100歳以上生きる人は年々増加の一途をたどっているが、誰もが100歳まで生きられるわけではない。100歳まで生きられる人と、そうでない人はどこに違いがあるのだろうか。
前回
は、長寿者の医学研究を行っている慶應義塾大学医学部 百寿総合研究センター講師の新井康通さんに、100歳まで生きられる人とそうでない人の体の中の違いを聞いた。今回は、長寿者の食生活のポイントや、寿命の上限などについて聞いていく。
前回 は、100歳以上生きるような長寿の方は、「慢性炎症」が少ないという話をお聞きしました。長寿の方には、他にどんな特徴がありますか?
新井さん 細胞の中の染色体の末端に、「 テロメア 」と呼ばれる特徴的な部位があります。この部分は、細胞が分裂するたびに短くなっていくため、テロメアの長さは細胞の老化の指標とされています。
百寿者の血液から白血球を採取してテロメアを調べたところ、比較的長く保たれている ことがわかりました。テロメアは誰でも年とともに短くなっていくのですが、百寿者は、短くなるペースが遅くて、年齢の割に長く保たれていたのです。
興味深いことに、百寿者の直系の子孫で、長寿になる確率が高い人のテロメアを調べたところ、こちらも長く保たれていました。実年齢が80代でも、60代並みの長さでした。テロメアの長さを保つ何らかの遺伝的要因が、健康長寿に関係しているのかもしれません。
テロメアの長さは、さまざまな病気と関係があると言われています。例えば心疾患や糖尿病、リウマチなどの人は短くなっている。短い人ほど、心臓病や感染症の死亡率が高いという研究もあります(Cawthon Rmet al. Lancet 2003;361: 393-395.)。
さらに、精神的なストレスが多い人はテロメアが短くなりやすく(Epel ES, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2004;101(49):17312-5.)、運動や食事などのスタイルが健康的な人は短くなりにくい(Omish D, et al. Lancet Oncol. 2013;14(11):1112-20.)、という研究もあります。テロメアの長さが、健康で若々しい体の指標であることは、まず間違いないでしょう。
前回 の慢性炎症の話で出てきた「魚の油」は、テロメアの長さを保つ方法としても有力視されています。 オメガ3系脂肪酸の摂取量が多い人はテロメアが縮みにくい という研究があります(Farzaneh-Far R, et al. JAMA,2010;303:250-257)。
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