●●●新選組！～大人からの伝言

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2004.06.27

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テーマ：新撰組！(309)

カテゴリ：カテゴリ未分類

少年は好奇心に駆られ障子を開いていた。
母と姉は怯えながら布団の中にいる。
走り去ってゆくのは４人の男たち。
同じ屋根の下で
寝食を共にした大人だ。
何が起こったのか彼はまだ知らない。
１９０３年まで生き残った彼は
晩年、子母澤寛に証言を残していると言う。

「鬼になれよ、近藤。」
宴の席を離れ芹沢鴨は言う。
託したのだ、全てを。
この時、近藤勇は第１歩を踏み出した。
芹沢鴨という大人の背中を追いかけ続け
心の底ではいつも頼りにしていた彼が
やっと歩き出したのだ、
誰も前にはいない
どこへ続くかわからない道を。

かつて桜田門外の変で
雪に敷き詰められた地に果てる
広岡子之次郎に芹沢鴨は叫んでいた。
「尽忠報国の士、あっぱれなりっ」
勇の心に深く刻まれた言葉が
新選組旗揚げの演説に織り込まれていた。

芹沢から勇へ。託されたもの。

「鬼になれよ、近藤。」

イバラの道だ。
露払いを歳三が努めようが
勇の心にもチクチクをトゲが刺さる。
その痛みにどうやってうち勝つか。
またやり過ごすか。
そして逃げ出すか。
誰もがいずれかの選択を迫られる。

若さは残酷。
無造作に大人を攻撃し怒号をあげる。
大人は確かに汚れたり間違ったりしている。
だが正しいこともあったのだ。
芹沢がいたから動き出した浪士組。
会津の兵は芹沢の存在感に道をあけた。
勇たちはついていくだけ。
汚れなどまだ彼らが被ることはない。
先を行くのは芹沢鴨。
大きな背中を追っていけばいい。

歳三は知っていた。
芹沢の価値は認めていた。
宴の席で芹沢に酒を勧める彼の口から
餞の言葉が語られる。
だかこれからは彼が汚れをかぶる。
勇の露払いは彼がやる。

酒の入った瓢箪に足を滑らし
不覚をとった芹沢を貫いたのは総司の剣。
お梅の自害は総司の目の前だった。
彼は大人からの伝言を直接受け取った。
イバラの道には覚悟は必要。

山南敬助の葛藤。
もとより自分の歩くべき道を見極めている彼に
芹沢、新見の排除は異論はない。
だが彼の歩こうとしている道が
血の色に染まっているわけではない。
理想との折り合いのつけかたが
彼の人生を大きく左右することになる。

芹沢鴨の背中を近藤勇が追い越してゆく。
振り返ればもう彼はいない。

芹沢鴨を喰えるわけはない。
明日からは新選組と名乗れと、
そっけなくだが暖かかった大きな背中を。
だが追い越してゆく。
託されたものを胸に抱いて。
汚れることなく進んでゆける道ではない。
傷つくこともある。

少年は好奇心に駆られ障子の扉を開いていた。
彼は自分の目の前を歩く背中を目撃していた。
それが一つの節目になる。

近藤勇。
芹沢鴨からの伝言を受け取る。
新選組は誕生した。

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