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2024.01.21
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〇萬作德用鏡 その１
凡そ天地の氣を受て成長する物、悉く男女の分ちあるは天の自然なり。其長たる物は人也、故に男女の分ち甚だ明かなる鳥獸物は、人近き故に女男（メスオス）分ち知れ易し。魚虫の類は、人に遠き故に女男が見わけ難し。草木にも悉く女男があり。これ天地の氣を受て育つ事、人に似たる故也、左れは稲麥小豆其外必ず女男あつて。女（メス）を植ては實法澤山につく事、女の子を産と同じ道理なり。米は人を養ふ第一の物成故種おろせしより凡十月にて米となる事、人の種も十月にて人となるか如し。此道理あると以て女の種を植て實法の多きと知るべし。是國益の第一にて、百姓知らねばならぬ事成
都て記たる見分けよふと能々辨へ、何にても女の種を植て、德ある事をためし試むべし。稲は雌を植れば、一反にて凡米貮斗より貮斗五六升、三斗も余分取れる也。其年の氣候にて不作豐作あれとも、不作は不作なりに余計とれるなり。麥は粟黍の類も同じ如く也。都て穂に實法ものは、陽なる性ゆへ、實に雌雄の姿をあらはす、稲麥の類を見て知るべし。根に實法ものは陰性のもの故土の内の根に雌雄の姿、人見分け難し、故に日に照られ雌は葉を凋む、大根牛蒡葉を凋むは雌也是れ天地自然奇々妙々なる天の巧み成。攝津國小西氏（小西篤好）か数年試めしみたるを本（『農業余話』）に著はしたる説也。小西氏の云出せし如く、稲の雌を植て、一反歩三年余の德を
得ることあらは、千石萬石に至らは大なる國益なり。ためし試みて其印あらはさんより、二人に教へ、二人より一村に教へ、一村より郡國へ傳へ、諸國用ふとあれは、國益の第一と知るべし。右の外凡てのなり果実、男は長みあり、女は丸みなり、男は皮あつく甘味すくなく、女は皮薄くて甘味多し、果物成共雌の種を蒔は育ちも早きものなり。
一雌の種を見分けようは、稲穂先の條にもよらず、根の形にも拘らず、穂の元枝一本は雄なり、元枝二本に出るは雌なり、一本に出る雄の稲の穗と、二本に出る雌の稲の穗と、実法の数を算へ見るべし、是れ手短く損得を知る試（タメ）しなり。五穀共に損得は右に同し事なり。大麥は雄穗は元の方より一粒並びなり、雌は元の方より三粒並びなり。小麥雌の穗は元より四粒並びなり、雄穂は大麥と同じ事なり。稗は雌の穗の元枝貮本なれとも、稀には三本四本なるもあり、元枝一本なるは雄也、粟の雄は元枝一本なり、雌は二本なり。黍は稗と同じ事なり。里芋雄は莖左り卷なり、雌は右卷なり、雄の芋は長く尖りあり、雌は丸し、雌種には子澤山につくなり。昆蒻芋の雄は葉は左り卷なり、雌は右卷なり。薩摩薯雄は蔓太く葉大なり、雌は葉小さき角あり、蔓平みありて細し。豆蔓俗にふんどしと云ふ所白きは雄なり、黑きは雌なり、大根根元の丸きは雌なり、細く長きは雄なり。雄は辛く堅くして甘み少し、雌は皮薄くして辛み少なし、和かにして甘み多し。
生たちの時日に照られて葉の凋るるは雌なり。間引く時よく見分け女を残すべし。女は末まで太き故食用にして大いに德用なり。牛蒡は大根と大かた同じ事にて、葉の凋るゝは同じ事なり。竹は男は元枝一本、女は二本なり、竹を伐るとも男を伐り女を殘し、筍は女の竹にある物なり。男竹は身厚くして力強し、筍は頭尖りて細きは男、頭ふつくらと角のあるは女なり。これも雄を拔て女を育てる様にすべし。斯様に心掛れは藪の茂る事妙なり。
