●●●17歳のカルテ

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2005.06.01

(10)

テーマ：レンタル映画(818)

カテゴリ：アメリカ映画

寝間着姿の女の子たちが、
集まってボウリングして騒いでいる。
まるで真夜中のパーティ。
そうして忍び込んだのは、
精神科医ポッツ博士の部屋である。
棚には、彼女たちのカルテが。

気分不安定、目標不明確、
衝動的、カジュアルセックス、
自傷行為、反社会性と悲観的態度。

「私のことだわ」スザンナが呟く。
「みんなさ」リサが突き放したように言う。

アスピリン1瓶とウォッカ1本を飲んで
ぶっ倒れてドサクサに紛れたように、
クレイモア精神病院にやってきたスザンナ。
彼女はずっと、
困ったような顔をしていた。
大学に進学しないのは自分だけ、
作家になるつもりだが両親にも理解されない。
＜境界性人格障害＞という病名が、
彼女のカルテに書き込まれる。

＜反社会的人格障害＞＜空想虚言症＞
＜神経性無食欲症＞＜神経性大食症＞
＜反抗挑戦性障害＞＜外傷性ストレス障害＞

一人一人の名前だけでなく、
彼女たちには病名も、名前である。
薬が違う、医師や看護師たちの対応が違う。
一人一人の人間性よりも、
その症状によって扱いが変わる。
病気を治すのが病院ではあるが、
彼女たちは毎日のように症状を繰り返す。

スザンナはずっと、
困ったような顔をしている。

何故、ここにいるか、わからない。

何故、ここにいるのか？
それが何かわからないままに、
今の自分だけを受け入れることが出来ない。
ただ、他人は彼女にレッテルを貼る。
＜境界性人格障害＞
そのレッテルが彼女の名前になる。

「みんなさ」
リサが突き放したように言った。
国籍や民族、考え方、既婚未婚、学生、思想･･･。
レッテルは誰にでもある。
リサは自分のレッテルを拒み、脱走を続け、
反社会性というレッテルを貼られる。

自分の病名のカルテ、
自分に貼られたレッテルをはがし、
彼女たちは彼女たちの関係を築いてゆく。
病院から看護師に引率され町へ出て、
「一生、入院してね」と
夫をスザンナに寝取られた妻の言葉に、
猛然とリサたちは反撃する。

ウィノナ・ライダー、アンジェリーナ・ジョリー
スザンナとリサを演じる二人に、
友情というレッテルは似合わない。
心を分かち合うという温かさと、
退院をめぐる心のキズのえぐりあい。
他の少女たち同様に、
剥き出しの感情のまま繋がっている。

退院が決まったスザンナの日記を、
リサが、同じ患者たちに聞かせる件がある。
「なぜ、退院できないのか」
外に出ることが決まった彼女は、
逆に、リサたちにレッテルを貼っていた。
日記を読まれたことよりも、
彼女がレッテルを貼る側に回ったことが見てとれる。
細かくエピソードが組み立てられた
上手い構成だと感じさせられる。

＜境界性人格障害＞と
書かれていたスザンナのカルテ。

だから、彼女はここに居た。
彼女自身ではなく、他人が貼ったレッテルで。
ここから出ていきたいというスザンナに、
婦長は「自分で出て行きなさい」と言っていた。

出ていきたいと思うのなら、
自分で、出ていくしかないのである。

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