●●●誘拐犯

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2005.05.26

(6)

テーマ：レンタル映画(818)

カテゴリ：アメリカ映画

銃撃戦がはじまる。

乾ききったメキシコの空。
中庭に噴水のあるモーテル。
アーチ型の出入り口の、赤茶けた建物。
代理母となったロビンは、
帝王切開で子供を取り出されようとしている。
その子供をめぐって、
命の駆け引きが始まっていた。

砂煙、土煙、
凄まじい銃の音が続く。

彼女が孕んだのは、
裏社会のボス、チダックの子供。
だから彼女は、誘拐された。
誘拐したのは金に困っていた二人の男。
ロング・ポーとパーカー。
行きずりの犯行が、
チダックの怒りを買う。

命が生まれる。
女は腹から命を産み出そうとする。
血と、苦痛。

銃弾。

銃撃戦を俯瞰する。
金に困ったロング・ポーとパーカー。
妊婦を、胎児を誘拐することに、
なんの躊躇いもない。

なんの躊躇いもなく、
チダックの部下は執拗に
ロング・ポーとパーカーを狙う。

銃撃戦。

どこにも、良心がない。
乾ききったメキシコの空の下、
チダックの子供を身籠もったはずのロビンは、
違うのよ、と囁く。
チダックが父親でない、と囁く。

そもそも、銃撃戦に、
予定調和など、あるはずもなく。
主人公のピンチは、演出でしかない。
正義が存在するのは、エンターテイメントで、
友情は、共感を呼ぶ隠し味。

腹から血が滲んでいる。
それでも、銃をはなさず、ぶちかます。
始まればもう、
命のやりとりのみ、

最も期待する、最も納得する結末、
もしくは、
意外なドンデン返しの結末も、
銃撃戦は、感知しない。

ベニチオ・デル・トロと
ライアン・フィリップ、
銃をかまえる仕草が、手慣れている。
良心という感情が欠けた悪党を演じる。
ジュリエット・ルイス、
本心を深く子供とともに心に抱えている。
体当たりの出産シーンである。
脇を固める役者はクセのある演技をする。

銃撃戦が、終わった。
予定調和はどこにもない。

命のやりとりに、
予定調和があるはずがない。
ただ、乾いた土の上で、
たくさんの死体が横たわっていた。