おきざり」をミラーで何度か見ながら、アクセルを踏む。「ばーか! もう会ってあげない! 乗ってあげないー!」 などと言ってみせる美月もふたりに「次」があると信じる。 気持ちを着替えて紫音の華に変身し、グラデーションの仲間入り。ジュエリーのような華やかな空間でもなく、僅かに錆びた夕焼け色の空間でもない。クラブ「紫音」 美月の居場所。ピアノの上の蕾のライトが点灯し、こぼれる光が美しい影を織り成しながら舞い始める。 愛撫の後遺症を見逃さない明海が、肉付きのいい足をめいっぱい伸ばしてすわっている。純子はお気に入りのコンパクトでスタンバイの化粧直し。 揺香は日向と隅っこで着替え多くを語らない。 胡美と渚はキャーキャー浮かれながら客の噂話に花が咲く。 華連が美月に声をかけた。「おみやげ、ありがとう。 子ども、喜んだよ」 片言の日本語が愛らしい。「そう?! 良かった。 また遊ぼうって、、ね? 伝えて」「美月、あなた、大丈夫? 上原の話、危険、聞いた、噂あるよ。 私の為にまた危ない事した? それ、良くない!」「しない、しない! (黒のご一行にほんの少し声をかけて大人しくあの男を追っ払った)大丈夫よ華連! あの手の男は目的の為には手段を選ばない、と言っても、たいした事ない奴が多いから簡単」「美月、私が母国へ帰る、日本を去っても、そんな事はもう止めないと、、」「わかったよ。 もうしない! (・・・とも限らない) 」 しなやかな中指から外されたホワイトジルコン。 美月は数ヶ月後に日本を離れる愛くるしい華連の指にそっと入れる。「・・? why?」「お守り! ぴったりね。 I hope you will be happy forever.ん、了解?」やがて去って行く華に出会いの感謝。 母の想い出を心を込めて・・・。 気になっていた黒い影。感じ続けた視線を一人になった悦史の男が境界線の向こうへ行く。長閑な一時、最後の煌き。 身が持たないと思いつつ、違和感でさえ愛に変わる美月をポケットの奥にしまいながら・・・振り返った。「ついてくるなら、来い!」追従は一定の速度を保ちながら、あるいは目的を限りなく短縮させながらやって来る。静笑する奴等の正体を暴いてやる! 悦史が奮い立った時、誰かが笑った。 緊迫は悦史を追い込んだ。 運命は使命に燃えて迫ってくる。握ったハンドルが汗で濡れた。 いつもの激痛が走った。 頭が締め付けられる、やってくる凄まじい恐怖感。「くそう!・・・」 シルバーメタリックの異常に気付いた追従車。 直後の追突は闇を切った。ハンドルを切った先のコンクリート。 最後の力を振り絞り、暗闇と戦いながら悦史は大きな衝撃音のパイプの中を落ちていった。暗闇に転落する自分を、もう一人の自分が冷静に見ていた。 港町、 潮風、 西陽の当たる窓辺、 ぬくもり、 纏わりつく幼児、 えくぼ、白いエプロン、 作業着、 なびく風、 一本の電話、 スナックカウンター、 笑う女罠、 誘惑、 まどろむベッド、 利用、 あざ笑う男、 飛び散った白い粉、 逃走、悲鳴、 裏切り、 サイレンの音、 赤い点滅、 封じられた口、 乗せられた車、運ばれる体、 去って行く現実、 短くない時間のもがき。脱出の瞬間、・・・・・。 トンネルが角度を変えた。フラッシュバックにやられながら、痛めつけられられた身体で雨の闇夜をひた走る。生きているのか死んでいるのかわからぬまま、現実と非現実か見極める術もなく、ただ、ただ彷徨う。 見知らぬ街に辿り着き、こじあけた扉の闇に身を潜める。 若い女が現われた。痛めつけられた冷えた体、殺す息さえない数秒。女を背後から押さえつけた。 口を封じ「頼むから叫ばないでくれ!」と言った。女は運悪く、ひび割れた心の持ち主だった。 叫びを食い止め、気を失わせてしまった女を抱き上げる。(一瞬蘇る、、感触。 別のスクリーンが降りてくる。 那須高原、、陽射しを受けた木の葉が魅せた精一杯の煌きの中、ベンチまでの数十歩。 お姫様抱っこ・・くすぐったい)「すまない! すまない!」 何度も詫びた。雨が軋む窓に叩き込む。 こぼれる涙、震える手足。