●●●殺人の追憶

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2004.12.11

(6)

テーマ：レンタル映画(818)

カテゴリ：アジアの映画

どちらが強姦犯で
どちらが被害者の兄か。
二人は警察署の中で並んで座っている。
二人は、書類に何かを書いている。

1986年から6年間。
韓国の農村で10人の女性が殺された。

被害者は似通っている。
雨降る夜、
赤い服を着た女性、
ラジオからは『憂鬱な手紙』のメロディ。
死体もみな、似通っている。
手足を拘束された、裸の死体。

現地では特別捜査本部が設置される。
だが田舎の警察は拷問と
強制的な自白を許してしまっていた。

田圃の道の両側に、金色の穂。
薄汚れた捜査本部、地下の取調室。
労働者が集う街の飲み屋の風景。
パク刑事の恋人の部屋の扉が半開きで、
煤けた浴室が覗いている。
テレビや、貼り紙、警報のサイレン、
何もかもが当時の現実を組み立てる断片。
空気や匂いが伝わってくるかのよう。

ポン・ジュノ監督。
なんて「絵」をつくるのだろう。

ソウルから応援にきたソ刑事、
独自の捜査で核心には近づいてゆく。
地元のバク刑事も彼なりの方法論だ。
ペク・クァンホに注目したのもパク刑事である。
ノートに容疑者候補の顔写真を貼り、
彼は彼なりに本当に必死だ。

こんな「顔」だったか？と
写真を差し出されたところで首を振れない。
縦にも横にも、明確に首を振れない。
「顔」とはなんと、不確かなものか。
だが、生き延びたのは「顔」を観なかった容疑者。

肩の力の抜けた行動だが、
自分たちの住む土地での犯罪捜査に
全力を傾けるパク刑事はソン・ガンホである。
幅広い役がらをこなしながらも、
いつもながらの間合いの上手さ、さすがである。
ソ刑事は、キム・サンギョン、
クールを装いながらも熱い正義感を見せる。
ポン・ジュノ監督の絵に
溶け込むような佇まいを見せてくれた。

犯人はまだ捕まっていない。
だが、犯人は何故、まだ捕まらないのか。

どちらが強姦犯で
どちらが被害者の兄か。

十年後、刑事を止めたらしいバクは
思わぬ場所で犯人と遭遇する。
女性の変死体が発見された田圃の用水路。
彼と同じようにそこを覗き込んでいた男の存在が、
通りすがりの少女からもたらされる。
少女は「顔」を観ていた。
だが彼女は「普通の顔」だと言う。

犯人は、まだ、ここにいる。
罪を犯して、人を殺して、存在している。
犯人は「普通の顔」の顔をしている。
犯人は、犯人の顔をしているわけでもない。
どこにでも紛れ込める「顔」なのだ。

余韻の残る、
恐ろしい、結末である。

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