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2004.11.10

(2)

テーマ：レンタル映画(818)

カテゴリ：アメリカ映画

美しきセピア色の11月。
サンフランシスコは秋の景色に覆われる。
恋愛は永遠に封じ込められていた。
美しい物語が書かれた一冊が完成したように。

サラ、彼女は自分の着たい服を着ていた。
彼女の家は、彼女が暮らしたい部屋になっていた。
彼女は自分が欲する人間関係を作り上げる。
愛する人と愛される人、
その愛は透明なメロディに彩られている。

広告会社で一流の仕事をする男は、
映画の中でよく心をなくしてしまっている。
ネルソンもそうだ、一流の広告マン。
ならば人の心の機微を思いはからねばならないのに、
人の心を類型化しその頭上に立った気になり心を見失う。

サラとネルソン、二人が恋に落ちるまで、
そんなに時間はかからなかった。
恋はやがて美しい物語となり美しい絵となる。
海辺の散歩から二人がじゃれ合うバスルーム、そして、
ベッドの中で奏でる音楽は
その物語が語られる間ずっと続いていた。

やがて、物語は終わる。
愛した男にありったけの愛情を注いで、
サラはページを閉じようとしたいた。
その先の二人の物語を誰にも読ませないように。

美しい物語が終われば。
愛情が憎しみに代わるのか。
才能は枯れ、若さも失い、その果ては。
苦悩と哀しみに満ちた物語が
なのかも知れない。
そうなのかも知れない。だが。

シャーリーズ・セロンは、
自由奔放なサラと死を前にしたサラを演じる。
１１月の主人公である彼女は魅力的で、
舞台から降りたように病気の姿をさらし、
ゲイの友人の肩に項垂れる彼女がまた切ない。
キアヌ・リーブスは典型的な演技ではあるが、
だからこそ物語の仕組みを露わにしてくれている。

そう、ネルソンは思うのだ。
サラの側を片時も離れず看護して、
最後の最後まで共に暮らすことが出来ればいい。
ベッドに横たわる彼女がどんな姿でも、
今と代わらず愛してゆける自信が彼にはあった。

美しい恋の物語の続き。
美しい物語はいつか苦しみに侵される。
だがその本は様々な感情の果てに
美しいだけではなく豊かな本になるのだ。
それをネルソンに教えたのは
サラではなかったか。

美しい恋の物語はいつか終わる。
セピア色の11月は現実の色を取り戻す。
雑踏の中に喧噪がざわめく。
サラの拒んだ世界にネルソンが取り残される。
もう彼の苦しみが始まっていた。
次の恋に出逢うまでは。

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