白い顔で眠る疲れた天使を横目で見ながら、途切れていく記憶を追いかける。激痛が走る。 呼吸が叫ぶ。 もう、もどらないでくれ!と叫ぶ。 気が付くと、包丁を震わせた女が立っていた。一歩、二歩、、「刺せますか?」刺さないことの前提が、すでに出会いの兆しの悪戯とわかっていたのは運命だけだ。ふたりの周波が乱れながら歩み寄った。境界線で狂気と殺気の交差がしびれを切らせた。 だから飽きずに眺めた運命が微笑んだ。 差し出されたタオル。 「風邪、ひきますよ・・これで・・」優しい目に変わった。 潤んだ瞳の奥で寂しげがしがみ付き、何かをせがんでいた。 取り巻く悪の群れが次第に遠のき、やがて消えた。間断の音なき道が現われた。密着への導き、偶然の再会と危険に居合わせた二度。 女が「三度」と言ったわけ。今、それが明らかになる。 背中会わせにふたりで不運を挟み込み、横歩きしながら愛にしがみ付いて燃えた。 暗がりの扉の向こうで女が囁く。蕾からこぼれる涙をぬぐいながら・・・呟く。 「ねえ・・! 後ろからだきしめて?」 運命よ、永遠の嘘をついてくれ! 過去は消えたと言ってくれ! 続く(20日金曜日 「俺がもし・・」)
2006/10/17
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photo by しっぽ2さん(この詩はしっぽ2さんのページで 拝見し、お借りしたものです) ~ 永遠の嘘をついてくれ ~ 作詞、作曲:中島みゆき アレンジ: 恵 香乙 イメージ:美月ワールド この街を見限ってやるのは俺の方だと ほざいたくせに 今日もまた この街で俺は酔っている 傷ついた獣達は 最後の力で牙をむく 放っておいてくれと 最後の力で嘘をつく 永遠のさよならのかわりに やりきれない事実のかわりに たとえ繰り返し なぜと尋ねても 探しに来るなと 振り払え! 風のように鮮やかに. 人はみな 望む答えだけを聞けるまで 尋ね続けてしまうもの 見知らぬ誰かの代筆で 俺は 永遠の嘘をつく 探しに来るなと 結んでとじる 今はまだ 旅の途中だと... 永遠の嘘をつきたくて...つきたくて... 悦史 この街に降ってきた夜 あざけ笑う人の波を掻き分けて 透明に漂った私なのに たどり着いた 扉のむこうで 今夜もまた 酔いしれる 傷ついた天使達は はかなげな瞳で微笑んで 羽を脱ぎながら 嘘をつく 永遠など ありえないと やりきれない不安をぬぐいながら たとえ繰り返し なぜと尋ねても もう 一人にしてと 振り払う 風のように鮮やかに. 人はみな 望む答えだけを聞けるまで 尋ね続けてしまうもの 去った自分の代筆で 私は 永遠の嘘をつく 戻って来ないでと 結んで閉じる 今はもう 夢と化したと 永遠に嘘をつかないと..つかないと... 美月 君よ 永遠の嘘をついてくれ いつまでも 種あかしをしないでくれ 永遠の嘘をついてくれ 一度は 夢をみせてくれた君じゃないか 出逢わなければよかったなどと 言わないでくれ 何もかも 愛のゆえだと 言ってくれ 悦史 貴方 永遠に嘘をついていて いつまでも 種あかしをしないでね 永遠の嘘をついて去って 一度は愛を寄せてくれた貴方なのに 出逢わなければよかったなんて 言わないで 何もかも 愛のゆえだと 言って消えて 美月 「君よ 永遠の嘘をついてくれ」 愛がこぼれる君へ 愛しい人へ 愛の為に去っていく・・・・あなたへ photo by しっぽ2さん (次回 火曜日「紅つけ指」 第3章 「追突」)
2006/10/15
