●●●ソナチネ

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2004.06.25

テーマ：映画館で観た映画(8586)

カテゴリ：カテゴリ未分類

青い魚は串刺しに。
赤い背景は血の色。
黒い空はこの男の目線を指している。
暗闇暗闇。
何も見えていないし何も観ていない。
何も観ようともしていない。

ソナチネ。
小さなソナタ。緩急交代の音楽。
沖縄の日差しは熱く太陽は高く海は青い。
血は赤い。
わかっていたのだ。
出る杭は打たれる。
組長は沖縄の抗争の助っ人として村川を派遣した。
だがそれは体のイイ厄介払い。
自分についてきた手下も
また一人また一人殺されてゆく。

そんな場所に自分の身を置けば
暴力も血も武器も空も海も命も魂も
全部違う色に見えていたのだろう。
だからもう村川は
私たちと同じ色で世界を観ていないのだ。
例えば海は真っ赤な血の色に見え、
血は青く澄み渡るようなスカイブルー。
暴力は最高の愛撫であり、
死はやっと訪れる平穏。

ロシアンルーレットというゲーム。
ゲームで死ねたらさぞ良かっただろう。
だが村川はこめかみに銃を突きつける。
笑っている。
暴力を観ながら笑っていたように。
薄い笑みを浮かべている。

平板な画面である。
その平板な画面が暴力で満たされる。
暴力だけとなる。
この視点が村川の視点なのか。
マシンガンの音が世界を満たす。
めくるめく砂塵のように命が消えてゆく。

大杉漣、寺島進、渡辺哲、勝村政信といった
村川を巡る男たちの演技が私たちを日常に連れ戻す。
彼らはときおり笑いを作り出してくれる。
ヤクザではあるが仲間ではある。
だからこそその死に様に
心動かされ無情さえ感じる。
村川もきっと彼らの中にいる時だけは
人の視線を保っていられたようにも見える。
そして幸。
ついてゆく幸。
村川の視線をずっと追い続けている。

何も観てない視線を。

この映画を境に北野武監督の視線が変わったという。
彼の内包するものが
躊躇なくこの作品には
色濃く反映されているようにも見える。
北野武監督はこの後、交通事故を起こし
生死の境を彷徨っている。

それにしても興味深いのは
この映画の「始末のつけかた」だ。
エンディングという意味ではなく
細かく散りばめられたエピソードそれぞれに
わずかでもオチが付けられている。
コメディアンとしての才能は
笑いだけが行き場ではないように見える。
経歴というものは無駄にはならないのだ。
勿論、使い方次第だが。

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