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2023.12.30
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カテゴリ: 報徳記を読む
鷲山恭平著「報徳開拓者 安居院義道」の現代語訳復刻版クラウドファンディング

終了まで  残り16日



巻之八【5】先生衆民を教諭し新溝洫を開き開墾撫恤の實業を行ふ

高慶曰く、
先生夙に不世出之才を懐きて而して堅忍不抜の行を躬(みずから)す。
然れども小田原候の明之をケン(田に犬:みぞ)畝の中に擢きんで委するに衰を振ひ頽を擧ぐるの擧を以てするに非れば則ち眇然たる一農夫にして止んのみ。
蓋し候の先生を擧ぐる其の初め命ずるに野州三邑の事を以てし、且つ將に之を小田原封内に移し偉功已顯るを待て更に幕府に禀し天下萬姓をして皆洪澤を被らしむ。
其の心を設くる遠且つ大と謂ふ可し。
惜いかな事業未だ央ならず奄然として館舎を棄つ。
後の人能く候の志を繼ぎ先生をして其の業を壙張するを得せしむ者有る無し。
先生の至誠之を以てすと雖も亦之を如何ともするなきのみ。
既にして幕府先生を登庸す。
亦一縣令に從ひ之が屬爲るに過ぎず。
毎事掣肘先生終に其の志を展るを得ず。
復十有餘年を經始め命以て日光神田の衰を擧げ且つ遍く諸州に推行するを得。
是の時や先生齢將に古稀ならんとす。
加ふるに疾病を以てす。
復た安んぞ大業を海内に施すを得んや。
嚮に此の命をして十年の前に在らしむ。
先生已に神田の衰を振ひ其の民をして業を安するを得せしめ而して諸侯の先生に倚て政を封内に爲す者亦皆功を就す。
是に於て更に之を擴めば則天下の蒼生皆其の澤を被り菽粟水火の如く富強の術備はりし。以て萬世に傳へて弊無かる可はりし。
嗚呼先生の雄才卓行を以て終身轗軻遂に其の業を擧る能はず
人をして慨歎已む無からしむ。
豈命に非ずや。

報徳記 






著者(富田高慶)が思うに、
先生はつとに不世出の才を抱いて、堅忍不抜の行いを躬行しておられた。
けれども賢明なる小田原候がこれを農民の中から抜擢し、衰退を振興する事業を委任しなかったならば、取るに足らぬ一農夫にとどまったであろう。
思うに、候が先生を挙用した意図は、初めまず野州三箇村の仕法を命じ、その上でこれを小田原領内に移し、その偉功があらわれるのを待って更に幕府に上申し、天下万民ことごとくに、その洪大の徳沢を被らせようとしたのであって、その心組みは遠かつ大と言うべきである。
惜しいかな候は、事業が半ばに達しないうちに奄然(えんぜん)として長逝された。
後に残った人物中には、よく候の志を継いで、先生が事業を拡張することのできるように努める者がなかった。
先生の至誠をもってしても、どうすることもできなかったのである。

やがて幕府が先生を登庸したが、これまた一代官の配下で属領たるに過ぎなかったから、事ごとに束縛を受けて、先生はついにその志を展べることができなかった。
それからまた十余年を経て、始めて日光神領の衰廃を起すことを命ぜられ、かつ、あまねく諸国に推し広めることができるようになった。
この時には先生はまさに古希の年齢になろうとし、その上病気にかかられた。
それでどうして大業を海内に施すことができようか。
仮にもし、この命令が十年前にあったならば、先生はつとに神領の衰廃を振興し、その民を生業に安んじさせることができ、そして諸侯中先生の指導によって領内に仕法を行っていたものも、みな功を成就することができたであろう。
ここにおいて、さらにこれを四方に拡充したならば、天下の人民は皆その恵沢を被り、米麦は水や火のように得やすく、富強の方策は完備し、万世に伝えて弊害のない理想郷となっていたはずである。
実に、先生ほどの雄大な才能、卓抜な行為がありながら、終身不遇で、ついにその偉業を十分に振るうことができずに過ごされ、人を慨嘆させてやまないのである。
まことに天命と言うよりいたし方がない。







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最終更新日  2023.12.30 00:00:22


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