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photo by しっぽ2さん 耳を傾ければ何かを語りかけてくるような木漏れ日の中。 悦史が言った。「ふらっと来てしまったな・・・」「明日の午後までずーっと一緒! ね?」 小鳥の囀りような心地よさが舞った。「明日の晩にはちゃんと紫音に返すよ・・」 寂しさがふと美月の心を沈ませた。 クラブ「紫音」、暗がりにほんわり浮かぶワインレッドの空間。 現実に戻された美月が空を見上げ、両手を挙げて大きく伸びをして見せた。「ああ・・・・気持ちいいー! 秋の匂い!」 心をごまかした。「酔ったんだね、いろは坂で」 僅かな風と光が美月を夢に戻すようにと促した。「うん・・・山のジグザグ! あれは駄目。 気持ち悪くなっちゃった」少し慌てた悦史の心を気遣った美月が振り返って微笑む。 整った二重まぶた、アーモンド型の大きな目が悦史は好きだった。そうしてその強い目に時々やられる。 自分には見えてないであろう目に・・・やれれる。美月は少し前を歩きながら、器用に髪を高く結んだ。 太陽が美月を照らした。「ああ! 眩しい! 私は月だから、きっと太陽にいじめられるんだー」「ん・・?」振り向いて後ずさりをはじめた無邪気が微笑んだ。「月と太陽と同じ空にいるでしょう? ね、、太陽は月をさらって行くのよ、いつもいつも」「ちゃんと捕まえに行くよ! 俺・・」「え? 聞こえなかった、なんて言ったの? もう一度?」「その手には乗らない」 心を緩ませた悦史は、くつろげて尚悪戯な月に心地よく反応した。 ちらりと見える美月の不安は、気に入った言葉を繰り返させようという企みに変わる。「不思議だな・・・君との出会いは・・紫音に引き寄せられた」「そうなの? 違うでしょう・・」 小声になった。「ん? どうして?」 また悪戯な言葉がやってくるのか? 木々の間から光が差し込み、時々ふたりを覗きにくる。 そうして、揺れもしない振り子にしがみついた愚かに手を差し伸べようとする。{違うでしょ! ある晩突然雨と一緒にやってきて私を背後から押さえつけて、恐怖の底に突き落としたでしょう? ・・・私は包丁を震わせて貴方に向かっていったでしょ? なのに「刺せますか・?」・・・・あなたはそう言ってうな垂れたまま私を困らせた。覚醒の一夜が明けると、そう、、貴方は消えでしょう? 「すまなかった・・・」ほら! こうしていつも大切に持っているよ、しわくちゃな白い紙・・貴方の文字。それが出会いでしょう?! 一人だけ忘れてズルイ! 発作が私を止めるんだ・・} 胸にこみ上げてくるものを抑えながら、言葉を引き出しに仕舞い込んだ美月が、つい大きな声を出した。「ねえ!」「ん?! どうした?」悦史が胸のポケットからつぶれたタバコの箱を取り出した。「吸っちゃ駄目! その手で抱っこして! こうやって、ほら、お姫様抱っこ!」目の前のアクションに思わず苦笑しながら、やはりタバコを一本出した。「あそこのベンチまで! ね? ズルイんだから」「ズルイって何が?」{ふたりで過去に触れないことが・・・不自然にズルイでしょ、当たり前にズルイでしょ・?}「いいから、こうやって抱いてよ。 王子様にしてあげるからさ・・・」「やってられるか! そんなこと・・」 背を向けると下から覗き込んだ秋の地べたがクスッと笑って悦史を立たせた。 やがてたくましい腕が美月になじんだ。長くしなやかな両手が王子の首の後ろで絡んで懐いた。 美月は右の頬で悦史の動悸を奪った。「見るな!」 「照れてるの?」「うるさい姫だ!」振り回さされる悪戯天使に酔いながら、我がままな姫をベンチに下ろすと熱くなった体を冷ますために再びポケットに手を入れた。{横顔、見ないでくれ} {照れを煙で吹き飛ばそうなんて、甘いのよ!} 疲れたベンチの僅かな隙間を埋めようと美月がずれてきた。 触れた肩の温もりを無視して気持ちよさそうに煙を吐き出す悦史にもたれかかった。「煙草、おいしいの?」「吸ったら許さない!」 {夢なら覚めないでほしい!・・・・} {嘘ならつき通してほしい!・・・・} 赤裸々をもてあそび、青に身を潜め、戯れを見下ろす真昼の月。 もうひとつの視線。「永遠」が約束されぬなら、せめて運命よ! 永遠の嘘をついてほしい。 悦史は空と話した。「さあ・・・行こうか?・・・」 続く 次回月曜日 風にふかれて 「永遠の嘘をついてくれ」
2006/10/12