凡そ天地の氣を受て成長する物、悉く男女の分ちあるは天の自然なり。其長たる物は人也、故に男女の分ち甚だ明かなる鳥獸物は、人近き故に女男（メスオス）分ち知れ易し。魚虫の類は、人に遠き故に女男が見わけ難し。草木にも悉く女男があり。これ天地の氣を受て育つ事、人に似たる故也、左れは稲麥小豆其外必ず女男あつて。女（メス）を植ては實法澤山につく事、女の子を産と同じ道理なり。米は人を養ふ第一の物成故種おろせしより凡十月にて米となる事、人の種も十月にて人となるか如し。此道理あると以て女の種を植て實法の多きと知るべし。是國益の第一にて、百姓知らねばならぬ事成
都て記たる見分けよふと能々辨へ、何にても女の種を植て、德ある事をためし試むべし。稲は雌を植れば、一反にて凡米貮斗より貮斗五六升、三斗も余分取れる也。其年の氣候にて不作豐作あれとも、不作は不作なりに余計とれるなり。麥は粟黍の類も同じ如く也。都て穂に實法ものは、陽なる性ゆへ、實に雌雄の姿をあらはす、稲麥の類を見て知るべし。根に實法ものは陰性のもの故土の内の根に雌雄の姿、人見分け難し、故に日に照られ雌は葉を凋む、大根牛蒡葉を凋むは雌也是れ天地自然奇々妙々なる天の巧み成。攝津國小西氏（小西篤好）か数年試めしみたるを本（『農業余話』）に著はしたる説也。小西氏の云出せし如く、稲の雌を植て、一反歩三年余の德を
得ることあらは、千石萬石に至らは大なる國益なり。ためし試みて其印あらはさんより、二人に教へ、二人より一村に教へ、一村より郡國へ傳へ、諸國用ふとあれは、國益の第一と知るべし。右の外凡てのなり果実、男は長みあり、女は丸みなり、男は皮あつく甘味すくなく、女は皮薄くて甘味多し、果物成共雌の種を蒔は育ちも早きものなり。
一雌の種を見分けようは、稲穂先の條にもよらず、根の形にも拘らず、穂の元枝一本は雄なり、元枝二本に出るは雌なり、一本に出る雄の稲の穗と、二本に出る雌の稲の穗と、実法の数を算へ見るべし、是れ手短く損得を知る試（タメ）しなり。五穀共に損得は右に同し事なり。大麥は雄穗は元の方より一粒並びなり、雌は元の方より三粒並びなり。小麥雌の穗は元より四粒並びなり、雄穂は大麥と同じ事なり。稗は雌の穗の元枝貮本なれとも、稀には三本四本なるもあり、元枝一本なるは雄也、粟の雄は元枝一本なり、雌は二本なり。黍は稗と同じ事なり。里芋雄は莖左り卷なり、雌は右卷なり、雄の芋は長く尖りあり、雌は丸し、雌種には子澤山につくなり。昆蒻芋の雄は葉は左り卷なり、雌は右卷なり。薩摩薯雄は蔓太く葉大なり、雌は葉小さき角あり、蔓平みありて細し。豆蔓俗にふんどしと云ふ所白きは雄なり、黑きは雌なり、大根根元の丸きは雌なり、細く長きは雄なり。雄は辛く堅くして甘み少し、雌は皮薄くして辛み少なし、和かにして甘み多し。
生たちの時日に照られて葉の凋るるは雌なり。間引く時よく見分け女を残すべし。女は末まで太き故食用にして大いに德用なり。牛蒡は大根と大かた同じ事にて、葉の凋るゝは同じ事なり。竹は男は元枝一本、女は二本なり、竹を伐るとも男を伐り女を殘し、筍は女の竹にある物なり。男竹は身厚くして力強し、筍は頭尖りて細きは男、頭ふつくらと角のあるは女なり。これも雄を拔て女を育てる様にすべし。斯様に心掛れは藪の茂る事妙なり。
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最終更新日
2024.01.21 15:01:43
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