●●●ザ・ロイヤル・テネンバウムズ

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2004.07.02

(6)

テーマ：レンタル映画(818)

カテゴリ：カテゴリ未分類

個人のエゴと家族のバランスが
あんまりにもストレートに映像になってる。
誰の身に置きかえても難しい問題を
単純かつコメディに置きかえ、
豪華俳優陣が悠々自適に演じている。

天才一家が家族離散して再び一同に介する。
つきつめていけばエゴ故に一家はバラバラになる。
父ロイヤルの浮気により母エセルは怒り心頭で
子供たちの英才教育に躍起になるが
そのせいあってかどうなのか
才能は十代にして次々と開花してゆく。
長男、チャスはビジネスで成功。
長女、マーゴは不条理劇作家として成功。
次男、リッチーはプロテニスプレーヤとーとして成功。
だが二十代にしてもう
子供達の才能は燻っている。

一貫してマーゴは同じタイプのラコステのワンピ。
簿妙な縞模様の変化はあってもいつも同じ。
次男、リッチーはと言えばテニスがイヤになり
絵を描いたりしているのにずーとテニスウェア。
長男のチャスはと言えばキャラ的には保守的だが
二人の子供と一緒に誰よりも目立つ格好をしている。
この映画のシンボルとも言える赤のジャージ。
メーカーは（アディダス）黒のカーリーヘアによく似合う。

すべてのスタイルは子供達のエゴの象徴。
テネンバウムの子供ではなく
「個」としての存在を示すためのシンボル。
だがなおも立ち塞がるロイヤル親父の壁は大きい。

胃ガンだと偽って子供達と召集しながら
なんだか元気で墓参りに家族揃って行きたがる
鉄砲ごっこをしていても自分の子供を撃ち、
当然子供を褒めるべきところで褒めない親父。
自己中心的な親父は突如
家族で過ごそうとしたがっていた。
しかも妻を取り戻そうとしていた。

長男チャスは避難訓練には命がけだ。
妻だけを小型飛行機の事故で失ってからのトラウマか。
またはテネンバウムの家が反面教師なのか。
異常なまでにお祖父ちゃんから子供を遠ざける。
家族を守ることが彼のエゴなのだ。

長女のマーゴは男とつきあう。
結婚もしているが常に無気力である。
だがこの女性に次男が恋心を抱き自殺未遂となる。
養女なのでイケナイ愛でもないのだが。
おまけに幼なじみのイーライも彼女が好き。
だが彼の恋心もマーゴでは報われない。

複雑に見えるテネンバウムファミリーを
距離をおいた場所にいるイーライが見事にいいあてる。
彼は二十代になっても成功している。
著作が大ブームで大学の助教授もしている。
だが一人寂しく部屋にいる男はポツリという。

「うらやましかったんだ」

明るく見える青年の孤独とは裏腹に、
自分のエゴを貫き通しながらも
結婚式と墓参りには
家族が揃っているテネンバウムファミリー。
偽りのような愛情とか
遣えばすぐなくなる金だとか、
時がたてば色褪せてしまう名声だって
例え好き勝手なペクトルであろうが
なんだかんどと集まれる「家族」には歯が立たない。
だからイーライはテネンバウムではないが、
テネンバウムを一番よく知っている。

賛辞を込めてあえて言おう。
映画バカの映画なのだ。
ウェス・アンダーソン監督とオーウェン・ウィルソン。
ベン・スティラーもあいまっての世界観。
そこに「エネミーライン」でオーウェンと
意気投合したというジーン・ハックマン、
グウィネス・パルトロウ、アンジェリカ・ヒューストン
という女優陣の存在感に加え、
ダニー・グローバー、ビル・マーレーもいる。
ベクトルは違えども「映画バカ」の映画に
集う俳優陣もどこか「映画バカ」なのだろう。
繰り返すが、賛辞をこめて。

ロイヤル・テネンバウム。
享年６８歳。

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