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photo by Pooh0529さん「馬鹿ね、貴女!...」明海の言葉が耳にしがみ付いたイアリングのように離れない。付きまとう不安に理由がない。 だから程よい軋みを感じながら目の前の人を愛する。こんなことを覚えてしまった。 美月はにぎわいだ紫音の空間に馴染み、フロアーにヒールの音を残しながらあくる日も、次の晩も、時間と「心のちょっと寝」に訪れる男達に気持ちを注いだ。目の前の人を最大にもてなし、心満たすことが出来ないのなら、華は高価な花瓶の中で突っ立っていればいい。 サパークラブを出たふたり。悦史がエンジンをかける。 何時しか覚えた音と癖に美月は反応する。そう、エンジン音、、このドアの閉まる音・・これ・・指令のエコーに心が躍り、血が騒ぎはじめる。 助手席の小悪魔が天使の羽をちょっぴり魅せる。「ねえ、何処へ行くの?・・・ねえ?」土曜の晩、店が引けてからの待ち合わせ。 何処からともなく約束の場所にやってくる過去の見えぬ男。封じ込めたそれを荒れた指で弄ることを今は止めよう・・・美月は悦史の横顔を見つめた。「行こうか・・」「うん、行こう! 初めての旅、ね?」深夜の高速、音のない秋の夜空を飛ぶ花火のチカチカ、星の演出。月を独り占めした悦史のハンドルがきられた。 隣の無邪気が浮かれた声で喋り始めた。「ねえ、朝になったら、どんな絵の中にいるんだろう? 私達、ね?」「ん?・・」悦史は体も心も、さほど安定を崩さず静かに頷く。「通り雨? ほら!」 フロントガラスに雫が光った。「・・・らしいな。 すぐ止む」 悔しい位に動じない危険な香り、甘い温もり。美月は左の窓にオデコを押し付け、じっと外を見ていた。「どうした?・・」待っていた言葉が来てくれた。「どうした?って何が?」 淡々と答えた。「いや・・」 平淡を装った。美月が心にもない反応で焦らした後悔。 すぐに自然に言葉になった。「あのね、ほら? これ涙にみえるでしょ? 伝わる雫・・・」「雨のこと? 」「そっ! 雨の雫よ。 ほらね? 風で飛んで行く、斜めに逃げて行く。 これもそれから、ほら、またこの涙も・・ね?」 細い指をガラスに這わせる。「美月には、涙に見えるんだな?」「あっ! 今、名前初めて呼び捨てにしたー! もう一度言って! 呼び捨て・・・」「馬鹿言うな!・・・」「ズルイー! 呼んでくれなきゃ飛び降りてやる!」 「那須に入った」 悦史が前方を見てそう言った。「話を変えた!」 「休もうか・・?」 知らん振りが美月は嫌いではない。 心の照れが言葉より態度に出るわかりやすい悦史が好きだから、だから着いて来たんだと言い聞かせる。 ブレーキを踏んだ。追う車、黒い影・・・ふたりはまだそれに気付いていない。深夜のサービスエリアは大型のトラックが指定席に落ち着いている。 人影は見えない。 車が止まった。 雨も止み、悦史がハンドルから両手を離した。 サイドブレーキを引いた。沈黙の一瞬の後、どちらからともなく身を寄せ合った。大きな両手がしなやかな月を抱き寄せた。 崩れなかったのは心だけだった。 せがんだ唇に応じた悦史は、阿婆擦れた女には無い「脅える大胆」を持て余しながら抱いた。 ひたすら抱きしめた。たまらない密着に呑まれ、深夜の靄に紛れて溶けるふたり。 遠くから、近くから、過去から、あるいはとんでもない未来から、眺める静寂。 恋路を行く船が遠くに見える帆影に戸惑う、それでも美しい月がゆらゆらと湖に浮かぶのからしかたない。 なまめくから・・・しかたない・・・・。 追う車・・・色も音もない空間、闇の展開にただただ釘付けになっていた。 続く 次回12日金曜 第二章終「 真昼の月 」
2006/10/10
