2005.09.21
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カテゴリ: イギリス映画
光は無限の色なのだ。

グリートに届けられたのは、
青い色のターバンと真珠の耳飾り。
1665年、オランダ。
ヨハネス・フェルメールは心を送った。
あの絵は二人で描いたのだ。

静謐で写実的、
巧みな空間構成と光の質感。
天才画家と呼ばれるフェルメール。
グリートは彼の家の
メイドとして働きにきていた。
タイル職人の父親が失明し、
彼女が家計を支える必要があったのだ。
お屋敷にはフェルメールの家族と、
先輩のメイドがいた。

光は、無限の色をはらむ。
吸収し、反射し、無限の色を成す。 
心で感じたまま、
色は心のそのまま。
アトリエにグリートとフェルメール。
何をしていたとか
何が目的とか
そういうものは微塵もなく、
世界を織りなす光を全身で浴び、
二人の感覚が捉えた色を混ぜ合わせる。
白も青も赤も、どんな色も、
一つではないのだ、無限なのだ。

スカーレット・ヨハンソンは、
表情の変化でグリートの内面を見せる。
それは微かではあるが多彩で
飽きることはなく、惹きつけられる。
フェルメールを演じるのはコリン・ファース、
多くの映画で見慣れた彼ではあるが、
芸術家の頑なさを上手く表現している。
ピーター・ウェーバー監督。
この作品が初の長編であるという。

静かに物語は紡がれていく。
多くを語らず、だが、多くを物語る。

画家はパトロンのために絵を描き、
その報酬で家族を養っている。
フェルメールの妻や母たちは、
彼に絵を描かせようと必死である。
だがアトリエは彼女たちとは別世界、
グリートとフェルメール、
世界を織りなす光を全身で浴びながら
二人の感覚が捉えた色をキャンパスに描く。
そこは二人だけの世界である。
芸術が生み出される瞬間。

だが、それがどれだけ至高のものでも、
永遠に続くことは許されない。
グリートとフェルメール二人には現実がある。

光の無限。
だが、二人の人生は決まっている。

それでも「青いターバンの少女」は
グリートとフェルメール、二人の絵なのだ。
だからこそ、彼女に届けられた、
青い色のターバンと真珠の耳飾り。


真珠の耳飾りの少女 <通常版>





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Last updated  2005.09.22 01:57:55
コメント(9) | コメントを書く


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Re:●●●真珠の耳飾りの少女(09/21)  
romy♪  さん
これは好きな映画です。
コリン・ファースが「ブリジット・ジョーンズ~」のマークと、あまりにも違うので驚きました。
アトリエで少女を見詰める画家の強い絡みつくような視線、少女の物言いたげな厚い唇。
限定されたアトリエと言う空間の中、むせ返るようなエロティシズムを感じました。
奥さんのお母さんが、今で言うプロデューサーでしょうか?
階下の現実、階上の芸術の世界、その2つの世界を行き来する芸術家にとって、現実と芸術家としての創作意欲の相反する2つに、どこに妥協点を見出すか
と言うのは、古今東西芸術家がぶち当たり、悩む事なんじゃないかと思いました。
その悩みや家族の葛藤が、現代よりあの時代は、社会がシンプルなだけに、観客にも伝わりやすかったと思います。
自分には踏み込む事のできない、芸術家としての主人と少女のアトリエの世界や関係を、ヒシヒシと感じて、冷静ではいられない奥さんの気持ちはよくわかります。
娘も直感で感じたのでしょう。 (2005.09.22 10:27:04)

Re:●●●真珠の耳飾りの少女(09/21)  
ao_6  さん
振り返ってみると、これスカーレット・ヨハンソンなんですよね。
ロストトランスレーションの印象が自分の中で強くなっちゃって、いやいや、この作品こそぴったりだったわ、、、と思い出しました。
あんなあどけない顔もできてしまうのだからすごいですよね。
印象に残る絵画的な作品ですよね~。 (2005.09.22 23:08:57)

Re:●●●真珠の耳飾りの少女(09/21)  
ドブイタチ  さん
実は俗物100%の私は芸術というものがよくわかりません。
絵をみて美しいと思う。
そして映画を見て画家の心に触れてみる。
俗物の芸術鑑賞としては一つの手かもしれません。
機会があれば 積極的に見てみましょう。 (2005.09.22 23:32:57)

Re[1]:●●●真珠の耳飾りの少女(09/21)  
romy♪さん

ものすご~く、静かに淡々と進んでいく作品なのに、おっしゃる通り、エロティシズムも葛藤も脇役であるフェルメールの家族たちの心情も、雄弁なほどに表現されていると私も感じました。

>階下の現実、階上の芸術の世界

フェルメールの妻たちは、アトリエに入れないんですよね。グリートとフェルメールの観念的な結びつきを表しているようで、唸ってしまいました。

コリン・ファース、確かに、よく見るといつもの・ファース、なのに、いつもと全然違うコリン・ファース! (2005.09.24 12:22:53)

Re[1]:●●●真珠の耳飾りの少女(09/21)  
ao_6さん
>振り返ってみると、これスカーレット・ヨハンソンなんですよね。

そうなんですよ~。しかも、髪を隠して、顔が際だつ衣装。彼女の表情の演技が堪能できるんですよね。
>ロストトランスレーションの印象が自分の中で強くなっちゃって、いやいや、この作品こそぴったりだったわ、、、と思い出しました。

「ロスト~」がね、まだ未見だけど、こっちの彼女が有名なのは、仕方ないよね。
>あんなあどけない顔もできてしまうのだからすごいですよね。
>印象に残る絵画的な作品ですよね~。

これ、いい作品ですね~。


(2005.09.24 12:25:41)

Re[1]:●●●真珠の耳飾りの少女(09/21)  
ドブイタチさん
>実は俗物100%の私は芸術というものがよくわかりません。
>絵をみて美しいと思う。
>そして映画を見て画家の心に触れてみる。
>俗物の芸術鑑賞としては一つの手かもしれません。
>機会があれば 積極的に見てみましょう。
-----
私も芸術はわかんないです。(笑)
ただ、この映画のアトリエはむせかえるようで、、映画のパッケージにある写真のように、男女が吐息がわかるくらい接近してます。ラブシーンじゃないのに、エロティシズム。 (2005.09.24 12:29:56)

Re:●●●真珠の耳飾りの少女(09/21)  
kaoritaly  さん
どうもこんにちは。

>それでも「青いターバンの少女」は
グリートとフェルメール、二人の絵なのだ。
だからこそ、彼女に届けられた、
青い色のターバンと真珠の耳飾り。

素敵な締め方ですね~・・映画と同じで切なさと余韻を感じました。
去年観た映画の中ではかなり良かった映画でした。  (2005.09.24 13:13:16)

Re[1]:●●●真珠の耳飾りの少女(09/21)  
kaoritalyさん

映画の余韻っていうのは、
この映画を見たあとのあの感覚なんですね、まさしく。

絵画もまた、観る側の受け取り方で変わってくるとこあるのを思い出してました。 (2005.09.26 20:05:50)

Re:●●●真珠の耳飾りの少女(09/21)  
torres8  さん
はじめまして、アンダルシアのtorres8と申します。
発見されたフェルメールの画像がありますので、お時間ある時にぜひご覧ください。
ほかに、わたくしは、ブログにアンダルシアの生活写真を多数のせております。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
(2006.04.01 01:59:31)

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