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photo by しっぽ2さん・・・・・・・美月です! こんばんはm(--)m・・・・・・ いつもクラブ「紫音」の扉を開けて下さり、ありがとうさて、美月を書いてくれている香乙姉。 皆さんもご存知の通り、ああいう方です!つまり、無防備、無鉄砲、無邪気、無意識、無茶苦茶・・・いくら言っても聞きません 年甲斐もなく、あっちにこっちに好奇心を抱き、ああみえて案外生真面目に頑張る。そんなオバカの香乙姉が、ダウン。~ヨロヨロ~~フラフラ~ 視神経使い過ぎ(9ヶ月間、文字とパソコンと睨めっこ その前は競馬新聞・・・) 過労と寝不足(4時間以上不可、睡眠障害) 更年期障害の兆し多々 持病の肋間神経痛、他。 悲鳴をあげた「不機嫌な体」にムチ打って、頭痛薬を飲みながら過ごしたオバカ。 そして今月から、3月出版に伴い出版社、編集者とのかかわりもスタート。よって、大切な時期に差し掛かっていることを自覚させました。 小説のUPは週1~2度、目と頭と相談しながら。皆さんの所にご訪問する機会も減ること、コメントを書けないこともある事、ご理解下さい。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 今日は母香乙の代理に息子の俺が母の下書き(ひっちゃかめっちゃか)を見ながら書きました。 はい! 息子です。 母がお世話になっております。苦労してます。 笑える母、驚かせる母に未だ親子であることが・・俺は父親似です!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「紅つけ指」 忠告 華連の部屋のカーテンが開いた。夕べの余韻を残しながら、越してきた華連の部屋を見上げる。朝帰りの女が静かに階段を上って行く。 ストン!と朝刊がポストに落ちる。 やがて賑わう商店街。 威勢のいい花屋の夫婦、花の好きな美月が通う店。空部屋ありを利用した。少し眠って、午後から華連の子供達といつもの公園で遊ぼう・・美月は再び振り向いた。「欲望から健気を守る、 あんな男は許さない」 「馬鹿は落ちて行く・・・・・」支配人が回転椅子を軋ませながら、腹を突き出して美月を見上げた。日暮が定まらぬ視線と落ち着かない両手に戸惑いながら、美月の斜め後ろに立っている。なで肩からずり落ちるドレスの紐を何度か押さえながら、口を尖らせた美月が琥珀色のイヤリングを揺らしていた。冴えない蛍光灯の下でシルクのドレスがイジケテいる。無断で店を休み、たぶん正体不明の悦史との関係を早々に悟った男が睨む。 やがて日暮の咳払いが沈黙にけじめをつけた。「まずいよなー美月ちゃん。 NO.1、、客が減るよ」 支配人がぼそっと言った。まだキーキーと音をさせている丸い椅子。 (煩い・・・) 「すみません・・・・今度は連絡します。 すみません・・」「違うでしょ、違うでしょ! わかりやすいな君は! 話はそこじゃない!」いったん背を向けた美月が振り返った。「簡単な女じゃない!・・・私は違う!」「わかってるよ、美月ちゃん、いいから・・・」 日暮がすかさず言った純子の顔が浮かぶ。日暮は白くなだらかな肩をドアの方へ向けながら 「振り向かないでさっさと行って!」と両手で合図した。 口を尖らせたまま更衣室へ駆け込んだ。 「あら、、紫音のNO.1さん!」自信に満ちた胸の谷間を覗かせた明海が微笑んだ。艶のある唇に挟まった煙草、左手でライターをカチカチとさせ、組まれた足は程良く肉が付き、美月は目のやり場に困ってロッカーを開ける。ベテラン明海が「ここに掛けたら?」と椅子を指差す。去って行く胡美と渚に「おつかれ!」と手を振った後、美月は覚悟を飲み込んだ。 「NO.1はねえ、客と寝ちゃ駄目よ。 しかも惚れた男ね、、馬鹿ね貴女!」 突進する若い津波。 いつか訪れる波紋。やっと得た安らぎ、小さな安全地帯に予告が舞った。 続く(次回火曜日予定 「静笑 追われる車」)
2006/10/05
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お写真=pooh0529さん 「紅つけ指」 ピンクの封筒は前ページに 舞台裏の主役達 昨日、市民文化会館で「チャリティー公演」があった。 この舞台の為に、半年間レッスンを重ね老体を励ましてきた。1000円のチケット代は市の社会福祉施設整備基金に寄付。 後援:市教育委員会、市文化団体教会 主催:芸術同好会 「音楽と舞のコラボレーション」舞台監督: 後に東宝株式会社に合併した東京発声映画製作所の元助監督を経て、戦前、戦後と長年にわたり、舞台、映画監督に従事。作品には「青春」 「純情一路」 「金剛山の四季」 「シンデレラ」 等日本テレビ開局により東芝(株)のCM作品数本監督プロデュース。東映東京撮影所に入社後「殺されてたまるか」 三田佳子、梅宮辰夫主演作品他従事。東映アニメ 「狼少年ケン」 「少年忍者風のフジ丸」 「レインボー戦隊ロビン」「魔法使いサリー」等の監督.出演団体:10 (バレー、太極拳、日舞、琴、マリンバ、ピアノ、和太鼓、ダンス他)バレー部門からは「ボリショイバレー団」に引き抜かれ、来年留学決定の未来のプリマが。ピアノ演奏者からは、国際芸術連盟新人オーディション合格、審査員特別賞受賞。第6回朝日新聞社賞受賞者が出演。 そんな舞台ほ把握もないまま、天然のまま好きなダンスをいつも通りにコナシテきた。多忙なせいにしたくないが、行き当たりばったり。 目の前の事をこなすのが精一杯。土曜日のリハーサルでタイトルの趣旨や内容、事の重要性がわかった。 プログラムを渡され、昨日の本番までのまる二日。 私は魅せられた 控え室から観客席、ロビー、舞台を行ったり来たり、走って、コケテ、叱られて、自動販売機から迷子になって、アナウンスで呼ばれた土曜日。 昨日はブログ仲間や友人、家族の不安を含む声援のもと緊張の本番を迎えた。ダンス4曲は、思い切り舞えた。舞台から転げ落ちることも無く、人と反対の動きをすることの無く、何とか終わった。他の出演メンバーの足を引っ張るような部分も無きにしもあらずだったかもしれない.それだけ、他部門のレベルが高い! もうため息! 感激! それ以上に私が見惚れてしまったものもうお別れ?・・なんか去りがたい。 言っても言い尽くせぬ思い。 裏方のスタッフの皆さん!高齢の監督はもちろん、ナレーション(主婦)、照明、カメラ、幕、音響、会場整理、受付、設営、メイク、清掃の方がた、楽器を運んだ業者さん、、、本当に「ありがとう!」 当たり前のことかもしれない。 たった数時間の舞台の為に、その影でこれだけの人達が黙々と汗して下さった。ライトを浴びる事はない彼等の、仕事を終えた後の「いい顔」 地味な裏方さんにこそ、大きな花束をあげるべきだと私は思う。そして、裏方に惚れた。 ああ・・・すぐこうなんだ~家に帰れば普通のお父さん、お兄さん、オバサン、お姉さん。 なのにカッコいい!いつまでもウロウロしながら、一人一人に「ありがとうございました!」と言った。本当はもっと感謝の気持ちを伝えたい! なのにさらりと交わされ、、それがまたそそる。 「俺はやったぞ!」 「私がやったのよ!」と言う顔をしてない。 舞台を引き立て、成功に導いて下さった無冠の友に最大の感謝を込めて頭を下げた。仕事をやり終えた満足の表情と、少しの「はにかみ」が心に染みた。 どうしよう?こんなに沢山の人にいっぺんに惚れてしまって身が持たない。 紅つけ指 「忠告」は木曜日。 頭と体と心を切り替える時間を持ちたいのでm(--)m
2006/10/02
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Photo by kitakitune05さん 月の綺麗な晩だった。オレンジの光を放ちながら、夜空の脚光を浴びて微笑む。目に曇りが無い者だけが感じる月夜。 おそらく心に地球儀を持って生きる天才も、下ばかりを見て事象を感じない凡人もふと頭を上げて、ゆとりの眼を空に向けたなら、きっと素敵な月に出会え、うっとり心が和むのだろう。 ピアノがバラードに変った時、紫音の扉が開いた。ラストに近い時間帯、空間に微妙が漂った。美月は対角線上にあの人を見つけてしまうと、不自然に目を背けた。絶えず付きまとっていた寂しさが消えたと同時に、体が熱く滴った。何ボルトの電流が流れたのだろう? と美月は戸惑う。ボックス席から美月が去ると、僅かな不満に頭を下げる日暮がいた。ひと席にゆっくり沿えないことは、華にとっても気持ちがいいことではない。指名の数より、使命の方に心を注ぐ華ほど、皮肉に持て遊ばれるものだ。 そしてわずか20分、、、美月は悦史のテーブルに付いた。多くを語ることもなく、ロックのグラスを見つめながら俯く点。点を目掛ける視線のいくつか、、日暮、純子、浅島、明海・・・・。「後で少し、話そうか・・」悦史がもらした。コースターで遊びながら、はしゃぐ事も笑うこともしない無邪気から、あの度胸の存在を探る悦史。 襲った男達に立ち向おうとするあの子は? 幾人もの女が存在した。「少し・・・・・?」「・・店が引けたら、あそこで待つ。 車、わかるね?」 悦史が去った。 華達が支配人と日暮の前に並んだ。オーナーが毎月用意するピンクの封筒、NO.1。その晩、華たちに給料が手渡された後、何時ものそれが始まった。時間ばかり気になる美月を横目で見る明海と純子。 二人は既に美月の今宵を知っている。どこで、どんな人と、どんな時を過ごすのか・・・くっきりはっきり見えている。その夜の月のように、次第に陽炎に染まる落ち着きのない美月。 「はい! それでは、今月のナンバーワン賞。 美月ちゃん! 」「・・・」「早く前に出て!」 日暮が言った。支配人が心ここにあらずの美月を捕らえた。仲間がざわめき、拍手が沸いた。「美月ちゃんだってー! 半年でナンバーワンよー」「男を操ることも知らない癖に、ズルイ!」 トイレリンチの主犯だった胡美が言った。 無意識の積み重ね、ピンクの封筒。美月はしなやかな両手でリボンの付いた封筒を手にしてしまった。純子、明海、日向を抜いた指名の証。 どうでもいいそれ。 更衣室でそそくさと着替えた美月は華達の注目を他所に店を飛び出した。「少し話そうか・・・」半年前は色の無かった失意落胆の月が、舞うように外に飛び出ていった。「少し」で終わらぬ夜をオレンジの月が追う。 走った先の車の中で男にしがみ付くもう一つの月がいた。「会いたかった! 凄く凄く、会いたかった!」悦史は健気を優しく包み込んだ。 続く (火曜日 忠告)
2006/10/01
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photo by yuu yuuさん 7月31日の日記クラブ「紫音」・・・赤と黒のブルース、ブランデーグラス、別れの夜明け。満席だった。 華が光のキューブを作っていたな。 何度もフロアーを純子さん、明海さんと交差しながら溶け込んでしまった空間。このままずっと太陽に背を向けて、月を追っていくのかな。心にいつも穴が開いて、、だから真ん中に密度の薄い度胸を置いて、それでも駄目なら細い神経を束にしてきたんだ私。笑いに弾けて、怒りに燃えて、涙で心を洗って・・・そうやってきたんだ私。 たぶん、これからも・・・ 軽薄に踏み込めないと思いつつ、万が一を「黒」に頼んだんだ。 どいつもこいつも保身、傍観、役に立たない支配人。 まるで通気性が良すぎる「口説き」、下品が紫音を駄目にする。中途半端な連中ほど、ああなんだ! 上原と同じ匂い。「日本の女に飽きた・・・不自由はさせない・・」虫唾が走る! D建設、柏崎。 危険人物に私のスイッチが作動する。 どうしてふたりの子の名前を口にしたんだ、あいつ! あの席にいたのは偶然じゃないんだ、きっと。 私は運がいい!華連さん、更衣室で白い顔をしてうなだれていた。 いつもなら、子どもの待つ部屋にすっとんで帰るのに、、。だから私は言ったんだ。 「商店街、、利用する価値あるよ!」って肩に手を置いて。私のアパートから見える花屋さんの二階、「空室あり・・Careful..華連!」スーパーで買い物をする彼女、はじゃぐ幼女と元気なギャング。 国に残した親。そんな懸命を欲望の餌食にされてたまるか! 女を嘗めるな! 弱みに付け込む最低最悪。エプロン姿で家を出る、大きな紙袋、着替え、そして変身、、。事情・・それぞれの「それ」。 勝手気ままな私が見てきたもの。 戦場なんだ、ここは・・。 夜に埋もれた戦場なんだ。「子供を巻き込むなよ!」 沈黙の凶器、守りの体制、事を大きくしない「万が一」。「また、あの公園で遊ぶ?」・・・そう言った設定を増やして行く。 私に出来ること。そうして、私がもう一人の私でいられる触れ合い。 陶器のような滑らかな素肌、あの控えめが男をそそるんだ。 金を払って他所に行け! 落とすまでの快感を得たいのなら、駆け引き上手な女を選べ! 純子と日暮の絡みの距離を見抜くように、今度あの人が店にきた時・・・それはきっと空間に埋もれてはくれないのだろう。ベットを共にした男と女は、漂うんだ。 ふわっと宙を舞うんだ、その後直線の光がチカチカと。受話器という唇も無く、ただ待つばかりのあの人が好き。 黒のご一行様。 黒岩さんよりチップ20000円+指名料 大穴の小林様。 同じくチップ10000円+指名料 K学院教授。 指名料3000円 浅島様。 指名料3000円 明海さんが落としたグラスの氷が痛い。 突然客。 ヘルプ1000円x3席。 あの人を想って寝よう。 幻を抱きしめて・・・・眠ろう。 続く(次回日曜日夜 「ピンクの封筒」) 美月
2006/09/28
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Photo by pooh0529さん 空間に不均等な「ずらし」をつくりながら 風と同じ揺らぎのリズムで浅島の席にやってきた美月。「なめらかだねえ、今夜は・・」余分を捨てたドレスのラインが光に映える。二杯目のグラスに不規則な氷を落とした明海は、どこまでも艶のある唇を閉めた。オルゴールとガラスの響き、傾けたボトルがグラスに触れた。「浅島さん? なめらかなのは、このグラスの液体・・さあ、どうぞ」明海が微笑んだ。 意思的な強さで浅島と美月の曲線を遮った。時間が語りあう空間の中でチェリー色の唇が開いた。「明海さん、ピアノ、、どうですか? あの曲」「そうね、、お願い美月ちゃん」 二人が歌い始めると、フロアーで数組の男女が密着して揺れた。それはまるで夢を見ているような光景だった。 美月はあの夜を想い、悦史を想った。空間が変ったのではなく、限りくふんわり優しく溶ける自分が見えるのだった。 月夜の薄い暗がりで、それぞれの愛の形がまどろんでいた。明海と浅島、純子と日暮、そして・・・・美月と悦史。 一線を越えぬ微妙の継続。 切れない情と肉体のしがらみ。 急カーブの先に訪れた抜き打ちの求め合い。 黒のご一行が紫音の扉を開けると、正面のボックス席が幾つも埋まった。美月が日暮の合図で静かに去った。「ちょっと失礼しますね、浅島さん」「ああ、、残念だけどしかたないな・・」 日暮が僅かに小指を出した。 美月は同時にリーダーに添うスラリとした女性を見た。日向はすでに常連の中で美しく聳え、そそとして佇む。何もかも心得、何にも動じないベテランに慣れた男達が多くを語らずにいる不思議。「いらっしゃいませ、 黒岩様。 」「ん、。」素顔が美しい女性は黒岩の隣で僅かに微笑み、美月を見た。「かわいいのね、あなた・・・」日暮の小指が重なった。 目の前にいる魅惑の女性。 美月が紫音で初めてみる女性客。化粧けが無く、マユが細く、長い赤髪をさり気にまとめ、高いヒールのサンダルとロングパンツ姿のまるで普段着が、こうも気高く見える神秘に戸惑う。 そしてそれは、リーダーの「女」であることを語り過ぎていた。「美月ちゃん、例の話、してみなさいよ。」日向が促した。「ん? どうした・・なんでも言ってごらん。」取り巻く男達が、美月を守るように前屈みなり、またある者は周囲をチラッと見渡しながら語ることも無く、視線を落とした。 いいタイミングで流れたピアノ。 抱擁、そっとおやすみ・・・・ 胡美が歌う。「実は・・・」美月が小指を意識しながら静かに話し始めた。小指は束ねていた髪を解き、黒岩の煙草に火をつけた。ため息が出る瞬間を抑えた美月が言葉を失った。 こんなふうに、男に溶け込むことができたら・・・悦史の温もりが蘇った。いつもと違う自分がいた。 常に悦史を感じながら空間が動き、時が進む。景色がずれ、奏でが侘しく響きわたる。「どうしたの? 」日向が言った。 「実は・・・」 続く(次回木曜日「華連」)
2006/09/25
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